State of Play: ゲーム業界に革命を起こしている 6 つのトレンド (a16z)

ゲームは「ポン」の時代から大きく発展しました。ポンとは、1つの白いピクセルが画面上を飛び跳ねる、粗末な卓球シミュレーションです。クラッシックなアーケードゲームとして1972年、黎明期のゲーム業界で初のヒット作となりました。

それ以来、ニッチな趣味であったゲームはエンターテイメント業界で有力な勢力にまで成長しました。昨年、RockstarのRed Dead Redemption 2は発売週に7億2500万ドルを売り上げ、ハリウッドの週間興行収入の最高記録である、大ヒット作Avengers Infinity Warの6億4000万ドルを上回りました。

次世代ゲームはこれまでに見たことのない規模になるでしょう。Robloxなど、現在のマルチプレイヤーゲームの成功作は1億人の月間アクティブユーザー数を誇っていますが、新しいMMOはFacebookの規模、すなわち10億ユーザーを目指します。その理由は、ゲームを開発し、見つけ、プレイする方法が急速に進歩しているからです。次世代ゲームは、従来のゲームと比べて主に6つの点で異なります。

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1. ゲームが新しいショッピングセンター(そして新しいスポーツバー)になる

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ゲームは次世代のソーシャルネットワークです。Fortniteは従来型のシューティングゲームよりFacebookに近いように感じられます。数百万人ものプレイヤーが分隊やカスタムゲームでコミュニケーションを取り、勝利を目指さないこともしばしばです。多くの人にとって、バトルロワイヤルはパーティの二の次になりました。今年前半にFortniteで開かれたリアルタイムのゲーム内コンサート「Marshmello」(右の写真を参照)には1100万人が参加するなど、パーティは非常に大規模になり得ます。

ユーザーたちはアクティブにプレイしていない時でも、雑談したり触れ合ったり他人を観戦したりしますが、これはeスポーツがメインストリーム化する原動力となりました。2018 League of Legends Finalsは2億人が観戦しましたが、これはSuper BowlやNCAA Final Fourよりも大きな数字です。もともとはプレイヤーに興味を持たせるためのマーケティングツールとして始まったものが、いまやライフスタイルになっています。

2. ゲームが「一発屋」から脱却し、生きたシリーズに進化した

ゲームはハリウッドのリリーススタイルから脱却し、何年も繁栄を続けられるライブサービスに進化しました。ゲームはもともと、3〜5年周期で続編をリリースしていましたが、今のライブサービスゲームでは毎月新しいコンテンツが追加されます。こうしたいわば「ゲーム・アズ・ア・サービス」は、ユーザーからのフィードバックを基に継続的に改善されるので、劇的にプレイヤーのライフタイムを伸ばすことができます。今週に10周年を迎えたLeague of Legendsは先月、シリーズ最多となる1日の同時接続プレイヤー数800万人を達成しています。15年の歴史を持つBlizzardのWorld of Warcraftは、8月に110万人がTwitchでClassicモードのリリースを視聴し、発売日の新記録を打ち立てました。

3. プラットフォームの集約が巨大なヒット作を生む

歴史的に、ゲームはプラットフォームの違いにより分断されてきました。PCやコンソール、モバイルごとにプレイヤーが分離されてきました。そのせいで友達と遊ぶのが困難になり、マルチプレイヤーゲームのネットワーク効果が損なわれてきました。今日では、Unrealなどのエンジンにより、デベロッパは複数のプラットフォームを対象に単一のコードベースをデプロイできるようになっています。クロスプラットフォームプレイも新しいスタンダートになるにつれ、マルチプレイヤーゲームは旧世代ゲームより遥かに早く、大規模に成長するようになるでしょう。例えばPhoenix LabのDauntlessは、PCとコンソールのクロスプレイを開始してから3週間で、プレイヤーベースを4倍に伸ばしました。Fortniteの2億5000万人のプレイヤーベースは、全てのプラットフォームでプレイできるというユビキタス(遍在性)によるところが大きいです。

4. ゲームの発見がオーガニックでソーシャルになる

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大手パブリッシャは従来、ゲームをオンラインや屋外広告、TVコマーシャルでマーケティングするのに数百万ドルを費やしてきました。(2015年のSuper Bowlで、Kate Uptonが登場したGame of Warの広告を覚えていますでしょうか)。今ではTwitch、Discord、Redditなど、ソーシャルチャネルのインフルエンサーたちがゲームの発見を促進するようになりました。主要なインフルエンサーやアーリーアダプターのコミュニティを取り込むことで、デベロッパは従来式のマーケティング戦術に頼ることなくゲームを自社で売るようになります。このシフトは既に目に見える形で現れています。2019年のトップ2のゲームである、RespawnのApex Legends(右の写真を参照)とRiotのTeamfight Tacticsは、両方とも主にTwitchのストリーマーを通じてマーケティングを行いました。

5. 次のMarvel Universeはゲームから生まれる

今後の大作映画シリーズやテーマパーク、玩具のラインナップは、ゲームに由来する可能性が高いです。World of Warcraftのきめ細やかに作り込まれた世界観や、Naughty DogのThe Last of Usの綿密なストーリーなど、プレイヤーたちは数千時間かけてゲームのストーリーやキャラクタに接しています。その結果、多くのデベロッパは、パブリッシャ中心の資金調達モデルを避け、知的財産の所有権を維持できるベンチャーキャピタルモデルを採用するようになっています。

6. 消費者は共同制作者でもある

新しいツールのおかげで、プレイヤーたちは、modやマップ、アイテム、ゲームモードなどの形で、独自のコンテンツを作成できるようになっています。プレイヤーmodからは全く新しいジャンルすら生まれてきました。PUBGはArma 2のmodであるDayZ Battle Royaleが起源であり、League of LegendsはWarcraft 3のmodであるDOTAに大きく影響を受けています。ユーザー生成コンテンツ(UGC)により、ゲームは高い費用対効果で急速に規模を拡大させることができます。デベロッパは全てを社内で作るのではなく、一部をコミュニティに任せることができます。UGC自体も流行る可能性があります。例えば、Minecraftの中でStar TrekのEnterpriseを再現するプレイヤーの動画は、Youtubeで視聴数1300万回近くに達しました。

長期的な展望

私たちの見方では、次世代ゲームは、プラットフォームの集約やオーガニックなソーシャルディスカバリ、ユーザー生成コンテンツなどによってネットワーク効果が働き、今日のヒット作と比べて、より早く、より大規模に成長するようになります。こうしたゲームは真にグローバルであり、世界中のプレイヤーをつなぎ合わせます。ライブサービスモデルが普及すれば、成功を果たしたシリーズは、エンターテイメントとソーシャルのハブとして、数十年にわたって繁栄を続けるでしょう。

a16zでは、ゲーム業界が地殻変動の渦中にあると考えています。クラウドストリーミングやブロックチェーン・コンピューティング、5Gといった技術が登場するなか、私たちはまだそうした変遷の初期段階にあるといったほうが適切かもしれません。こうした理由から、私たちはBonfire Studios、Singularity 6、Oculus、Improbableなどの企業に投資してきました。また同様の理由から、私たちはシードラウンドとシリーズAラウンドを中心に戦略を前進させるための専門のゲームチームを構築しました。

私たちはゲームの将来について胸を踊らせており、ビジョンを共有する企業や創業者とぜひ提携関係を結びたいと考えています。

 

著者紹介

Jonathan Lai

Andrew Chen

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: State of Play: Six Trends Revolutionizing Games (2019)

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