2019 年の B2B テック領域で最も見過ごされたトレンド (a16z)

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このニュースレターで私たちは、2019年の企業/B2Bテクノロジーの分野で最も見過ごされているトレンドの一部をまとめています。Systems of Record (SoR) の終焉に関するBen Horowitzの著述、企業利益の危機に関するMartin Casadoの著述、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)のデザインの重要性に関するPeter Levineの著述を、以下で読むことができます。

本号の話題——

  • 2019年に最も見過ごされた企業トレンドは?
  • 会社の構築—— 機械学習(ML)におけるスタートアップの優位性
  • 現地調査記録—— AWS re:inventの簡単なまとめ

2019年に最も見過ごされた企業のトレンド(そして次に起こる可能性のあること)は何でしょうか?

AIの発達による Systems of Record (SoR) の終焉。現在、記録システム (SoR) の保守は手動のデータ入力によって行われています。これによりデータ統合の問題が発生したり、データクレンジングおよびデータ作成に多くの時間を割くことが必要になります。AIがさらに強力になるにつれて、データキャプチャの自動化が始まりました。(例えば、AIは電子メールのやりとりから販売部隊のデータの記録を作ることができます。)しかし、もしAIが、どのデータを入力すべきで、そのデータをどのように構築すべきかを特定できれば、もう私たちには従来の記録システムは必要ありません。将来的には、たまたま手元にあるデータを起点にし、自分が尋ねることのできる質問を決めるのではなく、答えを求める質問を起点にし、AIがその質問に答えるために必要なデータを収集して、構築することになるでしょう。 –Ben Horowitz (@bhorowitz)

利益の危機。数多くの大きなトレンド(クラウド、AI/ML、データの負の規模の経済、ボトムアップの市場開拓(GTM)への移行、また、製品からサービスへの交代)は、最近のツイートストームで私が掘り下げたように、マージンに下向きの圧迫を発生させます。これは、企業スタートアップがマージンを保護するため、妥当なGTMの動きや製品のトレードオフを犠牲にすべきだと言っているのではありません。そうではなく、SaaS第一世代はもはや、魅力的なマージンのプロフィールに関して、適切な比較の要ではないかもしれないということです。Martin Casado (@martin_casado)

デザインが第一、コードが第二の製品開発。企業は、かつては、最初にコードを書き、次に追加でユーザーインターフェースを構築していたものでした。しかし、いまやユーザーは、すべてのアプリケーション(企業向けのものでさえ)が同じように使いやすいことを期待しています。そして、デザインとユーザー体験は競争上の優位性になっています。私たちはデザインの反復に、ますます多くの周期が費やされているのを目の当たりにしています。製品は機能的なアプリケーションとほぼ同等なものとして原型化され、β版がユーザーによって検証され、デザインに基づいてコードが構築(あるいは場合によっては自動生成)されます。 デザインが第一、コードが第二のこの取り組みにより、製品は力強くなり、流動的になっています。そして、チームは新たなアイデアの検証の繰り返しを素早く行うことができます。デザインによって適合し、実装の速度を速めるPMFは、少なくとも今のところ、代替が利きません。–Peter Levine

セキュリティのコンシューマライゼーション。数多くの企業セキュリティツールが今、ボトムアップで登場し、採用されています。2019年のボトムアップによる採用により、(YubicoやThinkstなどの)セキュリティハードウェアが、大きな規模で登場することになりました。また(HashiCorp Vaultなどの)オープンソースツールが採用されるようになりました。この傾向は、よりよい製品を開発できる企業にとっても、また、より安全を確保できる消費者にとっても、大きな勝利です。Joel de la Garza

デザインおよび開発のツールは、事業の他の担当機能へも広がっています。従来は、ツールは開発者向けでした。デザイナーはその開発者とデザイナーによって活用されるのみでした。しかし、そのようなツールは、技術領域以外でますます採用され、活用されるようになっています。例えば、営業チームは製品APIのデモにAI開発プラットフォーム、Postmanを利用しています。製品開発およびマーケティングのチームは、コンテンツとワイヤーフレームをFigmaで作っています。これは、元々は、デザイナー向けに作られたコラボツールです。このトレンドは今までもずっと見られていたものですが、最近になって新たに加速しています。隣接する担当機能は、デザインおよび開発のツールを利用するだけでなく、自分たちの担当機能でも中核的な仕事の流れの重要な部分として利用しています。 Jennifer Li (@JenniferHli)


会社の構築—— MLにおけるスタートアップの優位性

ML (Machine Learning) のスタートアップの創業者の中には、大企業との競合において、ちょっとした「インポスター症候群」に陥る人がいます。理論上は、大企業の側にすべてのデータが揃っているからです。しかし、スタートアップは、企業とうまく競争できますし、実際に競争しています。適切な製品を構築すれば、比較的に小さなデータセットで多くの領域で実際にすばらしい結果を出すことができます。TexioのCTOであり、共同創業者でもあるJensen Harrisと、EverlawのCEOであり、共同創業者でもあるAJ Shankarは、a16zのPodcastのこの2017年のエピソードで、MLスタートアップの構築に関して同じ教訓を学びました。

「GoogleやMicrosoftが独自の、領域に特化した製品を構築していない、広範な価値のある領域があります。概して、このような広い領域に取り組んでいるのは、本質的な意味において、一般的なビー・ツー・ビーまたはビー・ツー・シー企業です。」–EverlawのCEO、共同創業者、AJ Shanker

 

「MLのアルゴリズムに関するものの全てが商品になるでしょう。新たなアルゴリズムを発明している場所が世界に20ヶ所ほどあります。しかし、そのようなものはますます急速に、パブリック・ドメインになっています。ですから、アルゴリズムの開発は、それほど重要ではありません。それよりも重要なのは、MLと他の技術、たとえば統計技術やユーザー体験技術を融合させ、実際に価値のある製品を構築する仕組みを作ることができるかどうか、です。」 –TexioのCTO、共同創業者、Jensen Harris

 

「PMFの達成には、データの膨大な集大成と最新の深層学習アルゴリズムにとどまらない、無数の事柄が関連しています。」 –a16zの取締役パートナー、Steven Sinofsky


現地調査記録—— AWS re:inventの簡単なまとめ

ML開発者のツール利用は目まぐるしく進化しています。AWSの新サービスのほとんどが、この領域で発表されています。これは大きなトレンドの一部であり、クラウドに起源を持つスタートアップであれば、そこにおいて優位性を持ちたいと考えるはずです。ML開発ツールの利用は、データサイエンスの作業および仕事の流れを自動化しつつあります。そこには、インスタンスのプロビジョニング、MLモデルの作成、アルゴリズムの選択、訓練および調整モデル、ドリフトの検出、コードレビューなどが含まれます。

法令遵守とクラウドのセキュリティに対する関心はかつてないほど高まっています8月のCapitalOneのハッキングもその理由の一つです。クラウドのセキュリティと正しい設定は重要です—— そしてこのことは、クラウドの安全性を確保することに特化したスタートアップが参入する余地を残しています。

パフォーマンス監視ツールは受動的なものから事前に監視するものへと変化しています。記録と監視の分野での新規スタートアップは、より高度化した事前の監視を導入しており、製品はこうした機能を積極的に利用すべきです。例えば、カオスエンジニアリングのプラットフォームである Gremlin は、受動的にパフォーマンスを監視するのではなく、カオスをシステムに投入し、その働きを検証します。それでは、これらのことは何を示唆しているのでしょうか。もしこうした製品を構築するなら、自然に人が集まるのを期待することはやめましょう——市場は、事前の監視が重要である理由をまだ学んでいる途上です。ですから、創業者は市場にその価値について学習させる必要があります。

Sarah Wang(@SarahDingWang)

 

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a16z Editorial

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The most overlooked trends in enterprise tech in 2019 (2019)

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