スタートアップの採用と企業文化 (Startup School 2014 #11)

授業の概要

Sam Altman
「文化とチーム」の第2部を始めます。この時間はPinterest創業者のBen Silbermann、Stripe創業者のJohn CollisonとPatrick Collisonをお迎えしています。企業文化やチームの構築について、この3人に語らせたら右に出る者はいないと思います。

今回は3つの点について考えていきます。

1つ目は、前回の講義のフォローアップになりますが、企業文化の概念についてです。次に、この方々の会社における起業当初のチーム構築について詳しく話を聞きます。そして、会社が社員100人以上にスケールしていく過程でどのように変化し進化していったかを伺います。今現在の社員数はわかりませんが、とにかく多くの社員を擁する大企業となった今、どのように文化の原則を適応させているのでしょうか。

企業文化で最も重要なこと

では、私の質問から始めたいと思います。皆さんが自分の会社を作る際に最も重要だった、企業文化の神髄とは何でしょうか。

Pinterest の場合

Ben Silbermann
分かりました。文化の最も重要な部分とは何か、ですね。

私たちの場合、文化をいくつかの側面で捉えています。

1つ目は、何を重視している人々を採用するか、2つ目は、日々何を行うか、そして私たちはなぜこれをやるのか、3つ目は、何を伝えるのか、そして4つ目は、何を称えるのかです。

これを逆に言うと、何を罰するのかということですが、一般的には称賛を基本とした経営を行う方が面白いですよね。これら4つの点が当社における文化の大きな部分を占めています。

Stripe の場合

John Collison
まず、Stripeは他社と比べて、社内の透明性をとても重視しています。透明性はStripeにとって非常に重要であると同時に、少々誤解されているところもあります。一般的に、優れた人材を採用することやレバレッジをかけることが重要だと言われています。

当社における透明性は、そこに関連しています。社員全員が足並みを揃えてStripeの事業に関わり、会社のミッションを信じ、情報へ自由にアクセスでき、Stripeの現状をよく理解できていれば、生産性を上げていけると考えています。

そして、スタートアップが成長するにつれて起こりがちな問題を回避することができます。創業当初は2人だった会社も、現在は170人の社員を抱えるまでに成長しており、私たちは社内に透明性を確保するツールについて考えてきました。

社員が170人もいると、消火ホースのように一気に把握しきれないほど膨大な情報が生まれます。ですので、メールの使い方など後ほど詳しくお話ししますが、透明性は私たちの会社の発展にとって重要なものです。

意思決定に関わっていなくても維持し続けるものとしての文化

Patrick Collison
文化とは帯域幅問題の解決策のようなものだと思います。それは、自分が何かのコーディングに着手し、それにずっと取り組んでも、プロダクトに必要な全てをコーディングすることはできないという意味においてです。

組織が大きくなっても、あらゆる意思決定、社内のあらゆる動き、あらゆる出来事に関与すること(そんなことはあり得ないと実際には思っていますが)が理想ですが、それは明らかに不可能です。社員が2人の会社なら可能かもしれませんが、5~10人の会社では無理でしょう。そしてあっという間に150人に増えて、全く不可能になります。

つまり文化とは、意思決定に具体的に関与することが減っていくなかで不変的に維持したいものです。そう考えると、文化の重要性は自明かもしれません。

繰り返しますが、社員数の増加が大企業に見られるような曲線にあると仮定すると、自分が直接的に関与できる事柄の割合は指数的に減っていきます。これが非常に重要です。

これは様々な点で明らかです。例えば、最初の10人の社員を採用する際、それに関する意思決定は非常に重要です。単にその人数を採用するということではなく、採用した社員の1人1人が新たに10人連れてくると考えると、それは100人を採用していることと同じになります。

ですので、最初の10人が連れてくる90人はどんな人物であってほしいかをじっくり考えることです。それが会社にとって重大な結果をもたらします。簡単に言うとそういう概念だと思います。

最初の人材採用のポイント

Sam Altman
最初の10人の社員の採用については、この講義で多くのスピーカーが触れました。そこで失敗するとまずその会社はうまくいかないでしょう。

しかし、どのように最初の10人を採用するか、その方法についての話がまだなかったので、皆さんには会社の文化を正しく作り上げるために初期の社員採用で注意していたポイント、人材の見つけ方を伺いたいと思います。

文化は建築ではなく、ガーデニングのようなもの

Ben Silbermann
その答えは会社によって違ってくると思います。私の会社では、帰納的でした。確かに、自分が一緒に働きたい人材、そして才能ある人材を探しました。

私は知らないことはまず本で学ぶので、文化に関するあらゆる本を読みました。様々な考えがありますが、よくある大きな思い違いとは、誰かも言っていたのですが、文化を建築のように考えてしまうことです。文化とは本来、種を植え、雑草を抜き、植物を育てていくガーデニングのようなものなのです。

私たちが最初に社員を採用した時は、自分たちに似ている人を採用しました。私は特に自分が重視している3~4個のポイントを見ていました。私が求めていたのは、一生懸命働き、非常に誠実で、独りよがりでない人、また創造的で、あらゆることに興味を持つ好奇心の強い人でした。

私たちが最初に採用した社員の何人かは、癖の強さでは屈指の人たちです。彼らはエンジニアでしたが、いずれもおかしな趣味を持っていました。独自の複雑なルールで遊ぶ自分だけのボードゲームを作っている者もいれば、手品に夢中でiPhoneで手品をコーディングするだけでなく製作動画を作っている者もいました。

私が思うに奇癖というのはその人を知るための名刺のようなものであり、様々な分野や変わったことに夢中になる人は優れたプロダクトを作る傾向があり、共に働くには素晴らしい人材です。

私たちが求めるのは、何か素晴らしいものを作ろうとする人です。思い上がらず、リスクを恐れず、大きなものを生み出そうとする人です。創業当初にそのような人物を選ぶのは簡単でした。想像してみてください。私たちは汚いオフィスで働き、誰も給料をもらっていません。何かを生み出したいという欲望以外に私たちの会社に来る理由はありませんでした。逆に私たちの会社を選ばない理由はいくらでもありましたから。

今振り返ると、それは私が本当に大切にしていたことでした。彼らは、他の仕事に就くチャンスや世間並みの給料、綺麗なオフィスや優れた設備を諦め、最も純粋な理由で私たちの会社に来てくれました。そうした特質は、現在働いている社員にも根付いていると思います。

最初の10人の採用はその後の影響力が大きい

John Collison
最初の10人を採用することは困難です。なぜなら、誰もまだこの会社のことを聞いたことがない時点で採用を行うからです。こんな奇妙なアイデアに取り組んでいる2人と働きたいと思う人はいないでしょう。

Patrick Collison
応募者は友人から「あんな会社に入るな」と言われたようです。私たちが2番目に採用した社員は、彼はオファーを受けたか受けようと決めた日の前夜に親友に呼び出され、「あんな会社に入るべきではない」「人生を棒に振ろうとしている」と非難を浴びました。

それでも彼は私たちの会社に入ったのですが、実は彼を説得していた友人の1人も今Stripeで働いています。これが現実です。

John Collison
そして最初の10人の採用が困難なのは、彼らは後に採用される10人よりも会社に対する影響力が大きいからです。皆さんは採用というと、LinkedInを開き、バリューメニューを見て注文するように「この人がいいかな。いや、この人もいいな」と考えながら人を選ぶようなイメージを持っているかもしれません。

しかし、少なくとも私たちは、非常に長い時間をかけて友人やその友人と話をして採用をしていました。私たちには巨大なネットワークはなく、2人ともまだ大学生でしたから、かつて一緒に働いたことがある人を迎えるという手もありませんでした。ですので、Stripeが初期に採用した人々の多くは友人からの紹介でした。

興味深いことに、初期入社組は皆、キャリアが浅いとか、何らかの形で過小評価されていた人たちでした。考えてみてください。目を見張るようなキャリアの持ち主なら、すでに何かしら満足な仕事に就いていたことでしょう。

ですので、私たちが採用できたのはキャリアが浅い人たちでした。例えばデザイナーの男性は18才の高校生で当時スウェーデンに住んでいましたし、CTOは大学生でした。私たちが唯一できたことは、実際に有能である人物か、または有能に見える人物であるか、どちらか一方の条件を緩和することでした。私たちは無意識に後者を緩和していました。

バリュー投資家のように人材を獲得する

Patrick Collison
適切な人材を探すには、バリュー投資家のような考え方が必要です。つまり、市場で高く評価されている人材を探すのです。FacebookやGoogleなどから優れた友人を採用するべきではないでしょう。既に名が知られている人が皆さんの会社に入りたいと考えてくれるのなら最高ですが、彼らを説得するのは難しいでしょう。

昨日の午後、Johnと最初の10人の社員に共通して重要だった特質は何だったのか、昔を振り返ってみました。文化に関して、私は全てを自分でやりたいタイプで、アドバイスをするとしたら少ない経験から非常に推定的になりますが、うなずいてもらえることはたくさんあると思います。

私たちの会社の最初の10人の社員に関して重要だと思われたことは、誠実で正直なことでした。それは非常に重要なことだと思います。他者から一緒に働きたいと思われるような人、信頼され、問題に理知的かつ真摯に取り組める人、そうした人々は仕事をやり遂げる人です。様々なことに興味を持つ人はいますが、それらをやり遂げられる人は多くありません。

GitHubに公開されている履歴書から人材を探すという話もよく聞きますが、様々な経歴に価値を見出すことに私はピンときません。何かに2年どっぷりとはまっていた人と一緒に働く方がより先験的で興味深いと思います。そして私たちが求めていた3つ目の特質は、こだわりがとても強く、些細なミスも許さないことでした。

後から考えますと、私たちがやっていたことは、まともではなく、すべきでなかったのかもしれません。細部へのこだわりという点では、私たちは非常識ギリギリのレベルでした。

例えば、エラーを知らせるAPIのリクエストがあると全員のメールと電話に連絡が来るようにしていました。ユーザーの観点からエラーをすぐに解決しないと大変だと考えていたからです。

また、社員のメールは全員にコピーし、些細な文法やスペルの間違いも互いに指摘していました。スペルミスがあるメールを送信してしまうなんてあり得ないと思っていたからです。このように、誠実さ、強いこだわり、仕事をやり遂げることの3つが私たちの考えた特質です。

採用はどんな手を使ってでも行う

Ben Silbermann
私は、人を探すのはどんな方法を使っても良いと思います。私たちが最初に採用した社員は、様々なルートからやって来ました。craigslistに広告を出したり、テックトークに手当たり次第参加したほか、オフィスで毎週ドリンクや食べ物の持ち込み自由のバーベキューパーティーを催して、参加者と話をしました。

Philzにコーヒーを買いに行くといつもあなた方のどちらかが採用活動をしていたのを見かけたことを覚えています。戦略的に最も繁盛しているコーヒー店の隣にオフィスを構えていたのですよね。

優秀な人物は、様々な場所で活動しているものだと思います。ですから、そのような人がこちらを探し当ててくれるのを期待するのではなく、こちらから探しに行く必要があります。誰も自社のプロダクトを知らなかったり使っていないという場合はなおさらです。

人材獲得のピッチを磨く

John Collison
優れたエレベーターピッチを使うことは非常に重要かもしれません。投資家向けだけではなく、それ以外の人々に対しても必要です。今後半年から1年のうちに採用することになる人かもしれませんから。

相手に自社プロダクトに強い興味を持ってもらう、あるいは自分たちに関心を持ち始めてもらうのは、早ければ早いほど良いのです。採用には非常に長い時間を要するため、自分たちのビジネスに常に興味を持っていてもらうことが後々功を奏するのです。

Patrick Collison
少々脱線するかもしれませんが、私たちの友人の多くは学校を卒業してすぐに起業しました。私たちは、それらの会社がうまくいかなかった理由を考えました。

最も多くみられる失敗は、ニッチすぎたり、限定的すぎることをやっていたことだと思います。学校とスタートアップでは、時間軸が大きく変わってきます。学校は四半期か半期が区切りですが、スタートアップは5年から10年のスパンです。これが問題になってくると思います。ニッチなビジネスに人を採用するのは非常に難しいことです。

例えば、火星ロケットを作ろうとしていると言うと、ほぼ不可能な話に聞こえますが、魅力的ではあります。そして、自分の会社で働くよう人を説得するのは簡単です。

逆に、スタートアップの具体的な例は挙げられませんが、授業のプロジェクトによくあるような非常にニッチなことを選んでしまうと、人の採用はずっと困難になるのが実情です。

人材の判断のためにやるべきこと

Sam Altman
比較的経験の少ない創業者が、優れた人材をどう見極めるのかという具体的な質問をされることがよくあります。採用する人物はバーベキューパーティーで会った人だったり、友人だったり、過去に一緒に働いたことがある人かもしれません。

この人物は良さそうだと判断するためには具体的に何をしましたか?あるいは、失敗したこともあったのでしょうか?潜在的才能を特定できる方法をどうやって学んだのでしょうか?GoogleやFacebookで働いている人なら優秀な人材に違いありませんが。

何が必要かを考える

Ben Silbermann
一緒に働いてみなければ相手を100%見極めることはできません。逆に言えば、採用した人物が良くなかった場合、改善すべき点を相手に伝える責任があります。それでも駄目なら解雇することになります。

しかし一般的に、人材の問題は大きく2つに分類されると思います。1つは、その人材がどんな役割で力を発揮できるか、ある程度判断できる場合です。少しでも経験のある分野です。もう1つは、経験のない分野に関してで、この場合はもっと厄介です。

この点に関して私たちがやったこととして、まず面接をする前に、その分野で世界に通用するために必要なことは何かを考えました。これは、後に財務部門のトップを採用する時、自分は財務のことは図書館で借りてきた本に書いてあるようなこと以外何も知らない、財務やマーケティングの入門書程度しか知らないというような場合に重要になってきます。

ですので、私は、その分野で世界レベルの人と話をする時はいつも、どのような特質を求めるか、面接でどのような質問をするか、どのように人材を見つけるかを聞くようにしていました。また、その人物と同じくらい優秀な人を探している場合は、そのような人はどこで働いているか、その人の電話番号まで聞き出していました。

面接のプロセスで良い点と悪い点を見極められるようになるには、かなりのコストがかかると思います。つまり、高いお金を払って自分と他人の時間を使っているわけです。また、面接基準の再調整は非常に重要です。

面接では資質を見極める

そして、面接する段階になったら、資質を見極めるためのプロセスを練ります。Pinterestには面接で使う一連の質問がありますが、常にその質問が資質を見極める良い指標か否かを見直しています。また、「この会社はこの人物が働くべき場所か?」を把握することも質問の目的です。

これは、お二人が高い透明性について述べたポイントですが、楽なことは何か、困難なことは何かを明確にしておくのです。真に優秀な人は困難なことへの挑戦を求めます。彼らは困難な問題を解決したがるもので、この点でGoogleは賢く、面接で非常に難解な質問を出し、問題解決を好む人々を選び出していました。

会社が大きくなるにつれてリスクを隠さないことが重要になると思います。私が聞いた話では、PayPalでは面接後の応募者に、「ところで、私たちはMastercardにやられそうですので、あなたには違法な仕事をやってもらう予定です。しかし、成功すればあなたの報酬を見直します」と言ったそうです。

またiPhone向けの採用をしていた時、彼らは何をしているか応募者に伝えませんでしたが、「あなたは家族と3年間会えませんが、あなたがやり遂げた仕事は子供や孫の代まで語り継がれるものになるでしょう」と言ったそうです。

これもまた、採用において非常に重要だと思います。その会社で働くことは素晴らしい考えだと思われる理由を全て明確にしつつ、なぜ困難な仕事となるのか、その不愉快な部分も包み隠さず提示する。そうすれば、適切な人材はそのチャンスを正しく判断するでしょう。

Patrick Collison
しかし、子供には会えたようですよ。

候補者と課題を一緒に解く

John Collison
人材を見極める際にすべきことの1つは、自分なりのやり方で自信を持って面接することだと思います。

例えば、自分が世界有数のエンジニアではないが、エンジニア候補を面接する場合、他を真似て、候補者にホワイトボードにあれこれ書き出させるなどエンジニアリング的なことをやらせたくなると思います。Stripeの場合、候補者に飛んで来てもらい、週末一緒にコーディングを行い、その人の作業ぶりを見ました。これがその人材が優秀かどうか自信を持って見極めるための唯一の方法だったのです。

この手法は自分が専門ではないあらゆる役割に応用することができると思います。私は事業開発の専門家ではありませんが、私たちがその分野の人材を採用する時は、Stripeがやっている既存の事業をどう改善するか、どんな新規事業をやってみたいかを候補者に話してもらいます。

それが自分の専門分野でなくても、こうした過程を経ることで自分の判断に自信が持てるようになります。職務に関する面接に関しては、インポスター症候群に陥る人は多いと思いますから。

できるかぎり一緒に働く

Patrick Collison
最初の10人を採用する時の具体的な戦略は、採用を決定する前にできるだけ多く一緒に仕事をしてみることだと思います。あるレベルまでスケールすると、経験の浅い人材とこのようなことをするのは非現実的になります。創業者からすればコスト高になります。しかし、最初の10人に関してはこれをやる価値は大いにあります。

私たちは最初の10人の大半について、事前に1週間共に仕事をしました。1週間猫をかぶり続けるのは困難ですから、その人の実体はすぐに明らかになるものです。

「優れた人材をどうやって見極めるか?」という質問に対して私が考えられるもう1つの答えですが、世間では10x型やスキルセットについてよく言われますが、私は10xが何を意味しているのかわかりません。より直感的な決定方法としては、「この人は現在している仕事に関して仲間の中で最も優秀か?」を考えます。

友達同志の中から選ぶのは少々無神経かもしれませんが、私にとっては少なくとも「このエンジニアが知る最高のエンジニアか?」という考え方は良いと思います。

そして、他にお話しすべきだと思うことは、最初の10人や文化、チームに関して、その重要さは自分自身が体験してみるまで分からないということです。一般的に、メディアなどでは創業者に多くの注目が集まりすぎています。

私たちがこの場にいることも、Stripeと言えばJohnとPatrick、Pinterestと言えばBenという話の構造を助長しているのだと思います。しかし、私たちの会社の事業の圧倒的多数、99%は私たちではなく社員が行っています。

それは当然なのですが、マクロ的な話では、抽象的な概念で特定の人物と関連付けられているのです。しかし、AppleでもSteve Jobsの役割は結局ごく小さなものだったのです。

John Collison
では、あなたが言っているのは「間違えるな」ということですか?

Patrick Collison
そのようなものです。

リファレンスチェックが重要

Ben Silbermann
私は、リファレンスチェックが非常に重要だと思います。

リファレンスチェックとは、候補者と仕事をした経験がある人物に率直な意見を聞くことです。私たちはリファレンスチェックをかなり積極的に行っていますが、「この人物と一緒に仕事をするとはどういうことか?」を理解しようと努めています。履歴書の記載内容が本当かどうかを確認しようとしているわけではありません。私たちは履歴書に嘘はないということを前提にしていますから。

面接ではよく、「Jonathanを知っていますよね?私たちの共通の友人ですからね。『あなたが最も優れている点は何か?』『あなたが最も誇りにしている点は何か?』『あなたはどんな改善に取り組んでいたのか?』とJonathanに尋ねたら、彼は何と言うでしょうか?」という質問をします。

こういう質問をすることで社会意識と説明責任が生まれます。そして、典型的なソフトで定量的な質問をしながら時間をかけて評価の精度を高めていきます。

相手の特質を評価するために、「この人物はこれまで一緒に仕事をした人の中で上位1%に入るか?または、5%か、10%か?」という質問をすることは、その人材に希少価値があるかどうかを知る重要なリファレンスとなります。

「Johnの長所は何ですか?」という聞き方ではなく、「『こういうことが得意だ』と彼は私に言いましたが、正しいと思いますか?」というように聞くことです。これは重要なツールです。

リファレンスチェックは難しいけれど続けること

John Collison
当然のことながら、リファレンスチェックは初めは容易ではありません。しかし、続けていくことで非常に有益な情報を得ることができます。

リファレンスチェックで名前を出すと、質問された人は無難なことを言おうとするため、「これまで一緒に仕事をした人の中で、この人は上位何位くらいですか?」というように意図的に希少性の高さを測る質問をする必要があります。

電話の場合は、「ええ、あの人は優秀です」と言ってもらうだけはなく、その人と15分は話す必要があります。

オンボーディングでやるべきこと

Sam Altman
そうしたリファレンスチェックは採用において非常に有用なソースとなりますね。

最初の社員を採用した後、彼らに早く効率的な仕事をしてもらい、文化に適応してもらうために何をしましたか?一般に採用は困難な作業ですが、採用した人々に満足して効果的に働いてもらうことの方がもっと困難です。初期入社組にそれを達成してもらうために皆さんは何をしていますか?

最初はプロセスがなかった

Ben Silbermann
その質問に対する回答は、私たちの会社が小規模から大きな会社へと成長していく中で変わってきました。設立当初は、その人が必要だというだけで採用し、入社研修は、「これがあなたのコンピュータです。環境は整えていますからご心配なく。これが一緒に解決すべき問題です」というだけのものでした。

私たちは寝室2部屋の小さなアパートからスタートし、個人的関係を構築し一緒に時間を過ごしながら、いつの間にか様々なことを達成してきました。スタートアップとはそういうものです。特に何かをする必要はありませんでした。

これに関して1つ付け加えておきたいのは、私たちは常に将来的に目指す姿を社員に意識させていました。なぜなら、ある課題を与えられると目の前にあるその小さな課題が全てのように思い込みがちだからです。ですから、常に私たちは、「Googleが検索で成功したように、私たちは将来的にはこれで成功し、そのための計画はこれです」と言っていました。

会社が成長するとプロセスが必要

会社が成長するにつれて、ある程度このプロセスを正式にする必要があると思います。私たちは、会社を訪問した日から最初の面接、また入社30日後の社員の様子を把握するプロセスを非常に長い時間を割いて改良し続けています。

「誰と知り合ったか?」「自分のマネージャーが誰か知っているか?」「チームのメンバーとミーティングをしているか?」「会社の全体構造を理解しているか?」「優先事項は何か?」といった質問を設定しています。

また、私たちの会社で導入しているプログラムがありますが、これも常に改良しています。この1週間のプログラムでは、社員にある役割を与え、その成果を測定する基準は1つで、「その役割を終えてどう思ったか?30日後にはどう思ったか?」と社員に質問します。その後、その社員の同僚と上司にも「この人は期待通りですか?彼らを生産的に働かせるために、プログラムはうまく機能したと思いますか?」と質問します。

うまくいっていない場合は、a)新人社員をサポートできる体制が整っていないということなので、これ以上の新規採用は止める、そしてb)制度を一新することになります。

社員の人となりを理解することは重要であり、軽視できないと思います。彼らの夢、彼らの仕事のやり方、どのように評価されたいか、物音一つしない環境を本当に好んでいるか、朝型か夜型か、目標は何か、このようなことを理解することによって、個人としても会社の一員としても社員を大切にすることにつながるのです。

オンボーディングで大切なこと2つ

John Collison
教え方は様々でしょうが、ステージを問わず重要なことが2つあると思います。

1つ目は、新入社員に早く一人前に仕事をしてもらえるようにすることです。課題を特定し、それに対する社員の仕事の進捗状況を測ります。例えば、エンジニアを採用したら、入社初日に課題を与えます。事務系の社員を採用した時は、入社初日から配属先のミーティングに参加させます。とりあえず簡単なことからやらせるほうが楽な場合もありますが、私たちは崖から突き落とすようなことをやっています。

そして2つ目は、新入社員へのフィードバック、特に文化への適応に関するフィードバックを迅速に行うようにしています。その会社に確固たる文化がある場合、新入社員がそれに適応するには時間がかかり、必ずしも容易ではありません。Stripeでは文化を多く書面化しています。両隣の人がヘッドフォンをしてインスタントメッセージで会話しているような環境で働くのは辛いかもしれませんね。

Patrick Collison
普通の職場から来た人にとっては、ということですね。

John Collison
その通りです。高度なレベルから些細な文化的問題まで、あらゆることについて新入社員に対するフィードバックが多いほど彼らは成長します。仕事ぶりの良し悪しを逐一指摘するのは普段の生活では控える方がいいと思いますが、社員の成長に責任がある創業者の場合は別です。

スケールする中で変えなければならなかったこと

Sam Altman
では、会社がスケールした後についてですが、皆さんの会社における採用やチームの管理手法に関して、社員数が2人から10人、1,000人と増えていくなかで最も大きく変えなければならなかったことは何ですか?

組織に自主性と機敏性を持たせ続けること

Ben Silbermann
変わったことはたくさんあります。チームに関して私たちがやろうとしていることの1つは、組織のしがらみの中で可能な限り自主性と機敏性を持たせるということです。

つまり、堅いポリシーで縛られて輪切りにされた型通りのチームではなく、たくさんのスタートアップの中の1つのように思ってもらおうとしています。

これは「言うは易く行うは難し」で、全員がその域に達しているとは思いませんが、各チームが目標を達成するためのリソースを管理し、保有することを目指しています。

各チームが、何が最も重要か、それをどのように測定すべきかを理解していると、マネジメントもある程度やりやすくなります。それぞれのチームが自立していなければ、マネジメントも幾何学的に複雑になり、うまくいかなくなります。

ですので、そうした概念のユニットを作る必要があります。私たちが少なくともやろうとしていることです。特にPinterestにおいて、このユニットの構築で本当に難しいのは、非常に優秀なデザイナー、非常に優秀なリードエンジニア、ライター、そして多くの場合コミュニティリーダーを含む自己充足的なユニットを作ろうとしていることです。

難しいことですが、その核心はプロダクト作りに関する私たちの哲学に通じています。私たちはこうしたあらゆる分野の人材を集めて特定のプロジェクトを担当させ、迅速に仕事を進めるために障壁を取り除こうと努めています。障壁がなくなると、話し合いながらスピードを上げていけます。

しかし、採用に関しては少し異なると思います。最大の変化にして最大の資産は人だと思います。入社した社員が持つネットワークからの紹介がさらなる原動力になってきています。私たちは、14人目か15人目の社員でリクルート専門の人物を採用したのですが、これは結果的に功を奏した意思決定の1つでした。

彼女はスタートアップとAppleのような大企業の両方で働いた経験がありましたが、どこでパイプラインが壊れるか、早期の指標を理解しており、人を採用する時は単に才能で選ぶのはなく、自社の文化にうまく当てはまる人を見つけることだと教えてくれました。振り返ってみれば、個人的に非常に価値あることだったと思っています。

徐々に考えることが長期スパンになる

Patrick Collison
会社の成長においては、様々な問題が起こります。会社がすぐに潰れてしまうか、その問題が会社の成長につながるか、どちらかです。私も含めて人々が驚かされることは、時間軸の変化の速さです。

創業した最初の月に考えているのは、およそ1カ月後のことです。開発ロードマップもそれに基づいていると思います。社員との関係は、専任か否かを完全に誓約していないような非常にくだけたものかもしれません。しかし、時が経つにつれてそれは互恵的な関係になると思います。

創業から1年後には1年先について考えています。4年後には4年先について考えています。このように、どんどん先のことを考えるようになり、1カ月がごく短い期間になります。11カ月後には1年先について計画すると共に、人事体系についても考える必要があります。

Benが話したように、長期的な目標を考えなくてはなりません。これは採用にも関連することで、創業当初はすぐに成果を出せる人材を採用する必要があります。有望に見えても今後1~2年は期待どおりの働きを見込めないような人材を採用する余裕はまずありません。即戦力となる人材を採用しなければならないのです。しかし2~3年経つと、長期的に見て有望な人材に投資することも理にかなってきます。

そうした投資をしていない場合は、経営が極めて短期的になっている可能性があります。ですから、これは非常に重要だと思います。他人との良い関係をどのように創り出すか、ある意味こうした問題は簡単なものです。私たちが日々やっていることです。

しかし、これをどのように体系立てて、効果的にスケールさせていくかとなると、大きく違ってきます。まだ会社の規模が小さい時には理想的にできていることを、規模が大きくなってもできるだけ機能させるようにどんな工夫をするかということです。急成長している会社で、社員が年に2~3人しか増えないことは、まずないですから。

成長を管理する一番まともな方法は何でしょうか。体系的にその方法を考える価値はあると思いますが、実際には質問を重ねるくらいしかできないでしょう。

Stripeでは、1日3度の食事を全員が長テーブルに座って取ります。様々な人と食事をすることでどれだけ多くの人的交流が生まれるかを考えてみてください。それは膨大な量です。これが一般的なフレームワークだと思います。

過度な透明性にこだわる

Ben Silbermann
私が気になっていることが1つあります。お二人は透明性を重視していますが、時間を経てスケールさせていったのでしょうか?私たちの会社でもこれについて常に考えているので興味があります。

Patrick Collison
誰が定義したのかは覚えていませんが、スタートアップとはプリンシパル・エージェント問題がまだ起こっていない組織だと言われています。大企業になると、ローカルで最適なこともグローバルでは最適ではないということがよくあります。ですので、スタートアップの経営は大企業とは異なってきます。

大企業では、自分にとって良いことを完全に透明な環境では行えないということがよくあります。なぜなら、社員に悪く評価されるかもしれないからです。

しかし、スタートアップでは全員が同じ方向を向いているため、いわばあらゆる情報を共有することも可能です。先ほどお話ししたように、かつてStripeでは意図的にリストから抜けない限り、全てのメールがbccで全社員に共有されていました。社内の最新事情に通じていればミーティングをたくさん行う必要がなくなるので、より効率的だと考えたのです。

その後、私たちはメーリングリストの面白いフレームワークを構築しました。現在はGmailのフィルターを生成するプログラムを使用しています。Benが話したように、数日後にうまくいっているかと社員に聞いたのですが、50人の社員たちにとって困難を極めるものでした。彼らは自分に送られてきたメールを全て把握できないと酷評しました。社員は多くのメールを見落としてしまっていたのです。

John Collison
Gmailがダウンした時もありました。

Patrick Collison
ありましたね。送信されるメールが膨大な数だったために、ある時Gmailがダウンしたのです。

優れたアイデアについて社外の人間と連絡を取る可能性もありますから、スケールするのは困難です。自分の正面に座っている人から、これまで聞いたこともないような馬鹿げたアイデアだと思われるかもしれません。自分のコミュニケーションを組織全体から監視されているようなものです。

社員が社内で起きていることを知ることは、良くも悪くもあるのです。このシステムはこれまでよく機能してきたと思いますが、もし社員が5,000人規模になったらどう機能するのかは気になるところです。

文化を変えるためにツールを変えた

John Collison
私たちの会社がスケールする上で役立ったことをいくつか紹介しますと、1つ目は文化を変えるためのツールを変えたことだと思います。

ツールの面では、以前は全てのメールを読ませることで社内の最新情報を共有していましたが、現在は社内の情報を毎週報告することにしています。非常に多くのことありますから。

2つ目は文化的側面で、情報が溢れているという点で、情報に関する社会的規範を作る必要がありました。Stripeにとっての秘密情報などはもちろんですが、誰かにメールしたりSlackやIRCで話をしたりする場合もそうです。170人が閲覧可能だと、ヒヤリとすることがよくあるからです。

合理的な提案だと思って言ったことが批判を招き、その社員が今後意見を共有しなくなるということもあります。社員数が増えたため、私たちは議論への参加の仕方や社員間のやり取りに関する規範を作らなければなりませんでした。

Patrick Collison
誰かにスポットを当てるのは良くないかもしれませんが、そこにいるEmilyはこの夏Stripeでインターンをしてくれました。インターンとしてどう思ったか、聞かせてもらえませんか?

Emily
全体的に素晴らしい経験でした。最初の週は会社が何をしているかを理解するため、Hackpadを読むのに時間を費やしました。興味深い他部門の話もたくさんあり、自分の仕事が疎かになりそうなこともありました。

Patrick Collison
ちなみに、HackpadはGoogleドキュメントのようなものですが、ニュースフィードがあり、全てのドキュメントを閲覧できます。

Emily
Stripeでは社員に自分の仕事を全て公開することを奨励しています。会社全体のスピード感は相当なものがあります。Spin Upsと呼ばれるものでは、各チームリーダーが、現在取り組んでいることや、興味がある者はこのように貢献できるということを30分間で発表します。

Patrick Collison
透明性があるのは良いことだと思いますか?

Emily
はい。読むべきものと読む必要のないメールを判断できるまで苦労したことは覚えています。最初の週は受信ボックスに2,000通のメールが届きましたが、最後には必要な情報は3~4チームから得るようになりました。

初期に採用した社員はリーダーになれるか

Sam Altman
では、次はPatrickとJohnに対する質問です。お二人の会社で初期に採用した社員はリーダーに成長しているのでしょうか?

John Collison
Stripeのケースではイエスです。最初の10人の社員の多くは現在リーダーとなっています。

会社におけるリーダーシップは後天的に身に付けるスキルだと思います。生まれながらにマネジメントやリーダーシップを得意とする人はいません。会社で何年か働くなかで、人と共に仕事をし、人の成長をサポートしながら、そのスキルを伸ばしていけるのです。自分の仕事に必死になっているなかで労力を要することですが、そのスキルを開発できなければ、会社にとって由々しき事態とも言えます。

Ben Silbermann
私たちの会社に関しては、答えはイエスでもありノーでもあると思います。スタートアップで働くメリットの1つは、他では絶対に任せてくれないようなマネジメントやプロジェクトの課題に取り組めることだと思います。

また、社員にそうしたリスクを取らせるなら、成功しなかった場合でも出直しの機会を与える必要があります。さもなければ、社員に挑戦への恐怖が生まれてしまいます。

私たちの会社には、「プロジェクトやグループを率いてみたい、責任を負ってマネジメントしてみたい」と言って、創業時に大きなチームを任されていたプログラマーやエンジニアがいます。一方で、そのような挑戦ができたことに満足しながら、こういうことは二度とやりたくないと思っている者もいます。そういう人には、例えばエンジニアとして、個々の仕事で会社に貢献してもらうようにしています。

しかし、やってもらわない限り分かりませんから、できる限り多くの社員にチャンスを与えたいと強く思っています。達成しようとしている事業開発に対して学習曲線が厳しいと感じられる分野に関しては、うまくやり遂げてくれそうな人材を探します。

質問は「創業時からビジョンは変わったか?」でしたね。ビジョンに関しては、私たちが採用を始めた時、ユーザーに楽しんでもらえる最高のツールを作ろうと考えていました。

私は物を集めるのが好きなので、他の人もそうかもしれないと思いました。そして、私たちが予想していなかったことが創業当初に判明しました。それは、他人のコレクションを見ることは、自分が求めていると気付かなかったものを発見できる素晴らしい方法であるということです。これは他の多くのテクノロジーでできなかった問題に対するソリューションとなりました。

私たちは昨年、おすすめや検索、フィードの開発に多くのリソースを投入しました。ユーザーが選んで分類したピンというユニークなデータを活用したのです。そしてユーザーに関して、最初に驚いたのは、まさしく会社を立ち上げた時だと思います。自分たちのプロダクトを使ってくれる人が本当にいるのかどうか、私たちには全く分かりませんでしたが、私たちに関係のない人や義務を負っていない人が使ってくれて、とにかく嬉しく思いました。

最大の驚きは、ユーザーやユーザーグループの多様性です。これが最も刺激的なことの1つだったと思います。そして面白いことは、会社が大きくなるにつれて、夢も大きくなるのです。社員にも言っていますが、私たちが現在ある姿とあるべき姿にはギャップが存在します。客観的に私たちが歩む道のりは長く、ギャップは拡大しているように思えます。しかし、それは会社創業者に共通する特質だと思います。

従業員を説得する方法

Sam Altman
次の質問は、大半のスタートアップはiPhoneを作っているのではないということです。

ほとんどのスタートアップは失敗に終わるため、孫の代まで語り継がれるようなプロダクトを作れる保証はありません。犠牲を払ってスタートアップに参加してくれるよう、どのように人々を説得するのですか?

Patrick Collison
スタートアップに共鳴してもらえる理由の1つは、保証がないことだと思います。保証があれば退屈でしょう。このような成果になるという見通しがあっても、それは可能性にすぎません。

家族や子供に会えないという点について、創業当初のスタートアップは確かに勤務時間が長くなりますが、その話は大げさだと思います。スタートアップは、長時間労働だと誇張されがちです。これは魚釣りのスタートアップ版のようなものです。

どのスタートアップでも、「2年間寝る時間もなく働いた」などと、創業当初は他社に比べてとてつもなく長い勤務時間だったと言われるものです。しかし、現実的にそれほどの犠牲が払われていることはほとんどありません。平均的には1日2時間残業をする程度だと思います。確かに犠牲ではありますが、今後5年間で体験するあらゆる喜びや楽しみに比べれば大したことではありません。

Ben Silbermann
iPhoneでさえ完成するまでは大ヒットするか分かりませんでした。優秀な人間なら、創業者が未来を見通す水晶玉を持っていて、入社は保証を伴うものだとは思っていません。実際、そういうことを信じて入社してくる者は確実性と未来に関する基本的な知能テストに合格していないと言えるため、採用すべきでないのかもしれません。

しかし、会社の何が面白いのか、どこへ向かおうとしているのかを伝えることは正しいと思います。この先の課題とそのためのプランを示し、その人材が担う役割が会社にとって重要である理由を伝えるのです。

先ほどあなたが言われた火星ロケットの話はいいですね。「火星に行くぞ」と言えば優れた人材が集まり、それによって火星行きの確率が高まることを彼らは理解しているわけです。

私ががっかりするのは綺麗事を聞かされる時です。Googleのような確実性とメールを社内で共有している小規模なスタートアップで働く役得の両方を求めて入社してくる者がいたら、それはまさに良くない兆候です。

例えば、私が応募者の面接を行う時、相手はだいたい「御社の大ファンなんです」と言います。私は他に何社の面接を受けているのかとよく質問します。そこで相手が、同じ成長ステージにあるということ以外互いに関係のない7社を挙げて、「私は成長株の会社で働きたいので、Stripe、Jawbone、Airbnb、Uberで面接を受けています。さらに、Google Xにも履歴書を送っています」と答えた場合、その人物はおそらく皆さんが求めている真の人材ではない証拠です。

そして、そういう面々は困難な状況になった時に粘り強くやり遂げることはないでしょう。彼らが本当に求めているのは職歴であって、目標の達成ではないからです。

Patrick Collison
他に社員のモチベーションを大きく高めることは、個人の能力開発という点で何らかの成果に影響を及ぼせる見通しだと思います。スタートアップは社員数も少なく、より厳しい環境だからです。その人が世界最高レベルであろうとなかろうと、Googleの軌跡はおそらく変えられないでしょう。

一方で、自分自身を評価し、自分はどれだけの貢献ができ、影響を及ぼせるかを知りたい者にとって、スタートアップはそれを試せる絶好の場所です。

ユーザーと採用の関係性

Sam Altman
ユーザー基盤は採用戦略にどのように影響しますか?

Ben Silbermann
自社プロダクトを毎日熱心に使っている人だけを採用すべきだとよく言われます。APIを開発している会社ならそれもうまくいくでしょう。

しかし私たちは、ビジョンを持ち、ネット上で発見することが好きな人物を選んでいます。応募者は当社のサービスがどういうものか理解し、使用経験がある人々です。しかし、必ずしも彼らは生涯のユーザーではありません。私たちにとって重要なのは、「当社のサービスを利用することを妨げている障壁は何か、一緒にその問題を解決しましょう。そして共に当社のビジョンを実現しましょう」ということなのです。

スタートアップに関する本には、様々な知恵が書いてありますが、それらが役に立つのは特定の環境で機能している場合だけです。私たちに関しては、判断の目を少し拡げて、ミッションに夢中になってくれる人、当社のプロダクトやプロダクト作りに対するアプローチを大切に思ってくれる人を採用する必要がありました。たとえ彼ら創業当時からの初期ユーザーでなかったとしてもです。

John Collison
それに関して1つ付け加えさせてください。初期段階での社員採用は難しいという話をしましたが、候補者は他の選択肢を持っていますが、こちらはまさに「醜いアヒルの子」の状態なのです。

自社プロダクトに情熱を持ってくれている人を採用するのは良い方法であり、当然他社に対しても有利です。Stripeのケースでは、4人のユーザーを採用しましたが、彼らがStripeユーザーでなければ私たちの会社には来てくれなかったでしょう。これはPinterestも同じだと思います。「Pinterestで働けるんだ!」とPinterestで働く喜びを持っている人が採用されるのだと思います。

Sam Altman
本日はお越しいただきありがとうございました。

 

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Lecture 11: Hiring and Culture, Part II (2014)

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