私は2000年代の初め頃から、インターネットの利用、携帯電話、スマートフォンについてのグラフを作成してきました。ある時期、これらは人々に興奮や困惑を生んでいました。「実際のところ、それほど速く普及するのだろうか?」、「これらを所有する人はどれくらいの数になるのだろうか? 」と思われていたのです。現在、私たちはその答えを知っています。そう、「全員」です。全員が1台は所有することになるでしょう。
地球上には16歳以上の人間がおよそ53億人います。このうち、およそ50億人が携帯電話を所有しています。これは推定値の一つで、私が選んだのはGSMAのものですが、その他のほとんども同程度の数字です。このデータの難点とは、携帯電話会社はSIMカードを所有している人数を集合として知ってはいるものの、それを2つ以上所有している人々が多い点です。その一方、先進国市場における所有は10歳前後から始まるのに対し、一部の発展途上国市場では人口の半分が15歳未満です。つまり、総人口における割合として出される普及率により、成人人口での普及率がはるかに高いことが隠れてしまうということです。
- およそ40億人がスマートフォンを所有しています。私たちはどうやってこの数字に辿り着いたのでしょうか? これから説明します。
- Appleは年初にアクティブなiPhoneの数を9億台と発表しました。これは最近まで同社が報告した販売台数と一致しています。
- Googleは今年のI/OカンファレンスでアクティブなAndroidデバイスが25億台あると述べました。また、Androidのディベロッパーダッシュボードではこの中のおよそ95%がスマートフォンであるとされています。
- Googleの数字には中国国内のAndroidスマートフォンが含まれていません。それらにはGoogleサービスが全く搭載されていません (反対に、Appleの数字には中国国内のiOSデバイスが含まれています)。中国政府は国内のインターネットに接続されたスマートフォンの数を8億台あまりと推定しています。そしておそらくこの内の20%がiPhoneで、Androidスマートフォンの数はおよそ6億5000万台ということになります。
このうちインターネットに接続しているのは何台でしょう? これらの情報元は全て、インターネットと定期的に接続しているデバイスに基づいて台数をカウントしています。しかし、「接続」というのはかなりあいまいな概念です。ローエンドAndroidのエントリー価格は現在、50ドルを優に下回ります。また、モバイルデータ接続は1日の収入が10ドル未満や5ドル未満の人々にとって比較的高額です (そしてもちろん、こういった人々の全員が携帯電話を入手するようになっています)。スマートフォンの充電も高額です。電力供給網の外で生活している場合、バッテリーに充電するには発電機、太陽電池、自動車用バッテリーを持っている近隣の人にお金を払う必要があるかもしれません。こういった背景から、 MTNナイジェリアはつい先日、同社ユーザーの47%がスマートフォンを所有しているものの、アクティブ・データユーザー (使用量が1月あたり5MBを超えるユーザーと定義) はわずか27%しかいないと報告しています。当然ながら、その内の一部はおそらくWi-Fi接続を使える場所での利用に限っているのでしょう。次の10億人が今後数年間にスマートフォン (またはKaiOSのようなスマートフォンに近いもの) へ移行するにつれて、これらの問題は確実に増大していくでしょう。これに対処するための道は数多くあります。その中には携帯電話の継続的な費用効率、(可能性として低軌道周回衛星を使うことによる) バックホール価格の低下、安価なソーラーパネル (さらに言えばWi-FIの増加) といったものがあります。他にもインドのJioが始めた国内での価格競争も貢献する要素と言えますが、実際のところ、それが世界レベルで起きることを当てにはできません。ですが、この問題が意味しているのは、一方では実に40億台を超えるスマートフォンが何らかの形で利用されているものの、他方では実際にインターネットに接続されているものは40億台未満ということです。
プラットフォームはどうでしょう? プラットフォーム戦争はずっと以前に集結しており、AppleとGoogleの両者が (少なくとも中国以外では) 勝利しました。しかし、やはりその価格帯を考えると、これらのデバイスは均等には流通していません。米国での調査によると10代の若者のうち80%超がiPhoneを所有しているのに対し、インドでの状況はほぼ逆です。これらのデバイスの利用にも大きな違いがあります。すなわち、ハイエンドモデルのスマートフォンを購入する人々はその利用も多くなる傾向があります。したがって、下図にはトラフィックの多い膨大なサンプリング点に関するトラフィック・データが示されています。あなたの顧客はどこにいるでしょうか?
その一方、(過去数年にわたって販売数が横ばいから下落になっている) PC市場では、アクティブなデバイスがおよそ15億台 (1億台あまりのMac、同じく1億台あまりのさまざまな種類のLinuxが動くデバイス、そして4年前にリリースされたWindows 10が動く8億台のデバイス) あり、コンシューマ向けと企業向けがおよそ半々となっています。あなたが用いる数字はどの分析会社の推定値を選ぶかによって変わりますが、それらの数字は全て同程度です。
タブレットについてはどうでしょう? AppleはiPhoneが9億台で、アクティブなデバイスの合計が「14億台を超えると述べています。Mac、Apple Watch、Apple TVの合計2億台を差し引くと、残りはおよそ3億台のiPadです (重ねて言うと、この数字はこれまで報告されている販売台数と一致しています)。3億5000万台ということもありえそうです。上で引用したGoogleの数字はAndroidタブレットがおおよそ1億台から1億5000万台のあいだであることを示唆しています (これらの数字がかなり概算であることを考えると、これ以上に正確な数字を述べることははばかられます)。中国国内のGoogle Android以外のタブレットはその2倍かもしれません。繰り返して言いますが、デバイスがインターネットに接続して統計データ上に現れるか否かという問題のせいで、確かな推定値を出すことは困難です (きっと人々はこの推定値に同意できないでしょう)。しかし、これは要するに利用中のタブレットは確実に5億台を超えているということです。
さて、「アナリストの仕事はWordからExcelに至り、Powerpointへと進歩する」という古いジョークがあります。過去20年間でこの業界に起こったことは大体そういう感じです。最初は起こるかもしれないこと (「全ての人が携帯電話を持ったらどうなるか、想像してみてください! 」) について議論しました。続いて、起きていることに関する数字を追跡調査しました。そして最終的に、私たちは図表を描き、その意味するところを箇条書きにしました。それこそが私たちの現在の状況です。すなわち、「地球上のほぼ全ての人が携帯電話またはスマートフォンを所有していることが何を意味するのか」について、私たちは分析しようとしています (それについて私はプレゼンテーションを行いました)。
ですが、これは私たちが最初に戻ることも意味しています。私はもはや、自分のスマートフォンのモデルを更新していません。今日、テック業界の次なる基礎的なトレンドはおそらく機械学習、暗号資産、規制です。それらについて文章を書くことはできますが、グラフを作成するにはまだ早すぎるでしょう。
著者紹介 (本記事投稿時の情報)
Ben はテック系企業に投資をする、シリコンバレーのベンチャーキャピタルである Andreessen Horowitz ('a16z') に勤めています。彼は何が現在起こっているのか、そして何が次に起こるのかについて考えています。
Ben のブログはこちら、毎年のプレゼンテーション、人気のウィークリーレター、ポッドキャストでの超早口、そして Twitter での独り言もあります。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The end of mobile (2019)