ユニットエコノミクス (Sam Altman)

コメンテーターたちは、シリコンバレーのスタートアップの何が悪いのかを一生懸命探しています。 まず、バリュエーションが高すぎるという話が出てきました。 次に、バリュエーションには何の意味もないという話が出ました。 そして、企業が非公開で長く留まりすぎているという話をして、バーンレートについても話題になりました。

しかし、正確に特定するのは難しいのですが、どこか違和感があります。

私はその答えがユニットエコノミクスだと思います。 2000年のバブル期に出てきたジョークの一つに、「顧客ごとに少しずつ損をしているが、数量で補っている」というものがありました。 これは Google や Facebook が躍進するにつれて、流行らなくなりました。

今では、自分たちのユニットエコノミクスが健全になるのかを説明するのに苦労している企業が多くなっています。 それは通常、無限のリテンション(「はい、私たちのセールスとマーケティングのコストは本当に高く、ユーザーあたりの年間利益率は薄いですが、私たちは永遠に顧客を維持するつもりです」など)、大規模なコスト削減(「私たちはすべての人間の労働力をロボットに置き換えるつもりです」など)、最終的にはお金を払ってユーザーを獲得することを止めることができるという主張(「私たちはフライホイールを回転させるために、今のところ彼らが価値がある以上の価値でユーザーを獲得しています」)、またはもっと説得力の低い理由を並べ立てて説明することになります。

これは Peter Thiel の「独占テスト」に合格していないスタートアップに特によく見られます。このようなスタートアップは、利用可能な限りのお金をユーザー獲得に費やさなければならず、一方で製品の価格を上げると、顧客は似たような別のサービスを利用するようになります。

歴史的に偉大な企業の多くは、マネタイズを開始してすぐに、たとえ企業全体が長期間にわたって損失を出していたとしても、ユニットエコノミクスがうまくいっていました。

シリコンバレーは、お金は減っているけれど最終的には大儲けする可能性がある企業に投資することを厭いません。 それは素晴らしいことです。 財務状況をよく理解した上で、おそらく必ず赤字だろうと思われる企業に対して、かつてこれほどまでにシリコンバレーが積極的に投資してきたのを見たことがありません。 利益率の低いビジネスが今ほど流行していることはありません。

多額の資金を調達している企業は特にリスクがあります。 製品やサービスを修正するのではなく、より多くのお金を使うことで、ビジネスの問題を紙で覆い隠したくなるほどです。

バーンレート自体は怖くないものです。ただしビジネスをスケールアップしてもビジネスモデルが良く見えないときにバーンレートは怖いものとなります。 ランウェイが短い場合(例えば、銀行に1億ドルを預けて月に200万ドルを燃やすのは問題ありませんが、銀行に300万ドルしかないのに月に100万ドルを燃やすのは本当に悪いことです)、ユニットエコノミクスが素晴らしいように見えても、バーンレートは怖いものとなります。

良いニュースは、このことを認識していれば、この罠を避けることができる、ということです。 もしあなたのビジネス領域で他に経営する方法がないのであれば、それは悪いビジネスなのかもしれません。低利益率の超競争の世界は、それだけではありません。企業は必ずユニットエコノミクスをどうやって修正するかの説明をできるはずで、自分を騙さないようにしないといけません。

人々が自発的に友人に勧めてしまうほど良い製品を作るという基準を自分自身に持ち、ユーザー一人一人にかける金額以上の利益を上げ、大きくなればなるほど悪くなるのではなく、むしろ良くなるという分かりやすいビジネスモデルを持っていれば、今最もホットな企業のようには見えないかもしれませんが、いずれGoogleやFacebookによく似ている企業になれるでしょう。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Sam Altman

Sam Altman は OpenAI のCEO であり、Y Combinator のアドバイザーです。彼は 2014 年から2019年の間、YCの社長でした。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。 

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Unit Economics (2015)

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