起業家は「レバレッジ」をかけて外部資源を調達する

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アントレプレナーシップの定義には様々ありますが、そのうちの有力な一つは「コントロール可能な資源を超越して機会を追求する」です。創意工夫をして自分の持っているリソース(時間、もの、お金、情報)を拡大しつつ、自分のリソースが足りなければ外部のリソースを調達して、そのチャンスを追いかけようとします。

起業家が「自らのコントロール可能な資源を超越する」一例は投資家からの資金調達でしょう。起業家は資金調達を通して、資金という外部リソースを獲得します。

このときに意識しておいた方が良い言葉が「レバレッジ」です。

レバレッジとは「てこの作用」のことです。てこの原理を使えば、弱い力で大きなものを動かすことができます。FXなどでもしばしば使われる言葉ですが、FXの場合は担保となる自分の資金を取引保証金にして、その何倍かの金額を取引に使うときにレバレッジをかけると言います。

スタートアップでいえば、これまでの事業進捗を見せて外部からの資源を調達しますが、これは事業進捗をレバレッジにかけて資金を調達していると言えるでしょう。

資金調達以外の面においても、スタートアップにおける外部資源の獲得には、基本的には自分の持っている資源(元手)に対してどうやってレバレッジをかけるか、という視点で考えると良いように思います。たとえば、アイデアの可能性、これまでに生んだ進捗、チームの優秀さ、これまでの評判、著名プログラムへの参加(たとえば Y Combinator への参加)など、様々なレバレッジの元になるものがあります。そのレバレッジの元になるものが大きければ大きいほど、その後に調達できるリソースも大きくなっていきます。

逆に言えば、外部のリソースを得る前には、レバレッジの元をどれだけ生み出せているかがポイントになるとも言えます。

「〇〇で起業するために、共同創業者となってくれるエンジニアを探しています!」と単にアイデアだけで知り合いを口説きまわって、共同創業者が得られた例を私はあまり知りません。しかしプロトタイプやMVPを自分の力で何とか作って、それを持っていろんな人に見せたりしていると、人が手伝いを始めてくれだした、という例はいくつも知っています。プロトタイプを作ったという事実が、その人の本気度や可能性を示す元手となり、それをレバレッジして仲間を集めていけたのでしょう。

資金調達もそうです。事業の進捗を重ねていくことで、その進捗をレバレッジしてさらに大きな資金調達をしていきます。上場して資金を得ることも、これまでの事業の結果やこれからの計画をレバレッジして、さらに大きな挑戦をするために行われるものです。

このように考えていくと、ポイントは「レバレッジをかけるための効果的な元手をどう作るか」ということになります。スタートアップの初期においては、MVPを作る、売上を作る、ユーザーを小規模でも獲得する、といったちょっとした進捗がレバレッジのもとになってくれます。

単に「外部からリソースを獲得する」では陳情や依頼をする、というニュアンスになりますが、レバレッジをかける、という発想になれば、レバレッジのもとになる何かを作ろうという考えに近づいていくはずです。ぜひ最初期の起業家の皆さんは、レバレッジのもととなる何かを生み出してから、外部のリソースを獲得するための動きをしてみてください。その方がリソース獲得の効率も良くなるはずです。

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著者情報

馬田隆明

University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリストとしてスタートアップ支援を行う。2016 年 6 月より現職。 スタートアップ向けのスライド、ブログなどの情報提供を行う。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』。

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