バイオテック起業家へのアドバイス (Startup School 2018 #19, Elizabeth Iorns)

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Adora Cheung
さて皆さん、それでは始めます。遅くなってしまってすいません。さて、Elizabeth Iornsに来ていただいていますが、Elizabeth Iorns博士というべきですか、それともElizabeth Iorns教授?とにかくエリザベスは、がんを専門とした生物学者として教育を受けました。ロンドン大学からのがん生物学専攻で博士号を取得、ポスドクをして、それから現在も働かれているマイアミ大学医学部で準教授となりました。これで正しいですか?

Elizabeth Iorns
はい。

Adora Cheung
よかった。それから2011年に、Science Exchange、当時はThe Benchと呼ばれていた科学実験をアウトソーシングするためのオンライン・マーケットプレイスを始めました。そしてY Combinatorの2011の夏季バッチに参加しました。YCではまさに最初のバイオテクノロジー型企業だったかと思います、そうでしょう?ここから一緒に仕事をし始めたんですね。

そして彼女はまた Reformer Therapeuticsの会長も務めています。これは、一番最近のバッチにYCに参加したばかりです。彼女はまた、YCのパートタイム・パートナーでもあります。つまり、自由時間があるときに、YC所属の全てバイオテクノロジー企業を支援しています。というと数百に登るのですが。正確な数がわからないのですが、何百というバイオテクノロジー企業があります。

それで、今日は特に2つのことについて話したいと思います。

1つ目はマーケットプレイスの会社を運営するということ、なぜならそれがScience Exchange の形態なので。そして2つ目は、現在何百ものバイオテクノロジー企業に助言してきた人としてのあなたの見方を学ぶことです、何をあなたが考えているのか、その領域で何が起きているのか。特に、この分野に入ってくる科学者は増加していると思うので、そのことについて聞けるといいかと思います。

では初めに、先に述べたように、あなたはがん生物学者として教育を受けたんですね。あなたは、大学を出てすぐは乳がんの研究をしていたと思うんですが。どのようにして学術の道をやめて、スタートアップに至ったのですか?そのアイデアはどこから来たのでしょう?

Elizabeth Iorns
そうですね。行きあたりばったりでしたよ。特にバイオテクノロジー企業ではなくScience Exchangeのようなテクノロジー企業を設立するのは。

私は実は、知らないうちにY Combinatorが行っている、自分自身の問題を解決するように、というアドバイスを実行していたのだと思います。私は科学研究がいかに発展してゆくのかを見ていました。研究はより専門的に、より学際的になってきていて、最新のテクノロジー全てにアクセスするには、他の研究所とコラボレーションをする必要がありました。

そしてそれを自ら経験し、信じられないほど非効率的であることに気づきました。どのように一緒に仕事をする人を見つけるのか、どのようにその専門に特化した仕事能力の質や実際に仕事をするためのインフラストラクチャを評価するのか、ということです。

バイオテクノロジーや科学研究では、科学的成果の所有権は非常に重要です。ですから、実際に研究成果の所有者が誰であるか判別すること、誰が知的財産権や出版権を持っているかということ、こういうもの全て、全てがとても難しいことです。

そのことについて共同創業者と話し、同様の問題を解決した他の産業の例を見ることにしました。それで、当時oDeskとElanceと言った会社を観察しました。この二社は現在Upworkという会社になっています。

しかしそれは本当に一例で、この仕組みでエキスパートのマーケットプレイスに関する問題を解決することができ、それがScience Exchangeの基礎になっています。しかし会社が達成しようとしている根本的な目標に関してはそれ以上大きく進化することはありませんでした。

Adora Cheung
そこをもう少し深掘りしてくれませんか?

以前は、もし私が何らかの研究をして実験を実行したいと思えば、基本的にそのプロセスは散らかっていて、10個の別々のものが要るんですよね。そして、その10個がまったくバラバラのところにある、と。これについてもう少し教えていただけますか。あなたがしていた研究に関連した例を出してもらえませんか、それがどれくらいまとまりのないものだったか、そしてScience Exchangeがどのように全てを一箇所に集めることになったか。

Elizabeth Iorns
はい、本当に全然まとまっていなくて、つながりがなかったです。これは、仕事を一緒にする人、またどのように情報を見つけるか、の両方に関してです。そして事例によっては、その情報が本当にない場合もあります。

当時乳がん研究者として働いていた時、私は種類の異なる実験を複数行っていました。その一例がマイクロアレイ分析です。これは、私の研究室からの離脱時間を示すものです。今では非常に古いテクニックですが、当時は遺伝子発現プロファイリングを分析するために使っていたものです。

そのとき、私が利用したい配列のタイプが自分のところになかったのです。それで私はグーグルを利用して、友人や、昔の研究室に「インフラを使わせていただけますか?」と尋ね回りました。それは信じられないほど非効率的なやりかたでした。また、実際にはこの非効率性が、市場での大きな非効率性とそれゆえの価格設定を引き起こします。

それは私にとって大きな学びのポイントでした。その時点では、情報が不足していたため、市場は非効率的で、実際にはマージンをとる会社を作ることすらできました。例えば、同等の実験のために十倍の価格差があったのを知っています。皆本当にただ実際にかかるはずのコストで手に入れられなかっただけなのです。

今日のScience Exchange上でも、利用者が複数の選択肢を探そうとする場合や、一緒に仕事をするという障壁がない場合にも、非常に頻繁に、価格差が生まれます。しかも同じ結果を得るためにかなり大きな価格差が出ることもあります。

Adora Cheung
わかりました。一歩前に戻って言うと、あなたが学者だったとき...これが悪口かどうかわかりませんが。

Elizabeth Iorns
いいえ。

Adora Cheung
で、あなたは学者だったとき...

Elizabeth Iorns
一部の人にはそうかもしれませんが

Adora Cheung
その切り替えをするのは、難しい選択でしたか?つまり、この1つのことを勉強するのに何年も費やしてきたのに、テクノロジー企業を始めるわけです。その企業は、その時点まであなたが自分の人生をかけて取り組んできたことを解決しないんです。

Elizabeth Iorns
そうですね、そして実際ロールモデルもあまりいなかったので、スタートアップにはあまりふさわしくはないマイアミにいました。そして今、バイオテクノロジーの世界の発展だけでなくスタートアップエコシステム、そしてそこに作られた全てのインフラの進化を見ると、興味深いですね。マイアミ大学では、医学部に、会社の創業を助けるインキュベーターすらかかえていると思います。

当時、会社をつくるというアイデアを持っていたんです。この考えを持っていて少し心配だったので、実際に大学に尋ねました。大学で働いている間、大学は会社の所有権を何割かとろうとするのか?と。なぜなら、あなたが学術界で働いているとき、生み出す結果はあなたのものではないからです。

だから私は、実際に研究者の業績を所有しているのは大学だ、という共通の誤解があると思います。したがって、それらの結果を大学の外にスピンアウトすることはしばしば大変難しいことなのです。それで心配しました。「こういう考えがあるんですけど、会社を作ったら、大学が所有するんですか?」と。

私たちは大学の技術移転部のオフィスに行き、話しました。 答えは「何してもいいよ、望むこと何でもしたらいいです。」というものでした。そして面白いことに、そのオフィスには企業方法のガイダンスは何もありませんでした。

しかし、偶然にも、Wired MagazineのY Combinatorについての記事を読みました。何年も前に行われた、Y Combinatorに関するWired誌のインタビューがあったんです。そしてそこで私が最初にY Combinatorについて知ったのです。

「これは、すごくいい、応募するのはどうだろう?」と思いました。そして私達は全員この部門の部外者で、Y Combinatorの中の人は誰も知りませんでした。Y Combinatorを通過したことがある人も誰も知りませんでした。私たちはただ応募してみて、そして幸運なことに参加ができました。

Adora Cheung
技術移転について少し話してくれましたね。学術界で起業を考えている多くの人々がそれを大きな問題だと考えている、と思うんです。

私たちが、所属するスタートアップのことで一緒に仕事をしなければならなかったような大学に所属する方々にとっておいて、それは大きな問題です。学術界の方々に向けて、そのプロセスでうまく舵取りをする方法で、何かアドバイスはありますか。なにか障壁になると思うことは思い浮かびますか?

Elizabeth Iorns
すでに行われた実際の研究をスピンアウトしようとしているのであれば、技術移転は科学関連のスタートアップにとって問題であると思います。そして、よく聞かれるのですが、科学関連のスタートアップを創業しようとする場合、Y Combinatorに参加する良いタイミングはいつですか、と。

私は、参加するのに良い時期は、すでに助成金で賄われている研究から多くの研究開発(R&D)を行った後だとおもいます。なぜなら、研究の仮説を追求するために何年もかけ、そして事業用の資金を使いたくないわけです。開発段階になってからにすべきです。

ただ、多くの大学ではこれが非常に難しいことになると思います。大学の中には、創業をより易しいものにし、研究結果に対してより容易にライセンス供与する方法を作り出そうとしているところもありますが、それでもなお重大な障壁です。

Adora Cheung
学者たちがスタートアップ創業をしようとするのがトレンドになっていると思いますか?それとも、ここサンフランシスコではそう見えるだけかもしれません。それは、私にとっては伝え聞いた話で唯一知ることができることです。でもあなたからみて、全体的に成長傾向にあると思いますか?

Elizabeth Iorns
そうですね、皆、会社を創業することにもっと積極的であると思いますよ。科学を超えたもっと大きな規模のトレンドとして、起業がもっと実行可能なキャリアパスになってきたと思います。

みんな、「ああ、私は会社を設立するという可能性があるよね、それに前よりずっと簡単になっているし」と言っています。Y Combinatorだけでなく、Stripeや、そしてAWSのようなものを通して作られているインフラは、会社を非常に簡単に作れるようにしました。

Science exchangeはその中の一つですが、LabCentralのような非常に興味深い発展の仕方や、非常に費用対効果の高いThe Benchによるラボスペースの提供、その他の[inaudible]ラボスペースがあります。一つのBenchを1ヶ月ごとに借りることができて、会社を始める時に本当に費用対効果が高いんです。これらのことが参入障壁を下げています。

そして私がもっと知りたいのは、学者の世界において、どのようにエンジニアリングの世界と同じような状況を可能にするかと言うことです。 ソフトウェア・エンジニアリングの世界では、ソフトウェア開発者自身が起業家になり、会社を作って回していきます。

科学者、特に博士課程やポスドクの科学者にとっては、まだ非常に難しいと思います。彼らは実際にこれらの研究室で新しい発見をします。そういう仕事をするのが彼らなんですが、しかしそう言う人たちが実際に会社の創業者として多くの時間を費やすのはかなり難しいことです。

それから大抵の場合、よく知られている有名なPI、つまり第一投資家(principal investigator)その会社の共同創業者になり、資金調達に人々を呼び込むような正統性を与えます。

しかし、それはまた悲しいことでもあると思います。会社を始めて成長させるために、会社の取り分を多くとるようなこれらの人物がなぜ必要なのでしょうか。
私はそこを変化させたいのです。

Adora Cheung
そうですね、よくご存知のように、応募してくるたくさんの人と話した時に見るのがその構造です。要するに、それを改善して起業しようとする人を助けようとしているんですね。せっかくの会社をすぐさま失いたくありませんからね。

はい、ではScience Exchangeのことですが。すでにあなたが何を解決しようとしているかについては説明いただきました。2011年の時点、スタートアップを始めようと決めたとき、最初のユーザーをどのように獲得しましたか?マーケットプレイスの両面を持っているわけなので、それは二重に難しいことでしょう。どのようにして、その両側にアプローチしたのですか?

Elizabeth Iorns
そうですね、マーケットプレイスというのは本当に難しいものです、なぜならビジネスの成功というのをコントロールすることはあまりできないので。いえ、できるとは思うのですが、ただ何かをつくって、それを売っているわけではないわけです。

マーケットプレイスの逆側で売るものを明確にしなければなりません。だから、本当に難解なものなのです。私達が最初に事業を始めた時、とったアプローチの中でまさに最小限実行可能なプロダクト(MVP: Minimum Viable Product)だったと思います。

最初のバージョンのScience Exchangeは、ご紹介いただいたとおり実際には当初Benchという名前で呼ばれ ていました。その名称はY Combinatorのプログラムの間に変更になりました。Paul Grahamの非常に良いアドバイスのおかげで。それで、私たちはウェブサイトを立ち上げたんですが、本当に「このウェブサイトに自分の必要なものを載せれば、他の人々がそれを見て、それが選択肢に繋がるでしょう」というような方法をとったものでした。

当時科学者として、自分も「これを使いたい」とは思いませんでした。何かをサイトにあげて、誰がそれを試しているのかを知るのは迅速にできることのように思えましたが、実際これは真のマーケットプレイスを作り出し、目に見える供給をするために明らかに正しいことだったのです。さらにSciences Exchangeにとっては他よりもっとそうでした。

私たちがしなければならなかったのは、B2Bセクターで作動する精巧なマーケットプレイスを創造することでした。QA、つまり品質保証を構築するためにしなければならなかったことですが、マーケットプレイスを通じて利用可能な全てのプロバイダを実際に認証そして契約し、その結果を全て明らかにする必要がありました。そうすることで誰かがマーケットプレイスを訪れた時に、まさに必要としていることを見つけることができ、それに機密保持契約があることがわかっているため、正確に引合いをするための必須事項の情報を入力してくれます。

それから、それらのプロジェクトを管理しなければなりませんでした。カートに入れてチェックアウトするだけではないので、実際にあなたとは別の地域で働く誰かと一緒に取り組むプロジェクトを管理しなければなりません。これら全てをソフトウェアに組み込む必要がありました。

ですから、私たちが提供しているものから得られるバリューが実際にどこに一番あるのかを学ぶプロセスを何度も反復しました。マーケットプレイスは主に消費者中心であることから大きく進化してきたと思います。B2Bの興味深い事例が数多く出てきています。そして、明らかにScience Exchangeはそのカテゴリーに確固とした位置をもっています。

Adora Cheung
需要と供給のどちらがより困難でしたか。

Elizabeth Iorns
間違いなく需要です。私たちにとっての供給はとても明快で、プロバイダーが仕事を探しているという意味です。サービスのプロバイダーですね、非常に急成長している業界です。

また非常に細分化されたものでもあり、実は需要側と同じ課題も抱えています。自分のプロジェクトの1つを売りたい場合、一緒に仕事をするそれぞれのクライアントと契約しなくてはなりません。これには数ヶ月かかり、また品質保証を経てからプロジェクトを始めなければなりません。

彼らにとって、Science Exchange に参加しているのなら、すぐさま私たちのクライアント全員と仕事をすることができます。というわけで、これは巨大なバリューの提案なんです。マーケットプレイスの巨大プレーヤー、つまりこのサービスの一部分であるべき大規模なCROたちを納得させるには、もう少し時間がかかりました。しかし実際には、私たちもそれを行うことができました。

私たちがすぐ学んだ重要な教訓の1つは、このサービスが本当に効果的な解決策であるためには、それを利用していた会社の全てに利用されるプラットフォームでなければならないということでした。マーケットプレイスにて購入をするだけではなく、実際には外部パートナーと進行中のプロジェクトの全てを管理するためのシステムとして利用できる、ということです。

そしてそのために、本当にプラットフォーム上で働きたいと思える主要なプレーヤーの全てをかかえている必要があります。私は、B2Bマーケットプレイスを持っている他の会社が、供給側に大手の確固としたプレーヤーを持っていなかったところで少し苦労しているのを見てきました。それがなければ、プラットフォームを利用する企業とパートナーシップを持つことは非常に難しいだろう思います。

Adora Cheung
需要側で、一番最初の顧客について覚えていますか?何でしたっけ?何をしている会社でしたか?

Elizabeth Iorns
そうですね。覚えています。最初の顧客というのは科学者だった私の友人たちで、「実験を実施しているのであれば、Science Exchangeを試してよ」と伝えました。その人々からのユーザーフィードバックは素晴らしかったんです。直接的なふれあいがある、まさにコンシェルジュサービスであらねばならないことが分かったからです。

それから、費用対効果の高い、素晴らしい選択肢を見つけてくれました。私たちがサービスを作ったからただそれを使っただけではなかったんです。彼らは私たちに多くの事を教えてくれたと思います。

また、私たちとは個人的関係のない顧客がはじめてプラットフォームにアクセスして、サービスを利用したことも覚えています。かなりエキサイティングでした。実は、兄弟の結婚式でイタリアにいたんです。そこで「なんてこと、誰かが私たちのウェブサイトを利用してくれたんだ。」となりました。

Adora Cheung
結婚式をとめて! これチェックしないと。

Elizabeth Iorns
そうそう。

Adora Cheung
そのユーザーが行おうとしていた実験は何でしたか? 覚えていますか?

Elizabeth Iorns
それもマイクロアレイでした。その時点では人気があったんです。

Adora Cheung
スタートアップスクールでよく話すことが、プロダクト・マーケット・フィット (PMF) ですね。あなたにとって、いかがでしたか?いつプロダクト・マーケット・フィット状態にあるとわかりましたか?また、あなたはそれをどう定義していましたか?そして、どのように評価指標を探しましたか?

Elizabeth Iorns
私たちは、最初の大きな製薬会社のクライアントが、実際にその会社のビジネスの全部門でプラットフォームを利用したときに、プロダクト・マーケットフィットを定義したと思います。

私たちにとって、それはAmgenが基礎研究の全てにおいてScience Exchange を使ってくれた時で、その時の私たちにとっては本当に大きな取引でした。そして、気づきました。「ああ重要なことをやっているんだ」と。

当時は多くのステップを手動で行っていました。このプロダクトは多くのステップを自動化し、協働すべき人またユーザーがただ眺めているだけかもしれない新しいテクノロジーに関するオプションについての全ての情報を提供してくれます。

また供給側のビジネスと費用およびサプライヤーパフォーマンスに焦点を当てたビジネス・インテリジェンスすらも提供しています。したがって、これらのことから、バリューがどこにあるのかを理解するのにしばらく時間がかかりました。

Adora Cheung
長年にわたりお金をかけて社内で問題を解決しようとしてきた大企業が突然、あなたのプロダクト上に移行したとき、なにかを成し遂げたと分かったんですね。ここから努力が報われていきますね。大きなことです。バイオテクノロジーだけでなく、一般的にも...

Elizabeth Iorns
つまり、ソフトウェアならなおさらだ、と思います。面白いんですが、「主な競合はどこですか」と常々尋ねる人がいるんです。「競争の差別化についてどう思いますか?」と。

それについては、私にとっては未だにそうなんですが、私たちの主な競合は現状維持、です。外部ベンダーを管理するためにこクレイジーなSharePointプロセスを設定できるように。いつも「ひどいですね、どうしてこんなことをやっているのですか?」と聞くんです。

大企業は、大企業というのはSharePointが大好きなんです。「ああ、私のSharePointサイトね。このとても複雑な全部を、私が作ったんですよ。私が仕事をしている5社のベンダーにのみ適用されます。その他は皆他のやっかいなプロセスを経なければなりません。」

そして、私は言うんです「そうですか、でもただこのプラットフォームに移行するだけでいいんですよ」と。

それから、誰がそのプロセスをセットアップするのかというところにいつも興味深い闘いがあります。なぜなら、ソフトウェアが大変な仕事を全て自動化すると納得させようとすることが、実際には私たちの最大の課題の1つであることが多いからです。

Adora Cheung
私があなたがやっていることで本当に大好きなことの一つは、ずっと前に発表したことですが、Reproducibility Initiative(再現性イニシアチブ)でした。つまり、このアイデアというのは、実験を実行して結果を公開した場合、それが本当に行われたか検証するために誰か他の人が再現できなければならない、というものです。

なぜそれをしているのか、もう少し話してくれますか?何を具体的に行っているのか、なぜこれが今まで行われたことがないのか。ただお金の問題だったのでしょうか、それともScience Exchangeだけが実際にできることなのでしょうか、サービスの中の所定の位置にそのプロセスがあるから。

Elizabeth Iorns
Reproducibility Initiativeですね、私はまだそれが本当に良いプロジェクトだと思っています。でも何年も経ってもまだ物議をかもしています。

Adora Cheung
本当に?

Elizabeth Iorns
そうそう。

Adora Cheung
なぜ物議をかもすのでしょうか。

Elizabeth Iorns
本当にまだまだ議論が割れていますよ。論争の理由には色々あります。主な理由は、人々がその価値について確信が持てないことだと思います。わたしは間違いないと思うんですが。

実験を模倣再現することがどれほど効率的であるかという疑問がまだあると思います。そしてそれは、実際には...「Science Exchangeしかなかったのか、それが私たちが実験の再現をできる唯一の方法だったのか」と言われる時です。私たちの仮説は、「はい、適切な論文、適切なインフラ、あるいは適切な実験動物をすでに持っている人とのネットワークを保有していることが、実践的に考えて唯一の方法でしょう」というものでした。

以前は、明らかに、そんなものを持っている人はおらず、「ああ、同じ実験動物を持っている人、あるいは同じ道具を持っている人を探しに行って連絡して、説得しないといけない」というような、先に述べたのと同じ問題を抱えていました。

つまり、Reproducibility Initiativeは、科学研究の質と効率を向上させるというScience Exchangeの使命の一部なのです。そしてそのプロジェクトは非常に幅広いものですそのため、行うことが多い抗体検証や、また試薬検証、疫学的結果の再分析などをカバーしています。私たちはゲイツ財団と協力してその目的に取り組みました。

そして、私たちのことで最もよく知られているプロジェクトは、公開された結果を複製する(replicating published results)ことです。それは製薬業界のためでもあります。これはずっと簡単で物議をかもしません。そちらの産業は、「あの、この結果に興味があるんですが」と言ってくるので。

私たちのサービスは、主要な結果を再現して返すことができる施設をすぐに見つけます。しかし、Cancer Biology Reproducibility (がん生物学再現性)プロジェクトとProstate Cancer Foundation(前立腺がん基金)プロジェクトの2つは、最も多くの人が動向を追っている、公に複製されたプロジェクトで、そこで私たちは複製研究を実際に発表しました。

そして、それは物議をかもしています。人々が一般的には行わないことだからです。私はそれが、複製研究を公表しないという文化的規範に反していると思っています。また、皆本当に怖いのだと思います。失敗した複製を、詐欺のようなものだと混同するので。

結果が再現不可能であると判明した場合、それがキャリアに悪影響を与えるということを、多くの人が恐れています。おそらく本当なことだと思いますが、本来そうあるべきではありません。現実的には、生成された結果は、ほとんどの公表された結果が再現可能ではないことを示しています。

それが本当なら、それを理解・研究しようと試みるべきです。これは私の科学者としての意見です。私たちは「なぜそうなるのだろう」という背後にある科学を研究するべきです。「ああ、あなたの科学研究はだめだね」と個々に向かって言うのでなく。明らかにそういう問題ではありませんから。

明らかに、それらが公開される時点で大半のものが再現できないというのはさまざまな複雑な要因のためで、ここに私たちは影響を与え始めています。でも、私はやるべき仕事はまだ多くあると思っています。

Adora Cheung
その複雑な要因トップ2は何ですか?

Elizabeth Iorns
物事が再現できない主な理由は、論文検証の質だと思います。製薬会社と話をしに行く時というのは本当に面白いですよ、製薬会社も実験を移転するので。彼らは、自分たちの施設で何かを見つけるという意味で実験を複製し、それから論文の成果を何度も繰り返し実行するためにCROにアウトソーシングします。彼らはそれを技術移転または論文移転と呼んでいます。このプロセスは非常に効率的です、彼らはこれを非常に簡単に行います。そしてこれはうまくいく可能性が高いです。

それを見ると、発表された結果をとる場合とそれほど大した違いはないと思います。そして別の研究室でその論文成果の再試行をしてみることになります。しかし、主な違いは、製薬会社で仕事をするときにはSOPがあり、全てが文書化されていて、論文の変動性や、正と負のコントロールに関するデータを見ることができます。

実際には移転される前に用いられる、実験に関する論文のような種類の検証がもっと多くあります。そして、それは学術界とは非常に異なるのです。学術界では、「ああ、この実験動物は、研究室で飼っているね」と受け取りがちです。または、「この細胞株は研究室にあるね、この実験を実行するだけでいいな。」というような感じになります。

そしてうまくいけば、正と負のコントロールを含めることができますが、でもそうはできないかもしれません。そしてまた、論文の変動性、論文の再現性のようなものは分かりません。公表された結果に見ることの多くは、本当の実験的な効果というよりもむしろ、ノイズである可能性が高いと私は思います。より多くのことを理解するまでは、それらの結果を再現することに問題がでるでしょう。

Adora Cheung
それはある意味怖いですね。しかし、あなたがたはこの世界を救ってくれていますから。

だから、この問題からも私たちを救ってください。それでは、Science Exchangeのことに戻ります、今日のマーケットプレイス関連の会社のCEOとして、最大の課題は何ですか?そして、その課題は時間とともにどのように変わったのでしょうか。起業したときから今日までの最大の課題は何でしょうか?

Elizabeth Iorns
ああ、もちろん非常に多くの課題がありました。最初にScience Exchangeを始めたとき、最大の課題は「使ってくれる人を獲得できるだろうか」ということでした。それが最初の課題だったと思います。

それから、「非常に保守的な製薬業界が利用するようなものを構築することができるだろうか」ということです。それは私達にとっては重要なことでした。なぜなら、支出の内訳を見ると、市場は主に製薬業界を中心とした、アウトソーシングされた研究によるもので、そこが年間1000億ドル以上の支出をコントロールしていました。彼らがプラットフォームを利用するようにできなかったら、大企業をつくることに関する多くの問題を抱えるようになるでしょう。

今日、私たちが抱える最大の問題は規模の拡大です。私たちの会社にはまだ85人しかいません。非常に大規模なパートナーシップを2つ計画したところですが。そのため、大規模な統合という1つだけに焦点を当てているスタッフを入れて、かなり厳しい締め切りに向かって対応しようとしています。

巨大な可能性があることを認識している一方で、取り組むことが多過ぎないよう気をつけています。それを見逃したくはありません。だから私はただ集中し続ける、正しいことを実行する、そしてその目的に向かって規律正しく動こうと思っています。それというのは目を配るべきチャンスが複数あるときにはいつも本当に難しいことなのですが。規律は、非常に重要だと思います。

Adora Cheung
注力するのは本当に難しいですね。特にあなたがより多くの従業員を雇って、より多くの資金などを扱うようになると。少し切り替て、バイオテクノロジーのスタートアップについて話したいと思います。

先ほどお話ししたように、最近、特にシリコンバレーで、バイオテクノロジーのスタートアップが爆発的に増えていますが、それについてどう思いますか?原因は何でしょうか?

Elizabeth Iorns
はい、バイオテクノロジー産業は今、とても面白いですね。本当に驚くべきことです。

そして、それはここシリコンバレーだけではなく、どこでもなんです。英国、ケンブリッジや、サンディエゴ、どこでもです。バイオテクノロジーのスタートアップがたくさんあります。業界のその部門にとって、本当に調子がいい時なんだと思います。

それはいくつかのことによって動かされていると思います。1つは資本で、資本へのアクセスには全く前例がありません。バイオテクノロジーに流入する資本の量に関して、前例はありません。生物学の範囲はどこかということに関して、また利用可能な実際の治療法の観点からみて興味深い進化もあります。

私には、業界の外にいる人々が、これをバイオテクノロジーの本当のターニングポイントとして認識するかどうかは、分かりません。ごく最近までは低分子阻害剤のみがありましたが、その後、GenentechとAmgenがでてきて、実際の生物製剤がでてきました。抗体およびタンパク質ですね。しかし昨年、遺伝子治療が承認され、細胞ベースの治療が承認され、RNAiが承認されました。初めて実際に市場品として扱われるようになりました。

そういうわけで突然、この巨大な市場が目の前にひらけたわけです。そして、商業製品を作るに十分な実行可能性があるようなアプローチを異なる種類から選べます。以前には不可能だった方法で病気と戦うことにおいて、製薬の可能性があるところまで科学が追いついたということだと思います。

Adora Cheung
面白いですね、バイオテクノロジーでムーアの法則みたいな。

Elizabeth Iorns
本当に。今というのは本当に面白い時期です。それから、収束の傾向もあると思います。かなり多くの人が、「製薬業界でこういう経験をしてきました、バイオテクノロジー業界に進出しようかと思います」と言います。

素晴らしい科学的経験値、学術界からではなくて実際に医薬品をマーケットプレイスに投入している業界での経験値をもつ人々が、本当にたくさんバイオテクノロジーに参入してきています。リスクをとって、会社を立ち上げ、新規起業した五人しかいない会社の創業時の社員になったりしているんです。以前にこんなことを見たことはないです。これも新しい現象だと思います。

Adora Cheung
あなたはこの好調な潮流の交差点に座っているわけですが、ソフトウェア会社を立ち上げましたね。バイオテクノロジーと交差するマーケットプレイスを運営するソフトウェア会社を。だから、より多くのバイオテクノロジー企業に助言することに関する視点を持っていますね。バイオテクノロジーとソフトウェアの違いは何ですか?

Elizabeth Iorns
すごく、違いますね。

Adora Cheung
スタートアップ自体を実行するという点で?

Elizabeth Iorns
はい、本当に違います。思うんですが...

Adora Cheung
それとも私が質問を言い換えてみましょうか。

Elizabeth Iorns
はい。

Adora Cheung
バイオテクノロジーとソフトウェアはどのように似通っていますか?類似点はありますか?

Elizabeth Iorns
人、注力する点、資金という面で同じであると思います、それらのことに関しては全て同じです。適切な人材を見つけて維持し、良い文化を築こうとするというような事柄は、全て。

実際、YCは成功した起業家に学ぶことへフォーカスするおかげで、異なる分野の企業を持つという素晴らしい働きをすることができています。会社を作ることについての大きな教訓もそうです。細かい戦術についてはそんなにありません。

バイオテクノロジーが違うのは、科学の結果を変えることはできないからです。科学は科学なので、うまくいく時もあり、うまくいかない時もあります。事業を大きく転回したり、プロダクトを開発し続け、プロダクト・マーケットフィットを獲得しつづけられるソフトウェアとは、大きく違います。

科学では、薬の働きのリスクを軽減するという点での本当の変曲点を示す、主要な達成要件が全てです。開発の過程のさまざまな段階をたどり、臨床試験で、自分の薬が治療しようとしている疾患の治療に効果があることを実証する段階に到達するということです。

Adora Cheung
バイオテクノロジーにおいてのMVP(最小限実行可能なプロダクト)というのはどういうものでしょうか?

Elizabeth Iorns
バイオテクノロジーでのMVPは...MVPがあるのかどうかは分かりませんね。治療分野にあるバイオテクノロジー企業にとって、プロダクトが承認され、市場で販売されるまでは、商業的な収入は得られません。それというのは、実際には大半のバイオテクノロジー企業が決して手にできないものです。

そのため、ほとんどのバイオテクノロジー企業は新しい治療法を開発するプロセスを経て、プロダクトの高い臨床開発資金を提供してくれる大企業と提携します。そしてそこが、実際に多くの企業がエグジットすることになるところです。初期の臨床開発にあるプロダクトを買収、売却、もしくは提携するかのどれかになります。

本当に素晴らしいと思うことなのですが、いくつかのバイオテクノロジー会社は、自身のプロダクトを現在商品化しています。それというのは、かなり長い間起こらなかったことでした。

ごく最近、実際に自社プロダクトを販売している会社が複数あります。彼ら自身の販売力と流通経路を築くことなどの課題は本当に興味深いです。主にそれらの会社は希少疾病について取り組んでいます。その分野では主たるオピニオンリーダーに付いていって、効率的な販売チャネルを得ることができるのです。そういう会社が出てきているのを見るのは、本当にいいですね。

Adora Cheung
素晴らしいことです。さて、いまの点にもうちょっとフォーカスさせてください。基本的にあなたが言っているのは、自分のプロダクトを買収されずに、マーケットプレイスに出すことができるということですね。その特定の時期に、何が変わってそれが可能になったんですか?

Elizabeth Iorns
良い質問ですね。私は、資本だと思います。資本へのアクセスは本当に大事です。企業が実際にプロダクトの承認に至るまでの十分な資金にアクセスできること。また、FDAが特にまれな病気に対する理にかなった臨床開発戦略を考えるため、いい仕事をしたと思っています。

それによってできた環境では、企業は実際にかなり小さなトライアルで登録を受けることができます。小さな会社にとっても実行可能になったのです。そして流通という点では、患者が治療を受けている病院を通じて、強固な患者のためのアドボカシーネットワークを構築し、そのコミュニティの主なオピニオンリーダーと協力することが、薬を流通させる道を開くと思います。

過去には、大成功の兆候があれば、大変なことになりました。大きな営業部隊を組織して、古めかしい医薬品販売代理店で薬を販売しなければならなかったのです。簡単なことではありません。

Adora Cheung
実際にはScience Exchange が始まった時からですが、スタートアップの数が増えているこの状況はおそらく、あなたのサービスが、実験をスピードアップする、トライアルをスピードアップする、FDAプロセスをスピードアップするということなどを助けているんだと思います。

Elizabeth Iorns
その通りだと思います。この分野で、FDAのための規制インフラを整備した会社に資金提供しましたよ。専門知識があって、それを商品化し始める人がでてきました。これまでだったら不可能だったかもしれない方法で。

それがなければ規制に詳しいコンサルタントを雇わなければならないのですが、FDA戦略を考え出すためには10万ドル以上くらいかかる非常に高価なものになるでしょう。

今は、そのプロセスの商品化を提供するような会社と仕事ができるんです。EnzymeはY Combinatorが出資した会社で、とても興味深いところだと思います。これら全てが、このオフィススペースで見たものと同様のインフラを提供することができるだろうテクノロジーを実現しつつあります。

Adora Cheung
以前にも述べたように、この時点ですでに何百ものバイオテクノロジーの創業者のメンターをして来られましたが、バイオテクノロジーの創業者がする一般的な間違いは何でしょうか、そして何が必要ですか?事業にダメージを与えるような、どうしても避けるべきことはありますか。

Elizabeth Iorns
YCのバイオテクノロジー起業の創業者は、まず第一に本当に素晴らしいと思います。なぜなら彼らは大抵リスクを冒して学術界や他の非常に確立されたキャリアから脱退してきたからです。

そして言うんです、「スタートアップをやるつもりなんですが、従うべきロールモデルやサクセスストーリーはそれほど多くないんです」と。私は、彼ら自身が非常に印象的だと思います。そして、オフィスアワーの面談をして、彼らから学ぶこともよくあります。本当にみなさん素晴らしいんです。

しかし、見てきたなかで失敗は...私は全てのスタートアップの創業者がこの間違いをしていると思います。

決定的な実験をしないことです。ずばり「これが、この課題の真の回答を見つけるためにすべき必要最低限のことだな」と言わない、ということです。これはあまりやりたくないことだと思います。もしうまくいかなかった場合、そうしなかったならその時間を使って会社をすこし進展させることができるでしょう。

でも私は思うんです、なんで実験をまだしていないの?その実験をしたら今日にもそれがうまくいくかうまくいかないかわかるのに、と。

あなた自身の会社でそういう実験をする場合は大変だと思います。しかし、それを早くするほど、早く他の何かに取り組むのに十分なお金を手にすることができます。すでにお話ししたように、実際の科学的手法がうまくいかない場合、本当に困難な立場に追いやられます。

Adora Cheung
あなたがスタートアップに参入することを考えている科学者、あるいは学者であるとしましょう。多くの人が、まだ私にこれ、これ、こういうことをしなさいと言ってくれるビジネス共同創業者を必要だと思っているんじゃないでしょうか。それについてどう思いますか、それは目標であるべきですか?

Elizabeth Iorns
目標とすべきとは思いません。私にはビジネスの共同創業者がいて、私がそれを言えば彼はおそらく怒るでしょう。彼は素晴らしいんですよ。文字通り彼なしではScience Exchangeを構築できなかったでしょう。

しかし、彼のビジネスの経歴のせいではありません。偉大な共同創業者だからです。なぜなら彼は面倒なことを解決するために奮闘してくれますし、仕事を一緒にするのがスムーズです。ビジネスを考えたときに、その大部分は単なる常識の範囲だと思います。

私はファイナンスに関する経歴を持っていないことをとても心配していました。損益計算書やそのような書類を読む方法は知りませんでした。それからしばらくして、私は気付きました、「そうだ、ビジネス担当の共同創業者と話そう、彼が教えてくれるだろう」と。

それでそうしたんですが、その時に思ったのは、「明快じゃないか、そんなに難しいことではない」 ということでした。ビジネス面で、最高経営責任者として、あなたが会社を成長させようとするとき大事になるスキルは、自分の得意な分野と苦手な分野、そしてお金を投資してトップの人材を獲得すべき分野を認識することです。

私たちは最近、CFOを雇ったんです。1年前、CFOを雇いました。それが会社にとってよかったと同時に、認知方法の観点からみてよかったと、私は思っています。会社が成長段階に入ったとき、その間違いなくうまくやってくれるCFOがあなたを助けてくれますが、始めは、本当にあなたと同じ問題を解決したいと思っていて、本当にそれを気にかけていて、あなたが本当に一緒に仕事をしていたいと思える人を見つけるべきです。 なぜならそれが、断然最も重要なことだからです。

Adora Cheung
反対に、科学者ではなく、あなたがプログラマーであるとしましょう。しかしあなたはバイオテクノロジーへの参入に興味があります、何をするべきでしょうか?学校に戻って、博士号をとるべきでしょうか?私にとって潜在的に存在する道筋はどんなものでしょうか?

Elizabeth Iorns
良い質問ですね。私の中の一部は学校に戻るべきだと思っていますが。しかし思うんです、シリコンバレーからバイオテクノロジーに多くの関心があつまっています。自分自身の体をハックすることに皆興味があるんです。このムーブメント全体はとても個人的で、自分自身についての生物学的部分を理解したいということなんです。これはとても面白いことだと思います。

ところで、私はバイオテクノロジーの未来とその改革、私たちがしている分野の仕事の未来には、ユーザーの支払いという強い要素が間違いなく含まれてくると確信しています。だから私は、開発されたプロダクトは患者が実際払っても構わないと思っている金額で指標づけられる必要があるだろうと思います。現時点で多くの研究がありますが、潜在的な問題があります。なぜなら患者があまり不調にならない、または不調と感じないような病気もあるからです。そういう患者に服薬しつづけてもらうことは、とてもとても大変なことです。

偏頭痛薬のようなものとは対照的です。実際にAmgenの偏頭痛薬は市場予想の10倍好調の売れ行きです。それは偏頭痛で衰弱している人々がまっすぐ医者のところに行くからです。そして薬にお金を支払います。ユーザーに焦点を当てる方法を考えるのは良いことだと思います。

とにかく、質問に戻ります、脇にそれてしまったので。コンピュータプログラマーについてですが、彼らは何をすべきでしょうか?生物学やほかの実際の科学研究では、実験室に入ってから実験の設計方法や解釈方法を真に理解するという、実際やってみないと学習できない要素があると思います。

しかし、例えばバイオ・インフォマティクスや他の分析ツールや、実験室での経験がなくても参加できるプラットフォームには多くの使い道があります。Y Combinatorの成功した会社のいくつかは、科学のバックグラウントがない人が創設したバイオテクノロジーの分野の会社です。

Notable Labsは私がものすごく印象的だと思う会社です。創業者たちは、基本的に分野の知識全てを独学で学んできました。ものすごく賢くて、貪欲なんです。彼らをインタビューしたとき、すぐに「ああ、その分野で働いている博士号を持った人たちと同じくらいものを知っているな」と思いました。

Adora Cheung
素晴らしいですね。あと2つ質問です。1つは、少しScience Exchange に戻って話したいのですが、早期に行った決定の全てを振り返ってみて、これがゲームチェンジャーだった、私のビジネスの変曲点だった、というような意思決定はなんでしたか?スタートアップを始めるという決定自体は別にして。これは明らかに大事なことなので。

Elizabeth Iorns
ああ、良い質問ですね。ゲームチェンジャー。実のところ、Reproducibility Initiativeを実行するという決定がゲームチェンジャーだったと思います。明白ではなかったですが。

いくつかの点で、Reproducibility Initiativeはフォーカスしたい部分には外れていました。気を散らす要素だったんです。「さて、このプロジェクトをやろうと思う。でもそれは、マーケットプレイスに参入することとは直接関係がない。」という感じで。マーケットプレイスはこのプロジェクトの実行に利用されていましたが。

しかし、とてもタイムリーで注目度が高かったので、私たちが予想していなかったような方法でScience Exchange のブランディングと可能性を変えることになりました。それが多くの扉を開き、結局Science Exchangeの成功の大きな一因である製薬会社とのパートナーシップにつながりました。だから、それがおそらく一例でしょう。

Adora Cheung
面白いですね。知りませんでした。知った時には「Science Exchange、ああ、すごい」と思いました。大きく成長するかもとは分かっていましたが、このサービスで何ができるか明確に示したので、ここまで大きく成長できたんですね。

さて、最後の質問は、私がいつも変わらず一番好きな質問です。今から100年後に、つまり、あなたは今時点で7年、8年業界にいますね。しかし、今から100年後には、Science Exchangeはどうなると思いますか?

Elizabeth Iorns
面白い質問ですね。今から100年後に世界がどのようになるのかを考えてみたときに、誰かから良い答えがでるのか、確信がありません。でも、100年前には、科学的方法が存在していて、科学的研究が行われていたと思います。そして科学的研究というのは今から100年後にも存在する、と思います。

Science Exchange はいつも非常に目的主導でした。会社の目的は、つながりを通して科学的な進歩を可能にすることです。ですからその時の世界がどんなものであっても、それがScience Exchangeの行っていることだと私は思います。そして希望的観測としては、科学的ブレークスルーを実現するためにコラボレーションする必要がある人と、即座に協力することを可能にするインフラを提供しつづけているでしょう。

Adora Cheung
この科学の爆発的な成長を作り出した科学的手法が発見・発明されたのはそんなに昔のことではない、というのは何か途方もないことですね。というわけで。さて、これで私からの質問は終わりにして、観客のみなさんから何か質問がありますか。うしろの方。

Q&A

スピーカー3
何度も再現性に触れたことを考えたときに、その問題の一つは、統計的方法を使うということだと思うんです。相関関係が...[inaudible] しかし、研究方法として[inaudible] に向かう可能性がある新しいアプローチを採用するという点において、業界はどの程度オープンであると思いますか。

Elizabeth Iorns
ご質問は、因果関係を探すために相関関係を見るのではなく、新しいアプローチも検討すべきかどうかということですね。

スピーカー3
特に、知らないということに気づかれていないようなことで。

Elizabeth Iorns
ええと、わたしは生物学者として教育を受けたんです。私は、ただ相関関係を見るだけではいけないと考える傾向にあります。むしろ、制御されたシステムで何かを変更することができるように実験を設計し、その結果を読みとって、それで何かを変更したがゆえにその下流に影響が与えられたという私たちの仮説が当てはまるかどうか結論づける、と言うふうにします。

相関関係に関する興味深い研究結果が存在していると思いますよ。特に実世界のデータと使って行われたもので。新しい理論を調べるために、実際に生身の人間を使うことができる方法を探し、それから研究室にてそれらを当てはめるんです。

しかし基本的なレベルでは、実験室にいるときは、知らないと気づいていないことを減らすためのモデルシステムを利用します。それによって特定の理論を試すことができるようになります。

スピーカー3
ありがとうございました。

スピーカー4
どのように短期間でひとつのアイデアから実用最小限のプロダクト(minimal viable product)に至ったかについて、お話いただいたと思いますが、どのようなステップを辿ったのですか?

Elizabeth Iorns
はい、ご質問は、短期間でアイデアからMVPに移行すること、およびそのために必要な手順ですね。Science Exchangeを始めたときに私が学んだ教訓の1つですが、迅速にことを進めて、成功にもっていく、ということです。

多くの人が会社を始めるのを見てきました。当初は多大な熱意を持っていますが、彼らはまたフルタイムの仕事をしていて、そして傍でその事業をやろうとしています。投入する時間がないですから、進展は明らかに限られています。

ですから可能であれば、もし「Y Combinatorのプログラムなどを3か月間やって、それから本気で会社を立ち上げよう」と言う時間を取ることができれば、本当に素晴らしいと思います。

私たちに関して言うと、2011年2月だと思いますが、アイデアを持っていたところから、様々なアイデアについて話して、「これは本当に良いアイデアだ」と思い至りました。それでY Combinatorに応募しました。ビデオも作りましたよ。私と私の共同創業者だけがいて、他に私たちは何も持っていませんでした。

Y CombinatorのAlexis Ohanianと実際Skypeをした時に言われました。「YCには入れませんよ」と。私は「そんな、なぜですか?」といったんです。そうしたら「技術担当の共同創業者がいない、技術担当の共同創業者は本当に必要だから」と言われました。

それで友人全員に話しに行き、技術担当の共同創業者を見つけることができました。2週間でこの会社は組織されたんです。それで、うまく仕上がったバージョンのMVPを構築することができました。

インタビューに来たとき、すでにもっているものというのはとてもベーシックなものだけでした。でも何かは持っていたので、YCに入ることができ、五月にここに引っ越しました。そして3ヶ月ほど、「とにかく、今すぐローンチしましょう」という時期が続きました。

また、プラットフォーム外の取引に取り組んでいました。当時、知っている科学者全員に話をしにいっていて、たくさんの場所に出向いてプロダクトを利用してくれそうな人々とたくさん会話をしました。需要と供給の側を理解しているということを明確にするためだけに、この期間に何十万ドルもの取引を実行しました。また、このサービスの原型を構築し始めていました。

スピーカー5
博士号などを取得することについて、学校に戻ることはもっとも必要なことではないと述べておられましたが、バイオテクノロジーのような分野に参入する場合、これは[inaudible] だと思います。

どれほど真剣に、応募用紙を受け取るのでしょうか、特に確固とした医学大学から確固とした学位を得た人が誰もいないバイオテクノロジー分野では。第二に、他の科学者、科学コミュニティと話をするときに、論文出版において適格性を持っていない場合、どのくらい真剣にとりあってもらえますか?

Elizabeth Iorns
ご質問は、バイオテクノロジー分野における資格(credentials)の重要性についてですね。

資格は非常に重要であると思います。あなたがその分野で資格を持っていれば、明らか大きなアドバンテージになるでしょう。でもそれは...YCには、分野の資格なしで成功した例があります。

実際に彼らに話を聞くと、彼らが成功した方法は、信じられないほど自分自身で勉強して資質を手に入れることによってです。

Notable Labsの例では、私がMattとPeteを面接したとき、彼らはその分野に関する全てを調査し尽くしていました。

全ての科学論文を読み、がん幹細胞について、その限界について、利用したいと思った論文について詳しく知っていました。彼らとはトップ大学の博士号を取得しているような資格がない分、より長い時間をかけて話しましたが。

しかし、話をすることによって、明らかになりました。彼らがその分野を理解していたこと、ものすごくやる気があるということ、そして家族の関係があって、問題を解決する一助となるなにかを世に出そうとしていること。

この問題というのは、彼らの場合神経膠芽腫のための新しい治療法を探していることでした。科学者ではないのであれば、なぜ取り組むのかという個人的な動機を持つことは、扉の内側に招き入れてくれる代理人のような役目を果たします。それがあると、一流の科学者と会うことができたり、起業をサポートしてくれる患者のためのアドボカシー団体と会うことができます。

スピーカー5
もし[inaudible] ...

Elizabeth Iorns
可能だと思いますよ。もしバイオテクノロジー企業を作っているのなら、絶対科学に関するチームを組まなければなりません。結果的に博士号保持者と一緒のチームで仕事をすることになるでしょうが、しかし博士号がなくても共同創業者になることはできます。

スピーカー6
このアイデアのプロセスは[inaudible] ...、いつ大学を去ることに決めたのですか?

Elizabeth Iorns
ご質問は、大学をいつ辞めることに決めたかということですか?

私がScience Exchangeを始めたときには、幸運が重なりました。Science Exchangeを始めるという私達の道のりについて皆さん聞くのですが、多くの人が、これがどれほど難しいかに気付いていないと思います。私はこれを全く当然のことと捉えていません。

私の上司がマイアミ大学の医学部長だったことについて、私達は非常に幸運だったと思います。それに彼はScience Exchange に対して信じられないほど肯定的でした。Science Exchange のことを素晴らしいアイデアだと思ってくれていました。

彼は、私がそれをやらなければ、他の誰かがすることになるだろうとも思っていました。それに、私を事業に取り組むために3か月休ませてくれました。私がいない間、私のために研究室の世話をしてくれました。一旦YCにたどり着いたらもう、アイデアが成功することは明らかでした。

そして、YCから直接資金を調達しました。それで決めたんです、戻るつもりはないと。実は彼に話をしに行くのは緊張することでした。もう大学には戻らない、と。

でも彼の対応は素晴らしいものでした。ただ「ああ、うまくやっているのは知っているよ。もとから大成功だろうと思っていたよ。」という感じだったんです。

そのような機会を与えてくれたメンターを持つこと。多くの人にはないことだと思います、特に学術界では。実際、時々ムッとするのですが、博士課程の学生やポスドクからの真反対の声を聞くことがあります。「自分が大学をやめるということに上司が嫌な顔をしたんです、私には起業してほしくなかったんですよ。助けてくれるのではなく、邪魔をしてきました。」と。

私は自分の経験と、そしてあのサポートがなかった場合どうなっていたんだろう、ということについて思いをめぐらせます。

Adora Cheung
さて、最後の質問です。そこの方どうぞ。

スピーカー7
両側からの期待、需要側が供給側に期待するもの、そして供給側が需要側に期待するものに、どうやって合わせていきましたか?そして、両側の品質認識をコントロールし始めたのでしょうか?

Elizabeth Iorns
ご質問は、品質管理と両面性のあるマーケットプレイスですね。私たちにとって品質管理は非常に重要で、実際にScience Exchange の核となる価値命題の一つがそれです。

全てのサプライヤーには、マーケットプレイスへのアクセスを付与する前に認定のプロセスをとります。継続的なモニタリングのプロセスもあり、個々の取引全てのパフォーマンスをチェックしています。だから私たちは誰よりもパフォーマンスに関するデータを多く持っています。確証を持って、というか少なくとも他の人々よりは確実に言うことができるのが、「このプロバイダーはおそらくこの種の実験においては非常に良い働きをするでしょう」というようなことです。

プラットフォームの構築にも導入しました。生成される成果物の明確な概要があり、期待値は前もって設定されています。私たちが追っていた統計で非常に興味深いのは、Science ExchangeのNet Promoter Score(NPS、顧客推奨度)は78、サプライヤーのNPSは67で、業界平均はゼロだったことです。驚くべきことだと思います。

同じサプライヤーだからですが、プラットフォームを介して利用すると、パフォーマンスははるかに向上します。その理由は、構造化されていることと、明確に提供される物事が概説されているからだと思います。

それに、もしあなたがやらないのなら、その情報はだれにでも手に入るもので、他の誰かがやろうと決めるだろうという予想がつきます。それは、彼らが合意したことに取り組み確実に実行しているようにすることに対して、非常に強いインセンティブとなります。

Adora Cheung
はい、ありがとうございました、Elizabeth。

Elizabeth Iorns
どういたしまして。

Adora Cheung
皆さんありがとうございました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
動画: A Conversation with Elizabeth Iorns - Advice for Biotech Founders (2018)
トランスクリプト: A Conversation with Elizabeth Iorns - Advice for Biotech Founders

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