新規性と異説 (Paul Graham)

新しいものを発見した際は、ある種の異説であると非難される可能性が大きくなります。

新しいものを見つけるには、実は良いけれどそうは明らかになっていないアイデアに取り組む必要があります。アイデアが明らかに良いものであれば、おそらく他の人がすでにそれに取り組んでいるからです。良いアイデアなのにそう明らかになっていない状況に共通する1つの形は、誤った前提の影に隠れているような場合です。その前提に人々はあまりにも慣れてしまっています。しかし、そのようなアイデアに取り組む中で見つけたものは、それを覆い隠している誤った前提と矛盾する傾向があります。そのため、その誤った前提にとらわれている人々からは、大きな圧力を感じることになるでしょう。ガリレオやダーウィンはそのような状況の例として有名ですが、おそらく、新しいアイデアに対する抵抗感には、こうしたことが常に含まれるものです。

したがって、異説にすぐに飛びかかるような文化は、組織や社会にとって特に危険です。異説を抑え込むと、自分が守ろうとする誤った前提に対する反論の機会を奪うだけではありません。前提が間違っていることを暗示するアイデアをも抑圧してしまうのです。

間違っているにもかかわらず大事にされている前提の周辺には、探求されていないアイデアの死角があります。前提が不合理であるほど、そこから生まれる死角は大きくなります。

しかしながら、このような状況にはプラス面もあります。新しいアイデアを探している場合、アイデアを見つける1つの方法は異説を探すこと (日本語訳) です。そのような観点から課題を見つめなおせば、誤った前提の周辺にある憂鬱なほどに大きな死角が、新しいアイデアの宝庫となるでしょう。

 

著者紹介

Paul Graham

Paul は Y Combinator の共同創業者です。彼は On Lisp (1993)、ANSI Common Lisp (1995)、ハッカーと画家 (2004) の著者でもあります。1995 年に彼は Robert Morris と最初の SaaS 企業である Viaweb を始め、1998 年に Yahoo Store になりました。2002 年に彼はシンプルなスパムフィルタのアルゴリズムを見つけ、現在の世代のフィルタに影響を与えました。彼は Cornell から AB を、Harvard からコンピュータサイエンスの PhD を授けられています。

 

記事情報

この記事は原著者の翻訳に関する指示に従い翻訳したものです。
原文: Novelty and Heresy (2019)

Paul Graham, November 2019

Copyright 2019 by Paul Graham.

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