スタートアップの顧客インタビュー方法 (Startup School 2014 #16)

Sam Altman
皆さん、こんにちは。本日のゲストスピーカーはTwitchのCEO、Emmett Shearです。TwitchはAmazonに買収され、Emmettは今はそちらに在籍しています。Emmettにはユーザーインタビューを行うポイントを話してもらいます。これは「スタートアップの始め方」のユーザー側に着目した話で、かなり有益な内容になると思います。ようこそ。

自己紹介

Emmett Shear
Sam、ご紹介、ありがとうございます。私がJustin KanとKiko Calendarという最初のスタートアップを始めたのは大学卒業直後でした。この会社は大成功とはいきませんでしたが、そこそこの結果となりました。設立した上で、eBayのオークションにかけて会社を売却しました。スタートアップが迎える結末としては必ずしも望ましいものではありませんよね。

当時はいい時代でした。私たちはたくさんのことを学びました。プログラミングに関するたくさんのことを学びました。

ユーザーのことを聞かなかった一社目

しかし、私たちはカレンダーのことを何も知りませんでした。仲間内にカレンダーを使っている人は1人もおらず、Kikoを経営していた時も実際にカレンダーを使っているユーザーに話を聞きに行くことはありませんでした。

これは最善の措置ではありませんでした。私たちはスタートアップのプロダクト開発に携わっていただけで、ユーザーサイドの話は一切聞いていませんでした。

ユーザーのことを聴く必要がなかった二社目

私たちが立ち上げた2つ目のスタートアップでは、ユーザーの話を聞かずに済む非常に一般的な策を講じました。自分たちがプロダクトのユーザーになることにしたのです。

このアイデアから生まれたのが、Justin Kanの生活を追い掛けるリアリティショーのJustin.tvでした。私たちは自分たちがやりたいと考えるリアリティショーに関するテクノロジーとウェブサイトを開発しました。そして、自ら開発したプロダクトのユーザーとなりました。

多くのユーザーの話を聞かずに済ませる1つの方法は、文字どおり自分たちのためだけのものを作ることです。自分が求めるものや必要としているものは自分が理解しているのですから、誰の話も聞く必要もありません。

しかし、これはスタートアップ立ち上げの方法を制限するものでもあります。スタートアップの大半は、プロダクトを使う人のために作られているわけではありません。

そうしたやり方で、自分と全く同じものを欲しいと思う集団の代表となれることもありますが、それは非常に幸運に恵まれた場合で、往々にして日の目を見ないサイドプロジェクトになります。

私たちはしばらくJustin.tvを続け、実際にかなりの成功を収めました。世の中にはインターネットで自分の生活の生放送をするという私たちと同じことをしたい人がいたのです。しかし、大成功には至れなかったJustin.tvの課題は、私たちが、当初のTV番組を超えるものの作り方を理解していなかったことでした。

私たちは優れたプロダクトを作りました。24時間・週7日のライブ放送で自分の生活を見せるリアリティショーを運営したい人向けには、そのためのウェブサイトを作りました。

私たちはユーザーが求めるとおりのものを作りましたが、それ以上のことをやりたいと考えていました。より幅広い人たちやユースケースにこれを開放したいと考えていましたが、自分たちがユーザーではなかったためにそれを理解する先見性がありませんでした。

顧客の声を聴き始めた三社目 ―― Twitch

そこで、私たちはJustin.tvを核としてビジネスを展開することにしました。新たな方向に進む必要があるという結論に至ったのです。

私たちは多くの有益なテクノロジーを開発してきたと思っていましたが、大きく成長させるためのユースケースを明確化していませんでした。

そこで有望な方向性として考えたのが、モバイルとゲームの二つでした。私は社内でゲームに関するイニシアティブを率いていました。このゲームに関して、私たちがそれまで手掛けていたこととまったく異なる取り組みとして実行したのが、実際にユーザーの話を聞くということでした。

というのも、私はゲームのプレイ動画を見るのが大好きだった一方、私も社内の誰もゲームの配信に関して全く知識がないとはっきり分かっていたのです。企画内容に興奮していた私は、このビジネスには市場が存在すると思いました。その当時、ゲームのプレイ動画を見るのがいかに楽しいかということは、まだ世間一般では認知されていませんでした。

この中でゲームプレイ動画のオンライン視聴を知っている人は手を挙げてください。これは本日の講義で説明する重要な情報ですので、知らない人は是非調べてみてください。

大事なポイントは、私は「これは面白いぞ」と思いましたが、ある重要なことについては何も理解していなかったということです。それは、スタートアップが手掛ける配信向けのコンテンツを、実際に取得するということです。

私たちは非常に多くのユーザーインタビューを行いました。多くの人の話を聞き、そこで得たデータは、Twitchのプロダクト機能のあらゆる意思決定を行う上で、以後3年にわたり中核となりました。

私たちはユーザーの話を聞き続け、実際にユーザーの話を聞く専門の部署も作りました。Justin.tv時代にはそうした部門は存在すらせず、最も重要なユーザーに話を聞くことを業務とする者は1人もいませんでした。

ユーザーの話を聞く意義

ユーザーの話を聞くということの本質的な意義を簡単に説明しましょう。

私たちは、最も重要な人物は配信者(配信者)であると考えました。市場を精査して人々が特定のストリームやウェブサイトを視聴する理由を考えました。そして、ユーザーがフォローしているのはまさにコンテンツであると理解したのです。自分が大好きなコンテンツがあれば、配信者が付くのです。

これがユーザーインタビューに関する実に重要なポイントで、誰に話を聞くかはどんな質問をするか、そこから何を得るかと同じくらい重要です。

様々なユーザーに話を聞く時に視聴者だけに話を聞いていたら、配信者に話を聞く時とまったく異なるフィードバックを得ていたでしょう。配信者に話を聞くことで、彼らのためのプロダクト作りに関する洞察を得られました。そして、それは戦略的に正しいと判明しました。

自社プロダクトのターゲットユーザーは誰か、ターゲットユーザーとすべきは誰かを理解する秘訣をお教えしたいところですが、そんなものはありません。誰のためのプロダクト作りかを理解するには、考えに考え抜いて自ら判断するしかありません。

演習

では、インタラクティブな演習をやってみましょう。今から皆さんには様々なアイデアを出してもらい、その中から1つ私が選びます。皆さんにはユーザーインタビューというプロセスの第1段階に取り組んでもらいます。

誰に話を聞くかを選ぶ

自分が何を作るべきかを理解するためには、どんな人に話を聞きますか。話を聞く人をどこで探しますか。

ここで使うアイデアは、講義に特化したノートアプリにします。つまり、最新のノートアプリはまだ十分な完成度に達していなく、ユーザーの体験をより良いものとするノートアプリを作りたいと考えています。

そのようなアプリがあれば、授業中のノート取りがより楽になるでしょう。連携機能を搭載するかもしれませんし、何かにフォーカスするほうがもっとよいかもしれません。マルチメディア対応など、可能な限りの機能を入れたものにします。このようなアイデアです。

では、制限時間2分で、「このアプリに関して何を聞くべきか。どんな機能を入れるべきか」ではなく、「誰に話を聞くか。このアイデアの良し悪しに関するフィードバックをくれそうな人は誰か」を考えてください。

頭の中で思い浮かべ、自分が話を聞く相手を5人書き出してください。話を聞きに行く5つのタイプの相手と、その中で最も重要と思われる相手を書き出してください。参考資料の類はありません。自分の頭で考えることです。

いいですね、キーボードを叩く音が聞こえてきました。家で聞いている人も同じようにやってください。

誰に話を聞くかを考えるのは、大半のスタートアップが最初に考える問題です。自分のユーザーは誰でどこにいるのかという質問の答えを考える必要があります。

皆さんが普段こうした問題を考えると比べれば、時間は短いでしょう。これは非常に難しい問題で、どこの誰に話を聞けばいいか見極めるのは実に難しいものです。

では、プロダクト作りとユーザーインタビューの実施について超短縮バージョンで説明しましょう。

では、誰に話を聞きに行くか、どなたか発表していただけますか。その回答をもとに話を進めましょう。

学生からの発表

受講者1
私はまず大学生に話を聞きます。私たち大学生は多くの講義に出席しているからです。具体的には、異なる科目を専攻している学生に話を聞きます。英文学専攻と数学やコンピュータサイエンス専攻ではノートの取り方に違いがあるかを調べます。

Emmett Shear
多くの大学生に話を聞くということですね。大学生に関して特定のサブセットを選ぶのですか。全ての大学生に話を聞くのは避けたいですね。

受講者1
大学生に絞って、専攻科目で分類したいと思います。ある人はノートを多く取り、ある人は書き留める程度など、専攻が異なればノートの取り方も異なるという考えは理に叶っていると思います。

Emmett Shear
スタートとしては実に良いですね。大学生を消費者として考えているのなら特に話を聞きに行きたいユーザーと言えます。消費者としての大学生に話を聞けば、ノート取りの習慣や何が嬉しいかについて多くの情報が得られるでしょう。

大学生向けのプロダクト販売に関する課題の1つは、大学生は実はあまりお金を使わないということです。皆さんのような大学生にお金を使ってもらうのは実に難しいことで、学校関連のことに支出してもらいたい時は特にそうです。大学生は教科書さえ買いたがりません。おそらく全員が小切手かデビットカードを使うか、友人から借りるでしょう。

つまり、学生のみに話を聞こうとする場合に見落とされていると思われることの1つは、このアプリにとって最も重要なのは誰かということです。大学向けのノートアプリなら、実際にノートアプリを買う可能性が最も高いのは大学の事務でしょう。

おそらくこのソフトウェアは学生を中心に販売すべきですが、学校の事務員も顧客として含めるべきです。これは1つのアプローチかもしれません。

大学生に話を聞きに行って、結局、彼らは実際にはノートアプリを購入しないことが判明するだけのような気がします。もちろん、購入する可能性もあります。その場合は私の間違いということになります。だからこそ、ユーザーの話を聞く必要があります。

ほかのグループにも聞いてみる

しかし、他のグループも試す必要があります。私なら、大学のITアドミニストレータにも話を聞きに行きます。これは非常に有望な分野です。大学生の親たちに話を聞くのもよいでしょう。

子供の教育にお金を使うのは誰ですか。お金を使いたがるのは誰ですか。初めて大学に行く大学一年生の子供を持つ両親ですね。子供を大学から脱落させないためには、このアプリを使って子供の生産性を高める必要があります。

必ずしも明確なユーザーではないものの、自社アプリの成功に非常に重要となる可能性がある多くのグループが実在します。

スタートアップの初期は、すばらしいと思えるこうしたアイデアがある場合は、可能な限り幅広いグループを考える必要があります。1種類の人だけに話を聞いてはいけません。自社プロダクトに貢献してくれる可能性がある様々な人に話を聞く必要があります。

インタビューのシミュレーション

では、この中の1人にご協力いただいて、ユーザーインタビューのシミュレーションをやってみましょう。何を作るべきか、このノートアプリにどんな機能を盛り込むべきかを理解するために大学生に話を聞きに行くという想定です。大学生の役を誰かにお願いできませんでしょうか。いかがですか。

受講者2
こんにちは、Stephanieと言います。

Emmett Shear
こんにちは、Stephanie。

受講者2
よろしくお願いします。

Emmett Shear
こちらこそ、ユーザーインタビューにご協力いただきありがとうございます。あなたが普段どのようにノートを取っているか教えてください。今日はどのようにしていますか。

受講者2
私は色々な方法でノートを取っています。スピードと効率という点、そして後で見返せるという点では、私にはノートパソコンが使い易いです。ノートに取る内容は主にテキストベースです。例えば歴史の講義など一部の講義では、テキストとしての記録が大半です。しかし物理学の講義では、様々な角度の線や複雑な図表を記録する必要があります。

Emmett Shear
今日の講義にはどんなソフトウェアを使っていますか。

受講者2
紙とペンだけです。

Emmett Shear
紙とペンですか。2つの道具を組合せてノートを取っているわけですね。そして、コンピュータを使う時もあると。

受講者2
はい。

Emmett Shear
そうして自分が取ったノートを実際に見返すことはありますか。正直にお願いします。ノートを見返すことはありますか。

受講者2
紙とペンで記録したものはあまり見返しません。しかし、ソフトウェアベースのものはします。紙とペンの記録に比べてアクセスが簡単で、共有する、あるいはコラボレーションが簡単なほか、クラスメイトや友人のノートを統合する場合もあります。

Emmett Shear
今日の講義をコンピュータでノートを取るとしたら何を使いましたか。

受講者2
Google ドキュメントとEvernoteです。

Emmett Shear
2つを同時に使う理由はなんですか。

受講者2
自分だけのための記録ならEvernoteが簡単です。Evernoteでも共有することは可能ですが、Google ドキュメントのほうがもっと簡単です。友人がすでにGoogle ドキュメントでフォルダを作っていた場合、そのフォルダに追加するだけで済みます。一人で使う場合は、Evernoteを使うことが多いです。

Emmett Shear
ノートを取るにあたっては、随分コラボレーションしているようですね。

受講者2
はい、色々な情報をまとめたいと思っていますので。

Emmett Shear
それについてもう少し話を聞かせてください。あなたは他の人のノートの必要なところをまとめるということですか。あるいは、学期末に見直すのは主に自分が取ったノートですか。どんなふうにまとめているのでしょうか。

受講者2
主に自分のノートです。というのは、私は物事の整理整頓に非常にうるさい人間だからです。デザインやフォーマット、色にいたるまで、非常にこだわります。使用するフォントは勉強方法に大きく影響します。ですから、他人のノートを統合した後もノートをカスタマイズすることが多いです。

Emmett Shear
つまり、他人のノートを活用することもあるけれど、自分が使い易いように手を入れるわけですね。EvernoteのメモとGoogle ドキュメントのメモと紙とペンで書いたメモがある場合、学期終了後またはセメスター終了後にこのどれかを見返すことはありますか。

受講者2
講義のノートやメモはそれほど見返すことはありませんが、例えば話題のために記録していたものは、面接の準備など、忘れないようによく見返します。そういう記録は後日役に立ちますので。

Emmett Shear
興味深いですね。それについてもう少し話を聞かせてください。あなたは講義中以外にもノートを取っているということですね。

受講者2
私は要点をまとめるためにノートを取っています。授業以外でも、今日のような講義などでインスピレーションを感じた話も記録しておきます。イベントに行って誰かに会う予定の時は、ノートを取っておけば何を話したか、すぐに思い出せます。

Emmett Shear
すばらしいですね。いつもの私なら細部をもっと掘り下げてゆくのですが。お話を聞いていて、どんな人とコラボレーションしているのか、ノートのボリュームはどれくらいか、ノートを取るのに費やす時間は、など私の頭の中には聞いてみたい質問が沢山浮かんでいます。

彼女の現在の行動について掘り下げたいところですが、時間的な問題もありますし、一人の方のノート取り習慣の詳細を皆さんに永遠に聞いていただくわけにもいきませんので、次の話題に移るとしましょう。Stephanie、ありがとうございました。

受講者2
ありがとうございました。

Emmett Shear
こちらこそ。

アプリの中身の話題はしない

さて、ここまでの話を聞いていた皆さんは、アプリの中身を話題にしているのではないことにお気付きでしょう。

私は機能面にはまったく興味がありません。Google ドキュメントやEvernoteの具体的な機能セットを知りたいわけでもありません。実際にどんな機能が使われているかについては少し触れるかもしれませんが。

彼女が積極的に他者とコラボレーションしているとしたら、どのように行っているのでしょうか。彼女の話では「フォルダを使う」という興味深いフレーズがありました。私にとって実に興味深い点です。

こうしたインタビュー第一弾を行う時に大事なのは、必ずしもユーザーフローの最適化について質問する必要はないということです。プロダクトのスペックについても質問しなくてもよいということです。ユーザーは自分が求めているものは自分で理解していると思っているため、そうした質問は本題から逸れるおそれがあります。

皆さんはFordの馬なし馬車の話を聞いたことがあるでしょう。顧客の「もっと速く走る馬車がほしい」というニーズに対し、実際のソリューションや機能の改善で応えるのではなく、顧客の潜在的なニーズ、つまり「速く快適に移動したい」というニーズをとらえなければならないということです。

機能に関する質問は避ける

機能に関する質問はできるだけ避けたほうがいいでしょう。相手の言うことは圧倒的な真実だからです。機能に関して求めてくる真のユーザーがいたら、その人に対し、NOと答えるのは非常に困難です。なぜなら本当にその問題を抱えている人がいるからです。

彼らは「私のためにこの機能を追加してください」と言ってきますが、皆さんが多くの人の話を聞いて相手が抱える問題を理解し始めるにつれ、それが本当に有望な分野かどうかが分かるようになります。

私がユーザーインタビューで聞いたことからすると、問題があるとは必ずしも断言できません。少なくとも、まったく新しいプロダクトを作るに値する大きな問題ではないかもしれません。作業を妨げる大きな障害が多くあったわけではありません。何らかの意図がない限り、私はこれを異常なしの兆候と捉えるでしょう。

異質性の高い人たちの話を 6 ~ 8 人聞く

これは必ずしも街で多くの人の話を聞き続けなくてもよいという意味ではありません。最初の人から何も得られないからといって、実際に問題を抱えている多くの人がいないという意味ではないからです。

一般的には6人から8人に話を聞けば十分な情報が集まります。しかし、多くの新情報を発見する可能性は低いでしょうから、異なる極にいる人々に話を聞くのが重要になるのです。

異質性の高い人の話を聞くことです。Stanford大学の学生6人の話を聞けば、高校生6人、あるいは6人の親に話を聞く場合とまったく異なる情報を得られるでしょう。

既存のソリューションに一つだけ機能を追加するとしたら?

それでも、一連のインタビューに基づいて様々なアイデアを創出できます。皆さんは今、ノートの取り方に関する情報を持っています。そして、何かすばらしいものを作る幾つかのアイデアを持っていました。

Google ドキュメントに1つだけ機能を追加するとしたら、どんな機能にしますか。このような新プロダクトの場合は、まずどこに向かうべきかと考えるのが良い方法かもしれません。

彼らは今現在このプロダクトのヘビーユーザーであり、彼らの体験を1段上のものにするにはどうすればよいのでしょうか。この人にとって実に刺激的な何か、一歩進んだ体験をさせる何かです。それがどんな機能かを制限時間2分で考えてください。

Stephanieの話をもとに、彼女が現在活用している複数人がコラボレーションでき、連動しているGoogle ドキュメントのワークフローから、より有用で、彼らが現在のプロダクトから乗り換えたくなるような機能を考えてください。

Google ドキュメントの機能に何らかの機能を追加した自分の新プロダクトに乗り換えてもらうにはどうすればいいでしょうか。

すばらしいですね。では、3人目の方にご協力いただきましょう。

受講者3
彼女がEvernoteを使うのは、それが付箋タイプのノートだからです。彼女は様々なことを考え、細部にこだわります。私が思うに、Google ドキュメントはドキュメントであってより小さなノートではありません。

すばらしい機能と言えるのは扱い易くドキュメントを使わなくて済むドライブのモバイル版ではないかと思います。そういうものがあれば役立つと思います。

Emmett Shear
なるほど、すばらしい洞察です。これはまさに先ほどのユーザーインタビューから得られた鋭い洞察の1つです。

皆さんは、今、アイデアを持っています。ユーザーからのフィードバックがあります。では、コラボレーションやグループという側面を備えながら、より小さくてワンオフのメモ機能を備えたGoogle ドキュメントが出てきたらどうしますか。メモ取りをより重視したプロダクトが出てきたらどうしますか。

検証をする

目下の課題は、こうしたアイデアが思いつけば、それで十分か、ユーザーが実際に乗り換えてくれるかということです。

これを検証する方法が2つあります。1つは、短期間でのプログラミングが可能であれば、実際にプロダクトを作って世間に発表して反応を見ることです。これで上手くいけば、問題にアプローチする最良の方法となります。

しかし多くの場合、少しだけ改良されたその些細なことを実際に作り上げるには3か月かかる可能性があります。ですから、作り始める前に外に出て、自分のアイデアをさらに検証する必要があるのです。

そのアイデアをもとにプロダクトのコンセプトを図式化できます。ワークフローを考えて、誰かに見せることができます。

その時に皆さんがしてはならないことの1つは、機能について望ましいアイデアを尋ねることです。「これを見てわくわくしますか?」などと尋ねてはいけません。なぜなら、機能に関して「この機能はいいと思いますか」と尋ねてユーザーから得るフィードバックは大体「ええ、素晴らしいですね」となるからです。

ところが、実際にプロダクトを作ると、それを優れたアイデアと表したユーザーも実際には誰一人乗り換えないことがわかります。ですから、「この機能は本当にいいと思いますか」と尋ねてはいけません。

最低限の開発で検証する

Sam Altman
ユーザーへの質問と実際の完成品を製作する間に、最低限できることは何ですか。

Emmett Shear
「これはいいと思いますか」と実際に話を聞きに行けない時に自社プロダクトを検証するために最低限できることですね。それは個々の機能によって大きく変わってきます。

通常は、採り得る最善の策は何かをくっつけてみることです。Google ドキュメントに何かを付け加えるというアイデアの場合は、Google ドキュメントを作り直すのではなく、メモ取りの機能を付け加えるのです。

ちょっとした新機能を加えたブラウザ拡張機能を開発する方法を模索し、それがユーザーにとって実際に有用なものかを見極めるのです。その場しのぎの方法を探しても、実際に人前で見せることはできないために極めて困難になるのがオチです。

プロダクトを売ることが最も確実な検証法

実際にユーザーにお金を出してもらうというより大きな課題に関しては、話はもっと簡単です。プロダクト販売の段階にあるなら最高です。販売はこの課題の特効薬です。相手にクレジットカードを取り出させることができれば、相手が実際にその機能に興味を持っていることは確かです。

これが自社プロダクトを検証する最も確実な方法の1つです。外に出て、実際に顧客に前払いを約束してもらうのです。

学生向けノートアプリの開発における課題は、比較的それが困難であることです。自分のアイデアが販売前提でない限り、体験版は無償にならざるを得ないでしょう。

相手にお金を出させることで学べることは、必ずしも多くありません。しかし、外に出て行って相手に「支払います」と言わせることができれば、有償テストもすばらしいものになります。相手が自社プロダクトに本当に魅力を感じているかが明らかになるからです。

5ドルで魅力を感じなければ、そのプロダクトには大きな魅力はないということでしょう。

Twitch の事例

最後に、Twitchの事例をお話ししましょう。皆さんに見ていただきたいスライドを何枚か持ってきました。

ユーザーからの代表的なフィードバック

f:id:foundx_caster:20200412222919j:plain
これらはTwitchの代表的なフィードバックの抜粋です。

26ページに及ぶフィードバック文書がありますが、それを全部読むのは、少々退屈だろうと思います。話を聞いた多くの人のフィードバックは似ていたので、今日の講義用に要約しました。

Twitch立ち上げにあたり、私たちはJustin.tvで活動していた多くの配信者を訪ね、配信でよかったことは、配信を始めた理由は、配信の内容は、生活の中で配信以外にしていたことなど、彼らの配信体験を尋ねました。

自社プロダクトについてユーザーに話を聞く時、相手は機能について非常に詳細な回答をしてくれます。なぜなら、彼らはその機能にまつわる問題を抱えているからです。

その時、こちらは相手の真意を読み取らなければなりません。彼らは「チャットルームの禁止リストを消去する方法があるといい」といったリクエストをします。私たちのサービスのチャットルームでは非常に特殊な問題があったため、これは実際に非常によくあるリクエストでした。ハイライト作成後のタイトル編集機能に関するリクエストもあるでしょう。これらはずっと言われ続けていたことでした。

配信者へのインタビューでは、Justin.tvのゲームプラットフォームの配信者12~14人に話を聞き、全員からフィードバックを得ました。「競合他社のサービスには投票やスクロール文字などのすばらしい機能が全て搭載されている。チャットも自分仕様にカスタマイズできる」といったものです。

一方、「Justin.tvには広告がない。トロール(荒らし)を排除できる」といった肯定的フィードバックも幾つかありました。チャットや視聴者とのインタラクティビティに関する問題が沢山ありました。これらはどれも実に興味深いものでした。

これがJustin.tvの配信者が私たちに求めていたものであり、彼らが私たちのプロダクトを使う上で苦痛を感じていた部分だったのです。私たちが行ったことは、ユーザーと会ってこれらの問題を解決することだったと皆さんが思っているなら、その理解は正しいとは言えないでしょう。

自社のサービスを利用している人々はすでにこうしたあらゆる問題をあえて我慢していて、いわばこれらはおそらく最大の問題ではありません。ユーザーが禁止リストやタイトルは編集可能という点、チャンネルからトロールを追い出す方法がないという点にあえて目をつぶってサービス利用を続けているのなら、それらは大きな問題ではない可能性があります。

そこから本当に重要なポイントが明らかになります。そして、ユーザーが不満に思っているレベルをグループ別に比較する必要があります。

競合製品ユーザーからのフィードバック

f:id:foundx_caster:20200412223420j:plain
こちらは競合配信者に関するフィードバックです。実に興味深いこれらのフィードバックの多くは、他の配信プラットフォームを利用している人から集めたものですが、彼らは複数の人間を同時に自分のチャンネルにスイッチできる機能を求めていました。

また、Justin.tvにはレベニューシェアプログラムがないという不満も見受けられました。彼らのフィードバックには、このゲーム配信からいかに生計を立てようとしているか、いかに収入を得たかったかという話も多く含まれていました。動画の安定性に関するフィードバックもありました。当社のサービスは欧州では不評でした。世界的に動画の安定性は実に大きな問題で、当社と他社のサービスを比較すれば違いは明白でした。

当社のサービスを利用していない人々が重視していたのは、当社のサービスを利用している人々のそれとまったく異なっていたのです。

私たちは、あまりの酷さに当社のサービスを使う気にもならない、という問題にフォーカスしました。私たちはそれらの大半を実際に考えてもいませんでした。なぜなら、当社のユーザーベースはたまたま教育水準が高く、あらゆる選択肢を知っていたからです。彼らの話を聞くことは、彼らがおそらく4つのサービス全てを試していて実際に意見を持っていることを意味していました。情報に通じていてこの世界をよく理解しているユーザーがいることはすばらしいことです。

無消費ユーザーからのフィードバック

f:id:foundx_caster:20200412223716p:plain
これ以外で私たちが行った重要なことは、配信者でない人々に話を聞くことでした。当社または競合他社のサービスを利用していない人々全員に話を聞いたのです。

色々な意味で、彼らは最も重要な人々でした。自社のソフトウェアが、誰もが使っている検索エンジンで乗り換える非ユーザーがいない可能性があるGoogleのようなプロダクトでない限り、競合他社に話を聞くことは短期的な勝利につながります。

ゲーム配信のケースでは、ほぼ全員が非ユーザーです。競合している人々の大半は非ユーザーです。彼らは以前に自社のサービスを利用したことがなく、彼らが言うことは実際に最も重要となります。彼らが言うことこそ、現状の機能での自社の市場規模拡大を妨げているということです。

競合他社に注目して彼らのプロダクトを使っている人々に話を聞くだけでは、ビジネスの拡大は望めません。それでは自社の市場規模拡大を推進する方法を学べません。話を聞く必要があるのは、これらのプロダクトやサービスを試そうともしていない人々、それらについて考えたことはあるかもしれないが深い関心を持っていない人々です。

彼らからは「自分のコンピュータは速度が十分でない」、「私は次のトーナメントに向けて1日12時間のトレーニングをしている」、「完璧な動画を作り、編集するのが好きで幾つかの動画をYouTubeへアップロードしている。そして私はライブストリーミングをやらないし、そうした世界に入りたいとも思わない」という声が集まりました。

韓国ではこれは大きな問題になります。当社の戦略が大きなトーナメントで放送されたら、私たちは最初からやり直す必要があります。まったく新しい戦略を考え出す必要があります。

私たちが最も避けたいのは、試験段階を放送されてしまうことです。冗談ではないですよね。この問題は次の大きなトーナメントで私たちを苦しめることになるでしょう

これは当社にとって、ユーザーにこの点を克服させる方法を理解するための大規模なアウトリーチプログラムとなりました。私たちは人々にコンピュータを提供したほか、ゲーム配信用ソフトウェア企業と協働して配信ソフトウェアの開発者をサポートしました。

そして、ゲームやプラットフォーム向けの配信機能の開発を始めました。XboxやPlayStation 4向けの配信機能の開発を始めました。この問題を克服する必要があったからです。これらが配信を行う上で注目した3大グループでした。

フィードバックからインサイトを引き出す

フィードバックを総合的に検討して見えてきたことは、作るべき機能ではありませんでした。なぜなら、投票機能、子供用アカウントの作成機能といったユーザーが求めていた機能の大半を私たちは開発していません。

重要だったのは、ユーザーが達成しようとしている目標でした。

彼らが求めていたのはお金でした。さらに、安定性、品質、そして世界中の視聴者に対するユニバーサルアクセスでした。

これらにフォーカスすることにした私たちは、社内のほぼ全てのリソースをインタビューで誰も言及していなかったこと、実際の問題解決につながることに投入しました。これが成功と判断できたのは、開発過程の私たちが以前インタビューした人を訪ねて、「配信でお金を稼ぎたいという皆さんの夢を実現させるために、このサブスクリプションプログラムを作りました」と言えたことでしょう。

これは思いがけないことでした。なぜなら、大半の人にはそうした経験がなかったからです。

彼らが「あなたの会社のプロダクトに〇〇の機能があれば最高ですね」と話したその1か月後にはプロダクトに〇〇の機能、あるいは少なくとも彼らが提起した問題を解決する機能が搭載されていました。

最初に当社プロダクトに乗り換えてくれたのは、ユーザー調査で話を聞いた人々でした。彼らはこの件に最も感激していた人々でした。すばらしいですね。ユーザーの代表となる人々、中小の有名配信者をピックアップしたことで大きな成功を収めました。

私たちがこだわったのは彼らユーザーの懸念に対処することで、これはJustin.tv時代の問題に対するアプローチとはまったく異なるものでした。

Justin.tvでこれを試した時、私たちは膨大なデータに目を通しました。Google アナリティクスやMixpanel、社内のアナリティクスツールを活用した分析に気が遠くなるような時間を費やしました。

こうした作業から、ユーザーのサービス利用法、トラフィックの起点、フローに関する視聴完了率を把握することはできます。私はデータを見る必要はないと言っているわけではありません。しかし、データは自分が対処すべき課題を教えてはくれません。

Justin.tv時代の私たちなら、これらのアイデアを誰かに話を聞かずに思いつき、十中八九失敗していたでしょう。実際、これはユーザーインタビューによるフィードバック収集で失望させられることの1つで、多くの人がユーザーインタビューをしない理由の1つだと思います。なぜなら、ほとんどの場合、自分のお気に入りの機能に関する否定的な話を聞くことになるからです。

こうした優れたアイデアを持っていて、ユーザーの話を聞いても、実際にそれを求めている者は1人もいないと判明するわけです。ユーザーが実際に関心を持っているのはまったく別のことであり、こちらが重要と思っていたことにはまったく興味を示しません。

これは少々辛い状況ですが、その機能をリリースして4か月、その機能を使いたとい考える人が誰1人出てこない時の辛さを考えてみてください。

私の講義はこれで終わりです。質問がある方はどうぞ。

Q&A

インタビューで最も失敗することは、プロダクトを見せること

受講者4
スタートアップがインタビューで最も失敗することは何だと思いますか。スタートアップの大半はインタビューを全くしませんが、インタビューをするスタートアップが犯す最も一般的な失敗は何ですか。

Emmett Shear
最も一般的な失敗は相手にプロダクトを見せてしまうことです。自社プロダクトを見せてはいけません。それは機能について話すようなものです。相手の頭にあることを突き止める必要があります。相手の頭に何かを植え付けることは避ける必要があります。

もう1つは、自社プロダクトの方向性について尋ねることです。自社プロダクトへのサブスクリプション追加の必要性を考えている場合は、「サブスクリプションにお金を払いますか」、「この機能を使いますか」と尋ねることです。

世間の人が犯すもう1つの大きな間違いは、聞くべき人ではなく聞ける人に話を聞いてしまうことです。自分のフォーラムの既存メンバーは、非常に話を聞き易い特定のユーザーです。プロダクトに関するフォーラムが存在する場合、アクセスし易いフォーラムメンバーに話を聞いてしまいます。

私たちは、身元特定情報の入手や相手の素性の把握に何週間も費やしてから話を聞きに行っていました。これはメッセージングをサポートしていないサイトだったため、相手と交流する明確な方法はありませんでした。

そこで、多くの時間をかけて伝手をたどり、それらのユーザーを見つけ出したのです。なぜなら、話を聞き易い人だけに話を聞いていては最良のデータを入手できないからです。

幸いだったのは、私たちが話を聞きに行ったほぼ全員が自分の考えを聞いてもらえると喜んでいたことです。そういう人たちなら、実際に会って様々なことを話してくれるでしょう。

社員の合意を取り付ける方法

受講者5
社員の賛同を得るためにどんな苦労がありましたか。あなたは「私が会社のトップだ。自分の命令どおりにやれ」と言える立場ですが、おそらくそれは物事の進め方として最善ではないと思います。

Emmett Shear
良い質問ですね。社員に向かって「ユーザーの話からこういうことが分かった。こういうものを作る必要がある」と言っても、社員を従わせるのはかなり難しいです。なぜなら、社員はあなたのことを信用しないからです。

ですが、社員にインタビュー内容を教える良い方法があります。私がお勧めしたいのはインタビューを録音することです。録音しながらのインタビューであれば、少々面倒で会話への集中の妨げとなるノート取りもしなくて済みます。

また、後で社員に聞かせることもできます。社員に全てを聞かせる必要はありませんが、〇〇という理由から〇〇を作る必要があると社員に説明する時に録音を聞かせることができます。

これは、自分たちが作るべきものは何かという社員の考えに影響を与える上で効果的な方法です。

SkypeでのインタビューはOK、メールでのインタビューは避ける

受講者6
インタビューの録音というお話がありましたが、メールではなくSkypeでのインタビューを試みたことはありますか。

Emmett Shear
Skypeは絶対に必要です。他に方法があるなら、メールでのインタビューは避けるべきです。なぜなら、メールでのインタビューはインタラクティブでないからです。

最も興味深いことを聞けるのは、「興味深いですね、もっとお話を聞かせてください」と相手に言える時です。そうなるとあなたが予想してもいなかった話を聞くことができます。

こちらも探偵モードになる必要があります。探偵モードとは、「それは興味深いお話ですね、もっとお話を聞かせてくれませんか」と話を進めることです。人は沈黙を好まないため、空白を埋めるために話し続けます。

Skypeまたは対面でのインタビューが良い点は、インタラクティブなフィードバックを得られること、相手からより多くのことを引き出せることです。

基本的に、メールでのインタビューは役に立ちません。対面またはSkypeでのインタビューは録音もし易いです。インタビューの際は、録音の可否を必ず相手に確認しください。

相手の同意なしの録音は失礼にあたりますが、相手がユーザーインタビューに快く応じてくれる場合は、おそらく録音も許可してもらえるでしょう。

海外の顧客インタビュー

受講者6
海外市場についてはどうお考えですか。韓国には多くのユーザーがいるというお話でしたが。

Emmett Shear
これは実に難しい話です。今日に至るまで、Twitchは非英語圏諸国よりも英語圏諸国で成功を収めています。その大きな理由は、私たちは英語圏諸国の人々の話を聞いてそのニーズを把握することにより長けているからです。その他の国々に関してはまだ詰めが甘い部分があります。

その対策として以前に行ったのが、韓国語を話せる人を採用して通訳してもらうことでした。そして、英語と韓国語両方を話せる人の中から代表的人物を見つけて彼らの話を聞くことで問題を解決しようとしました。

しかし、問題はどれだけ頑張っても代表的サンプルを得られないことでした。彼らが流暢な英語の話し手であるという事実は、彼らは流暢な英語を話さない全ての人々の代表者ではないことを意味します。これは難しい問題であり、母国での市場確立がより容易であると世間の会社が判断する所以です。海外ユーザーの話を聞くことは実に困難です。

ユーザーへのチャネル

受講者7
ユーザーに接触するためにどんなチャネルを使いますか。有償インタビューを行ったことはありますか。

Emmett Shear
ユーザーへ接触するために私たちが利用したチャネルは、オンサイトのメッセージングシステムです。大半のウェブサイトは、ユーザーと連絡を取る方法が備わっています。

別のウェブサイトの認識可能ユーザーの場合は、そのサイトのメッセージングシステムを使って「初めまして、あなたのストリームを拝見していました」、「あなたの使用状況について幾つか質問させていただきたいのですが、Skypeでお話しできませんか」などと連絡します。それらの相手がどこにいるかも調べます。

そうした人々の多くは同じイベントに参加するため、イベントで会うこともあります。イベント中にユーザーインタビューを行うことはありませんが、顔見知りになって名刺交換をし、後日連絡を取ります。私たちは有償のユーザーインタビューをすることはあまりありません。

問題を解決しようとしている人と異なり、その問題を気にしていない人間を相手にしても、おそらくそれは見当違いの努力です。これまでユーザーに話を聞いてきた中で、無償ということで問題となったことは一度もありません。

フィードバックツール

受講者7
オンサイトのユーザーフィードバックツールについてどうお考えですか。

Emmett Shear
これはユーザーフィードバックの全く別の方法で、実に重要です。質問は、新プロダクトがある時に実際に売れるかどうか知りたいということですね。消費者にプロダクトを見せて、相手が使うかどうか見るわけです。

これは本当に、本当に重要です。発売前に間違ったモノづくりをしたかどうかが分かるのですから、すばらしいことです。しかし、このプロセスは自分のプロダクトに潜む問題を解決する手助けをしてくれるだけで、何を作るべきかは教えてくれません。

一般的に言えば、これは私たちが収集していたユーザーからのフィードバックとは違うものです。こうしたプロセスで得るフィードバックはすばらしいですが、データ主導のアプローチに似ています。相手がこのフローから外れる理由を知ることはできますが、自分が本当に解決すべき問題を知ることはできません。1人の人間として彼らが関心を寄せていることは何でしょうか。

スタートアップにとってこうしたアーリーステージでのユーザーインタビューは非常に重要であり、フォーカスする必要がある点です。私たちはオンサイトのユーザーインタビューは一切行わず、ほとんどは電話かSkypeでのインタビューでした。

優先するべきグループ

受講者8
様々なフィードバックをくれるグループの発見に関して、一番にフォーカスすべきグループはありますか。

Emmett Shear
持てるリソースは非常に限られているという点から考えて、私たちは競合プロダクトのユーザーにフォーカスしました。彼らはすでに私たちが必要とする行動に興味を持っており、進んでやってくれることが分かっていたからです。

そのため、私たちがすべきだったことは彼らを説得して乗り換えさせることで、これは新たな行動を生み出すよりも遥かに簡単です。私たちがこれを行った理由は、短期的勝利を収める必要があったからでした。

Justin.tv内で私が立ち上げたゲームプロジェクトは、前月比25%の成長が毎月続いていなければ潰されていたでしょう。つまり、短期的成長にフォーカスしてユーザーを直ちに獲得する必要があったのです。この戦術は概して成功と言える結果を残しました。

ゲーム業界の動きについて

受講者9
当初のゲーム業界はバラバラで団結も見られませんでしたが、現在は大きく変わってきています。最初は配信者やストリーマー自身に話を聞いていたというお話でしたが、それはどう変わってきましたか。例えば、Riotユーザーやプロのプレイヤーによる自分のコンテンツのストリーミングを禁じています。ゲーム業界に対して優位に立とうと試みたことはありますか。

Emmett Shear
質問はゲームパブリッシャーに関してですね。ゲームパブリッシャーはこの業界において重要な存在です。さらに言いますと、大手パブリッシャーは零細スタートアップに時間を割いてくれないでしょう。

これには良い面と悪い面があります。彼らがこちらに興味を持っていないのですから、彼らと話をする必要はありません。しかしそれは、単に彼らと話ができないという意味でもあります。

私たちはコンタクトを試みましたが、私たちと話したいというパブリッシャーは1社もありませんでした。しかし、私たちが業界を牽引し出し、業界の一角を占めるプレイヤーになると、話を聞いてくれるようになりました。

本音を言いますと、私はゲームパブリッシャーの悪口は言いたくありません。彼らの対応は申し分ないものだったからです。こちらが零細スタートアップの頃は小規模スタートアップが沢山あり、私たち全員と話をする時間は彼らにはありません。

しかし会社が成長するにつれ、私たちにとってゲームパブリッシャーはますます重要な存在となってきました。Twitchがユーザーインタビューをすべき相手、情報収集すべき相手を答えるとしたら、今ならゲームパブリッシャーを含めるでしょう。確実に含めます。

数年前は業界内での彼らの活動は特に活発でなかったものの、現在はより精力的な活動を見せています。一般に、本当に重要なユーザーインタビューは自分が重視する人々のプールから行うべきですが、それは時と共に変わってゆきます。

スタートアップ立ち上げ6か月間のユーザーは3年後のユーザーとは異なります。ユーザーインタビューを継続することが非常に重要なのです。実にありがちなことの1つは、創業当初にちょっとしたユーザーインタビューを行い、ある程度成功したら新たなユーザーに話を聞くのを止めてしまうことです。

これは、次に開発する機能セットを最初に開発した機能セットに劣るものにしてしまう早道なのです。

どのようなフィードバックが適切か

受講者10
あなたがユーザーだったら、どのように優れたフィードバックをしますか。

Emmett Shear
どのように優れたフィードバックをするかですか。私がユーザーに求めるのは、自分が本当に思っていること、自分にとっての本当の問題を語ってほしいということです。取り留めないおしゃべりで結構ですので、その人の人生に関する話を聞かせてほしいと考えます。

1人の人間としてのそのユーザーやその人が置かれている状況を知るほど、相手が欲しいと思っているものを求める理由を理解し易くなります。これは非常に重要な質問です。

私がユーザーインタビューをする時に相手に求めることは、積極的に色々なことを話して全体像を教えてほしいということです。

反対に、自分がユーザーインタビューを受ける側で相手に優れたフィードバックを行いたい場合は、取り留めなく長々と喋ることです。あらゆることについて話し聞かせることです。

時間がきたようですね。ありがとうございました。

Sam Altman
ありがとうございました。

 

 

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Lecture 16: How to Run a User Interview (2014)

FoundX Review はスタートアップに関する情報やノウハウを届けるメディアです

運営元