QRコードはあなたが思っている以上にパワフル (a16z)

世界最大の中国のモバイル決済エコシステムはQRコードを基盤に構築されています。そのテクノロジーは買い物を超えて拡大し、日常生活全体のストレスを緩和しています。私は最近の中国への旅行で、1日に42回、QRコードで個人的な通信をしました。列車に乗り、トレーニングジムを予約し、電話を充電し、見知らぬ人の誕生日を祝うために、その場にいた人たちへ飲み物をおごるためです。

アメリカの企業はQRの採用に遅れをとっています。QRコードを「ずっと近くにはあるけれども飛躍することはない」ものとして否定している人々は、その広範囲にわたる可能性を過小評価しています。QRコード(や同様に顔認識)のようにカメラを基盤とするソリューションは、従来はダサかったユーザー体験を円滑で直感的にすることができます。QRコードは、私たちのオンラインのアイデンティティとオフラインの世界のアイデンティティとを結ぶものであり、ユーザーが基本的に物理的な場所にログインすることを可能にし、データを携行させることができます。これはいくつもの利点をもたらします。自動的なロイヤルティプログラムなどの特典がすべての取引に組み込まれるだけでなく、顧客がより自分に合ったソーシャルな体験をする一方、ブランドはユーザーの好みを学べるからです。

QRコードが中国で普及したのは偶然ではありませんでした。多くの消費者が初めてのコンピューターとしてPCを通り越してスマートフォンを買いました。結果的に、多くの中国の製品が最初から、真っ先にモバイル向けに作られました。その事実は私の最近の中国への旅行で明白でした。これから挙げる項目は、QRコードが、まさにモバイル第一主義の全く新しい体験の組み合わせを可能にするいくつかの方法に焦点を当てたものです—— オフラインでの社会的な交流を向上させ、手軽な健康モニタリングを促進し、業務の効率を合理化し、革新的な購買手段を確立します。ここに16(以上!)の中国のQRコード活用法を挙げます。

1. バーにいてもオンラインで出会い、楽しむ
私は、2年ぶりに、再びお気に入りの南京のライブミュージック・バーに行きました。まず最初に気づいたのは、ミュージシャンの背景のQRコード付きのスクリーンでした。そのスクリーンは基本的にはバーのオンラインポータルです。ユーザーは飲み友達を探し、ミュージシャンの演奏からその時の出来事まで、何でも仲間の常連客と公開で話すことができます。Vxiaochengという会社はこうしたスクリーンを売っている会社です。Vxiaochengは2018年のプレシリーズAの資金を調達しただけでしたが、既に中国の190以上の都市にわたって10,000以上のバーと提携しています。

バーのチャットルームに入るのは、スクリーンの右上のQRコードをスキャンするだけという手軽さです。ライブストリーミングのように、ユーザーは、アクティブユーザーでいることで、アバターのデコレーションと装飾を獲得することができます。しかし、このシステムの本当の魅力は、携帯電話によって他の常連客と直接交流できるということです。物理的な世界で行動を起こす前に、人々は他のユーザーのプロフィールを見ることができ、個人的なメッセージを送り、打ち解けるために仮想現実上の贈り物を送ることさえできます。

f:id:foundx_caster:20191112012250j:plain

2. バーのスタッフとミュージシャンにチップを渡す
2017年の調査で、中国のネット市民の70%が現金の携行が不要であると思っていることがわかりました。それ以来、モバイル決済の採用が増加し続けています。Vxiaochengのモバイルシステムの特徴は、参加者がバーのスタッフとミュージシャンにチップを渡すことのできるアプリ内のボタンです。そのようなオンラインのチップによって、ミュージシャンの収入は倍増します。それだけでなく、Vxiaochengは時間の経過とともにミュージシャンのデータを統合するので、重要な雇用のプラットフォームとなり、バーのオーナーは3,000人以上のミュージシャンについて検討することができるようになりました。

3. 生産者から食料品店まで食品の追跡をする
Alibabaが2015年にスーパーマーケットのFreshippoの第一号を発表した時、Alibabaの目標はオンラインとオフラインの買い物を統合することでした。同社は、アプリを顧客の購買履歴と閲覧に合わせ、待つことのない会計体験を提供し、店舗から2マイル以内であれば30分以内の無料の配達サービスを提供することで、効果的にスーパーマーケット体験を見直しました。農産物や海産物、精肉部門の商品表示にはQRコードが備わっており、卸売業者の情報や輸送ロジスティックス、食品安全認定証の画像を表示します。買い物客はまた、Freshippoアプリで商品のバーコードをスキャンし、評価や栄養表示、お薦めの食べ合わせ、さらにはユーザーの提供した調理方法まで確認することができます。すべてのスキャンが買い物客のオンラインのプロフィールに紐付いているので、店側は顧客体験を個人に合わせられるように貴重なデータを収集しています。

f:id:foundx_caster:20191112013137j:plain

4. 実質無料の製品サンプルを入手する
買い物客はショッピングモールの自動販売機でQRコードをスキャンし、WeChatとTaoBaoのいずれか(中国の上位のECサイト)で、ブランドをフォローし、特別な取引をアンロックすることができます。ブランド側は販売促進としてターゲットすることのできるフォロワーを獲得する一方で、ユーザーは高品質で安価な試供品を手にします。下の画像は、顧客が有名ブランドの加湿器や赤ちゃんのお尻拭きなどから1ペニー未満で商品を選択したものです。

f:id:foundx_caster:20191112013243j:plain

5. 外出先で電話の充電をする
国内の広範囲において充電ステーションが利用できるため、ノモフォビア、つまり、携帯電話のバッテリーが少ないことを恐れる人は、実質的には中国には存在しません。壁にコンセントがなくてもいいのです。壁のコンセントに頼ることなく、ユーザーは、単にQRコードをスキャンし、WeChatまたはAlipayを通じて署名して、場所を問わず、30分ごとに0.3ドルから1ドルを支払うだけで充電器をレンタルすることができます。QRコードが顧客のデジタルアイデンティティへのアクセスを許可するため、充電器は利用しやすく、預託金も不要です。このような充電器はどこにでもあるようになりました。最近の調査では、充電器は中国全土のショッピングモールの61%、レストランの55%、ホテルの44%にあります。

f:id:foundx_caster:20191112013356j:plain

6. スマートカフェテリアで昼食の列に並ぶ時間を短縮する
学校やオフィスのカフェテリアは、機械学習の訓練をするのに理想的であり、研究室のような環境を提供しています。テクスチャーと色彩の手がかりを利用して、洗練されたカメラは非常に正確に料理を認識することができます。支払い場所に皿が置かれてから2秒でシステムが食事の合計額を計算します。一部のスマートカフェテリアのシステムでは、熱量や栄養成分の情報まで表示します。ユーザーは一般的にはQRコード、学生 / 労働者ID、同時顔認識のいずれかで支払います。

7. 公衆トイレの廃棄物を最小限に抑える
習近平国家主席が2015年に「トイレ革命」を求めたため、中国は国内の公衆トイレを最新式にするために30億ドルをかけてきました。国内全土の景勝地や公共の場では紙は持ち込みです。手ぶらで訪れた場合は、QRコードまたは顔認識をスキャンしてトイレットペーパーを31インチまで受け取ることができます。China Dailyによれば、これらのスマート・トイレットペーパー・ディスペンサーによって、蘇州市の公衆トイレの紙の使用量の80%が減りました。

f:id:foundx_caster:20191112014125p:plain

8. オフライン広告でループを閉じる
QRコードはオフライン広告を取引可能で予測可能なものにしました。コードのスキャンだけで、ユーザーは購買の完了、アプリのダウンロード、ビデオ鑑賞をプロモーションされます。結果的に、QRコードはあちこちの広告看板、バス、地下鉄、住宅の階段、屋内のエレベーターにあります。

f:id:foundx_caster:20191112014213j:plain

9. フィットネスクラスの予約をする
Supermonkeyのジムには受付デスクはありません。その代わりに、ジムに通う人は、WeChatで検索するか、Supermonkeyの特約店(下図)の物理的なQRコードをスキャンすることでフィットネスクラスを予約することができます。クラスを予約するとPIN番号が生成されます。この番号でクラスが始まる15分前に中に入ることができます。一旦中に入ると、QRコードはホットタオル、ヘアバンド、ウォーターボトルを購入するために使用できます。QRコードはまた、顧客ロイヤルティを強くします。クラスの予約後、ユーザーは自動的にインストラクターのWeChatのQRコードを受け取り、グループチャットに参加できるようになります。Supermonkeyはこれまでに100箇所以上にあり、ベンチャーキャピタルで600億ドル以上の資金調達をしました。

f:id:foundx_caster:20191112014305j:plain

10. カプセルジムのトレーニングで体を絞る
使った分だけ支払えばいいフィットネス体験の方が好みですか?それなら最寄りのカプセルジムに向かいましょう。6 × 10フィートの個室のトレーニングルームで、QRコードを一回スキャンしてドアを開錠するだけで一瞬でレンタルできます。このようなジムは低予算で展開し、維持することができます。トレッドミルやダンベル、プルアップバーなどの必要最低限のもののみを装備しています。ジムのインスタントアプリは時間の経過とともに自動的に進捗度を記録し、ユーザーがジムを離れる時にWeChat経由で料金を請求されます。一流カプセルジム会社の一つであるWanbaは、これまでに300箇所以上を数えるようになりました。

f:id:foundx_caster:20191112014355j:plain

11. 無料のスマート計測器で健康を監視する
スマート計測器を利用できることには心理的・肉体的利点があります。中国では、人々はQRコードをスキャンし、無料の共有スマート計測器にを乗ることができます。計測器は国内全土のショッピングモールやレストランに設置されています。200都市以上に50,000以上の計測器を持つ市場のトップ企業であるHifansは、計測器を体重、BMI、骨量、水分摂取量、その他の10の健康指標を保存し、記録できるものにしました。同社は、体重を表示する前に広告を見せ、WeChatアカウントに提携のブランド名をつけることによって、収益を得ています。

f:id:foundx_caster:20191112014513j:plain

12. 食べ物とビールを列車で注文する
中国のレストランでは、何年も、テーブルにメニューを注文するためにQRコードを活用してきました。このシステムは、従来のウエイターよりもサービスが迅速なだけではなく、写真や評価などの追加の機能を提供しています。今ではこの便利なシステムは高速列車の座席にも拡大されています。ユーザーはQRコードをスキャンして、軽食や調理された食事、飲み物、電話の充電器などの実用的な商品を座席まで持って来てもらいます。

f:id:foundx_caster:20191112014553p:plain

13. バイクをレンタルしてあくせくすることがない
超小型モビリティ会社のHellobikeは、OfoやMobikなどの一流企業の2年後に事業を開始しましたが、今や中国ではバイクシェアリングの王者であり、Alipayアプリの公式バイクシェア・パートナーです。レンタルバイクの鍵を開ける時は、QRコードをスキャンして乗り去るだけです。Limeのスクーターのユーザー体験と似ています。Hellobikeは今や、中国の電気バイクシェアの80%のみならず、バイクシェア市場の60%から70%を支配しています。現在、同社は電気モペットにまで事業の幅を広げ、月額わずか30ドルで無制限に利用できるようになっています。

f:id:foundx_caster:20191112014659j:plain

14. 場所を問わずにスキャンして買い物をする
顔認証自動販売機が徐々に人気が出てている一方、ほとんどの自動販売機が依然として費用のかからないQRコード決済を利用しています。しかし、中国のそれは、通常の自動販売機よりもはるかに進歩しています。ルートボックスのような佇まいの販売機や(15分または販売5本ごとに自動洗浄される)絞りたてのオレンジジュースの販売機、さらには生きたロブスターを取ることができるクレーンゲームまであります。より実用的な側面として、下の写真でオフィスビルの新鮮な花の自動販売機が確認できます。この販売機は決済やお勧めの表示、ロイヤルティ・プログラムを利用するためにQRコードのサインインを活用しています。

f:id:foundx_caster:20191112015151j:plain

15. 公共交通機関の電子カードでバスや地下鉄に乗る
中国全土にわたって乗り換えをする乗客は、現在、個別の切符や地方の交通機関利用カードを購入するために列に並ぶのではなく、WeChat/AlipayでQRコードをスキャンして乗車することができます。WeChatの「乗車コード」サービスは、今や120以上の都市でサービスを展開しており、過去2年間で1億人以上の乗客が利用してきました。

f:id:foundx_caster:20191112015302j:plain

16. 海外で使う
中国は、2030年までに、世界の国際観光の収益の25%を占めるようになるでしょう。中国人観光客の90%以上が、もし選択できるなら、海外でもモバイル決済を利用すると言っています。この急成長する市場を手に入れたいという願望を持つTencentとAlibabaの国際決済戦略は、国際市場を直接追求するのではなく、海外の中国人観光客にサービスを提供するというものです。WalgreensやGuessなどのアメリカの一部の大手小売店およびMall of AmericaやSan FranciscoのFisherman’s Wharf(下図)などの観光名所は、現在、AlipayとWePayを受け入れています。採用数がさらに広がってきているため、中国だけでなく、どこの小売店であっても、QR戦略を再考する可能性が高いでしょう。

f:id:foundx_caster:20191112015356j:plain

 

著者紹介

Avery Segal

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Remember QR Codes? They’re More Powerful Than You Think (2019)

FoundX Review はスタートアップに関する情報やノウハウを届けるメディアです

運営元