(※訳注:本記事はアメリカにおけるストックオプションの扱いが掲載されています。基本的な考え方は日本と類似の部分もありますが、異なる点も多くあるので注意してご覧ください。)
最近、スタートアップ従業員ストックオプション制度を実施するにあたり、とても衝撃的なことがありました。何がオプション価値に影響を与えるかについて、たとえ最初から伝わっていても、知られていても、よく理解されてはいないのです。多くの人々が、最初のスタートアップを離れる際、「高い価格への驚き(sticker shock)」(またはその逆!)を感じたと報告しています。一方、創業者たちは、従業員その他のステークホルダーを公平に扱いたいと切実に思っています。しかし、会社の一部を所有することは静的・固定的ではなく、流動的なことです。持分の考え方全体に影響を与える要素は数多くあります。
問題の一つは、そもそもエクイティや持分を理解するには複雑な情報が大量に必要であることです。そのため、創業者の多くは変化する持分(自分、従業員、共同創業者、投資家の持分)を舵取りしつつ、信頼を構築するために努力しています。リソースを費やして教育を行うことも多いです。また、オプションや報酬の仕組みを学べる素晴らしい概要、ガイド、テンプレート、ツールがあります。この記事では、スタートアップオプションと持分の背後にある経済の仕組みについて、詳しく説明したいと思います…
資本政策表
資本政策表(「キャップ」テーブル)には、会社の株主全員の持分が反映されます。創業者、オプションを有する従業員、もちろん投資家も含まれます。ほとんどの人にとって、会社への実際の持分比率を知るのに必要なのは、完全希薄化後株式数と、各種類の株主に関する幅広い所有状況に加えて、その他多少の情報だけです。完全希薄化後株式数(基本株式数に対して)とは、全ての既存株式の合計数に、オプション、ワラント、未発行オプションなど、最終的に株式に転換され得る資産を加えたものです。
それでは、この投稿を通して用いる仮説的な例を見てみましょう。外部投資家を持たない新しい会社に、既存株式が以下の通り割り当てられています。
仮に100株のオプションが付与されたとすると、その株式は1000株のオプションプールから配分されます。よって、100/1万株、すなわち完全希薄化後株式数の1.0%を保有することになります。
しかし、これはまだ持分の話の出発点にすぎません。会社の持分比率に関する分析は、特定の時点にしか当てはまらないからです。時間と共に、様々な要因が完全希薄化後株式数を増加させます。オプションの新規発行、買収、新しい資金調達条件などにより、持分比率が低下する可能性があります。当然ですが、時と共にオプション数が増加することで、Refresher GrantsまたはPerformance Grantsを通した利益を得られることもあります。しかし分子が変化すると、必ずそれに対応して分母が変化します。
資金調達の記録
各資金調達ラウンド(転換可能な優先株)には、当初発行価格と転換価額があります:
- 当初発行価格とはその名の通り、投資者が株の購入で支払った一株当たり株価をいいます。この価格により、各時点で様々な機関投資家が考えていた会社の価値を知ることができます。
- 転換価額とは、優先株が普通株に転換される際の一株当たり株価をいいます。「優先」株は通常投資家が保有するもので、その他の「普通」株にはない特定の企業統制権や残余財産優先分配権が付属しています。
多くの場合、転換価額は当初発行価格に等しいですが、2つの価格が分かれることのあるケースについて、以下で後に説明します。
従業員オプションの権利行使価額(株式を実際に保有するのに必要な一株当たり株価)は、優先株を保有する最も最近の投資者が支払った当初発行価格より低い価格であることも多いです。価値の差の大きさは、特定の権利や会社の全体的な成熟性に依存します。外部の査定会社は「409a評価」(内国歳入庁の税法の条項名に由来します)と呼ばれる評価を行い、正確な価格を判断します。
希薄化
希薄化は含みのある言葉であり、扱いにくい概念です。会社が追加で資金調達する場合、完全希薄化後株式数は増加し、保有者(オプションを保有する従業員を含む)の持分比率は「希薄化」、すなわち減少します。その一方で、資金調達を行えば会社はポテンシャルを発揮できるので、株主の持分比率が下がっても、資産の価値は向上する可能性があります。結局、5億ドル企業の0.1%を所有するより、10億ドル企業の0.09%を所有した方が良いのです。
会社がオプションプールのサイズを拡大して、付与するオプション数を増やした場合も、従業員に対してある程度の希薄化が発生します。ただし、希薄化は次の可能性もあります:(1)会社がプラスの成長モードにあることの兆候である。会社が成長すれば、保有株の全体的な価値も向上します。(2)従業員が追加のオプション付与から利益を得る可能性がある。
私たちの会社がベンチャーキャピタルを調達したとき、上で説明した例に話を戻しましょう。このシリーズAの資金調達では、会社は投資家たちから1000万ドルを調達しました。当初発行価格は一株当たり1000ドルです。
完全希薄化後株式数の増加数は、資金調達での新規発行株式数に等しいです。新たに2万株が完全希薄化しました。つまり、従業員が保有するオプション100株による持分比率は、会社の100/2万すなわち0.5%に相当します。最初の1%より低下しています。しかし…その持分の価値は大きく上昇しています。一株当たり株価が1000ドル、出資額は 100株 * 1000ドル/株 = 10万ドル になりました。
希薄化は様々ですが、共通するのは、多数の投資家を対象とする希薄化防止策を伴うという点です。基本的なアイデアは、もし会社が将来のラウンドで資金調達を行う価格が、現在投資家が参加しているラウンドの価格より低い場合、投資家に追加で株式を発行することで、将来の価格低下から保護するというものです。(追加される株式数は方式に応じます)
希薄化防止策(しばしば加重平均法と呼ばれます)の多くは、従業員に対する希薄化が比較的弱いです。投資家の保護が控えめだからです。一方、フルラチェットと呼ばれる希薄化防止策では、他の株主に影響が及びます。投資家が過去のラウンドで支払った価格が、現在のラウンドで支払われる新しい価格(低い価格)に等しくなるよう、100%の調整を行うというものです。したがって、仮に投資家が過去のラウンドで一株2ドルで1000万株を購入し、その株価が現在のラウンドで一株当たり1ドルまで下落した場合、その差額を相殺するために2倍の株式数が付与され、合計2000万株を保有することになります。それに応じて、完全希薄化後株式数が1000万株増加します。保護を受けていない株主(従業員を含む)は、まさにこの時点で希薄化されたことになります。
ちなみに、これは単に理論的なものではありません:私たちはフルラチェットの効果をSquare のIPOで見ています。Square の IPOでは、シリーズE投資家が株式の追加発行を受けました。投資家が最初に株式を購入した際の価格と比べ、IPO価額が半分だったからです。
希薄化防止策は、一切行わないのが理想的です。すなわち、会社の業績が持続的に向上したり、市場環境で大きな変化が起きないことで、資金調達ラウンドでの価額が毎度前回を上回るという状態が好ましいです。しかし、それでも実施した場合、希薄は「二重苦」を伴います。希薄化防止策(株式を新規発行する必要があるので、完全希薄化後株式数の分母が増加します)による損失と、価値の低下による損失です。
残余財産優先分配権
一部の投資家は、持ち株に残余財産優先分配権を付属させることがあります。残余財産優先分配権とは、単純にいえば、会社売却など流動化イベントが発生した場合に、投資家が他の株主(オプションを保有する従業員のほとんどを含みます)より先に投資額を回収できというものです。
残余財産優先分配権の仕組みを説明するために、例に話を戻しましょう。会社が1億ドルで売却されたという想定です。シリーズA投資家(会社に1000万ドル投資し、持分比率が50%)は、売却により1000万ドルを回収する(残余財産優先分配権)か、企業の価値の50%を保有する(50% * 1億ドル = 5000万ドル)かを選ぶことができます。投資家は当然ながら5000万ドルを取るので、それ以外の普通株・オプション保有者の株主価値は、5000万ドルになります。
この例では会社の売却額が大きいので、残余財産優先分配権が行使されませんでした。しかし、以下のシナリオでは行使されます:
シナリオ1。会社の売却額が、残余財産優先分配権を行使しなくてもよいほど高くない場合。投資家は会社の持分比率ではなく、残余財産優先分配権を選択します。
それでは、例で売却額が1500万ドル(1億ドルではなく)だった場合を想定しましょう。以下の表の通り、シリーズA投資家は1000万ドルの残余財産優先分配権を選択します。なぜなら、経済的持分(50% * 1500万ドル = 750万ドル)が、残余財産優先分配権を行使した場合の金額より小さいからです。これで、普通株・オプション保有者の持分は、5000万ドルから500万ドルまで下落します。
シナリオ2。会社が複数の資金調達ラウンドを実施する場合、各ラウンドで残余財産優先分配権が適用されます。最低でも、残余財産優先分配権は、会社が創業以来調達した金額の総額に相当します。
したがって、会社が優先株で1億ドルを調達し、1億ドルで売却した場合、他の人には何も残りません。
シナリオ3。行使され得る残余財産優先分配権には、契約条件によって様々な種類があります。ここまでは、1倍の非参加型優先分配権の説明でした。投資家は、投資金額の1倍、または企業の持分比率に基づき得られる金額の高い方から選択するしかありません。
しかし、投資家によっては1倍以上を選択します。例えば2倍であれば、投資家は投資金額の2倍の分配を受けることができます。非参加型優先分配権を「参加型」にすることもできます。つまり、投資家は投資金額による利益(1倍以上であればその倍数の利益)に加えて、会社への持分比率に基づくあらゆる利益を得ることができます。これが他の株主に与える影響は甚大です。
これらの契約条件による影響を個別に見るため、まずはシリーズA投資家が2倍の残余財産優先分配権を付与された場合にどうなるか見てみましょう。1億ドルの売却シナリオで、投資家はなおも50%を選択します。5000万ドルは2000万ドル(2 * 1000万ドルの残余財産優先分配権)より大きいからです。普通株・オプション保有者は、投資家が1倍の残余財産優先分配権を持っていた場合より、大きな損失を受けます。
しかし、売却価格が遥かに低い1500万ドルの場合、投資家はその利益の100%を獲得します。2倍の残余財産優先分配権は2000万ドルのままですが、分配されるのは1500万ドルだけで、その全ては投資家のものになります。普通株・オプション保有者には何も残りません。
最後に、「二重取り」と俗に呼ばれる参加型優先分配権を付与された場合どうなるか見てみましょう。
1億ドルのシナリオで、シリーズA投資家は1000万ドルの残余財産優先分配権だけでなく、持分比率に応じた株式の分配を受けることができます。したがって、投資家は1000万ドル(残余財産優先分配権)に、残りの9000万ドルの50%を加えた、合計5500万ドル相当を受け取ることができます。普通株・オプション保有者は、残りの4500万ドル相当の株式を受け取ります。
1500万ドルのシナリオでは、普通株・オプション保有者が受け取る金額はさらに低くなります。なぜなら、シリーズA投資家が残余財産優先分配権の1000万ドルに加えて、残りの500万ドルの50%を受け取り、合計1250万ドルの分配を受けるので、他の株主が受け取る金額がわずか250万ドルしか残らないからです。
IPO
ここでは扱いませんが、法律、税金、コーポレートガバナンス関連の問題など、経済以外の要素が多数あります:会社の売却や資金の追加調達ほか、会社が特定の行動を取る場合、どの株主の承認が必要であるかなど。これらは重要な検討事項ですが、ここではオプションと持分比率に関する経済的な要素に的を絞りたいと思います。
しかし、IPOの強制転換条項はガバナンスの問題に見せかけた経済的な問題であり、注目に値します。強制転換条項は、誰がIPOを承認するかを決める言語です。多くの場合、優先株主が1つの株式クラスの株主として投票し、IPOを承認します。優先株主の票を合計した結果、大多数を獲得した側の勝利です。一人一票が保証されるので、会社にとって良い抑制となります。ただし、各優先株主の発言権は会社への持分比率に応じます。
ところが、投資家が行使する決定権は、実際の持分比率と釣り合わないこともあります。そうなるのはたいてい、レイターステージ投資家が、株式公開が時期尚早であり、適切な時期に行った場合に期待するほどの投資収益が得られないことを懸念している場合です。こうした場合、投資家は会社に対し、IPOに限定した承認の取得を求める可能性があります。IPOの価格が、投資金額に対する利益倍数(2〜3倍など)の希望額に満たない場合も同様です。
そのようにして、一見ガバナンスに限定された問題が、経済的な問題に早変わりします:IPOに投資家の承認が必要でかつ、投資家がIPOの利益に納得していない場合、投資家はその決定権を、投資利益の増加を訴えるための抜け穴として利用できます。どうやるのでしょうか?株式の追加発行を求めます(または、既存の優先株を普通株に転換する転換価額を引き下げます)。これにより、完全希薄化後株式数の分母が増加します。
誤解を避けるために言いますが、決してレイターステージ投資家の行為が不正であるというわけではありません。結局のところ、レイターステージ投資家は、必要な成長資金やその他戦略価値を企業に提供し、リスクの大きさに見合った資本利益を得ることを目指します。ところで、ここで説明する中でも特に注目していただきたい要素がもう一つあります。
ISO対NQO(および権利行使期間)
オプション価値に影響を与える可能性のある財務的・ガバナンス的要素に加えて、特定の種類のオプションが、経済的成果に影響を及ぼす可能性があります。
一般的に、最も好ましい種類のオプションは、株式報酬型ストックオプション(ISO)です。ISOでは、オプションの権利行使価格とその公正な市場価格の差額について、行使時に税金を支払う必要がありません(ただし、代替最小税額が課される場合があります)。ISOとは要するに、スタートアップの従業員が対象株券を売却するまで、税金の支払いを延期できるということです。権利行使日から1年間保持すると(かつ付与日から2年間)、キャピタルゲイン税制措置の対象になります。
非法定オプション(NQO)は、株式を長期保持することを選んだとしても、権利行使時に税金を支払う必要があるという点で、ISOより好ましくありません。税額は権利行使日に基づき計算されるため、従業員は過去の、より高い株価に基づく税額を課されます。株価が後に下落する場合でもです。
それでは、なぜ全ての会社はISOだけを発行するようにしないのでしょうか?それは、一年間の間に従業員に発行できる株式の時価総額が10万ドルまでに法律で制限されていたりと(つまり、10万ドルを超える金額はNQOを付与)、ISOに複数の制約条件があるからです。ISOの場合、従業員が退社してから90日以内に行使する必要もあります。90日のオプション行使期間を延長する企業が増えていますが、その場合でもISOを発行することができます。ただし、退社後90日以内に行使しなかった場合、少なくとも現行の税法上では、会社の行使期間に関わらず、ISOはNQOに転換されます。
M&A
オプションについて最もよく聞かれる質問の一つは、スタートアップが買収された場合に何か起きるかです。可能性のあるシナリオを以下に挙げます。権利確定に4年かかるにも関わらず、2年目で他社に自社を売却することが決定したという想定です。
シナリオ1。買収企業が権利未確定オプションを取得する。
買収企業に留まる選択肢を与えられた人がそう選択した場合、そのオプションは元の予定通り権利確定します(ただし、買収企業のエクイティの一部になります)。一見理に適ってそうです … が、「入社時と話が違います」「新しい雇用主の下で働きたくありません」と従業員が判断して退社した場合は別です。この場合、残り2年のオプションは放棄されます。
シナリオ2。買収企業が権利未確定オプションを放棄し、従業員が、新しい契約条件に基づくオプションを新規取得する(買収企業に留まることが前提です)。
この背後にある理論では、買収企業は新しい潜在的従業員に改めてインセンティブを与えたり、潜在的従業員を自社の報酬制度全体に適合させることを目指します。これもまた、一見理に適ってそうです。ただし、当然元の合意とは異なるプランになります。
シナリオ3。権利未確定オプションが繰上権利確定する。あたかも従業員が残りの2年間在籍したかのように、オプションの権利が自動的に確定します。
ここで把握すべき繰上権利確定には2種類あります。シングルトリガーの繰上権利確定と、ダブルトリガーの繰上権利確定です。
- シングルトリガーでは、単一の「トリガー」イベントに基づき、権利未確定オプションが繰上確定します。このシナリオでは、会社の買収がそれに当たります。よって、従業員は新しい雇用主のもとに留まるか否かに関わらず、権利確定から利益を得ることができます。
- ダブルトリガーでは、買収が発生するだけでは繰上権利確定の条件を満たしません。従業員が新しい会社にオファーを受けていないか、または職務が前の企業と全く異なるという条件を満たす必要があります。
これらはあくまで一般的な定義であることに注意してください。上記のトリガーには特定のバリエーションがあります:一部の権利が繰上確定するもの、全部が繰上確定するもの、一年間の「クリフ(崖)」といったマイルストーンで繰上確定するもの、そうでないものなどです。しかし、ここでは割愛します。
当然ですが、買収企業はシングルトリガーを好まないので、シングルトリガーは珍しいです。ダブルトリガーの場合、買収企業は優秀な人材を保持できるチャンスを得られます。いずれにせよ、繰上権利確定の対象になる人は非常に稀です。これらのトリガーは、たいてい上級役員のために用意されています。買収企業に仕事のオファーを受けられず(または、一つの会社に二人のCFOが在籍できないなどで、オファーを受けることが不可能な場合もあります)、残り株式を権利確定できない可能性が高いからです。
これらについてシンプルに考えてみると、買収企業が取引で提示する金額はたいてい「全込み価格」です。これには購入前払金、既存オプションの引受、残留従業員の新規オプションの継続計画などが含まれます。しかし、資金を最終的にどう分配するかについては、買収の議論が進むにつれ、元のオプションプランの文書の規定から乖離することもあります。
* * *
先にも述べた通り、報酬と持分比率に関する事柄はすべて、信頼の構築と舵取りが本質です。その手段として、教育、コミュニケーション、透明性が用いられます。また、米国証券取引委員会の重要な規則がここで影響を及ぼします:規則701、従業員ストックオプション発行の免除(Rule 701, the exemption for issuing employee stock options)。この規則によれば、一年のオプション発行額が約500万ドルまでの場合、会社は付与対象者にオプションプランの写しを提供する必要があります。会社の年間発行額が500万ドルの制限を超えると、プランの重要な条件内容やリスク因子、2年分のGAAP財務諸表などの概要情報も提供する必要が生じます。素晴らしいことです。
しかし時代は変わりました。1999年4月に発効した規則701の要件は、時代の流れに取り残されています。企業は未公開の期間が長くなり、資金調達額が増えています。その多くはベンチャー投資への新規参入者によるもので、契約条件も複雑化しています。よって、会社の過去2年の財務諸表を単にレビューしても、オプションの最終的な潜在的価値は計り得ません。オプションを理解するために必要な情報がより良く反映されるよう、規則701を更新するべきです。
朗報なのは、会社が株式公開する際、優先株主が持つ上記の様々な権利がすべて消失するという点です。全員の株式が普通株に転換されるからです。普通株に複数のクラス(創業者中心の長期的イノベーションを保護するために、異なる議決権を持つデュアルクラスなど)が存在することはありますが、個人の経済に影響はありません。
スタートアップの業績は、定義からして予測不能です。スタートアップはそれぞれが固有の存在であり、全ての状況には未知の変数があり、新しいデータが常に経済的成果を左右します。スタートアップで働くとは、証明されていないものに早期の段階から飛び込むことを意味します。大きなリスクも伴いますが … 潜在的な利益は莫大です。
著者紹介
Scott Kupor は Andreessen Horowitz のマネージング・パートナーで、当事務所の運営全般を担当しています。2009年の設立以来、Andreessen Horowitz に勤務し、3名の従業員から150名以上の従業員へ、また3億ドルの運用資産から100億ドル以上へと急成長を遂げてきました。
Andreessen Horowitzに入社する前は、Hewlett PackardでSoftware-as-a-Serviceのバイス・プレジデント兼ゼネラル・マネージャーを務めていました。Opswareの買収の一環で2007年にHPに入社し、カスタマー・ソリューション担当シニア・バイス・プレジデントを務めました。この役職では、プロフェッショナル・サービス、技術的なプリセールス、カスタマー・サポートなど、顧客とのやり取りをグローバルに担当していました。Scott は、オプスウェアの設立直後に入社し、財務計画担当バイス・プレジデントや企業開発担当バイス・プレジデントなど、数多くの管理職を歴任しました。これらの職務では、2001年の新規株式公開と同時に、同社のプライベート・ファイナンス活動を指揮しました。スコットはまた、同社のアジア太平洋地域での事業を開始し、同社の複数の買収の実行を指揮しました。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: How Startup Options (and Ownership) Works (2016)