信用の未来 (a16z)

編集注記---- 今週は、a16zのサミット・ウィークなので、ここ数年の講演から私たちのお気に入りを毎日ご紹介します。a16zサミットは招待者限定の毎年恒例の催し物で、テクノロジーの未来について探求、考察しようと、思想家やビルダー、イノベーターたちが集まります。2019年のテーマは「不可避である未来」です。講演の多くは、後日、オンラインにアップされます

2018年のサミットでの講演で、Crypto Dealのパートナー、Ali Yahya氏はCryptonetworkがいかにして中央集権化を終焉させ、信用と人的協力という新しい時代の幕開けにたどり着くかを説明しています。Aliの講演は、動画で見ることもできますし、下記のスライド付きの書き起こしを読むことも可能です。

信用のビルディングブロック

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人類文明の進歩は、規模が拡大し続ける協力の物語です。 人々は政治的境界を越えて住み、異なる言語を話し、根本的に異なるイデオロギーに固執するかもしれません。そういった今日においてさえ、その人々の一層の協力でも解決することが根本的に不可能な、差し迫った人類の問題を想像することは困難です。私たちが構築したものの多く、人類の最大の成功(インターネットや宇宙旅行など)は、真にグローバルな取り組みです。 しかし、このような規模の協力はいったいどうしたら可能なのでしょうか?

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そのような協力を動かしているのは、すべて信用です。 信用はとらえどころのない概念です。 よく使う言葉ですが、実際にはどういう意味なのでしょう?噛み砕けば、何かをしたり、誰かとやり取りしたりするのがうまくいくだろうという、ある種の自信です。

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歴史を通して、私たちが信用を築くために頼ってきたものの種類は劇的に変化しました。 私たちは、遊牧狩猟採集民族として始まり、コミュニケーションするときに本能的に送る生物学的シグナルである顔の表情やボディーランゲージなどに信用を置きました。この信用モデルは「社会」でした。

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その後何千年の間に、教会、学校、地方政府、そして遂には民族国家、企業などの人間による組織が現れました。誰もがお互いをよく知っている非常にローカルな場所から、誰もが見知らぬ人であるほぼグローバルな場所まで、私たちが信用の規模を拡大するのに、それらは大いに役立ってきました。 この信用モデルを「組織的信用モデル」と呼びましょう。 今日の主な信用モデルです。

しかし、私たちは現在、純粋な組織的信用の限界に達しつつあります。 信用している組織が私たちを失望させることはあまりに頻繁に起こっています。最近のWells Fargoのスキャンダル、またはEquifaxのハッキング、Facebookでのユーザデータに関する進行中の事件、他にも関係するところで言うと、10年前の大金融危機のことを考えてください。 暗号についてあなたがなんと言うのかは知りませんが、私はあなたが私に同意してくれると思います。改善の余地はたくさんあると。

私たちのテクノロジー、そして特にソフトウェアは、多くのことを改善するのに計り知れないほどの成功を収めています。 しかし、それは信用の世界を表面的に論じ始めたにすぎません。 インターネットの創設以来、私たちは信用の新しいパラダイムを発見し始めていると、私は主張しようと思います。

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ある種の信用はプログラム可能です。 それはソフトウェアによって可能になり、その保証は人間による組織の権限よりも根本的なものに基づいています。 これが何を意味するのか、どのように機能するのかを説明するために、信用を基本的な積み木にさらに分解する必要があります。

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信用には2つの重要な構成要素があります。 2つの要素が組み合わさり、人々(個々人であろうと1つの組織であろうと)に対する信用と、技術に対する信用の全てを形成します。

1つ目は、生物学的、本能的信用であり、我々の交流の社会的要素です。 特定の顔の表情、認知された社会的地位、ブランドと評判、観察された実績を私たちは信用します。 もちろん、この種の信用を拡大するには時間がかかること、そういった信用を築くには自分を曝け出すのが必要なことが原因で困難です。

2つ目の要素は、物理世界の知識から得られます。 それは数学と物理学のようなものの理解から来ています。 月面着陸のようなことさえ可能だと、私たちに自信を与えるのは、そういった類の信用です。

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これらの2つの要素は、3番目の構成要素を支える積み木として使用できます。 信用を構築するために使用できる3番目の積み木、それはインセンティブ構造です。

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現在、一部のインセンティブ構造は、主に物理的なものから構築されています。

オレンジの円の中にあるものです。 たとえば私たちは、米ドル紙幣を偽造することの物理的な難しさが、ほとんどの人が試みるのを思いとどまらせるのに十分であると信じがちです。それだけの価値が単にないからです。 そしてもちろん、それは偶然にも違法であり、それ自体も阻害要因です。 しかし、先の理由の方が当てはまるでしょう。

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それは人々で構成されています。 私たちのインセンティブ構造のほとんどは、(社会的な構成要素である)人々で構成されています。 法的契約、政府規制、または保険を思い浮かべてください。 または、利用規約が J.K. Rowlingにより作られているわけではない企業と、暗黙裏に交わされている多くの契約について考えてみてください。

今日の問題は、制度が信用の唯一の番人になっていることです。 私たちは彼らに協力することに強く依存しています。 この最たる例が、金融システムです。

今日の信用の番人としての金融機関

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現在の金融システムでは、トランザクションの整合性は、その中央に位置する人間社会(銀行)の信用性に依存しています。

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そして、私たちが銀行を信用する唯一の理由は、銀行には実績があり、評判があり、その周りに法的なインセンティブ構造があるからです。 例として、クレジットカードを取り上げます。 あまり安全ではありません。 しかし、あなたがそれらを信用しても良いと思う理由は、誰かがあなたのカードに何かを請求した場合、あなたは事後、異議を唱えることができるからです。 信用できる人間だけで構成されるチームがすぐに関与し、返金されます! 現在の金融インフラストラクチャに対する信用は、テクノロジーではなく、人間主導の償還が為される可能性に基づいています。

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この信用の制度的モデルは、先進国では機能しますが、80億人にまで拡大することはできません。 Katie Haun暗号に興味を抱いた理由についての講演で述べたように、今日の世界の20億人は銀行口座を持たず、クレジットカード詐欺の被害額は昨年1900億ドル、株式または国債に投資しているのは世界の5%未満です。ここで、この限られたシステムとは対照的に、信用がどのようにして異なった様式で働くことができるのかという例を示したいと思います。

オープンソースとしてのインターネットと信用

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インターネットは、信用が主として制度に基づいていない、最初の、または、最初でなくとも初期の、協力のグローバルシステムの1つです。

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インターネットの初期のプロトコルは美しいものでした。それをWeb 1.0プロトコルと呼ぶことにしましょう。TCP、IP、SMTP、HTTPは、開放性と包括性の精神を持って70年代および80年代に設計されました。 それらはオープンなスタンダードでした。 これは、どこの誰でも、対等な立場で、誰の許可もなしにその上に構築する能力を持っていることを意味します。 適例としては、何百ものオープンソース実装が存在することがあります。 スマートフォン内のこれらのプロトコルのコードは、それがiPhoneでもAndroidスマートフォンでも、オープンソースコードに直接基づいています。

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考えてみてください。分裂した多数のばらばらのネットワークではなく、単一のグローバルなインターネットが今日存在することは、人間の信用と協力の偉業です。その多くが競合するインセンティブを持つ数百の国と数千の企業が、互いに接続できるようにまったく同じプロトコルを最後まで実行することで、魔法のように結束しました。

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長年にわたり二極化した世界では、どのようにこれを説明できるでしょうか?それはまさにオープンソースの結果でした。インターネットのコアプロトコルがオープンソースであったため、誰も一方的に制御することはできませんでした。この出現とサポートはボトムアップであり、ほとんどがニュートラルでした。それらが安定していて公平な場となり、その上にインターネットのエコシステムを構築することができました。

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その出現は、イノベーションの黄金期につながりました。起業家やその投資家たちは、ゲームのルールが中立かつ公正なままであろうことを信じることができます。しかし、もちろん、オープンソースは収益化が難しいため、これらのスタートアップのビジネスモデルは、インターネットのオープンプロトコルの上に独自のクローズドプロトコルを構築することに依存していました。これらはWeb 2.0のプロトコルでした。

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これらのスタートアップの一握りは、それ以来、人類の歴史の中で最も価値のある企業のいくつかとなっています。その内のいくつかは聞いたことがあるかもしれません。そしてもちろん、これらの企業のおかげで、何十億人もの人々が素晴らしい新技術に、大部分は無料でアクセスできるようになりました。本当に驚異的なことです。最近では、これらの企業のそういった功績が十分に認められていません。

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しかし、重大な警告があります。web2.0の技術系最大手企業たちは、インターネット上の信用できる新しい仲介者および番人になりました。 Web検索、人とのつながり、メディアの共有など、今日インターネットで行っていることのほとんどにおいてです。現在、これらの企業が作成した独自仕様の不透明なコードを大いに信用することを余儀なくされています。

その結果、これらの企業は現在、ユーザやサードパーティの開発者に対して大きな力を行使しています。プラットフォーム上のユーザ間の各々全ての交流、各ユーザが円滑にイグジットし、他のプラットフォームに切り替える機能や、発見し、配信を行うコンテンツ作成者の将来性、すべての資本の流れ、およびサードパーティ開発者とそのユーザ間のすべての関係。すべてのデータを制御できるおかげで、彼らは以上のものをコントロールしています。

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また、彼らはゲームのルールもコントロールします。これらの企業は、いつでも、警告なしに、ほぼ完全に彼らの条件で、プラットフォームで許可されていることについてほぼ何でも変更できます(そして実際にそうします)。多くの場合、その過程で企業全体の権利を剥奪します。

Facebook、Zynga、Twitter、Google、Yelpなどのヘッドラインを見てきました。 Web 2.0の巨大企業は、信用の方程式に再び登場しました。わたしたちは、この信用モデルから…

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…こちらのモデルに移行しました。

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これまでのインターネットの物語は、以下の両方の役割を果たしてきました。ソフトウェアプラットフォームがオープンでニュートラルなときにどれだけの価値創造が可能なのかというインスピレーションとしての役割です。そして、少数の営利目的の人間社会に過度の権力と信用が置かれた場合に何が起こるかについての教訓としての役割です。

Web 2.0の信用モデルは、Web 1.0の信用モデルとは異なります。 GoogleがTCP/IPとHTTPの上に構築されたのと同じ方法で、Googleサイズの会社がGoogleの上に構築されるとは考えられません。では、番人に依存しない信用モデルに戻るにはどうすればいいのでしょうか?言い換えると、「悪にならない」から「悪になりえない」に変わるにはどうすればいいのでしょうか?

Cryptonetworkが信用を構築する方法

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さて、私たち全員が待っていた瞬間です。cryptoについて話しましょう。このプレゼンテーション全体は、Cryptonetworkという1つの大きなアイデアで手短に述べることができます。

Cryptonetworkは、信用を促進し、かつてない規模での協力を促進する可能性のあるテクノロジーです。それらは、制度的な信用からプログラム可能な信用へと移行するのに役立ちます。テクノロジーについて話しましょう。Cryptonetworkは、Web 1.0のオープンプロトコルと、暗号化の積み木の上に構築されます。

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暗号について考えるシンプルな方法は、データを信用できるものにする方法を研究する数学およびコンピューターサイエンスの分野です。さて、「暗号 (crypto)」と聞くと暗号化について、物事を秘密にすることについて考えたいと思うかもしれません。しかし、今日の暗号の最も重要なアプリケーションは、秘密とは何の関係もありません。そうではなく、データの改ざん防止を行います。たとえば、デジタル署名は、現代の暗号化の突破口であり、これにより、あなたは私が送ったメッセージが本当に私からのものであると、(数学的に)確信できます。

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デジタル署名とWeb 1.0のオープンプロトコルは強力な組み合わせであり、今日のインターネットを可能にするために長い道のりを歩んできました。しかし、それらだけでは真のソフトウェアプラットフォームとして機能するための完全なレゴブロックのセットではありません。欠落しているプロトコルがあります。たとえば、データの保存には役立ちません。また、そのデータ上で計算を行うことについても同様です。

Web 2.0の技術系最大手企業は、この業界に参入し、足りないプロトコルのクローズドソースバージョンを提供することにより、素晴らしいビジネスを構築しました。

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しかし、私たちが必要とするのは、Web 1.0のプロトコルのようなオープンなプロトコルのセットです。これらにより、ユーザデータ(データベース)の共有リポジトリが作成されます。このリポジトリは、ニュートラルであり、ユーザ自身が集合的に所有します。それはどの人間社会もこれをコントロールしていないことを意味します。

さて、もちろん、誰かがそれを公正に保つ仕事をしなければならないので、そのようなデータベースを構築するのは難しいです。従来、私たちはデータベースを安全に保つために、銀行や政府だけでなく、技術系最大手企業などの仲介者に頼ってきました。代わりに私たちが望むのは、データベースへの信用が数学と物理学に基づいていることです。言い換えれば、それは自己管理的でなければなりません。

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ほぼ10年前、Bitcoinのレポートが公開されました。

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Bitcoinの背後にあるアイデアは、デジタル署名、web 1.0のオープンプロトコルなどの原始的暗号と非常に巧妙なインセンティブ構造を活用して、Bitcoinトランザクション(支払い)の共同所有の中立的データベースを構築することです。

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さて、このデータベースの真に斬新な点は、その安全性が、誰でも、どこでも、誰の許可もなしに参加できるユーザによりボトムアップに実現されることです。つまり、データベースの制御は文字通り分散化されています。番人はいません。課題は、もちろん、それらの参加者の多くが間違いなく不誠実であり、利益のためにはむしろ、出来ることならシステムに挑戦したいと思っているということです。Bitcoinの凄いところは、それを自己管理するインセンティブ構造です。このしかけについて少なくとも知識を持っていることは有益です。

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Googleが所有する信用できるデータセンター内にデータベースの単一のコピーを保持する代わりに、ネットワークの各参加者が独自のコピーを保持します。しかし、そこには問題があります。どうすればデータベースのすべてのコピーの一貫性を維持し、誰も不正なトランザクションを差し込めないようにできるでしょうか?

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答えは、マイナーと呼ばれるネットワークの各参加者がネットワークを監視し、有効であると考えるトランザクションのセットに投票することです。工夫は、彼らが自分のコンピューターの処理能力で投票することです。アリスという人がいるとします。彼女はマイナーです。彼女がネットワークに提供する処理能力が高いほど、ネットワークがより安全になるのを助けています。その結果、プロトコルはより多くの投票力とより大きなリワードを提供します。

重要なことは、アリスに支払われるリワードは、新たに造幣されたBitcoinです。そのため、1回の行程で、 Bitcoinは一種のお金として活気づき、同時に、独自のセキュリティを強化する資金源としても機能します。

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このアイデアは、プルーフオブワークとして知られています。その優れている点は、あなたが投票し、支払いを受けるためにデータベースのセキュリティに貢献しなければならないということです。その結果、洗練されたインセンティブ構造が得られ、ネットワークの参加者がお互いをチェックし合うようになります。そのため、お互いを信用していなくても、彼らは共同でセキュリティを支援しているデータベースを信用するようになります。

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Bitcoinは、可能な限り最も単純な cryptonetworkです。それは、お金に信用がないという問題に対処しようとしています。その正当性と裏付けは、人間社会ではなく数学的保証に依存しています。そして、これらはすべて素晴らしいことです。しかし、誰かがやって来て、ある疑問を発しました。このアイデアで、単なるお金よりも面白いことができますか?

クリプトスペースの革新

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2014年に、 Ethereumが開始されました。そこには、Bitcoinがお金のためだけのデータベースでなければならない理由はないという刺激的な見解があります。そして、そのデータベースの更新が単なるトランザクションである理由はありません。これらの更新が、コンピュータープログラム全体でもありえます。したがって、Ethereumは単なる分散型データベースではありません。

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それは、分散型の共同所有の世界規模のコンピューターです。

その上で実行されるプログラムは、いったん展開されると共同所有されます。それらを制御する人間の組織はありません。ある意味で、それらは独立しています。一度書かれたら、誰の権限にも従わず、書かれたとおりに素直にプログラムを実行します。しかし、なぜこのような独立したプログラムが必要なのでしょうか?

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さて、簡単に推測できるかもしれませんが、これらの有用性は信用に関係しています。この種のプログラムはオープンソースであるため、誰でもほかの人がやっていることを見ることができます。世界的なコンピュータでの実行が正しく行われることは、トランザクションがBitcoinで有効であることが保証されるのと同じ方法で、数学的に保証されます。そのため、これらのプログラムは、積み木として使用できます。それは仲介機関を必要としない完全に見知らぬ人同士による、法的強制力のある契約または「スマート・コントラクト」という積み木です。

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初めて、信用をプログラムできるようになりました。

実際にできることの例をいくつか見ていきましょう。

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このアイデアの独創的なアプリケーションは、ドルに対して安定している価格の暗号通貨(Dai)です。 1Daiは常に1ドルの価値があります。これがMakerが構築しているものです。暗号通貨としてのDaiの美しさは、Bitcoinが提供するすべての利点を持っていることで、しかも価格的にも安定しています。その安定性により、銀行を持たない20億人またはハイパーインフレの国の数億人が認める、デジタルの代替手段となる真のチャンスがあります。 Makerはほぼ1年前にDaiを立ち上げました。それ以来ずっと流通しており、固定相場を維持することに成功しています。さて、あなたはこの考え全体が不可能であると思うかもしれません。つまり物の価格は常に市場によって決定されますよね?しかし、Daiの背後にあるアイデアはクレバーです。

どうしてでしょう? Daiは、Ethereumの世界的なコンピュータで実行されるプログラムです。新しいDaiトークンを作成し、十分な担保を提供する意思のある人にローンとして提供します。担保は、そのようなローンとして他の暗号資産の形をしています。新しく造幣されたDaiトークンは、ドルであるかのように取引できます。プログラムによって保持されている担保によって完全に支えられているため、これらは健全です。しかし、もちろん、ここに明らかな問題があります。ボブの担保の価値が下がり始めるとどうなるでしょうか?これがソフトウェアの魔法の始まりです。ボブのローンのリスクが高くなりすぎると、すぐに担保を所有する能力がプログラムにあり、それを借りられていたDaiの代わりに売却し、ボブのローンを閉鎖することができます。これにより、Daiの流通が停止し、未決済のすべてのDaiを支えるために、プログラムが常に十分な担保を保持することが保証されます。

これについて少し考えてみましょう。 Daiは、単に価格が安定した暗号通貨ではありません。信用できる人間の仲介者、銀行が必要なく、ローンの発生、マージンコールの行使が完全にソフトウェア上で行われる融資プラットフォームでもあります。今、私はあなたがどう思うかは知りませんが、これは本当に素晴らしいと思います。Daiが垣間見せてくれるの未来は、本当に私を毎日ベッドから出て仕事へ向かわせてくれます。

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さらに融資のアイデアを見てみましょう。 Compoundは、一種のマネーマーケットとして機能するEthereumの世界的コンピュータ上で実行されるプログラムを構築した会社です。誰でも暗号化資産をプログラムに貸すことができ、プログラムは代わりにその暗号化資産を他の人に貸し出します。金利はアルゴリズムによって設定され、再び、人間の仲介者に信用が置かれることはありません。

次に、貸し借りできる安定した通貨としてCompoundをDaiと組み合わせ、使いやすいユーザーインターフェイスを追加した場合に、あなたができることを考えてみてください。これは消費者銀行のように見え始めます。しかし、エンドツーエンドで完全にソフトウェア上で構築されたものです。

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単なる金融を超えた話をしましょう。プログラム可能な信用で他に何ができるでしょうか? 1つの例は、Filecoinのようなプログラム可能な市場です。私のラップトップの予備ストレージスペースをあなたに貸すことができます。あなたはFilecoinでそれに対価を支払うことができます。重要なことは、あなたと私は完全に見知らぬ人で、別々の世界に住んでいてもいいことです。 Filecoinの数学的ルールとインセンティブにより、あなたは私があなたのファイルを保存していることを、そして私はあなたのファイルを保存することにより支払いを受けることを信用することができます。繰り返しますが、これは仲介者なしで機能します。プロトコルのみです。

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これはCryptoKittyです。私は期せずしてこのCryptoKittyを所有しています。そして、やはり期せずして、私はこのCryptoKittyに認めるのが恥ずかしいほどのお金を払っています。したがって、このCryptoKittyは私のものです。それはある種のデジタルで収集可能なビーニーベイビー、またはたまごっちのようなものです(これらの言葉のいずれかがあなたに通じる場合)。

ここでの違いは、これが純粋にデジタルであり、それを私が所有していることを世界が認識していることです。考えてみてください。テクノロジーを使用して、誰もがどれだけのBitcoinを持っているかを追跡できるのか。しかし、ポケモンのようなオンラインゲームで主役を演じるすべての愛らしい猫の所有者を追跡するためにも、あなたはそれを使用します。そうしない理由はないでしょう?何が起きたとしても、たとえ CryptoKittiesを作った会社が消滅したとしても、この子猫は私のものです。この猫に対する私の所有権は、Ethereumブロックチェーンに焼き付けられます。私はそれを他の人が作ったゲームに持ち込むことができます。そして、それが新しいところです。これは、Webベースのゲームの新しいパラダイムのほんの始まりに過ぎません。

Web 3.0のCryptonetwork

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この分野の技術はまだ非常に初期の段階です。まさに始まりです。まだ数え切れないほどのビルディングブロックが欠けています。多くの問題があります。パフォーマンスの問題、未だ完全でないプライバシーの問題、防護と暗号カギの監督の問題、アイデンティティの問題、プロトコルの管理の問題、開発者の問題、そしてユーザ体験の問題です。リストは続きますが、これらの問題が徐々に解決されるにつれて、この新しいレゴブロックのセットを使用して、それ自身がプラットフォームとなる検索エンジンやソーシャルネットワークのような複雑な物のような、今日ではほとんど想像できないものを構築することが可能になります。 Web 1.0のプロトコルと同様に、Web 3.0のcryptonetworkはオープンソースであり、共有されており、中立が保たれることを信用できます。

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私たちはこれを、これまでのインターネットのスタートアップエコシステムよりも大きくないにしても、同じくらい大きなイノベーションの別の波の基盤と捉えています。

すべての議論がされ、できることがすべてなされたとき、最終的にこの波がどのように見えるかは想像もできません。しかしすでに進行の始まりを見ることができます。それは、私たちの金融システムの非効率性の解決策から始まります。 そして、Filecoinのような完全にプログラム可能な市場になっていきます。 更には、CryptoKittiesなどの最初の暗号化対応ゲームへ。最後に、未開拓のWeb 3.0のプラットフォームとして機能するインターネットのアーキテクチャへ。

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これは、コンピュータの根本的に新しいパラダイムです。私たちはメインフレームからパソコン、スマートフォンの時代に、そして今では cryptonetworkに移行しました。これまで聞いたことのなかったこの新しいパラダイムの重要な特徴は、信用がソフトウェアになり、プログラム可能であることです。

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また、 cryptonetworkは、プログラム可能な信用を通じて、前例のない規模で人間の協力を可能にする支えになります。信用は分離され、分散化され、逆さまになりつつあります。組織から個人へとトップダウンで流れるのではなく、個人とソフトウェアからボトムアップで流れ始めています。

 

著者紹介

Ali Yahya

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The Future of Trust (2019)

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