スタートアップのアイデアを評価する方法 Part 1 (Startup School 2019 #01)

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なぜスタートアップのアイデアの評価が重要なのか

Kevin Hale
今回の講義のテーマはスタートアップのアイデアを評価する方法です。前回のスタートアップスクールで得た多くのフィードバックをもとに発展させた新しい内容となっています。

フィードバックからは受講者が抱える多くの課題が見て取れました。Startup Schoolの参加者のデータを見ると、昨年のカリキュラムの内容について、「非常に高度でかなり進んだ内容だ」との意見が多数あることが分かりました。一方、「アイデアがない」とか、「アイデアがたくさんありすぎる」という理由でどれを追求すべきか分からない人が大勢いました。

多くの人が時にパートタイムでしかスタートアップに取り組めない主な理由は、リソースが無く行き詰まる可能性があるからですが、彼らには確信がありません。「仕事を辞める必要がある」と言い切るために何を信じるべきか分からないのです。

アイデアを評価するスキルは大切です。ピボットする必要があると気付いた時、その必要性をどのように見極めればよいのでしょうか?また、何か別のものにピボットする場合、ピボットする価値のあるものかどうか、どのように評価すればよいのでしょうか?すでに会社を立ち上げている場合は、「なぜ成長しないのか?」、「どのように改善していくか?」という問題を抱えているかもしれません。

その際、自分のスタートアップを評価すること、特に投資家がスタートアップのアイデアを評価する手法と同じように評価することが非常に有益であると考えます。

これは、Y Combinatorを大きなトラクションがある会社にだけ投資すると評する俗説に似ています。YCに受け入れられるためには、すでに多くの収益を上げているか、多数のユーザーを獲得していることが条件となる。また、マスコミにも取り上げられ、広く世に知られてデモデーまでこぎ着ける必要がある。これらは皆さんがよく耳にする話です。

とはいえ、実際はアイデアだけでYCに受け入れられた会社の事例がたくさんあります。Zenefitsはその良い例で、非技術系創業者であるParkerは、たった一人でYCにアイデアを売り込んで成功しました。また、Redditも同様です。彼らはすぐにピボットすることを余儀なくされたため、厳密には1行のコードも書いていませんでした。

実は、私とYCとの経緯も全く同じでした。

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私がWufooを創業し第2回バッチに参加した時も、まだ全くコードを作成していませんでした。PG (Paul Graham) は単なるアイデアの段階で私たちに投資していたわけです。ですから、私も今はYCのパートナーとして、まだアイデアの段階にある会社に投資するために常に時間とエネルギーを注いでいます。

このスタートアップスクールにおける私たちの取組みは、自分のスタートアップについて説明し、考える方法を皆さんが身に付けられるようサポートすることです。それを身に付ければ、「あなたがやっていることは信用できる」と私たちに思わせることができるでしょう。創業者は自分のことを語る際に何度も立ち止まるものです。

どうやれば投資家はアイデアを気に入るのか

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投資家が自分のアイデアを気に入ってくれるかどうか、どう見極めればよいのでしょうか?これが最終的に解明することです。

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その答えは実に簡単です。私たちYCでは、スタートアップとは急成長を目指して考案され設立された会社であると定義しています。皆さんが立ち上げようとする会社が急成長を目指したものでなければ、それは普通の会社、単なるスモールビジネスです。それは悪いことではありませんが、投資家が興味を持つのは急成長を目指す会社です。

つまり、皆さんが多くのユーザーを獲得するもの、高く評価されるものを作り上げようとすれば、ベンチャーキャピタルを引き付けることができるでしょう。ここで求められるのは、急成長できる会社だと言える根拠です。

投資家はアイデアを否定はしない

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実を言うと、創業者と会う時、彼らのスタートアップについて話を聞く時、また採用やこの様なイベントの際、私は「あなたのアイデアには魅かれるものがない」とは決して言いません。これには理由があり、創業者を傷つけないためでもなく、惑わせないためでもありません。

これはPaul Grahamから学んだ考え方ですが、彼は「普通の投資家、あるいは創業者が出会う投資家の多くは、創業者のアイデアについて話を聞く時、彼らのアイデアにケチをつけようとしているように感じる。投資家は創業者のアイデアの欠点を見つけ出そうとし、時には単に自分たちがどれだけ優秀かを見せつけようとする」と言っています。そして、会社の欠点を見つけ出すことではなく、どうすれば成功を収められるかを見出すことが彼の仕事でありYCでの私たちの仕事だと説明しています。

考えるべきは「どうやればユニコーンになれるか」

私たちが行う賭け、勝ちを収める賭けは明白ではありません。明白でないものを把握するということは、最初に創業者から話を聞く時は明白には聞こえないということです。ですから、それらを理解するために想像力や楽観主義を駆使し、「彼らが話すストーリーで、10億ドル企業になれる方法があるか」を考えます。そして、優秀な投資家であれば、それを創業者にフィードバックします。

私は、創業者のビジネスが何であれ、会社を大きくするための様々な方法を考え、どうしたら根拠を私に示せるか、どうしたら急成長の軌道に乗れるか、彼らに納得してもらおうとします。

スタートアップのアイデアは仮説

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スタートアップのアイデアは仮説であり、皆さんもそのように考えてください。なぜ会社が急成長できるのかという理由についての仮説です。自社がいかに急成長できるかを投資家に納得してもらうには、どのように仮説(基本的にはピッチですが)を立てればよいか、理解してください。人は様々なことをとにかく正確に説明しようと、あるいは過剰に説明しようとして間違いを犯すものです。

噛み砕いて説明しますと、きちんとした構造を持った一般的な仮説があれば、いわばワークショップ的に、「これらが自分の会社が成功する理由だ」と自社を理解するのに役立つでしょう。すると、何かを作り出す前であっても、「これがこの会社が進み得る道程だ」、「成功することを示すために、これを証明しなければならない」と理解することができます。

スタートアップのアイデアの構成要素:課題、解決策、洞察

スタートアップのアイデアは3つのパートから構成されます。

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第一のパートは課題です。

これは本質的に初期条件となります。創業者は、「この会社の急成長を可能にする背景は何か?」を私に説明する必要があります。

第二のパートは解決策です。

その条件の下で会社を急成長させるために、創業者はどんな試みを行っているかを説明することです。

そして第三のパートは洞察です。

つまり、自分が行おうとしていること、自分の試みが最終的に成功を収める理由の説明です。私がピッチを聞く時は常にこの3点を理解しようとします。

1.課題:多くの人、成長している、緊急、高価、必須、頻度

課題について話す時の、あるいは自分の課題や初期条件が正しいかどうかを知るためのヒントを紹介しましょう。

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適切な課題とはまず、世間に浸透し多くの人が抱えている課題です。少数の人だけが抱えている課題は避けるべきです。

次に、拡大している、つまり市場が存在している課題が適しています。その課題は、拡大するスピードが早く多くの人が遭遇することになるでしょうか?他人の課題、あるいはその他の種類の課題よりも急速に拡大しているでしょうか?

喫緊の課題、早急に解決しなければならない課題も好ましいです、解決するのに多額の費用がかかる課題は、それを解決できれば、多額の対価を要求することができます。この課題を抱えている人々は必ず解決する必要があると思われる必須の課題、頻度が高い課題、人々が何度も、かつ頻繁な間隔で遭遇すると思われる課題もそうです。

自分が取り組んでいる課題に、これらの特徴のうちのいくつか、少なくとも1つはあるべきですが、複数あれば理想的です。これら全てに当てはまる必要はありませんが、会社が成長していない場合、人が課題に興味を示さない場合は、この中のいくつかが欠けている可能性があります。

最後の頻度は非常に重要です。なぜなら、私やYCパートナーの多くは、人々に転換の機会を何度ももたらす課題を大いに好むからです。これは、Stanford大学の研究者であるB. J. Foggのある理論と関連している点があり、Foggは常にこのような公式を提唱しています。

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「誰かの行動を変えようとするなら動機、能力、トリガーの3つが揃っていて、これら全部が同時に発生する必要がある」という公式です。

動機とは、「私はこういう課題を抱えていて、とにかく解決する必要がある」ということです。能力とは、皆さんのスタートアップです。最後のトリガーは、人々に「あなたのプロダクトでこの課題を解決する必要がある」と突然気付かせるきっかけです。

「どういうわけか、自分が作ったものに誰も登録してくれない」、「これを使ってくれない、夢中になってくれない、継続してくれない」ということが多々起こりますが、この場合はたいてい、創業者が、人々は自分が課題を抱えていることに自ら気付いてプロダクトを使い始めてくれると期待しているからです。そして、十分なメール通知やトリガー、リマインダーを送らない、あるいは自社アプリに戻ってきてもらう方法や適切な時に再びユーザーの声を聞く方法を理解していないことがほとんどです。そうした機会を把握していなければ、あなたのソリューションやサービス、プロダクトへ乗り換えてもらうことはとても難しくなります。

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さて、私たちが考える理想的な課題とは、数百万のユーザー、数百万の人々が抱えている課題です。人々がコンシューマー企業を手がけることを好み、一部の投資家がコンシューマー企業に特化することを好む理由はここにあります。私たちが好むのは、年率20%で成長し課題が急速に拡大している市場、人々が直ちに解決したい課題、数十億ドル規模の巨額の資金を必要とする、あるいは少なくとも合計数十億ドルまで実現可能な市場規模(TAM)がある課題、法改正や新しい規制によって解決する必要が生まれた課題です。医療保険制度改革法可決後には非常に多くの医療系スタートアップが誕生し、それらの多くは突如として病院やクリニックが解決すべき課題という機会に恵まれました。さらに、人々が1日に何回も解決する必要がある課題または1日に何回も使うであろうものもそうです。Googleは古典的な例ですが、Slackも愛用されています。働いている時は、1日に何回も使うためです。

2.解決策:ただし解決策から始めないこと

次は解決策(ソリューション)です。ソリューションに関して、私がお伝えできる唯一最良のアドバイスで、皆さんに覚えておいてほしいことは、

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「今いるところから始めるな」です。

これはどういうことかと言いますと、YCでは回避したい課題、あるいは「課題ありきで始めていれば——」と言わざるを得ないようなアプリケーションを表す頭字語があります。

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それが「SISP」、つまり「課題を探しているソリューション (Solution in Search a Problem)」です。

皆さんがエンジニアである場合によくある事例を紹介しましょう。皆さんは新しく登場したテクノロジーに興奮しています。Blockchainであれ、React Nativeであれ、新しいテクノロジーの登場に皆さんは「これで何か作ってみたい」と思います。これは、大きくはスタートアップビジネスを始める際の理由です。そして、「これでどんな課題を解決できるだろうか?どうしてもこれを使いたい」と考え、課題を後からソリューションに当てはめようとします。その結果、会社を成長させることが極めて困難になります。

会社がこのようなやり方で成長を遂げるのは不可能ではありませんが、非効率的です。「人々が抱えている課題を考えてみよう。それを解決するために必要なものは何でも利用してみよう」と考える方がより健全です。その結果、会社が成長する可能性がより高くなります。

逆のやり方では、課題を考え出したり、人々が抱えている課題に仕立て上げたりする必要があります。これは非常に難しいことであり、結果として会社の成長速度も大きく鈍化します。

現在作り上げているもの、スタートアップを立ち上げようとしている理由を考えてみてください。自分はテクノロジーだけに気を取られて何かを作り上げているのでしょうか?あるいは、初めに課題ありきで「あらゆる手を尽くして人々やユーザー、顧客が抱える課題を解決しよう」と考えたのでしょうか?

3.洞察

最後に、少し分かりにくいかもしれませんが、洞察(Insight)とは何でしょうか。つまり「このソリューションが成功する理由は何か?」ということです。多くの会社はここで引っ掛かります。

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これは「自社の圧倒的な優位性とは何か?」、「他社に勝てる理由は?」、「最速で成長する会社となれる理由は?」ということです。

そうした洞察は数ある競合相手の中から自社を投資家に選んでもらうために必要なものであり、成長と関連している必要があります。自社が急成長を遂げる理由となる圧倒的な優位性が必要です。この圧倒的な優位性と関連していないということは、投資家が価値を見出すものではないということです。

そして最後は、あなたが洞察を持っていることです。「自分は課題を見つけている。これを解決しよう」と思っているだけで、その理由を説明できないのでは困ります。最終的に説明がなければ、私は想像力を働かせることができませんし、創業者がこの課題をどれほど考え抜いているかも判断できません。

圧倒的な優位性:10人に1人の創業者、年率20%の成長、10倍以上のプロダクト、顧客獲得コストゼロ、独占

では、圧倒的な優位性の種類について見てみましょう。

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これが、5種類の圧倒的な優位性です。これら全てを備えている会社はないと思いますが、非常に優れた会社であれば全部持ち合わせていても驚きではありません。ここでは2つの事例を紹介しましょう。少なくとも1つの圧倒的な優位性を備えている必要がありますし、2つか3つあれば優秀です。しかし、皆さんの大半はおそらく1つだけでしょう。

まず1つ目に、自分には創業者の圧倒的な優位性があるかどうか、どうすれば分かるのでしょうか?実際、これらは全て数字と関連しているので、容易に理解できます。「あなたはこの課題を解決できる世界中の10人のうちの1人か?」、「あなたは卓越した専門家か?」と聞かれたら、YCが投資する創業者の99%はこのカテゴリに入りません。「私はGoogleのプロダクトマネジャーです」と言っても、Googleにはプロダクトマネジャーは大勢います。「私はMicrosoftのエンジニアです」と言っても、Microsoftにはエンジニアは大勢います。それはすごいことですが、「この人は他の人より優れた圧倒的な優位性を持っている」と私に思わせるものではありません。例えば、優れたバイオテクノロジーの研究で博士号を取得し、何らかの病気を治療できる特殊な特許を持っているとすれば、創業者の優位性を持っていると言えます。

自分の市場は年率20%で成長していますか。通常、そのような市場でソリューションを開発すれば、自動的に成長するはずです。トレンドに乗っているだけだからです。これがあなたの会社が有する唯一の優位性だとしたら、それは最も弱いものです。その市場にいることは素晴らしいことですが、それ以外の優位性を持っていなければなりません。適切な課題がある市場、その課題を解決したい一連の適切な顧客を見つけたからには、平均以上のことをすべきです。しかし繰り返しますと、停滞または縮小している市場である場合、あなたの会社の長期的存在性は投資家の懸念材料となるでしょう。

次はプロダクトです。これは極めてシンプルです。あなたのプロダクトは競合製品の10倍優れているでしょうか?もしそうなら、あなたは圧倒的な優位性を備えている可能性があり、それは非常に明確であるはずです。あなたのプロダクトを目にした人が、「このプロダクトはこれまで見たものより、はるかに優れている。10倍速いし、10倍安い。」と言うはずです。桁違いでない場合、例えば2倍、3倍程度の違いの場合はどうでしょう。それはそれで素晴らしいことですが、投資家に「これは大成功するな」と思わせるには十分ではありません。10倍優れたプロダクトと自社がそれを持っていることの証明に関しては——スタートアップスクールで今後行う私の講義で価格設定を取り上げます。その講義でコストと価値について説明しますので、「メトリクスや数値、価格設定を使用して10倍優れたプロダクトを検証する方法」を理解してもらえるでしょう。

次はユーザー獲得です。多くの人は、FacebookやTwitter、Googleで多数の広告を打ち、投資家に会ってCAC(顧客獲得単価)やLTV(顧客生涯価値)を説明すれば、自社に持続可能な獲得モデルがあることを証明できると考えます。ここで皆さんに理解してほしいことは、広告によるユーザー獲得が自社の会社の成長を可能にする唯一の方法だとしたら、私はそうした成長チャネルを眉唾だと考えます。なぜなら、自社が有名になった時、例えばあなたが1億ドルの収益を生む会社を作り上げて著名人となった時、その分野で多くの競合他社を呼び込むことになり、あなたの会社の優位性は急速に失われていくからです。BlueApronはこの良い例です。彼らのユーザー獲得は、ほぼ全てが広告だったのですが、それらを利用し尽くして行き詰ってしまいました。創業者は、コストがかからないユーザー獲得の方法を考える必要があります。

そして、私が好む会社、つまり大きな成長を遂げる会社は、口コミで成長が可能な会社です。口コミは成長する手段の大きな割合を占めています。スタートアップの初期段階において資金が無い場合は、「有料広告を使わずに成長すること」をやってみる絶好の機会です。初期段階ではスケールしないことをするよう私たちは教えていますが、これは皆さんが達成すべきことです。「自社にはお金のかからない優位性があるか?」ということです。

そして最後に独占です。ここでの独占とは、片眼鏡のキャラクターで有名な『Monopoly』ゲームのような意味ではなく、皆さんの会社が成長するにつれ、競合他社に負けにくくなっているか、競合他社より強い会社となっているかという意味です。この良い例がネットワーク効果と市場を持っている会社です。「勝者総取り」の傾向にある市場では1社だけが勝ちやすいものです。ネットワーク効果とはつまり、自分のネットワークが拡大するにつれて自社の強み、プロダクトやサービスの価値も高まることです。これは全ての会社が持っているわけではありませんが、これがあれば大きな強みとなります。

信頼

さらに、覚えておいていただきたいのは、その会社を信じられるどうか私が見極めるポイントで、多くの創業者がここでつまずきます。その会社に対する私の信頼は2種類あります。

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1つは、「彼らがそもそも成功するデフォルトとは?」という最低水準の信頼です。「彼らが作ろうとしているものは、そもそも作り出せるのか?」と考えます。これが最低水準の信頼です。作り出すことすらできないのでは話になりません。

ただ私にとって、その疑問は最も重要なものではなく、私の信頼の決め手となるのは——「宝くじに当たりそうだ」という感覚、「彼らは成功すると私が信用すれば、急速に成長するだろう」という奇跡の信頼です。これらは時に非常にシンプルで、皆さんがヘビー・エンジニアリング・チーム、あるいはB2Bビジネスやエンタープライズスタートアップに携わっている場合、デフォルトはそれを作り出すということです。つまり、作り出すことすらできなければ上手くいくはずもないし、私がそれらの検討に多くの時間を費やすこともありません。

私が把握したいのは、創業者がいかに上手くセールスを行い、いかに上手くストーリーを伝え、いかに上手く顧客を納得させてセールスプロセスを完了し、成功を決定付けるかということです。私が求めているのは、創業者がそれらに取り組み実現させなければならないと理解していることを示す証拠です。ですから、そのような会社に対する私の役割は、プロダクトに関して何かをするのではなく、「なるほど、ではさらにこれを証明しましょう」ということに尽きます。それができれば、「彼らは大化けしそうだ」と言われるようになるでしょう。

成功した企業の例

では、簡単な例を挙げます。

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まずYCです。

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YCをスタートアップの良い例として考えたい人は多いでしょう。初めに課題です。

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これを言葉で表現すると、ベンチャーキャピタルに知人がいなければ、創業者にとって資金調達が困難だったということです。YC創設時、創業者はインサイダーとならざるを得ず、それが資金調達のための唯一の方法でした。何とも理不尽でした。そこでソリューションです。Paul Grahamは、「投資先の会社は公募とする。知人がいる必要はない、応募者は私たちにアイデアを語り、自分自身について少々語れば良い。資金を得るにはそれで十分だ」と言っています。

YCは多くの圧倒的な優位性を有しています。

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1つ目は、創業者たちが実に優秀な人物であることです。Paul GrahamはLispやRTMに関するテキストを執筆していたほか、最初のワームを作りました。彼はまるで有能なプログラマーでした。そして彼らは、最初のSaaSであるViawebを設立し、後にYahooに売却しました。彼らはいわば、テクノロジーを評価するエキスパートであり、かつプロセス全体でスタートアップを理解するエキスパートでした。

次に市場です。彼らは、将来の10億ドル企業はテクノロジー企業であり、そこでカギになるのはソフトウェアだと考えました。特に当時のテクノロジー企業の追い風となったのが、ソフトウェア企業の設立をより安価にする、つまり必要とする資金を少なくするムーアの法則で、Grahamは大きな賭けに出ることができました。

次はプロダクトです。創業者は学費を支払い、3カ月のコースを受講し、アドバイスをもらいながら比較的少額の資金で各自のプロダクトに取り組みます。最終的に、彼らは共同スペースで仕事をするのではなく、各自の自宅で仕事をし、様々な投資家にピッチを行います。このアイデアはコネクションを持たない創業者候補にとって非常に有益であり、多くの非常に優れたマインドを持つ人や、その分野に何とか参入しようとしている人が集まりました。

次はユーザー獲得です。皆さんのほとんどが気付いていないのは、PGがYCを立ち上げ適切な人材を集めることができたのは、立ち上げ時に多くのリーチ、つまり支持者が存在したからだということです。彼はテキストを執筆していましたが、ウェブ上で人気エッセイも執筆しており、彼がターゲットユーザーとする多くのハッカーがサイトにやって来て彼のプロダクトを評価していました。彼はウェブサイトを立ち上げて周知させることで、比較的安価でそれらのハッカーを集めることができました。

そして最後に、YC創設時には彼も気付いていなかったのですが、YC卒業生のネットワークが拡大するにつれ、YCはより強大かつ重要な存在となっていきました。

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結果、

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投資した会社は数千、

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創業者は4,000人にのぼり、

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世界有数の企業のCEOとなっている者もいます。

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その中には10億ドル以上の企業が15社以上、1億ドル以上の企業が93社あり、

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YCの時価総額は1,000億ドル以上です。

もう1つ、

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私が立ち上げたスタートアップであるWufooを例に説明しましょう。

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Wufooとはオンラインフォームとアンケートのビルダーです。私たちの場合、問題は、ウェブサイトにおいて何らかのデータを収集する必要があった場合、コードの書き方を学ぶか、そのためにプログラマーを雇わなければならないことでした。そこでソリューションとして考えたのが、見たままのものが作成できる(WYSIWYG)、つまり、非技術系の人でも作成可能なドラッグ&ドロップ型のビジュアルエディタを作るということでした。それができれば、迅速に具体的な課題を解決できるだろうと考えました。

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次は市場です。おかしなことに、創業当初、私たちはTAMを算出するよう命じられましたが、「どんなウェブサイトでもフォームが必要だ。意味が分からない。最終的にフォームを必要としないウェブサイトなんてあるのか」と思っていました。私たちの会社は急成長を遂げることができ、私たちのプロダクトが他のビルダーの直接競合製品より10倍速いことは簡単に証明されました。なぜなら、ドラッグ&ドロップで視覚的に確認できる私たちのプロダクトでは、より速い作業が可能だったからです。

フリーミアムモデルだったWufooは、フォームのカスタム度が高くプログラマーの人件費も非常に安く済むので、伝統的なルートより100倍速いと言えるでしょう。これがユーザー獲得における圧倒的な優位性にもなりました。私たちはブログ開設や支持者の確保にも着手しました。私たちのブログに登録した10万人の開発者から始め、1年にわたり支持者を集めた後に彼らに公開し、これでYCに応募しました。私たちは支持者を集め、その他全てのことが揃っていることを証明しました。

また、ユーザー獲得モデルの他の側面として、これらのフォームは一般のウェブサイトに埋め込むことができたため、ユーザーがWufooのフォームとソフトウェアを私たちに代わって広めてくれる形となり、営業スタッフを雇う必要はなかったことが挙げられます。

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結果、

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私たちのプロダクトは想像し得るあらゆる業界、市場、バーティカル、

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そして数多くの超巨大企業で使用されることになりましたが、

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これを担ったのは比較的少人数のチームでした。

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私たちが買収された時、他社と比較して傑出したアウトライヤーでした。

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平均的な会社はイグジットまでに2,500万ドル程度を調達し、これ(スライドの数字)が平均的リターンです。一方、Wufooが活動期間中に調達した資金はわずか118,000ドルで、リターンはおよそ30,000%でした。

次は皆さんが、課題、ソリューション、自社の圧倒的な優位性に対する答えを出してください。

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これは非常にシンプルですが、自分の話やストーリーを理解するために実際にやってみると、とても勉強になります。「自分の話の矛盾点は何で、どこに存在するか?」を考えてみてください。その次に、「証明すべきものは何か?これを実現させるために取り組むべきことは何か?」を自問してください。

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皆さんが温めているスタートアップのアイデアは、それがなぜ急成長を遂げるかについての仮説です。

次の講義では、自分たちの直感を検証する最初の方法、つまりユーザーとの対話によって検証する方法について説明します。

 

著者紹介

Kevin Hale

Kevin は YC のパートナーです。彼は2006年にY Combinatorによって投資され、2011年にSurveyMonkeyに買収されたWufooの共同創業者です。彼はWufooのデザインの担当で、UXについて広く語っています。Wufooの前に、彼はParticletreeでデザインについて書いていたほか、Web開発に関する雑誌であるTreehouseの主要編集者でした。彼はStetson University のデジタルアーツと英語の学位を持っています。

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:  How to Evaluate Startup Ideas Pt. 1 (2019)

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