リストは新しい検索である (Benedict Evans, a16z)

 

私は、レストランのためのYelpをアンバンドルしようとしているすべての人々に注目するようになりました。Craigslistをアンバンドルしようとしている人々は現代的なUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供しながらそうしていますが、Yelpは現代的なUXを提供する現代的な会社です、そしてそれをアンバンドルしている人々は大抵、「制約」を利用しています。 500件、1000件といったレストラン情報と検索ボックスを提供する代わりに、彼らはリストを提供しています ―― それは50件、10件、時には1件という場合などもあります。これは意図的なものであったり、ビジネスモデルから来るものであったりしますが、結果は同じです ―― 彼らは「選択しろという強制」を取り除きます。私はレストランの選択のために、500件もの選択肢は必要としませんません。それらは全て私の好みかもしれませんが、選択肢は5件もあれば十分です。

ファッションについてもほぼ同じことが言えます。フラッシュセールスのモデルがいくぶん後退した今、オンラインファッションや高級品の多くに採用される戦略は、やはり「制約」すなわちキュレーション(情報の収集・整理)です。またはリストと言うこともできるでしょう。10種類のバッグを見せて欲しいだけで。全世界のアパレル業界で現在生産中のSKUすべての情報は必要ありません。

すべてのSKUを見せること。これはもちろんAmazonのアプローチそのもの、つまり「全てを取り揃えた店舗」であり、これは一部のカテゴリで、特に自分が望むものを正確に知っている場合に適しています。しかし「自分が欲しいものを知る」ことが必ずしも出発点ではありません ―― それは絞り込みの過程で起こる必要があるものです。Amazonのキュレーション、ディスカバリー、レコメンデーションが比較的弱いこと(私はレコメンデーションプラットフォームが書籍販売の4分の1しかないことを示唆するデータを見ました)は、同社が25年の冷酷で容赦のない経営を行なってきた後であっても、イギリスとアメリカの印刷書籍市場の25%しか獲得していないことの大きな理由だと考えています。書店は(またはどんな店舗も)もちろん、物流システムに対するエンドポイントですが、良い書店とは第一に発見のためのプラットフォームです。 つまり、それは棚というよりもテーブルのようなものです。 そしてテーブルとはリストのことであり、在庫ということではありません。

検索可能なデータベースの代わりにリストを使用することの問題は、規模にどのように対応するかです。または、おそらくどのような規模のデータを提供できるかでしょう。ですから、Yahooの階層的なディレクトリ(リストのリスト)は320万ものエントリーに達し、その後それ自身の重みで崩壊しました。それはブラウズするには大きすぎて、利用するためには検索するしかないというレベルに達しました(Goobleではより良い検索ができますが)。しかし、リストがより短い(つまり、ただ編纂されカタログ化されているのとは異なり、より積極的にキュレーションされている)場合、誰がキュレーションを行なうのでしょうか。そしてより重要なことですが、そもそもそのリストはどうやって見つければいいのでしょうか。

どんなキュレーションも、やがて検索が必要になるまで拡大します。 どんな検索も、やがてキュレーションが必要になるまで拡大します。

— Benedict Evans (@BenedictEvans) 2015年12月18日

それゆえ、私はFlipboardの最も魅力的なところは、フォローすべきサイトの一覧が手動で収集・整理されているところだと常々思っていました。これは「リストのリスト」ですが、すべてを網羅しようとしているわけではないので、Yahooとは異なり、管理できないほど大きくはありません。しかし、それは問題を置き換えているだけです。「リストのリスト」に載っていないリストが欲しい場合はどうすればいいでしょうか。気になるトピック(アイスクライミングやビンテージ家具、実験的な電子音楽、子供向け絵本)について読める5つの新しいサイトを見つけたい場合はどこで見つけられるでしょうか。Yahooのようにならずにこれらすべてのリスト用のプラットフォームを作ることができるでしょうか。そしてグーグルも実際にこれを解決できていないということは覚えておく価値があります。それはあなたに1つのブログ記事を提供してくれるかもしれませんが、試すべき20のサイトのリストは提供してくれないでしょう。(実際、ブログそのものがある意味Googleに勝ると示唆する人もいるかもしれませんが、あなたがストリームを探していても、Googleは掲載記事の提供しかできません。)

Apple MusicとSpotifyはいずれもこれについてある立場を取っています。それらはいずれも観察により、3000万のトラックと検索エンジンは悪いユーザー体験であり、どんな形であれ自分の好みに基づく何らかの形のフィルターが必要だと気づいています。しかし、最終的には独断的のものとなり全く同じものになるということにも気づいています。特にAppleのモデルはハイブリッド型であり、興味深いものです。それは手動で収集・整理されたプレイリスト(これもまたリストです)と(大部分が)アルゴリズムにより導かれた好みをマッチさせるために自動化を利用しています。ですから、リストは手作業で作成されますが、機械があなた向けのリストを見つけます。

同様に、Facebookでは、あなたは自分の友達リストを手作業で作成し、あなたとあなたの友達は手動でそのプールの中に色々なものを共有します。しかし、Facebookのアルゴリズムは自動的にそのプールからあなた向けのストーリーを提案します。これもまたハイブリッドです。実際には、システムを機能させるためにあなたがこれらの人々を実際に知る必要はないと示唆して以下のように言う人もいるかもしれません。「これらはあなたの大まかな社会経済的人口動態におけるサンプル300人の中の人たちがクリックしたものです」。

これについて考えるとき私の頭の奥にあるものは、デパートやスーパーマーケット、アマゾンがその活動の中で、小さな小売店を殺さなかったということです。 彼らは勝者総取りモデルではありませんでした。彼らは自分たちのサービス、品揃え、価格にマッチできなかった人々を排除しました、彼らは、より効率的なエンドポイントとの競争に負けた物流チェーンへの単なるエンドポイントだったのです。しかし、私が育った南ロンドンでは当時数々のスーパーマーケットが展開していましたが、そこで目にしたことのひとつは、小さな食料品店が消え、その後新しく生まれ変わり再び現れる傾向があったということです。彼らはスーパマーケットが対抗できないサービスや、商品の絞り込み、品揃えで、それらを進んで探し出してそれにプレミアムを払うのは当然と考える人たち向けに提供しました。そしてそこには、これをサポートするだけの人口密度がありました。彼らは規模を拡大しませんでした。彼らは30人の食肉加工職人を抱えるチェーン店にはならなかったのです。それでも多くの場合彼らの商売は繁盛しました。書店でも同じようなことがありました。Waterstonesは多くものを廃止しましたが、それと同時に多くのものも作りだされました(もちろん、Amazonが市場の売上の25%を獲得する前のことですが)。

これは次に、何年も前のNew York Timesの記事を思い出させてくれます。それはいくつかの日本の小さな店に関する記事でしたが、彼らは口コミの客以外求めていなかったので、(日本の基準でも)店が簡単に見つからないようにしたということです。特に、東京の裏通りには「Not Found」というあるデニムショップがありましたが、その店名はGoogleでも見つからないようにと、付けられたものです。これは、キュレーション、または流行の先端を行くもの、あるいは単にヴェブレン財と呼ぶことができます。しかし、過去においては、このようなことは常に地理的に制約されていました。あなたは大都市に住んでいなければならなかったのです。(一方、小売チェーンは、万人向けに同じ商品の均質化されたものを取り入れました)。eコマースが成熟する中で、大規模情報収集者を超えて、大小さまざまな種類の小売業者が現れていますが、どれだけ多くのものが作り出されるのでしょうか。そしてまた、地理的な制約をこのように排除することで、ある部分ではこの密度の問題を取り除くことによって、巨人から売上を奪うことが、どれだけ難しくなるかではなく、どれだけ容易になるのでしょうか。つまり、もっとたくさんのリストがあるかもしれませんし、それらは見つけるのが難しいかもしれません。そしてそれは世界的な大規模情報収集者の一部ではありませんが、それはそれでいいのかもしれません。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Benedict Evans

Ben はテック系企業に投資をする、シリコンバレーのベンチャーキャピタルである Andreessen Horowitz ('a16z') に勤めています。彼は何が現在起こっているのか、そして何が次に起こるのかについて考えています。

Ben のブログはこちら、毎年のプレゼンテーション、人気のウィークリーレターポッドキャストでの超早口、そして Twitter での独り言もあります。

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Lists are the new search (2016)

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