Y Combinator が NPO に求めるもの

2013年に、Y CombinatorはWatsiに対し、初めて非営利団体助成金を提供しました。それ以来、私たちは、国際保健(Noora Health、New Incentives)、貧困救済(No Lean SeasonやNew Story、Zidishaなど)、民主主義(vote.org、ACLU)、直接的な慈善行為(80,000 Hours、Centre for Effective Altruism)などの様々な領域の25の非営利団体スタートアップに資金提供を行ってきました。Y Combinatorの支援を受けている非営利団体は、引き続きGiveWellやOpen Philanthropy Project、DRKなどから資金提供を受けています。

プログラムの前提は単純なものです――私たちは非営利団体を営利団体とほぼ同じものとして扱います。非営利団体は10万ドルの資金提供を受け、営利団体と肩を並べてYCプログラムの基準をクリアします。私たちは創業者が重要な数値指標を伸ばすことと、人々が望むものを作ることに徹底的に集中することを手助けします。

たくさんの人が私たちに尋ねます。資金提供先の非営利団体をどのようにして選択するのかと。私たちは要となる4つの要素を検討します。
1. チーム
2. 大きな問題と大きなソリューション
3. 成果が立証できるプログラム、または、見込みのあるプログラム
4. Y Combinatorとの調和

詳細については以下をお読みください。ご自分の組織がふさわしいと思うなら、次の機会に応募してください。

1. チーム

非営利団体をすばらしいものにするのはすばらしいチームです。ここで私たちが求めるものは、営利団体のスタートアップに対して求めるものと全く同じです。

2 大きな問題と大きなソリューション

私たちが資金提供を行うのは、多くの人々の役に立ち、それぞれの人のための大きな社会的利益となるソリューションに取り組んでいるチームです。

これは、あなたが大きな問題に取り組まなければいけないということです!また、それらの問題の解決を阻んでいるものにどのように取り組むかについて、独自の考え方がなくてはいけません。

よくある障害は、資金調達です。非営利団体のための資金調達は困難です。ですから、なるべくその必要性を抑えるようにしてください。費用効率には気をつけてください。受益者にとっての経済的価値を創出しているならば、より多くの人の役に立つように、そのいくらかを収益として確保してください。

障害がわかりにくいこともよくあります。すでにかなりの注目を浴びている問題に取り組んでいる場合は、その問題は見かけよりも解決が困難なものかもしれません。ソリューションの中のどこに、他の人がうまくいかないのに、あなただけがうまくいくような独自性があるのでしょうか。また別の選択肢として、見過ごされている問題に取り組むことも、あなたの可能性を最大限に広げるすばらしい方法となりえます。

3. 成果が立証できるプログラム、または、見込みのあるプログラム

営利団体にとっては、使用率と収益は成果を測るための強力な指標として役立ちます。非営利団体にとっては、成果を測るのは非常に困難です。非営利団体の成果の判断には何年もかかります――その領域の専門家の力を借りてプログラムの長期A/Bテストを用いることもよくあります。

残念ながら、厳密に検証すると、多くの非営利団体には何の成果もないことが判明します。The Coalition for Evidence-Based PolicyのDavid Andersonは、ソーシャル・プログラムの少なくとも4分の3は、肯定的な効果がわずかしかない(さもなくば、全くない!)と推定しました

このような理由で、私たちは最初に、厳格な研究によって検証済みのプログラムを持つ非営利団体を探します。例えば、No Lean Season (W17) は、農場労働者に都市までのバス代として20ドルを渡し、種まきと収穫の間の期間にそこで一時雇いの仕事をしてもらうようにしました。イェール大学の経済学者の研究により、助成金を受けた人たちは、助成金をもらわなかった人たちよりも200ドル以上多く稼いだことがわかりました。

しかしながら、このような研究には経費と時間がかかります。そこで私たちは、既存のものよりも効率的であると考えられるプログラムを実行しており、自分たちの行なっているプログラムを検証するための信頼に足る計画を持っている非営利団体にも資金提供をしています。その例として、New Incentives (S16) があります。彼らは、見込みのある有名なプログラム(条件付きの送金)を取り上げました。そして、ランダム化比較試験を実施し、このアイデアを適用するための最も費用効率の高い方法を探しています。

最後になりますが、とてつもない成長をする可能性のあるアイデアもあります。しかし、それを証明するのは法外に困難です。例えば、教育プログラムが機能していることを最終的に証明するのには、10年から20年を要する可能性があります。それでも私たちは、その斬新かつ高い影響力が見込まれる取り組みを理由に、Dost Education (W17) に資金提供を行いました。その取り組みは、インドの貧困社会における携帯電話の普及を活用しています。このカテゴリーの非営利団体は、長期的効果の主要な指標となる数値指標に依然として執着する必要があります。

4. Y Combinatorとの調和

Y Combinatorのプログラムが最も価値を発揮するのは、私たちが評価と改善の手助けをすることができる有形製品または実体的なサービスを構築しようとしているグループです。私たちはさらに、基本的にテクノロジーに基盤を置くグループにより多くの力添えをすることができます。テクノロジーに基盤を置いていることを絶対的な条件だとは思っていませんが。

私たちはまた、スタートを切ろうとしているグループよりもむしろ、すでに発展し、牽引力のある非営利団体にもっとも力添えをすることができます。これもまた、絶対的な条件ではありませんが、すでに努力が始まっているのを目にしたいのです。

最後に、最高の非営利団体は透明性が高く、さらに、この透明性によって、団体全体の革新が加速すると私たちは信じています。これは気風としての側面です。例えば、私たちは、Watsiが財務状況の全てを開示していることを非常に嬉しく思っています。

FAQ

私たちは営利団体と非営利団体のどちらで応募すべきでしょうか。
すばらしい質問です!非営利団体として応募する前に、営利団体ではいけない理由を本気で自問してみてください。営利団体には、非営利団体に比べて多くの不当な優位性があります――収益による成長の加速と迅速に動く資金提供者の堅固なエコシステムです。営利団体として社会問題を解決できるなら、それはほとんどの場合、常に近道です!その場合にも私たちは喜んで資金提供を行います。助成金ではなく、投資として。

助成金額はどのくらいですか?
エクイティではなく助成金として非営利団体ごとに10万ドルを提供します。

全ての創業者が3ヶ月間、ベイエリアに住まなくてはいけませんか?
YCプログラムは、全ての人が実際に参加することで、非常にうまく機能します。ですが、私たちは、非営利団体の仕事の多くが合衆国以外にあるということも理解しています。団体の創業者の1人はプログラムを実施している国にとどまることができますが、CEOを含むその他の人々は資金提供周期の3ヶ月間、ベイエリアに住む必要があります。

大規模な組織の中にあるプログラムに資金提供は行いますか?
はい――例えば、No Lean Seasonは、Evidence Actionという大組織の中のプログラムです。

特に関心を持つのはどの領域のプログラムですか?
私たちは、スタートアップに対する条件の中で、いくつかのアイデアを候補に挙げています。それらは、非営利団体に適したものです。国際保健食料と飢饉多様性民主主義の向上などが含まれます。

私たちの考えでは、現時点で、国際保健の領域のスタートアップは特に私たちの基準を満たすことができています。その領域では、成果をあげたプログラムが多く、さらに、大口の資金提供者が意欲的に優れたものを拡大させようとしているからです。

非営利団体において、創業者とはどのような人を指しているのでしょうか。
非営利団体に関しては、単純な定義はありません(エクイティを使うことのできる営利団体とは違います)。
創業者とは、その組織に十分に貢献し、重要な意思決定権を持ち、さらに、近い将来に指導者となるべき人物です。創業者は、設立当初から組織にいる人物である必要はありません。

501c3であるべきですか?
いいえ。実のところ、私たちの力添えであなたの組織を501c3にすることができます。
確かに501c3になる能力を持つ必要はあります。もしくは、501c3の出資者がいる必要があります。私たちは501c4sとB-Corporationsのいずれにも助成金を出していません(ただし、B-Corpについては営利団体として応募できます!)。

どのようにして応募するのですか?
この応募書類に記入してください!私たちは、年に2組のスタートアップに資金提供を行っています。次回は、2018年冬のプログラムで、10月3日が応募期限です。

ここに自分の質問に対する答えがない場合はどうすればよいですか?
一般的なYC FAQを確認してみてください。

 

著者紹介

Robby Walker

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: What Y Combinator Looks for in Nonprofits (2017)

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