どうやって未来を作るか: 若者に向けた新年のメモ (Sam Altman)

よい2017年を!

子どもの頃は、物事が年々よくなっていくことを当たり前のように受け止めていました。テレビはより大きく薄くなり、車は少し速くなり、コンピューターの性能は信じられないほど急激によくなりました。

大人になってからは、未来がより良くなっていくとは限らないと悟りました。何もなければ物事はそのままです(あるいは悪化します。私たちは相変わらず新しい問題を作り、時には戦争に突入するからです)。未来について強い理想を抱く人々が関わり、よりよい世界をつくるために懸命に努力してこそ、世界はよくなります。

エスカレーター式の出世街道に身を任せて、最終的に自分の可能性を最大限に発揮することができない事柄に深く関わってしまうのは簡単です。でも変わるのに遅すぎることはありません。また自分の歩んでいる道や、時間を最大限に活用する方法について慎重に考えることは常によいことです。

私は「How to Build the Future (どうやって未来を作るか)」というビデオで、兄弟のJackからインタビューを受ける前に、メモを書きました。インタビューでは主に、若者がいかに自分の職業について野心をもって考えるべきかについて話していますが、私は新年に向けてそれを整理しようと考えました。ここにそれを記します。


すべきことについて

自分がやりたいことを選ぶ最善の方法は、自分が得意なこと、楽しんでいること、世界が必要としているもの、世界が価値を置くもの、この4つが交差する部分を見つけることだと思います。

自分が本当に大切にしているものが何かという問いへの答えは簡単には出せません。進むことのできる方向がとても多くあります。しかし他の人に強く勧められることに耳を傾けるのではなく、進むべき道をを自分で見つけようとすることにこそ価値があります。他の人が重要だと考えるものを自分も重要だと考える必要はありません。長期的に成功する最善の方法は、自分がしていることが重要だと心の底から信じることです。

大抵の人は、自分の目の前に現れるものに夢中になります。これはうまくいくかもしれません。自分の好みを理解するために、何かをただ試さなければいけないこともあります。しかし、もっと慎重になってもいいと私は思います。成し遂げたいことについての強い信念を育み、慎重にこれを洗練させるようにしましょう。

人々が職業上の決断を考え抜くことの助けとなる枠組みで、私が最も有益だと思っているのは、インパクトをなるべく大きくしながら後悔をなるべく小さくすることの両方を検討することです。どちらにもよい結果となる決断は、よいものである可能性が高いのです。

成功への到達について

この世界で物事を成し遂げるには、フォーカス・個人的なつながり・自信の組み合わせが必要です。

懸命にがんばらなければいけません。必要なことは何でも自ら進んですべきです。社会があなたを成功させる義務はありません。言うだけでなく、実行しましょう。歴史は実行する人のものです。

何をするにしても、自分の成功の能力を信じなければいけません。人々はあなたを疑い、あなたの目標は不可能だ、あるいは愚かだと思うでしょうが、あなたは自分の信念を曲げてはなりません。

お金をたくさん稼ぎたい、名声や栄光が欲しい、ということに動機を得て始めてもいいです。しかし、前進し続けるために、ほとんどの人がどこかの時点でより深い使命を見つける必要があります。

自分の職業を考える正しい方法は、複利のようなものです。職歴の始めのほうに長い時間を費やして、毎日行なっていることが少しずつうまくなれば、他の人よりも多くのことを達成できるでしょう。これは、あなたの職歴全体に広がる複合的な効果を生み出します。人生は明らかに不公平で何が起こるか分かりませんが、もし他のすべてのことが平等であれば、この複利は大きな利点になります。

若いうちに人生を楽しんでください。若さは一度しかないということわざは真実です。けれども、ほとんどの人に働きすぎていると言われるほど、懸命に仕事をしましょう。燃え尽き症候群は懸命に働きすぎることとは関係なく、うまくいかないことが原因にあるのではないかと私は思うようになりました。何であれ、自分が取り組んでいることに勢いがあれば、やる気を維持して新鮮な気持ちで取り組むことができます。

やり方や自分の準備に100%の確信が持てない場合でも、すばらしい機会に対しては「はい」と言えるようになりましょう。多くのことを非常に早く学ぶことができます。多くの人が犯している間違いは、成功している人々の10年前の姿ではなく、現在の姿と自分とを比べてしまうことです。10年前の彼らの方が親近感が湧くはずです。

仲間探しについて

あなたは仲間を見つけるべきです——自分と同じような人物で、あなたの今後の仕事を一緒にできると思える人物を、です。 その中で、あなたが信頼できて、その意見に心から敬意を抱くことのできる小さなグループを見つけるようにしましょう。

おそらく、場所を変えることを厭わないべきです。何に興味を抱こうとも、その分野で最高の仕事をする一握りの人々が世界中にいます。できる限り彼ら彼女らの傍にいることには価値があります。

全く理由がなくても人の役に立ちましょう。若い時には小さな人脈しかないことが多いですが、それはあなたの選択肢の幅を狭くします。全く見返りを期待しないで人を助ける時、扉と新しいつながりが開かれます——私はずっと、このことをとても大事にしてきました。

諦めることについて

何かに挑戦して、数週間、あるいは数カ月間、成果があがらないために諦める人がいます。私が思うに、諦めるのが早すぎます。

あなたのしていることや作っているものが悪いものだという人がいたとしたなら、フィードバックとしてそれに注意を払ってください。しかし、個人的には気にしないようにしましょう。それは諦めるための信号ではありません。そうではなく、あなたの取り組みを洗練させる信号です。

諦める時機を断言するのは難しいことです。しかし私が思うに、その時機は大抵、アイデアが尽きたり、その後も試みを続けていく道が見えなかったりということを、あなた自身が感じる時です。

その時機に差し掛かったと思ったら、 ぜひとも手を引いてください。本当にアイデアが尽きてしまったら、物事を引き伸ばしても何もすばらしいことは起こりません。取り組んでいることを直ちにやめ、リラックスして、数ヶ月後には新しいことに挑戦しましょう。

正しいことに取り組んでいるなら、おそらくそれは本当に過酷でしょう。時間がかかる可能性が高く、たくさんの批判に直面するでしょう。私の知り合いの超大物の成功者たちは、大多数の人が諦めてからも、ずっと後まで非常に長い時間をかけて自分のアイデアを実現する努力をしました。

リスクをとることについて

ほとんどの人は何がリスクか、何がリスクではないかの判断を間違えています。その結果、彼らはあまりにもリスクを避けすぎてしまいます。特に経歴が浅い時には、より多くのリスクをとりましょう。若くて無名だということは、実は大きな利点です。失うものがほとんどないからです。

失敗が怖いからといってリスクをとらないようにするのはやめてください。それ自体がリスクです。行動しないことによって失うからです。

失敗したり危機的状況に終わったりしても、おそらく大丈夫でしょう。私の場合は、人生で直面する危機が多いほど、その後に続く危機が怖くなくなりました。これまでも自分が災いを切り抜けてきたことを十分にわかっているので、次もそうできると信じることができます。

何か新しく、野心のあることをする場合は、災厄を予言する人に対して準備をしておきましょう。何か新しいことをするのが困難なのは、そのやり方を考え出さなければいけないだけでなく、絶えず否定の集中砲火に対処しなければいけないからです。

簡単なヒント——物怖じせずに自分の要求を伝えましょう。野心に満ちたことをしようとすれば、何度も「だめ」と言われるでしょう。けれども、人々は時にはあなたにあなたが望むものを与えてくれます。そんな時は否定された時の苦痛に勝ります。ですからアグレッシブになりましょう。

お金について

私は若い時に、高い給料をもらって裕福になる、という誤った考えを持っていました。年齢を重ねるにつれ、お金持ちになる方法は、価値の上がるもの(つまりエクイティ)を所有することであると悟りました。

私の考えでは、時間は依然として市場に残る主要な裁定取引機会です。人々がますます短期的なものに重きを置くようになったため、ただ成熟するまで長い時間がかかるだけの未開拓の機会がたくさんあります。私は、これらの種類のリスクが最大の価値や富を生み出す助けとなったことに気づきました。

所有者になる方法の1つは、起業です。そしてこの点に関しては特に、最善のやり方は、長期的な取り組みを行うことです。正しいものを選び、長い時間をかけて献身的にそれを育てれば、その間に何度も短期的な支払い金を受けるよりもはるかに大きな資金を作ることができます。大物を狙うならば、ただ一度、正しい選択をすればよいのです。あなたのキャリアの早い段階でそれを始め、失敗したら挑戦し続けてください。

一般的な注意事項として、成功した場合に純資産が10倍になるような投資機会を探すべきだと私は思います。そして自分の成長に投資する選択肢があれば、投資してください——大抵は、預金するよりはいいです。

未来を考えることについて

未来についての力強い意見は有益です。ここでもまた、私の知る最も面白く、最も成功を収めている人の全員が、未来がどうなるかについて、しっかりとしたアイデアがあるように見えます。彼らは新しいデータによって、自分のアイデアが間違っていることについて説得される用意があります。しかし間違いを確信するためのハードルはかなり高いものです。

私は、未来が不可知であるというアイデアには同意していません。実現しそうなことやあなたが実現するのが可能なことで、確信の持てるようなものはたくさんあります。

自分の進みたい方向についてしっかりとした意見を持ち、詳細については柔軟になってください。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Sam Altman

Sam Altman は OpenAI のCEO であり、Y Combinator のアドバイザーです。彼は 2014 年から2019年の間、YCの社長でした。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Notes for the New Year (2017)

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