クラウドコンピューティングの終焉 (a16z)

編集後記——今週はa16zのサミット週間なので、毎日、過去数年間の私たちのお気に入りの講演の一部を紹介しています。a16zサミットは、招待者対象の年次イベントで、思想家、住宅建築業者、イノベーターが集まり、テクノロジーの未来を探り、検証しています。私たちの2019年の主題は「未来は不可避」というものです。ここで登録すれば、今年の講演が生配信される時に通知を受け取ることができます。

2017年サミットのこの講演では、ゼネラルパートーナーであるPeter Levine が、クラウドテクノロジーがいかにエッジクラウドモデルへと変化しているかを説明しています。以下では、Peterの講演の動画を視聴するか、またはスライド付きの書き起こし原稿を読むことができます。

私が未来をどのように予想しているかを、少しだけご紹介したいと思います。うまいことを言うつもりはありませんが、皆さんにクラウドコンピューティングのエッジ(終焉)までお見せします。皆さんが考えていることは承知しています。まだ始まってもいないクラウドコンピューティングが終わりに近づいているなんてどうして言えるのでしょうか。皆さんは私をクレイジーだと思っていると思います。

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もし私が20年前にここに立って、Microsoft Windowsが将来的になくなってしまう、あるいは30年前にDigital Equipment Corporationが廃業する、あるいは、15年前にSun Microsystemsがここにないだろう、と話していたとすれば、皆さんはおそらくここで同じ反応を見せ、「なんてことだ、あの男はイカれてしまった。名前の挙がっている企業、指摘されているテクノロジーは、永久に消えないよ。」と言うでしょう。

投資のフォレスト・ガンプ・ルール

テクノロジーで人気のあるものは全て、常に他のものに取って代わられます。この業界の美点は、物事が実際に過去のものとなることであり、投資家としての私たちの仕事の一部は、アイスホッケーのパックが今ある場所に注目するのではなく、将来どこに行くかを探ることです。通常は5年か10年先です。会社が大きくなるには時間がかかりますが、絶好のタイミングでパックを打たなければなりません。

未来を予想したいなら、私が皆さん全員にお勧めするのは非常に単純なエクササイズです。現在重要なものを抜いて、そこを別のもので埋めてください。個々の結果に注目するのではなく、型にはまらない考え方をするようになります。何かを抜いたら、皆さんは実際に、こうでもしなければ思いつくこともなかったような別次元のもので埋めることができると私は確信しています。

私はこれをフォレスト・ガンプ・ルールの投資と呼んでいます。とても単純なことです。ただ何かを抜いて何かで穴埋めする。約半年前に、私はこのように思い始めました。「クラウドコンピューティングがなくなったらどうなるのだろうか。今、とても人気があるけれども、なくなってしまうことなんてあるだろうか。」しかし私は、気づけばすぐ目の前で、実際にそれが起こっていると思っています。その理由を説明させてください。

クラウドの変化

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現代の世界は中央集権型の世界であり、すべての処理がなされるのは中心的クラウドです。Googleサーチをする時や電話に何かを打ち込んだ時にはいつでも、情報の小さな断片がクラウドに返され、処理されます。その後、情報が電話に戻ってきます。これらすべてが中心的な役割を果たす場所で処理されます。モバイル・デバイスがある程度までは、クラウド自体に何が起こっているかを伝えるターミナルや伝達手段になっています。私たちは極めて中央集権的な世界に生きています。

クラウドコンピューティングの終焉に関して言えば、私はこのように考えました。「そう、私たちのモバイル・デバイスはもっと洗練されたものになるかもしれない。」この部屋の誰かにメッセージを送る時、メッセージがその人に直接届くわけではありません。ノルウェーのどこかのデータセンターに送られ、ここに戻ってきます。

私はこのように思い始めました。「たとえクラウドが必要だったとしても、次世代はモバイル・デバイスが担うかもしれない。」けれども、冷静に考えれば、これは袋小路です。そして、このように考えました。「そう、最終的に抜きん出るのはモバイル・デバイスではなく、エッジにあるその他のすべてのものであり、それがクラウドコンピューティングを真に変化させ、私たちがクラウドとして知っているものに終焉をもたらすのだ。」

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変化するのは、ネットワークの端末(エッジ)がはるかに高度化されるということです。大まかに言えば、モバイル・デバイスではなく、IoTによって。

これからの10年間でこれから作られるドローン、ロボット、すべてのIoTの対象物については、多くのことを耳にしているのはわかっています。自動運転車は陸上を走る効果的なデータセンターであり、ドローンは飛行するデータセンター、ロボットは腕と足を持つデータセンター、ボートは水に浮かぶデータセンターなど、枚挙にいとまがありません。

これらのデバイスは、膨大な量の情報を収集しており、その情報はリアルタイムで処理する必要があります。そのような情報には時間の余裕がなく、それを中心的なクラウドに戻し、現在のGoogleサーチと同じようにそのクラウドで処理することは不可能です。この変化は、私たちが認識しているようなクラウドコンピューティングを無用のものにするでしょう。

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これは、現代の高級車の配電盤です。自動運転車のものではありません。その中には約100CPUがあります。今や、それほど遠い将来のことではない自動運転車には、100から200の配電盤が搭載されるかもしれません。これらの何百という接続された車載コンピューターはデータセンターになります。何千もの車を同時に接続することを考えた場合、エッジは巨大な分散型コンピューティングシステムになります。過去に経験したように、私たちは分散型コンピューティングの次の世界に突入しようとしています。そこでは、クラウドではなく、このような高度化された端末デバイスによって処理がなされます。文字通りの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」です。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」——データ駆動型の変化

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興味深く、注目に値するのは、これが実際にすべてデータに関することだという点です。コンピューター史上初めて、私たちは自分たちの環境に関する現実世界のデータを収集しています。視覚情報、位置情報、加速度、温度、重力などです。私たちは、非常に高度化したセンサーによって、自分たちを取り巻く世界のデータを視覚的に収集しています。

これまでのコンピューティングは、基本的には人間がキーボードを使用するか、コンピューターがログ・ファイルまたはデータベースの情報を生成するかによって成立していました。しかし、これからのコンピューティングが収集するのは世界に関するデータであり、それは膨大な量に上ります。

リアルタイムの情報処理は、現実世界の情報が収集されているエッジでなされることが必要になるでしょう。私たちが自動運転車で現実世界の情報収集を行っているとしましょう。画像データを収集しますが、画像データの中には停止の標識があります。私たちはそのデータを取り込み、クラウドに送ります。停止の標識があったり、道路を横断する人がいたりすることを判断するためです。クラウドが情報を送り返し、「ほら、止まらないといけないよ」と告げる前に、車は信号を無視して走り、10人の歩行者を轢くでしょう。現実世界の膨大な情報量を前提にすれば、リアルタイムという概念は非常に重要な構成要素です。

私たちは文字による情報を話題にしているのではありません。これは動画やストリーム配信の情報に関する話です。これら両方が一緒に機能する必要があります。そして、この変化をもたらすのは間違いなくデータです。

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私は分散型コンピューティングに言及しました。さて、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の話題に戻します。コンピューティングの流れを考えるなら、現代のコンピューター時代の始まりは大型汎用コンピューターです。それは中央集権型でした。 その後私たちは、80年代から90年代にかけて、分散型モデルのクライアント=サーバー・モデルに移行しました。モバイル=クラウド・モデルで私たちは、再び中央集権型に戻りました。そして今は、信じようが信じまいが、エッジインテリジェンス分散型コンピューティング・モデルに回帰しつつあります。これは間違いなく中央集権型から分散型のコンピューティングへと向かう動きに従うものです。

こうした動きが起こるたびに、私たちはそこにおびただしい数のユーザーとデバイスを取り込んできました。最善の事例の筋書きでは、1万台の大型汎用コンピューターと、そのそれぞれに1,000人の利用者がいました。従って、大型汎用コンピューターには最大で1,000万人の利用者がいたことになります。パーソナルコンピューターに移行した時、その利用者は20億人でした。私たちはユーザーの数が桁違いに増加するのを目の当たりにするようになりました。

いままでの私は、働きかけが可能なコンピューティングの市場総数は、地球上の人口に等しいと考えてきました。結局のところ、ひとたび人類全員がモバイル・デバイスを手にしたら、さらにコンピューターが必要となる理由はないと思っていたからです。

ところがIoTは、実際に私たちを全く新たな次元へと導いています。コンピューターはもはや人間に紐づけられるものではなくなったからです。地球上のすべての人が携帯電話を持っているとしましょう。全部で約70億個の端末になります。これに対して、何兆ものデバイスが存在する世界を想像することができます。ほどなくして私たちは機会だけでなく、管理、セキュリティ、データの課題、分散型コンピューティングのあらゆる問題に直面するでしょう。車やドローンですでに起こっています。そして、そう遠くない将来、他のデバイスでも同じことが起きるでしょう。

エッジにおける機械学習

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他の構成要素として、機械学習と私たちが収集する端末データの交差する領域があります。
機械学習はエッジへの取り込みを促進すると私は信じています。現実世界には、その微妙な情報を解読するために、機械学習の手段を必要とするような膨大な量の情報があります。画像や、膨大な量のデータを調べることが可能な唯一の方法は機械学習です。機械学習のアルゴリズムや機械学習を採用しているアプリケーションは端末で機能するでしょう。しかし、機械学習がクラウドで運用されることにはなりません。それなら、この場合、クラウドどはどのようになるのでしょうか。

クラウドは、情報が最終的にストレージされる場、そして学習が起こる場としての役割を担うことになります。重要な情報は依然として中央集権型クラウドに蓄積されることになりますが、この新しい世界の情報処理の多くがエッジに移行し、そこで最も重要な決断が下されることになります。

これは重要です。人間は決断を下すことが下手だということは、よく知られた事実だからです。私はTeslaを所有しており、自動化の世界に向けて非常に単純な一歩であるAutopilotは途方もなく有益だと思っています。私のAutopilotは、すべての欠点をもってしても私自身よりも運転が上手です。私はメッセージを送ったり、子供たちに怒鳴ったりしているため、ひどい運転をしますが、Autopilotにはそのような問題は皆無です。ただ道を進むのみ。私たちがデータに貢献している度合いよりも、データや機械学習が私たちにとって有益である度合いの方が高いことがわかります。

エッジで起きること

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エッジの中身を紹介させてください。そして、そこで何が起こっているか、また、クラウドで集中的に起きていることについて話をさせてください。

エッジでは3つのことが起きています。センシング、インファー(推量)、アクションです。ここには戦闘機操縦士との、非常に興味深い類似点があります。一流の空中戦操縦士であるJohn Boyd大佐は、OODAループと呼ばれるフィードバックループを発明し、操縦士の訓練に用いました。 OODAは、観察 (observation)、情報への適応 (orientation)、意思決定 (decision)、行動 (action) を意味しています。基本的には、戦闘機操縦士の思考に空中戦における情報処理のための最速の意思決定ループを持たせることにより、全ての戦闘で勝利することができるというものです。ループへの反応が早いほど、勝利の可能性が高くなります

OODAループは力よりも敏捷性を優先しました。この新たなエッジ・コンピューティングの枠組みについて考える時、力よりも敏捷性が重要なのは本当だということがわかります。端末デバイスは決してクラウドほど力強いものではありませんが、私たちは敏捷になることはできます。情報のループはすばやく端末に送られ、必要な情報のみを処理するからです。私がセンス・インファー・アクト・ループと呼ぶそのループは、時間の経過とともに、新しい情報に対してさらに迅速かつ正確になるでしょう。情報処理と機械学習の性能が向上するからです。この新世界と、戦闘機の操縦士の枠組みの間には大きな類似点があります。

一方、クラウドは集中型学習専門になるでしょう。私はすべての情報をエッジで取り出し、これらのデバイスと接続します。学習がクラウドで集中的に行われている一方、私は情報を管理し、エッジで機能する正確で敏捷性に富んだループをつくるために、その情報をそれぞれの端末デバイスへと戻します。

エッジで起きること―—センス

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まず一つ目はセンスです。センサーにはカメラ、深度センサー、レーダー、加速度計などがありますが、それらはどこにでも存在し、膨大な量の情報を生成するでしょう。自動運転車は、1マイルごとに約10Gバイトのデータを生成します。大量のデータです。Lytroカメラはカメラ搭載のデータセンターで、1秒あたり300Gバイトのデータを生成します。センサーは、車やカメラなどの複雑なデバイスのみならず、まさにほぼすべてのものに搭載されるでしょう。

私はここにランニングシューズの写真を載せています。そう遠くない将来、ランニングシューズにもセンサーが搭載されるからです。そのシューズを履いて走ると、センサーが情報収集し、非常に迅速なループの機械学習アルゴリズムが機能します。これにより、シューズは次のように指示します。「ほら、丘を走ります。歩幅を小さくしてください」、「きのうに比べて調子がよくありません」、「今日はおしまいにして帰宅し、休んでください」。ランニングシューズのような単純なデバイスでも、周りの世界についての多くの情報を生成することができます。

データ収集は非常に有益であると同時に、毎回クラウドにデータを戻すには量が多すぎます。車で1マイルごとに10Gバイトのデータを集中型クラウドに戻し、処理させることを想像してみてください。それはクラウドの範疇ではありません。エッジで処理されるべきです。

エッジで起きること——インファー

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二つ目はインファーです。エッジで収集されるデータは、極めてまとまりのないものです。私たちが、非常に多様でまとまりのない、これほど大量のデータを目にしたのは初めてのことです。インファーは、機械学習がデータ自体から関連性を抽出する時に起こります。データには、停止の標識、人、木、ランニングの歩調などあらゆるものが含まれます。インファーを通じて、私たちは、特定の作業についての強力な認識を得ることになります。ここでも、訓練とデータを通じて、ループの正確さを常に向上し続けることが必要となります。

エッジで起きること——アクション

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アクションは、センスとインファーに続く最後の要素です。安全に関わる重要な反応を、エッジシステムが示すには、リアルタイムのデータ決定が必要になります。クラウドからの反応を待っていては遅すぎるでしょう。

世界が分散型コンピューティングの第一波に突入した時に私はそこに関わっており、論点は全く同じでした。机の上にワークステーションがあり、エッジでデータ処理ができたとすれば、集中型のサーバーに情報が戻るのを待つ必要はありません。データは端末で蓄積し、処理はデータの近くで行われます。IoTデバイスがさらに洗練され、賢くなっているため、センサーとコンピューティングの性能は向上するでしょう。 その始まりをたった今、私たちは目撃しています。将来的には、センサーと機械学習についてのアルゴリズムが生み出されるでしょう。収集されるデータ量の観点で言えば、さらに複雑になるでしょう。

クラウドで起きること——学習

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ではクラウドでは何が起きているのでしょうか。クラウドは、このような情報すべてに関するトレイニングセンターになっています。機械学習の基本要素の一つは、学習するために大量のデータが必要だということです。この新たなエッジクラウド・モデルでは、大量のデータが集中型リポジトリに入り、その情報に関しては賢くなります。私たちは自動車が収集した無数の情報を手にするかもしれません。そしてその情報はエッジで管理さるでしょう。すべての情報が戻ってくるわけではありません。クラウドは重要な情報だけを保管し、学習によって端末デバイスにそれが伝わります。

このように物事は洗練されるのです。クラウドには目的があり、なくなることはありません。SaaSのアプリはクラウドで機能し続けるでしょう。しかし、この新しいモデルは、それを全く新しい次元へと進ませます。

新たなエッジクラウド・モデルにおける機会と課題

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これより先に起こることの予測をここに挙げます。

センサーデータの爆発的増加がクラウドの機能を妨げます。センサーは途方もない量のデータを生成し、既存のインフラではその量または速度を扱い切れないでしょう。データはエッジに蓄積され、コンピューティングはその端末でデータと一緒に動くことになります。私たちは間違いなく、ピア・トゥ・ピアのコンピューティング・モデルに向かっています。そこでは端末デバイスが相互に接続し、分散型コンピューティング・モデルに近いような端末デバイスのネットワークを作ります。

これはネットワークやセキュリティなど、様々な方面に影響するでしょう。端末デバイスは、集中型の情報プールなしでコミュニケーションをとり、情報を処理します。データ収集のセキュリティ上の課題や、何兆もの端末デバイス同士を接続させることに伴うネットワーク上の課題は、コンピューティングの次の時代における機会とも、難題ともなりうるでしょう。

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私たちの世界は、データ中心プログラミングの世界へと変わろうとしています。私は、クラウドがこの新たなモデルに吸収されると考えています。現在、私たちはすべての人に論理のコード化を教えています。しかし、私たちはデータを実際の問題解決に利用するようになるため、次世代のコード作成者は、数学者やデータ分析家でなくてはいけません。このような特殊な情報に基づき、私たちに必要となる人材のタイプには変化が起きることになります。私はまた、特にデータ処理とデータ分析に関して、ユースケースに特化した、新たなプログラミング言語が開発されるだろうと信じています。

性能は向上し、価格は低下する

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そして、最終的には、エッジの処理能力が向上するに連れ、価格は低下するでしょう。私たちはあらゆるコンピューティングの変化で、それを目にしてきました。携帯電話のサプライチェーンについて考えれば、200億台の携帯電話がこれまでに販売され、50億台が使用されています。巨大なサプライチェーンです。メモリ、CPU、ネットワークといった携帯電話のすべての部品が、非常に低料金になっています。なぜなら、これまでに200億台の携帯電話が製造されているからです。

IoTデバイスが何十兆台もある時代を想像してみてください。サプライチェーンの影響力は、処理能力とセンサーを商品化する際に役立ちます。このことを示すちょっとした事例証拠として、次のものがあります。現在のiPhone 7には、ABトランジスターが33億あります。1993年のオリジナルのPentiumプロセッサーには、Mトランジスターが310万ありました。当時と今で、能力がどれほど向上したかについて考えてみてください。この先、それは加速する一方です。

コストの点で見れば、私たちは、既に、ランニングシューズに搭載できるほどセンサーの価格が低下しているのを目の当たりにしています。10万ドルのセンサーはランニングシューズには搭載できません。搭載しても皆さんがランニングシューズを買うことはありません。LIDARは、自動運転車の探知機に使用されています。Google Carの上部に搭載されているのを今までに見たことがあるでしょう。Google Carに初めて搭載されたLIDARは7万5,000ドルでした。今や500ドル弱です。自動運転車が解禁される前から、すでにこのような状況なのです。LIDARは近い将来、50セントになると断言します。

文字通り、あらゆるものにセンサーを付けることができます。シューズから、メガネ、耳にいたるまで、どこにでもです。では、性能が桁違いに向上し、価格が低下したらどうなるでしょうか。すべてが接続されるに違いありません。

つながる世界

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世界全体がITの領域になります。CIOやIT管理者としての自分の仕事が楽になったと考えている人にとっては、これは生涯最大の機会になるでしょう。50億台のデバイスから、すべて一緒に管理と調整することが必要な1兆台のデバイスへと、仕事の対象が変わります。すべての産業がこれに影響を受けます。仮に私が保険業界にいて、家屋の検査のためにドローンの一隊を使用しているとしましょう。誰がをそれらを管理するのでしょうか。私たちが消費者向けのアプリケーションだと思っているものと、企業の管理能力とを結びつけたようなアプリケーションが、非常に多く登場するでしょう。

私たちが80年代終わりから90年代にかけて分散型コンピューティングで目にしたように、そして大型汎用コンピューターやクラウドで目にしたように、大きな混乱期がすぐそこまで来ています。それはネットワークやストレージ、コンピューティング、プログラミング言語、セキュリティ、そしてもちろん経営に影響を与えることになります。私は、コンピューティングの世界の大変革に備えておくことを、皆さんにお勧めします。それはすぐ目の前で起こりつつあります。さて、これでもまだ、私をクレイジーだと思うでしょうか?

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著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Peter Levine

Peter Levine は Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーです。彼は以前 Citrix の Data Center & Cloud Division の上級副社長でありジェネラルマネージャーとして、売上、プロダクトマネジメント、ビジネスデベロップメント、戦略の方針について責任を負っていました。Peter は 2007 年に、XenSource が $500M で買収されたことにより Citrix に入社しました。XenSource で彼は CEO として、600 人の従業員を率い、Microsoft や Symantec、HP、NEC、Dell といった顧客と XenServer の製品ファミリに関する戦略的な契約を確立しました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The End of Cloud Computing (2019)

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