パッションエコノミーのための 16 のキーメトリクス (a16z)

パッションエコノミー (日本語訳) は日々成長しています。Substackでニュースレターを始めた執筆家からPietraでインフルエンサーに転向したデザイナーまで、益々多くの人が電子プラットフォームの利点を活かし、自らの独自の技能で収入を得ています。9つの電子プラットフォームの研究によれば(Etsy、YouTube、Twitchなど)、2017年には1,700万人の米国人が創作で独自に約70憶ドルの収入を手にしています。

クリエイターに関しては、成功の指標は(フォロワーや収益、登録者数の拡大という形で)比較的にありのままを示しています。しかしもしあなたが、バーチャルコース教えることやオンラインコミュニティ立ち上げファンからの融資の受け取りを可能にするプラットフォームを構築するスタートアップだとしたらどうでしょうか。

広告が支援するスタートアップにとって最も重要な指標は、規模とユーザーデータ(ログインしているユーザー数、閲覧頻度、使用時間)に関係しています。販売と広告の対象を絞るために有利です。しかしクリエイターが広告やスポンサーのついた投稿を介さずに、ファンから直接収入を得るようになったら、別の指標の組み合わせが登場します。

すべてのハイテクプラットフォームは異なるものであるため、クリエイター経済に関して包括的で万能な指標はありません。とはいえ、このリストは、スタートアップが業績および自社事業の健全性をより正確に追跡するための出発点として役立ちます。

パッションエコノミーの追跡
1. 成功指標
2. 収益指標
3. エンゲージメント指標
4. 成長指数
5. コミュニティ関連の指標


成功指標

成功指標は、クリエイターがプラットフォームから価値を得ているかどうかを測る指標です。パッションエコノミー型企業に関しては、それは収入に紐づいています。

1. 無料利用のファンのサポーターおよび登録者へのコンバージョン

パッションエコノミー型クリエイターは視聴者を増やすために、よく無料配信プラットフォームを利用します。FacebookやInstagram、YouTube、無料のpodcastsやニュースレターなどです。 そして、無料のユーザーの一部を有料の顧客に変えます。ファンの収益化を支援するプラットフォームには、Kajabi、Teachable、Podiaなどの有料コースのスタートアップや、Patreon、Buy Me A Coffeeなどの会員制プラットフォーム、また、Mighty Networksなどのコミュニティプラットフォームがあります。

無料のユーザーを購買者や登録者に変える転換率を測ることで、自分のプラットフォームでクリエイターがどの程度、視聴者から資金を得ているかがわかります。この指標はそれ自体で物語の一部を語っています—— その数値の高低は事業の健全性に関して必ずしも何かを示しているとは限りません。高額で視聴者のごく一部から収益を得たいクリエイターもいれば、低額でより多くの視聴者から収益を得たいクリエイターもいるかもしれません。

2. 販売するクリエイターの総数(累積および一定期間枠内)

販売をする累積クリエイター総数はプラットフォーム全体の健全性を示す指標です。加えて、この指標は、指定された期間枠内でも追跡すべきです。週間または月間の販売を伴うクリエイター数は活性化の状態を示しています。

ほとんどのパッションエコノミー型プラットフォームでは、クリエイターは提供する内容に対して、無料にするか有料にするかを自分で決めることができます。例えば、Substack のニュースレターの執筆者は、自分のニュースレターを無料にするか、登録制にするかを自分で選ぶことができます。多くのパッションエコノミー型プラットフォームの事業モデルはクリエイターの収益の一部を回収するか、SaaS料金を課金するものなので、実際に収益を得ているクリエイターの数を追跡するのは重要です。収益を得ているクリエイターは、プラットフォームに執着する傾向が高いです。明白な価値を手にしているからです。そのために、私たちが追跡したもうひとつの指標は最初の売上げの時機です—— クリエイターは、売上げを確認する時機が早いほど、プラットフォームの価値を理解し、そのプラットフォームを使い続ける可能性が高くなります。

3. 一定の収益の閾値に達したクリエイター

一定の額を超える収益を得ているクリエイターの数を把握することは、収入源として皆さんのプラットフォームがどの程度重要であるかを評価する方法になります。その閾値となる金額はプラットフォームと仕事の種類によって異なりますが、クリエイターにとっての実質的な収益の金額であるべきです。私は年間10,000ドルから100,000ドルの範囲で確認しました。結局、パッションエコノミー型プラットフォームの目標は、個人が自分の創造性と技能を収益化できるようにすることです。年間Xドル以上の収益のあるクリエイターの数を測定することで、その影響を数値化します。

Patreonには「1Kクリエイターズ」、または、Patreonで月間1,000ドル以上の収入があるクリエイターというKPIがあります。これは、Amazonが第三者市場でセラー向けに用いている成功指標でもあります。

「起業家や中小企業のオーナーはAmazonで成功しています—— Amazonの顧客が買う商品の半分は彼らの商品です。また、2017年には140,000以上の中小企業がアマゾンで100,000ドル以上を売上げました。」—— Amazon Marketplaceの元VP、Peter Faricy

収益指標

これらの指標は、クリエイターが販売する内容にかかわらず、スタートアップがユーザーの需要の量と予測可能性を把握するのに役立ちます。

4. 取引総額 (Gross Transaction Volume: GTV) またはサブスクリプション総額 (Gross Subscription Volume: GSV)

これは皆さんのシステムで動いている総取引額です(一般的には流通取引総額またはGMVとして言及されています)。これはユーザーの需要全体の尺度です。

事業モデルが決済手続きやその他の手数料を課金する場合は、GTVも収益を生むものになり得ます。例えば、Shopifyの収益性の主な源泉はSaaSではなく、Shopify Paymentsによる決済手数料収益です。同様に、Teachable’s Paymentsの事業は、同社の収益の3分の1を占めるまでに成長しました。

5. 月次収益(MRR)と年次収益(ARR)

私たちは、パッションエコノミーに2つの主要な事業モデルを見ています---- SaaSまたはクリエイター収益の手数料の課金(GTV)です。

SaaSによって収益化をしているプラットフォームに関して、会社はクリエイターにどのようなMRRおよびARRを生み出させているのでしょうか。新規MRR、拡大MRR、解約MRRなどSaaSの事業モデルにとって重要な下位指標は多数あります。私たちは、クリエイターにサービスを提供しているSaaS企業に、これらの割合を追跡することをお勧めします。

6. 平均販売価格(ASP)

平均販売価格はクリエイターが「本物のファン1,000人」と単に100人のどちらを必要とするかを決定します。

2017年、Patreonの平均的なファンは、クリエイターに対して毎月12ドルを支払いました。金額が小さければ、クリエイターは実質的な収益を得るために非常に多くのファンを必要とします。その反面、低額の収益を維持するために必要な努力はそれほどでもありません。これとは対照的に、高額なASPを課金するクリエイターは、少ない人数のファンで自立することができますが、同時に、より高い対価で製品やサービスを提供し、価格の根拠を示さなくてはいけません。Patreonの一部のクリエイターは課金額を非常に高く設定しています。例えば、This Might Get Weirdのユーモアのpodcastのホストは、500ドルのランクに、四半期ごとの個別のコーチング会議を含めています。

7. 共有と収入源

現在のパッションエコノミーの本質は、プラットフォーム(したがってクリエイターの収入)が分断されていることです。クリエイターは往々にして、異なるプラットフォームの様々な収益を寄せ集めています。彼らは一定の横断的なソーシャルプラットフォームをマーケティング、通信、潜在的なスポンサーによる収益のために使い、別のプラットフォームを寄付による収益を得るため、また別のプラットフォームを有料コースと個人的な動画のために使っていることがあります。

評価に関しては難題ですが、クリエイターの収益の合計とプラットフォームのみの収益とを比較して把握することは有益なことです。この測定は、クリエイターの収入源についての調査という形をとって行うことができます。言い換えると、皆さんのプラットフォームは、クリエイターの事業を支援するために、どの程度必要不可欠なものでしょうか。

8. 収益の継続(クリエイターと視聴者)

この指標もSaaSの世界から拝借しています。購入するユーザーの指標、1ヶ月の場合と半年または1年の場合の内容の違いは?そのユーザーが使う金額は時間の経過とともに増えているでしょうか。

クリエイターの側では、GMVの継続はどのようになっているでしょうか。理想的には、皆さんはクリエイターが皆さんのプラットフォームで時間とともに収入が増えていることを確認したいでしょう—— より成功し、活動的になるように。


エンゲージメント指標

広告中心のプラットフォームと同じように、エンゲージメント指標はパッションエコノミーにとって重要ですが、理由が違います---- クリエイターがこだわる点も。

9. ファンのエンゲージメント率

コンテンツに対するエンゲージメントの測定は、登録の継続を示す柱です。例えば、すべての産業のニュースレターに関して、平均的なそれぞれの公開率は21%です。大規模な公開のオンラインコース(MOOC)は平均の完了率は5〜15%です。これらの形式の有料版では、ファンが直接クリエイターに支払いますが、その場合、理想を言えばエンゲージメントは高くなります。

10. ロイヤルティとファンの継続

ファンの支援の性質はそれぞれ異なる可能性があります---- 永続的な顧客かもしれませんし、一定の期間、または一定のプログラムの間だけ支払う顧客かもしれません。ファンの中には常に一定数の離脱者がいるでしょう。ユーザーが登録を解除したり、クリエイターがサービスの利用をやめる決断をしたりするかもしれないからです。最高の登録者数をもつ事業でさえ、ユーザー数は安定しません。比較では、Second Measureによれば、Netflixの月額払いの顧客の約3分の2が最初の登録から12ヶ月後に、変わらずに登録した状態にあります。Huluに関しては、顧客の53%が参加してから12ヶ月後にも利用を続けています。

ユーザー数の離脱を判断するのは重要です---- 登録者が期待する頻度でクリエイターがコンテンツを制作しない可能性があります。離脱率が多い場合は、最善の実践にクリエイターを導くという意味で皆さんの事業には利点になります。あるいは、一度限りではなく、継続的な価値の提供を促進するために、製品自体を微調整する必要があるかもしれません。

11. クリエイターの継続と離脱

同様に重要なのは、どのくらいのクリエイターがそのプラットフォームを使い続け、販売をしているかを測定することです。プラットフォームの機能次第で、収益化をやめたり、活動が緩慢になったり、完全に去ったりするクリエイターの離脱が測定できます。

次の段階は離脱の理由を掘り下げることです。クリエイターが違うSaaSのプラットフォームに切り替えているのは、おそらくそちらの方が機能が充実している、あるいは、低料金だから?それとも、収益化がうまくいかなかったからでしょうか。


成長指数

パッションエコノミー型の多くのプラットフォームの顧客獲得効果は、多くのクリエイターが自らの視聴者を連れて来るという事実に立脚しています。これらの成長指数は、それが該当するほどの数値をとらえています。他に、視聴者の拡大に結びつく新たなクリエイターのはずみ車がさらなるクリエイターの増加をもたらすという事実もあります。

12. フライウィール---- クリエイターになるファンの割合、クリエイターが新たなクリエイターを連れて来る割合、ファンが新たなファンを連れて来る割合

成功するクリエイターのプラットフォームには、往々にして、強力な成長エンジンが組み込まれています。このことが具体的にになるのは、ファンがまず最初に顧客になってプラットフォームについて知り、クリエイターとして登録するというものです。クリエイターは新たなクリエイターを連れて来ることもあります。多くのプラットフォームがこれを、紹介プログラムを通して奨励してきました。Patreonが2016年に、Patreonのプラットフォームのクリエイターの55%は、直接またはソーシャルメディアでの言及のいずれにせよ、別のクリエイターから同プラットフォームについて聞いたと報告しました。

13. クリエイターの親近感と価値

どのパッションエコノミー型プラットフォームに関しても、自分の視聴者の収益化に成功する可能性が最も高いクリエイターを特定することが必要です。この指標は皆さんのプラットフォーム自体の健全性を測るものではありませんが、どのクリエイターを標的にしてプラットフォームに参加させるかを特定する重要な合図になり得ます。それは、単なる視聴者の規模よりもむしろ、エンゲージメントおよびクリエイターが持つ親近感と相関関係にあります。例えば、フィットネスやダイエットのコースを提供しているクリエイターは、大規模ながらエンゲージメントの低いフォロワーを持つセレブよりも、フォロワーの大多数を有料コースに切り替えることができるでしょう。

メディアの世界では、Financial TimesがRFVと呼ばれる指標を開拓しました。これは単なる読者規模ではなく、品質のエンゲージメントに的を絞るため、読者の最近の閲覧の動向、頻度、コンテンツの既読量を把握するものです。

14. 獲得費用とクリエイターおよびユーザーの経路

クリエイターやユーザーの獲得にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。この指標は、異なる獲得経路の拡大可能性と効率を把握するすべてが揃っています。

クリエイター事業に関しては、よくあることとして、最初の数百人のクリエイターは会議や交流会に行くなど、拡大しないことを行なって獲得します。後に、クリエイターは有料広告やコンテンツのマーケティング、アフィリエイトのマーケティングなど、他の獲得経路に集まるかもしれません。

ユーザーの獲得に関しては、特にマーケットプレイスなど、一部のプラットフォームが需要側の獲得を請け負っている一方、多くのクリエイターのSaaSツールは、クリエイターが自ら視聴者の開発をする必要があります。クリエイターが大規模な既存のファンの土台を持っているなら、ユーザー獲得費用は抑えられるか、不要になります。私たちの経験では、しかしながら、無料のファンの土台が大きかったとしても、必ずしも簡単に有料ユーザーにはなりません。ここに、二人のオンライン教授起業家の例をひとつ挙げます。いかに情熱を傾ける主題を200万ドルの売上げに変えたかを示しています。


コミュニティ関連の指標

以下の指標は、ファン同士の交流を促進するプラットフォームに適用されます。社交的特徴がプラットフォームへの密着具合を高め、議論や同じ気質を持つ個人同士のつながりを可能にすることによって、購入したものからユーザーがさらなる対価を得るのに役立ちます。

15. 視聴者間の交流

有料コンテンツ以外に、どのくらいの視聴者が交流しているでしょうか。これを測る万能な方法はありませんが、これをとらえる指標の例には他のユーザーとのエンゲージメント率(コメントをする、好きになる、友達になる)やコミュニティが貢献するコンテンツ対クリエイター自身のコンテンツの割合などがあります。

16. ネットワーク効果

私たちはネットワーク効果の数値化に関して丸ごとブログを書きました。クリエイターの世界では、数種類のネットワーク効果があります。新たなクリエイターを発見することのできるマーケットプレイスに関しては、外部のソースに対して、ネットワーク自体に起因する活動の割合や取引の割合を測定することが有益です。

コミュニティの交流を可能にするプラットフォームに関しては、活動のコホートを測ることが役立ちます。理想を言えば、関わるファンが増えれば、ユーザーはさらに活動的になります(そしてコミュニティからさらに対価を得ます)。パワーユーザー曲線もネットワーク効果の存在を示唆しています。

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パッションエコノミー型企業の目標は、創造性のある個人が独自の情熱を収益化し、新たな形の仕事を追求する手助けをすることです。これらの指標は、時間の経過に伴う効率性と成功を測る方法を提供する手助けとなり得ます。鍵となるこれらの指標によって、スタートアップは自分たちのクリエイターのための価値を生み出すことができ、それが彼らの顧客のためにもなります。

上記の指標の多くがこのスレッドからクラウドソーシングされたものです---- ぜひ対話に参加してください!

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著者紹介

Li Jin

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: 16 Key Metrics for the Passion Economy (2020)

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