本シリーズの3回目は、季節性がどのように製品の使用に影響を及ぼすかについて考察しました。ユーザーの行動は競争や、政府の行動、新製品、ソーシャルメディアでの運動など、その他の外部イベントの影響も受けます。こうした要因は、ユーザーが製品に対してどのようなエンゲージメントを持つかということを大きく変化させます。トルコが2016年にFacebookへのアクセスをブロックした際には、Facebookの1日のアクティブユーザー数は大きく落ち込みました。また、Uberは#DeleteUber運動によって利用が落ち込み、全体の市場シェアを大きく縮小させました(図1参照)。
一般的に、重要な尺度が大きく変化するほど、また、変化の時間が短ければ短いほど、原因を特定するのは容易になります。外部イベントによる影響については、特にこうした傾向が強くなります。逆に、競争による影響を定量的に把握するのはしばしば困難です。
競争の分析
競争が製品に与える影響は微妙なもので、特定は困難です。そして、修正はさらに困難です。それは、競争の影響は顧客の減少として現れるのが普通だからです。顧客が減少していることは認識できますが、顧客が競争相手の方に行ってしまったのかどうかを、ユーザー体験(UX)リサーチをせずに知ることは、不可能ではないにせよ、困難なのです。
図2に示す音楽業界の例を検討してみましょう。Pandoraは、Spotifyの成長が加速を始めるまでは着実に成長していました。
ユーザーがPandraからSpotifyに移行したことで、さらにSpotifyの成長を加速させ、Pandoraを打ちのめした可能性が高いでしょう。しかし、このユーザーの移行を定量的に正確に把握することは困難です。
自分の業界のデータを持つサードパーティーのデータセットを活用(App Annieの利用分析、クレジットカードの消費者支出パネルデータ分析など)し、頻繁にユーザーアンケートを依頼することで、競争によるユーザーの引き抜きの実態が理解できるようになるでしょう。しかし、しっかりとした分析を行うのはとても困難で、よく分析できても通常は方向性の分析となります。競争、引き抜き、増分について理解していただくため、後日の記事でご説明します。
イベントの分析
単独の外部イベントの影響を理解することは、たいていの場合、比較的に簡単です。そうしたイベントは、重要な尺度における突然の動きを引き起こすことが多く、相関関係が明らかだからです。#DeleteUber運動(図1)がその一例です。
マクロトレンドの分析
競争による行動の変化と同様に、長期間の行動トレンドは検知が困難ですが、UXリサーチが助けになります。
このマクロの変化は、外部イベントによって引き起こされることが多くなります。たとえば、インドにおける低価格4G接続の導入により、インドのインターネットアクセスは価格が下がり、信頼が上がりました。その結果、インドの人々がYouTubeを利用する時間が増加しました(図3参照)。
もちろん、このようなマクロの変化は有益なものばかりではありません。図4は、ブロードバンドインターネットへのアクセスの増加により、人々がニュースを見る手段がどのように変わったかを示すものです。Googleの広告販売が劇的に伸びているのに対して、米国の新聞は発行部数を急速に減少させており、広告販売による収入の大幅な減少という結果を生じました。
おわりに
外部要因は製品の売り上げに劇的な影響を与えることがあり、(マクロトレンドを除けば)予測が最も難しいものです。ただし、もしあなたが重要な尺度を監視する訓練を受けており、自社を分析に強い会社にしているなら、あなたの社内での地位は向上し、機会を利用して外部イベントによるネガティブな影響を和らげることでしょう。
まとめ
- 競争の影響は計測と対処が困難ですが、業界のデータソースが方向性を示してくれることがあります。
- 単独の外部イベントは、通常、指標の突然の変化をもたらします。
- マクロトレンドは製品の指標に劇的な影響を及ぼしますが、これは通常、長期間かけて起こる変化です。
この記事は、Sequoia CapitalのData Scienceチームによるものです。Jamie Cuffe、Avanika Narayan、Chandra Narayanan、Hem Wadhar、Jenny Wangが執筆協力しています。質問、コメント、その他のフィードバックにつきましては、data-science@sequoiacap.comまでメールでお送りください。
著者紹介
アイデアから IPO、そしてそれを超えて、Sequoia は大胆な創業者たちが、伝説的な起業を作ることを助けます。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Analyzing Metric Changes Part IV: Competition and Other External Factors (2018)
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