営業学習曲線(セールスラーニングカーブ)

悪いアドバイスに惑わされるいい創業者。

あなたは創業者です。ビジネスプランと、初期製品を持っています。早速、市場に出てどうトラクションを獲得するか計画する準備もできています。すばらしいVCからの投資も獲得しています。Sequoiaからの投資もあるかもしれません。現金はあります。

費用はどんどん増えて行きますが利益は出ていません。営業担当者を雇用します。新しい機能を追加し、パフォーマンスをあげ、顧客をサポートするエンジニアも雇用しました。

つまり、あなたはたくさんの現金を消費し、燃焼しています。そのバーンレート(資金燃焼率)を下げ、出資者の計画に応えられる最も手っ取り早く、痛手の少ない方法は、なるべく早く収益を得始めることです。

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この時点で、多くのCEOは急速なセールス展開と言う甘い言葉に誘惑されてしまいます。「一試合たりとも欠場しない」と決意を固めます。

ビジネスは、いかに早く独走体制に入るか、そして先手の利点を勝ち取るかのレースだと思い込み始めます。

そのようなCEOたちは、多分自信過剰でもあるでしょう。そして、当たり前ですが、周りからも「ベータ版は最高だった、報道陣にも最高にウケたよ」というような反応ばかり。そして自分に言い聞かせるのです、「俺らはすごいんだ!他のやつよりずっと賢いんだ!」。

BuzzCrunchにさえも大好評です。

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期待と現実

セールスVPが計画を立て、楽観的な「キャパシティーモデル」を元に営業戦力を雇用します。このモデルでは、売り上げ目標と、消耗も考慮した上で営業担当者が生産性を達成する時間を推定します。

キャッシフローを黒字にするため、どんどん採用しなければいけません。

すると悪循環に陥ります。まだ生産的でない営業を採用するたび会社のバーンレートは上がる一方です。ですから、またたくさん採用するしかありません。

期待は大きいですが、本当に現実的でしょうか?

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残念ながら、思ったようにうまくは行きませんでした。四半期が過ぎて、まだ売り上げ目標は達成できずバーンレートはひどい状態です。費用を切り詰めるべきでしょうか?縮小するべきでしょうか?ピボットするべきでしょうか?

もしあなたがCEOなら、自己中心的な考えでセールスVPを首にするかもしれません。でないと、自分自身が取締役会に首にされるかもしれません!もしセールスVPと営業戦力の大部分を首にして大幅に縮小したら、会社の士気をくじいてしまいます。

シリコンバレーでは、50年に渡ってこのようなことをしてきました。常に思ったより時間と費用がかかります!

この例は特殊なケースではありません。では、違う道はあるのでしょうか?そもそもこのゴタゴタは何が原因だったんでしょうか?

ある日、このことについて考えていた私はひらめきました。

スタートアップ企業にとっての経済的トラクションは、製造学習曲線(Manufacturing Learning Curve、MLC)で表されるアイデアと似ています。

製造業では、初めはコストが高く、生産量が増えるにつれコストは下がっていきます。この曲線をたどるにつれ、純損失から利益へと移って行きます。

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これは、半導体製造業、(そして鉄鋼業)の企業文化および計画に、主に利回りの関数として深く刻み込まれています。Intelが、新しい半導体製品の価格を、初期費用にかかわらず、生産量を最大化する目的で設定するのも、この理由からです。生産量さえ上げられれば、コストを下げ利益を得ることができると知っているからです。

そして、面白いことに、この学習は予測不能です。皆、曲線を下っていくということは分かりますが、次週、そのまた次の週に何を発見するべきなのかは分かっていません。だから、学習曲線と呼ばれるのです。

営業学習曲線(Sales Learning Curve、SLC)

ここで、新しい製品を市場に出すことに特化した学習曲線を紹介します。その名も、営業学習曲線です。これは、MLCに似ていますが、製造ではなくgo-to-marketに特化しています。

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SLCで測る主要変数は営業利回り(完全に生産的な営業担当者による一年単位の収益)です。MLCのように、学習の進み方は予測不能な部分も多いです。

SLCにおいての学習は、企業全体の取り組みです。営業部だけではありません。企業の中で、顧客と関わることのある部門全部を含みます。これはマーケティング、営業、製品サポート、製品開発などにあたります。

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新製品を売り出すとき、大勢の営業担当者を雇って、初製品のリリースと共に首にするのはやめましょう。これを、会社がたどらなくてはいけない「成長」の周期だと思ってください。

結果:製品の市場性が向上、従って、営業利回りも向上。

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製品チームは、現存するエコシステム内での製品の完全性(機能、導入容易度)、整合性(製品の目的を果たしているか)、スケーラビリティ、保守性、そして加工性に集中します。

マーケティングチームは、4つのPを実行します。4つのPはポジショニング、プロモーション、プライス(価格)、そしてプレイス(場所・流通)にあたります。

セールスチームはセールスモデル、ピッチ、トレーニングと開発、販売執行、そしてセールスステージを管理することが任務です。

営業人材配置の3つの段階

1. 初期

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営業の初期人員配置戦略に関して、営業学習曲線を参照します。まず、企業学習を高める初期営業担当者を3、4人選びましょう。ルネッサンス営業パーソン、もしくはよろず屋とも呼ばれるこのような営業パーソンは、顧客を理解するのと同じくらい製品管理、マーケティング、製造チームを理解できます。また、この時点ではコストを抑え、投資家の期待を現実的なレベルにとどめておくのもいいアイデアでしょう。

2. 転換期

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次は転換期です。一定数の顧客も獲得し、営業が加速しています。わずかな収益(その総コストを超える額の収益)が見えてきます。

3. 実行期

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最後は、実行期です。ついに、楽園に到達しました!この時点では、「アクセル全開」の人員配置が必要です。時点では、初めは自身の総コストの2倍の収益を稼ぎ入れ、それからすぐに標準売り上げ目標に到達できる営業担当者を採用します。彼らは、即戦力となる人材です。ただ、出て行って、ひたすら売ってくれます。シンプルです。

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営業担当者が目標を達成し始めるトラクションポイントに至るまでは、営業担当者にかかる金額は彼らが稼いでくる金額の間よりも多いでしょう。

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まず、営業コストと収益が五分五分になります。

それから、トラクションを獲得し、営業担当者1人にかかる総コストの2倍の収益が入ります。

そして最後に、他の費用を吸収し、企業として利益を出すことができるのです。

企業が更新、再注文、そしてブランド知名度の向上と共に前進するにつれて、セールスも、トラクションポイントを超えて加速します。

キャパシティへの影響

SLCは、完全に生産的な営業担当者による収益を説明します。でもそれは、スタートアップの方程式の一部でしかありません。新しい人員を採用するたびに、それぞれ強化期間が必要です。法人営業担当者の強化には通常180日かかります。この期間を短縮する事で、収益に大きな影響を与えることができます。

どのように個人の営業利回りを計算すればいいのでしょうか?まず収益を推定します。営業担当者1人につき、会社の粗利をとって、四半期の生産性向上を推定し、消耗を追加します。

それから、コスト総額を知る必要があります。営業1人あたりのコストは基本給+歩合給です。でもそれは始まりに過ぎません。

私がよく言うフレーズ「矢尻を支える木」も考慮しなければいけません。これは、1人の営業担当者に関連する全てのコストのことです。

現実的に考えよう:1人の営業担当者を支える多くの人々

セールスエンジニアの目標給与と歩合給、セールスマネージャーの目標給与と歩合給、給与オーバーヘッド、そして交通費、接待や管理費などその他の費用を全部足すと、営業総コストが出てきます。基本給と奨励金を含むこのコストは、$710,000にもなります。営業1人あたり$240,000よりもかなり大きい数字になります。

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ヘッダー ベース 奨励金 総コスト
アカウントマネージャー 120,000 120,000 240,000
セールスエンジニア 140,000 40,000 180,000
セールスマネジメント 80,000 80,000 160,000
給与オーバーヘッド 70,000 0 70,000
交通費と管理費 60,000 0 60,000
合計 470,000 240,000 710,000

キャパシティプランニング

営業担当者1人が強化期間の各地点でどのくらい収入を稼いでくるかを計算しましょう。こうして、企業としての本当の収益獲得力を推定します。

セールスチームの展開を計画するとき、営業担当者は最初から生産的なわけではないと仮定しなければいけません。下の例では、収益を獲得し始めるまでに4ヶ月かかっています。7ヶ月目に目標を達成しています。

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先ほどの図で見たように、セールス拡大の大きなコストは、新しい営業担当者の強化費用です。「アクセル全開」の高成長期に入ったら、強化期間を削減することに集中しましょう。

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下の図は、強化期間を3分の2にすることの影響を表しています。こうすれば、$14,000,000も売り上げを伸ばすことができます!

まとめ

企業全体でのセールス学習を、企業全体の取り組みとして計画しましょう。営業人員配置に関して、3つの段階に合う人材(ルネッサンス、転換、そして即戦力)をいつ、どうやって採用するべきかを知っておきましょう。営業担当者の強化期間を削減することで収益が大幅に増加しました。

必ずしも思ったより時間と費用がかかるのでしょうか?もし営業の展開と人員配置を営業学習曲線に合わせて計画し、営業の強化時間を削減すれば、必ずしもそうとは限りません!でも、そこに到達するには、営業学習曲線を短縮する事を学ばなければいけません。

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著者紹介

Mark Leslie

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The Sales Learning Curve

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