グロースの前に (Sam Altman)

スタートアップたちには、早く成長することの必要性について常に話しています。それは正しいし、非常に良いアドバイスです。しかし現在のシリコンバレーのスタートアップのトレンドは不健全で極端な方向になってきているように思います。なぜなら、作り上げたいものについて強固な考えを本当に持つ前に、毎週の成長目標を定めているからです。

スタートアップを創業して最初の数週間で、創業者は自分たちがしようとしていることと、その理由を、はっきりと見極める必要があります。その後、一部のユーザーに本当に愛される製品を作る必要があります。それを行った後でのみ、他の全てのスタートアップを上回る成長に力を注ぐべきです。

時期尚早な成長目標を置くスタートアップはしばしば、一部のユーザーにまあまあ好まれる、漠然とした製品を作るだけに終わってしまいます。そして、「グロースハッキング」という言葉でそのことを覆い隠します。それである程度はうまくいくでしょう。少なくとも、間抜けな投資家がリテンションの数字を掘り下げ始めるまでの、しばらくの間は。しかし最終的には、化けの皮が剥がれます。

最初に確認すべき正しい基準は、「全てのユーザーが当社の製品を愛しており、自然発生的に、他の人にもそれを使うように話しているだろうか?」という問いかけだと思います。この問いに「イエス」と答えられるまで、創業者は成長目標を目指す代わりに、そのことに注力した方が大抵はよりうまくいきます。

非常に高い技術を持つ企業は、やろうとしていることの正確な把握に時間をかけても、それを実行する時期を見極めることについては時間をかけないことがあります。彼らは大抵、そのバイナリテストを省いて、成長に全エネルギーを向けてしまいます。本当にうまくいく企業にとって、時期の見極めは重要な要素であり [1]、もしその見極めを行なわないのであれば、どんなグロースハッキングもあなたの会社を偉大にすることはありません。

ちなみに、一部のユーザーに愛される製品を最初は見極められていなかったスタートアップが、最高の企業が持っているようなミッションを発展させることも、ほとんどないように思います。

 

[1] うまくいく企業が持っており、これも大抵は早期に見極めている他の要素が、何らかの独占事業です。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Sam Altman

Sam Altman は YC グループの社長です。彼は Loopt の共同創業者兼 CEO でした。Loopt は 2005 年に Y Combinator に投資され、2012 年に Green Dot に買収されました。Green Dot で彼は CTO を務め、現在は取締役です。Sam は Hydrazine Capital も創業しました。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Before Growth (2016)

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