Claire McDonnellは、True Link Financial(YC 2013年夏バッチ)の共同創業者・COOです。True Linkは主に退職者向けに資金管理、投資を行い、保険商品を提供する金融サービス企業です。
Jennifer Kimは現在、スタートアップへの助言を行っています。前職はLeverの従業員能力開発部門長でした。Leverは採用ソフトウェアを開発する企業で、2012年夏バッチの1社です。
Kat Manalacは、ここ、YCのパートナーです。
このエピソードで取り上げるリソース:
「今日から始めるD&Iを育てるアイデア 50+」 (Jenniferの他の記事はこちら)
Facebookのオープンソース「偏見を管理する」トレーニング
Kapor Capitalの創業者誓約書
First Round Review:People & Culture マガジン
- トランスクリプト
- 自己紹介
- 企業文化とは何か
- 早期から企業文化を作ること
- 包摂的な文化を作るためにどうすればよいか
- フィードバックを受ける方法
- D&I のリソース
- 妨害を避ける
- D&I に取り組む際のアドバイス
トランスクリプト
Craig Cannon [00:00]
こんにちは。Craig Cannonです。Y Combinatorのポッドキャストの時間です。今日のエピソードはClaire McDonnell、Jennifer Kim、Kat Manalacと共にお送りします。Claire McDonnellは、True Link Financialの共同創業者・COOです。True Linkは主に退職者向けに資金管理、投資を行い、保険商品を提供する金融サービス企業です。2013年の夏バッチの1社でした。Jenniferは現在、スタートアップアドバイザーです。以前はLeverの従業員能力開発部門長を務めていました。Leverは採用ソフトウェアを開発する企業で、2012年の夏バッチの1社でした。前にもこのポッドキャストに登場したKatはここ、YCのパートナーです。では、お聞きください。
自己紹介
Kat Manalac [00:40]
では、早速始めます。まず、成功を収めているDropbox、Airbnbといったレイトステージの企業の創業者から、創業者として、CEOとして、良い企業文化を築いてスケールしていくことが重要だと考え、時間をかけているいう話はよく聞きます。文化とは実に漠然とした概念です。
そこで、アーリーステージの段階から文化について考えることがなぜ合理的なのか、この漠然とした概念を、アーリーステージの創業者が管理できるようなアクション項目に落とし込むにはどうしたらいいのかを議論したいと思います。
昨年、私はアーリーステージの企業の創業者や、それらの企業で文化構築とD&I(ダイバーシティ & インクルージョン)イニシアチブに関わる人々と50回ほど話をする機会がありました。ここで、ポッドキャストをお聞きの皆さんに、非常に思慮深く、この分野で優れた仕事されているお2人を紹介したいと思います。
1人はClaire McDonnellです。True Linkの創業者です。True Linkは、最先端の技術を活用し、高齢者向けの金融サービスソフトウェアを作っています。現在は35人の従業員がいます。素晴らしいのは、女性やさまざまな人種の人たちが各チームを率いていることです。True Linkは大きな進歩を遂げ、過去3年で顧客ベースは約20倍に成長しました。先日、Claireのチームと1時間半話をして、Claireと共同創業者のKaiがTrue Linkの文化とD&Iについて非常に意図を持って考えていることがはっきりしました。
Kat Manalac [02:24]
今日はありがとうございます。
Claire McDonnell [02:25]
お呼びいただいてありがとうございます。参加できて嬉しいです。
Kat Manalac [02:27]
次に、Jennifer Kimです。Jenniferは、採用ソフトウェアを構築するLeverに初期に加わった1人で、LeverのD&Iプログラムを作成しました。Leverの従業員数はおよそ100人ですか。
Jennifer Kim [02:43]
150人です。
Kat Manalac [02:43]
150人ですか。そして、50対50という従業員男女比率の達成は容易なことではありません。シリコンバレーでは得がたい功績です。この件について、Jenniferは私のメンターのような存在です。D&Iと文化について学びたい、まさにアーリーステージのスタートアップに取り入れる方法を知りたいと考えているスタートアップや創業者向けに優れた資料を数多く執筆しています。今日はありがとうございます。
Jennifer Kim [03:11]
ええ、ありがとうございます。
企業文化とは何か
Kat Manalac [03:12]
早速、始めましょう。近頃、メディア、創業者間、ブログなどで文化に大きな注目が集まっているのはなぜだと思われますか。今ほど、文化について語る人が増えたことはありません。私は常に文化は重要だと考えてきました。
たとえば、1992年、HBSとKotter Instituteが200社の企業文化を詳細に列挙し、良い文化が、長期的な経済的業績から雇用の伸び、収益の伸びまであらゆる物事にいかに影響を与えるかを示しました。文化に力を入れた企業が、そうでない企業よりもはるかに高い業績を上げていることを証明しました。今、このことが以前よりも普通に話し合われるようになったのはなぜでしょうか。
文化は目に見えない
Jennifer Kim [03:58]
ええ、文化はちょっと話しにくいトピックでもあります。魚に水について尋ね、水って何?と返されるようなものです。文化とは、物事がいかに進められているかということです。自分の周囲すべてであり、チームの目から見えている風景です。チームが何かに取り組むときには必ず間に入るレンズです。
文化が難しいのは、次の2つの罠にかかる場合があるからです。私たちは、目に見えて手ざわりの感じられる具体的な事柄、あるいは、極端にネガティブな事柄ばかりについて話しています。具体性で言えば、よくある誤解は「卓球台やハッピーアワーがあるから素晴らしい文化なんだ」といったもの。それはそれでいいのですが、文化としてはあくまで非常に小さな一面にすぎません。
文化とは、どのように人を採用するか、どのような会話がなされるか、部屋にどんなエネルギーがあふれているか、誰を昇進させるかをどう判断するか、といったことがすべて含まれます。目に見えることばかりではありません。ですから、少し話しにくい面があります。そして、それゆえに管理もしにくいし、評価をするのはさらに難しいです。だからと言って、重要ではないという意味ではありません。
2つ目に関しては、最近ニュースを見ているとUberの話ばかりです。Uber関連の記事をどれだけ読んだでしょうか。これはネガティブな例ですが、目立たなくても、確かな意図を持って文化にコツコツと取り組んでいる優れた企業はたくさんあります。でもそれは、クリックしたくなるような見出しにはならないでしょう。そこの従業員たちはお互いに尊敬し合い、文化として自分たちが持っているものにとても満足しています。
Jennifer Kim [05:23]
「やるべきことがたくさんありすぎて、何から手をつけていいのか分からない。Uberみたいになりたくないし」と怖気づくのも無理はありません。でも、それは他のどのスキルについても言えることです。自分がもし創業者で、チームを育てるなら、エンジニア出身であれ、ハッカーであれ、セールスやマーケティングにも習熟しなければならないでしょう。文化や、文化のリーダーになることは、その一部です。
Kat Manalac [05:46]
はい。では、Claireにお聞きします。True Linkはいつスタートしましたか。
Claire McDonnell [05:50]
創業ですか。
Kat Manalac [05:50]
はい。
Claire McDonnell [05:52]
2012年末から2013年初頭です。
Kat Manalac [05:56]
True Linkの社内でも、文化やD&Iについての会話に何らかの変化はありましたか。初めから考えていましたか、それとも会社が大きくなるにつれてその話が増えたのでしょうか。
文化は脅威から企業を守る
Claire McDonnell [06:08]
文化について、特にインクルーシブな文化を築くことについては当初から考えていました。以来、ほとんど毎日それを考えていたような気がします。なぜなら、毎日リソースを割くと、それだけの成果が見られたからです。
2013年、2012年末のスタートから過去5年間に学んだのは、文化は日々の小さな投資によって築かれるということでした。企業の文化に投資することは、企業の本業のビジネスや、スタートアップとして現実にある絶え間ない脅威から目をそらすことになるどころか、そうした脅威から身を守ってくれます。誰もが公平に扱われる実感を持ち、お互いが信頼し合っているチームの一員として、全員で取り組むこと。それが、生存競争から目を逸らすのではなく、実際に生き抜くということです。
早期から企業文化を作ること
Kat Manalac [07:02]
今言われた、早期から意識的に文化に集中することについてお聞きしたいのですが、そうした努力は、お2人の職場にどのような成果をもたらしましたか。
Claire McDonnell [07:14]
創業者や初期からの従業員の役得だと思うのは、新しい小さな世界、新しいコミュニティ、新しい環境の創造に携われることです。オフィスの外の世界ではうまくいっていない面は真似せずに作り上げられる、その新しい世界の一部になれるのが良いところです。実際、毎日、仕事に行くのが楽しいです。敬意を払われ、大切にされていると感じます。チームメンバーの多くが敬意を払われ、大切にされていると感じていると思います。少なくとも、そうなるように確実に努力しているのは素晴らしいですし、本当に気持ちが良いです。
敬意が重要
Kat Manalac [07:49]
あなたのチームと話していてそこに強い印象を受けました。みなさん、とても...とても使命感が強いと感じました。大切にされていると思う、とも言っていました。私が話をした人はみな、企業のミッションや、それを実現するために自分は何をしなければならないのかを口々に語ってくれました。非常にまとまりのあるチームで、繰り返し敬意への言及がありました。お互いに敬意を払い、年長者を敬える人の採用に注力している、と話していました。みなさんとの会話で何度も出てきた言葉は敬意です。とても興味深いと思いました。敬意は、会話の一番大きなテーマのようでした。
採用への利点
Jennifer Kim [08:38]
その点、Leverでは、採用と継続の面で多大な利益をもたらしました。たとえば、採用では、QAエンジニア1人を採用できました。実は、その友人も同じ職務の面接を受けたのですが、彼は少々基準に達していませんでした。良い人だったのですが、ほんの少し不足している面があって不採用になりました。でも、彼は採用プロセスをとても楽しんでくれて、Leverの文化を気に入ってくれ、不採用になったときに自分の友人に「ねえ、あなたも応募するといいよ」と話したということでした。その友人はもっと経験が長く、優秀だったというわけです。
これは非常に得がたいメリットだと思いませんか。想像してみてください。交わりのあった人たちが、つまり、履歴書を持って応募してくれた人や、あなたが面接した人全員が、企業のために他では考えられないほどパワフルな採用の率先力になるわけです。
継続の面では、Leverでは長い間、非常に低い離職率を保っています。なぜなら、Claireが今言ったように、誰もが仕事と人に愛着を持ち、職場に誇りを感じているからです。セールスもエンジニアも全員優秀なので、毎週のようにリクルーターからの接触があります。今よりも多くのエクイティと高額報酬を提示されます。一番手の従業員を引き抜こうとする企業は絶えません。でも、彼らは文化に愛着を持っているので、留まりたくて留まっています。3年目になるZyasというエンジニアがいて、こう言ったことがあります。
Jennifer Kim [10:03]
「技術的な課題や、すごく面白い話が次々と現れては消えていく。新しくて面白そうなことがたくさんある」。でも、彼は辞めません。シリコンバレーでは理想のチームと環境に出会えるのは極めてまれだからです。
従業員の継続
Kat Manalac [10:16]
ベストな人材を採用し、彼らを継続させる面では、まさにそのとおりです。文化はそのためのツールキットの中では最強のツールだと言ってよいでしょう。数多くの企業がある中で、優秀な人材を採用することは非常に困難なことだからです。お二人は採用側で、人がチームとミッションに愛着を持てるようにされたのは、その一環として素晴らしいと思います。
Claire McDonnell [10:39]
それは、企業を毎日過ごしやすい場所にするという理由にとどまらない、インクルーシブな文化を追求すべき、ビジネス面での理由であるとも言えます。基本的には特にアーリーステージで、従業員全員が、そして組織を知っている重要な従業員が、毎日仕事に来たいと思える環境を作る必要があります。リクルーターからのEメールに目もくれず、今日もまたこの企業を選びたいと思われるような環境です。そして、1人1人が大事にされるインクルーシブな文化こそが、それを実現する唯一の方法です。
Jennifer Kim [11:09]
長い間、文化はどこか贅沢品扱いだったと思います。まずは成長することに集中し、余裕が出てきてから、あるいは他の人に仕事を任せられるようになってから心配すればいいと。でも、それでは躍進できないでしょう。
Kat Manalac [11:23]
今では、外部からも文化に大きな注目が集まっているので、おそらく創業者も、以前よりは早くから考え始めています。先ほどの話は、文化創造に成功した実に良い事例です。具体的な利点や、うまくいった点が盛り込まれていました。しかし、言われたように、スタートアップの始まりは生き延びるための闘いの日々です。文化について考えるのを後回しにした場合、何が起こるのでしょう。どんなリスクがあるのでしょうか。
文化を毎日進歩させる
Claire McDonnell [11:57]
これは覚えておく必要があります。私たちのチームメンバーが、チーム内には文化のことばかり考えている人がいる、と話したそうですが、たとえ文化について考え続けたとしても、やっぱり間違いは起こるでしょう。文化を考えて、投資して、それでも完璧には程遠い状況です。ですから、数々の達成を思い返すと、当然、いろいろな間違いや失敗も頭をよぎります。
私が誇りに思うのは、毎日私たちがどれだけ心血を注いで、進歩しているかということです。完璧な人はいませんから、投資せず、間違いを避けようとすれば、失敗はもっと増えるでしょう。
Jennifer Kim [12:31]
ええ、それはとても重要な指摘です。特に、文化やダイバーシティ、インクルージョンの取り組みについて考えたこともないような人たちにとって、「えーと、それは私の専門ではないし、得意でもありません」という感じだと思います。でも、とにかく始めるのはそれほど難しくないというのが重要です。
Airbnbの例を見れば、「あんな文化のイニシアチブの真似はできないよ」と思うかもしれませんが、Airbnbははるかに大きな企業ですし、随分長くやってきています。だから、そこまで気負いせず、文化を、徐々に鍛えて強化させる筋肉のようなものとしてみなすべきです。そうです、最初から取り組むのは組織として良い慣習を築く上で非常に役に立ちます。
常に思い出すべきなのは、先ほど言われたように、誰も完璧ではない、ということです。生まれつき、文化のリーダーとしての資質を備えた人がいるのかは分かりません。自分の意思に正直であり、常に心を開いて会話をし、チームの活動として取り組めば、どんな文化担当者であっても1人では絶対にできないことができます。
包摂的な文化を作るためにどうすればよいか
Kat Manalac [13:39]
もう少し具体的な話に移りましょう。まずは施策から。ここまで、文化は鍛えて強化できる筋肉のようなものであるということを話してきたからです。第1日目、まだ部屋に2人しかいないような状態で、創業者に何をするようすすめますか。
バイアスを取り除く
Claire McDonnell [14:03]
私が考えるインクルーシブな文化のアキレス腱は無意識の偏見です。頭の中のあらゆる認知バイアスを自分では知らないままに、あるいは、同僚にそれをチェックしてもらう方法を作ることなく、走り回らせておくことです。私たちは、自分自身をチェックし、お互いにチェックし合う際に使える細かい手段をいろいろと導入してきました。それだけでも文化には大きな違いが現れますし、やってみるのは本当に簡単です。
Kat Manalac [14:28]
たとえばどんなものですか。
Claire McDonnell [14:30]
それはちょっと置いておきましょう。私たちが偏見をチェックする大きな目的は、承認と非難です。多くの研究が、女性と有色人種は功績に対する承認を十分に得ておらず、失敗に対しては白人男性よりも責められ、記憶される確率が高いことを示しています。では、そこでどのような対策をしますか。
私たちは、いくつか文化に関わる施策を行っています。ひとつは...記憶のしかたです。実際の名称ではありませんが、「非難しないボタン」みたいなものです。GitHubに、クリックすると問題を起こしているコードの位置が示されるボタンがあるでしょう。とても便利な機能です。ですから、「非難ボタン」が嫌いなわけではありませんが、私たちは文化の面で「非難ボタン」を持たないように努めています。
間違いや失敗が起きたときに、私たちが、そしてその場にいる人全員が努めているのは、誰かのせいにして非難せずに問題を解決することです。解決したら、同じミスが再び起こらないよう、それがどのようにして起きたかを反省し、全員で同じことを繰り返さないようにします。そうしなければ、スケープゴートを見つけて非難するパターンに陥ってしまい、すぐに人を責めるようになります。それが文化に組み込まれると、一部の人が標的にされやすくなるのはもう避けられません。
Jennifer Kim [15:50]
それは非常に素晴らしいです。今言われたように、その手のパターンは多いですし、その数が増えるほど、リスクをとれる人も減るからです。誰も非難はされたくないので。つまり、実際に試行錯誤ができる環境を整えたということですね。必ずしもすべてを把握しなくとも、文化構築の面で大きな成功を得られる可能性も高くなります。
オバマ大統領の手法:名前付きで誉める
Claire McDonnell [16:10]
「非難しないボタン」の別の側面は、人々に承認を与え、必要なところの承認を増幅させることです。この件について、True Linkの施策を連想させるオバマのホワイトハウスの話があります。うろ覚えなので、間違っているところがあれば訂正してください。
オバマ政権の初年度、勤務していた女性たちが、自分たちが会議でアイデアを出した実績を認められていないことに気づきました。そこで、戦略的な増幅システムを使い始めました。たとえば、Katが会議で発言したら、私は「素晴らしいアイデアだ」と言う代わりに、「何々に対するKatのアイデアは素晴らしい」と言うようにします。全員が、その発言をしたのがKatだと分かるようにするためです。
まだ改善の余地がありますが、私たちの社内でもそのように進めようとしています。また、良い仕事をした人に対し、私たちの文化に重要な役割を果たしてくれてありがとう、と全員が聞こえるところでお礼を述べます。
これは、会社の会議の中で一番評判の良いセクションで、十分な時間を確保してあり、基本的にそれぞれが他の人が行った良い仕事を伝えます。これはチームの中でとりわけ重要です。エンジニアリングチームの人たちは、マーケティングチームやサポートチームのメンバーの具体的な実績について聞き、その逆も同様に行われます。
エンジニアが他の仕事を知る
Kat Manalac [17:24]
ひとつ具体的にお尋ねしたかったことがあります。あなたのチームと話したとき、誰もが心からの感謝を受けていると感じているようでした。「私たちは、オペレーションチームがエンジニアリングチームと同じくらい、尊敬、賞賛される環境を作っています」と言っていました。
シリコンバレーを中心に多くの企業と話していると、ソフトウェアエンジニアリングは金の卵というような感じがあって、誰もがエンジニアをちやほやしますが、オペレーションみたいな部署はいわば置き去りです。そういう中で、どうすればいいのでしょう、どうしたら、全員が賞賛されている雰囲気を作り出せるのでしょうか。
Claire McDonnell [17:59]
それは確かにシリコンバレーが苦労しているところで、私にとっても、共同創業者のKaiにとっても頭痛のタネでした。理由を話しますから、納得できるか聞かせてください。
企業が重んじるチームといえば、かつては営業チームでしたが、今はエンジニアリングチームです。特定のチームを尊重するのは、特定の人種やジェンダーを尊重するのと変わらないと思います。多くの企業ではエンジニアリングチームの大半が男性で絶賛されていることは誰でも知っています。もし、あなたの会社がそれに当てはまらないなら素晴らしいですし、ここから先は聞いていただく必要はありません。
話を戻して、一部の従業員たちを特別扱いしたらどうなるか。私は相場どおりの報酬などの話をしているのではなくて、話のしかたや、リーダーが特定のチームを他よりも大事にすることを言っています。そのようにチームの扱いに差をつけるのは、社会全体に存在する人種、ジェンダー、民族などへの偏見を永らえさせるのと同じです。完全なダイバーシティを達成しない限り、エンジニアリングチームは社会の鏡であり、チーム内のジェンダー、人種、民族、年齢のバランスは社会全体を映し出します。エンジニアリングチームを他チームよりも重んじるなら、偏見と差別を助長することになります。
Kat Manalac [19:27]
具体的には、オペレーションチームや他のチームが軽んじられていると感じないようにするにはどうすればいいのでしょうか。
Claire McDonnell [19:35]
ここで注意すべきなのは、私たちは本当に、彼らの重要度が低いとは思っていないことです。私たちのサポートチームは99%の顧客満足度を達成しています。金融サービスでは最高のネットプロモータースコアを獲得しました。それはエンジニアリングチームやプロダクトの功績ではなく、社内の全チーム、全メンバー、これらのチームを率いる優秀な人たちをはじめ、私たちが大事にしているからこそ何年も継続してくれている人たちのおかげです。ですから、具体的に挙げられるのはひとつです。
創業者が鏡をのぞいて、「彼らが重要であると心から思っているか。全チームを公平に尊重しているか。各チームがどのように企業に貢献しているのか分かっているか」と問いかけます。自分でそれに答えられれば、チームミーティングでその話をしたり、さまざまな役割や多様なチームメンバーに感謝したりしやすくなります。
前回のリトリートでは、「グロースマーケティング 101」、「ファイナンスアドバイス 101」を実施し、これらのチームの仕事について知り、いかに難しく複雑な任務が行われているのかをよく理解できるようにしました。また、サポートチームにはライド・アロングと呼ぶプログラムがあり、エンジニアやその他のチームメンバーが実際にサポートチームに同席して、チームの対応に耳を傾けます。メンバーのそばで2時間も過ごすと、サポートチームに畏怖と尊敬の念を抱かずにはいられなくなります。
他のチームのことを知る
Claire McDonnell [21:06]
他に、新しく入ったメンバーは必ず、社内のさまざまなチームの人たちとコーヒーや昼食を共にします。お互いに知り合い、人間関係を築き、社内の役割に加えて人間として尊敬し合えるようにするためです。
Jennifer Kim [21:21]
私たちも、新人研修の場と現場の両方で同様のことをやっていて、部門を超えた関わりの重要性を認識できるようにしています。たとえば、これまで新人としてLeverに来た人たちは、「プロダクトの素晴らしい評判を聞きました。本当にすごいですね。勝手に売れていくのでしょう?」と言ったりします。
新人研修の一環として、どの新人もすべての新人向けクラスを受け、実際の営業電話業務を見学します。それから、間違った考えを捨ててもらうため、セールス担当者との質疑応答を行います。どれだけストレスのたまる仕事なのかを聞くわけです。投げかけられる質問、セールス担当者が乗り越えなければならないストレス、その中でいかに調子を保ち、取引を進めるのか。質疑応答が面白いのは、毎回、「あの電話を聞くとはらわたが煮えくり返ったよ。自分だったらあんな質問には対応できない」といった声が出てくるからです。そのうちに、他の部門に対する敬意がわいてくるでしょう。
ですから、エンジニアを責めるわけではありませんが、「私はエンジニアなので、他よりも優れている」などといった考えは吹き飛びます。セールスなどの仕事がどれだけ大変かが理解できますし、「もしもあのポジションだったら、私なんかまるで役立たずだ」などと自分を振り返る良い機会になります。全員が理由があってここにいるのだと分かります。私たちにはそれぞれ、ビジネス全体を成功させるため果たすべき役割があります。
採用候補者にも適用できる
Claire McDonnell [22:41]
そのセールスのアイデアは好きです。私たちも始めたいと思います。それに、この課題に対する別の解決法、私たちの「イヤな奴にノー」ポリシーを思い出させます。採用に関して、私たちには確固とした「イヤな奴にノー」ポリシーがあります。違反があると、必ず大きな問題になっています。
Kat Manalac [22:58]
どうやってイヤな奴だと判断するのですか。
Claire McDonnell [23:00]
ええ、良い質問です。1つ目に、それを職務記述書にも含めて応募者をスクリーニングするだけでなく、採用プロセスの中で、謙虚さと相手に対する敬意が感じられるかをいくつかの方法で見ています。それについて話すようフィードバックを受けたときに、どう対応するか、どのように態度を変えたかに注意します。
いくつもの異なるチーム、いろいろなレベルのメンバーに会ってもらい、それぞれにどのような態度を見せるかをチェックします。基本的にはそこが重要で、その後に私たちの文化のダイバーシティとインクルージョン、謙虚さや、さまざまな役割に敬意を払うことについて話し合います。すると、短時間で人物像がはっきりしてきますし、その過程は私たちのチームが実際に素晴らしい人ばかりで構成されている大きな要因です。
Jennifer Kim [23:52]
「イヤな奴にノー」ポリシーに基づく採用に加えて、候補者が異なるレベルの人たちとどう交わるかに気をつけるのが鍵です。2つ例を挙げると、レセプショニストには、候補者から見下されたように感じたとか、何か意見があればすぐに知らせるように伝え、私かリクルーターがそれを把握します。レセプショニストには何だか失礼なのに、その他の人に対しては丁寧で自信に満ちているというような人物は要注意です。もちろん、それだけで否定することはなく、採用プロセスで集めるデータ要素のひとつにすぎません。
もう1つの例は、PM、つまりプロダクトマネジャーを採用したときのことです。学歴、職歴など、申し分のない経歴を持つ人物がいました。とても堂々としていて、全員がその候補者を気に入り、とんとん拍子で採用に向けて進んでいました。ところが、メンバーに意見を聞くと、プロダクトチームで一番職歴の浅いメンバーがためらいながら手を上げて「どう説明していいか分かりませんが、彼には妙な印象を持ちました」と言いました。そのとき、部屋には3人いて、若輩のメンバーはこの候補者が自分には一切関わろうとしなかったと感じたそうです。目を合わせず、話しかけてくることもなく、同じく部屋にいた先輩のPMとだけ、質疑応答をしていたということでした。
彼はこの話を持ち出したのが適切だったのかどうか分かりかねてひどく心配していました。しかし、私たちはそれを聞いて、実際、候補者にはちょっと横柄なところがあると気づきました。面接官と話したときと、同僚のような雰囲気で現れた人と話したときに違いがあるのは要注意です。なぜなら、候補者をその前提のレンズを通して見た後では、「そういえばあの時こんな妙なことがあった、そういえばあのときこんな発言があった、あのEメールを少し不快に感じた」といったことが、次々と思い出されたからです。でも、履歴書に目がくらんで、そうした出来事を忘れていたのです。これはよくあることです。ですから、複数のレベルから面接官を集めることは本当に役立ちます。
Claire McDonnell [26:17]
私たちも非常に似たことをしています。事実、面接を効率化する強力なツールです。グループで集まって議論する前にLeverのフィードバック用書式を使ってLeverにいる人たちのフィードバックを引き出しています。他の人の意見に影響されず、候補者の良い点、良くない点を秩序正しく話し合えるからです。
Leverのシステムはそういった点を浮かび上がらせるのに非常に有効でした。個人的に、そういう手がかりに敏感な私にとってもです。候補者が共同創業者とは目を合わせても、私のほうは見ないようなとき、自分が気にしすぎなのか、実際に相手がアイコンタクトをとろうとしていないのかは、きまってごくささいな違いです。コンピュータの前で振り返り、データを揃え、他の人たちが提出したデータと比較できるのは有益でした。
フィードバックを受ける方法
Kat Manalac [27:07]
お話の中でもう1つとても重要なのは、フィードバックチャネルでしょう。誰もがフィードバックを出し合い、厳しく議論をします。フィードバックをするのは難しいですが、どのようにして文化に組み込み、この手の気の進まない会話をうまく進められるようにしていますか。
トレーニングとモデル化
Claire McDonnell [27:32]
それは現在も進行中の課題です。創業者として、リーダーとして、マネジャーとして、甘えてしまいやすい点だと思います。フィードバックは山ほどくるからです。人は言いやすいことしか言いません。常に、それが事実なのか、本当に起きているのかを確かめるのが大事です。
いくつか有用なツールがあります。1つ目に、声を上げることに焦点を当てたダイバーシティとインクルージョンのトレーニングを行なっています。不愉快なことがあったときにどう声を上げるか。そしてそれについて詳細を掘り下げます。当事者は「この件を誰にどうやって適切に伝えたらいいのか」と悩む立場にあるからです。
2つ目は、モデル化だと思います。ダイバーシティ、インクルージョンに熱意を燃やすチームメンバー、PaigeとIssacと話をすると、誰にも失礼にならないようなやり方で問題をまとめて、私とKaiに提起してくれます。チームミーティングの場でチーム全体に向けて「わざとこんな言い方をしたのですか」と言ったりする場合もあります。彼らは、チーム全体が参考にできるモデルを示してくれます。モデルが示されることで、私たち全員がオープンに会話をしていいのだと分かります。これはヒエラルキーではなく、敬意の問題です。敬意は一番強力なツールです。
非暴力コミュニケーション
Jennifer Kim [28:44]
ちょっとしたコミュニケーションのための投資に加えて、いわば「心の知能指数入門」を行うことは、本当に役立ちます。5人とか10人のときには特に気にしなくても問題ないかもしれませんが、100人、200人に増えると、ちょっとの投資だけでは密な関係性は保てません。心の知能指数のような知識を文化に投入すれば効果は何倍にもなります。
そこで私たちは2つのことを実行しました。1つは、非暴力コミュニケーションと呼ばれるコンセプトです。名前はひどいですが、驚異的なツールです。非暴力コミュニケーションとはどのようなものでしょうか。別名、思いやりコミュニケーションとも言います。共感と自己表現に根ざしたコミュニケーションの実践スタイルです。
共感や自己表現は誰もが持っている人間的感情に対するニーズですが、めまぐるしいビジネスシーンにおいてはそれは軽視され、誤解やさばき合いを招きやすくなります。私たちはこの非暴力コミュニケーションをテーマに何度かワークショップを行いました。
もうひとつ、非常に役立っているのはカラーズと呼ばれるものです。巷にはこの手の性格判断ツールは山ほどあり、それぞれに長所と短所がありますが、カラーズを気に入っているのは、個人差や、それぞれのコミュニケーション様式の違いのフレームワークが得られるからです。なぜある人はこの種のプロジェクトにひかれ、一方で私は、それとは違うことに意欲を感じるのか、とか。Leverに入社すると、この簡単なテストを受けます。すると、レインボーカラーチャートのうち、自分がどの色のエネルギーに導かれているのかが分かります。
Jennifer Kim [30:25]
他に、自分の興味関心や強みも見えてきます。この簡易なフレームワークで自己を理解し、自分がどのような人物なのかをよりはっきりと自覚できたら、他人の違いにもっと寛容になれます。
創業者たちが模範を見せる
Kat Manalac [30:39]
そのアイデアに関して言えば、モデル化は、幹部チームの創業者たちが心から真摯になり、過ちを受け入れられる姿勢を示せるかどうかで大きな違いが出ます。一筋縄ではいかない領域です。文化やD&Iなどについて話し合うことは簡単ではありません。ですから、創業者がチームの間違いに寛容であれば最高です。大勢の人がもっとオープンに話をしたいと思えるようになり、多くの間違いは意図せず起きていることを理解するでしょう。
そのような考え方をふまえて、私がここYCで犯した間違いについて話したいと思います。Claireが言われたように、完璧な人はいませんし、すべてに適用できる打開策はありません。あらゆる解決法を把握している企業もありません。
私のYCでの失敗のひとつは、女性創業者カンファレンスを運営したときのことです。1,000人を超える女性が集まるカンファレンスでした。私たちの会社は5年目で、すでに3年か4年開催していたのですが、一度も授乳室をもうけていませんでした。つまり、出産したばかりで、プライベートな部屋で搾乳をしたい女性のための用意がなかったわけです。私には子どもはなく、その経験はなかったので、思いつきもしませんでした。出席者の1人が、授乳室があったら助かる、と指摘してくれて気づきました。会場内を走り回って場所を探さなくてはいけなくて、本当に落ち着かなかったでしょう。
そのとき、チーム内に多様な観点と経験がなければ、いろいろな人を内包する文化に組み込み始むべきさまざまな事柄を見逃してしまうことに気づきました。ですから、そのような話があれば聞きたいと思います。失敗や、やり直せたらと思うこと、他の人に知ってほしいことなど、具体的な例はありますか。
Claire McDonnell [32:49]
もう1つ私にとって、そして多くの創業者にとって盲点なのは、社内ではさまざまな役割を果たさなければならないという事実です。たとえば、人事には常に関わっています。業務の監督に加えて、福利厚生の相談も受けなければなりません。家族の問題もあったりして、本当に大変です。到底手に負えないような気がします。「5人だけのチームなのに、他に誰に相談をすればいいのか」と考えてしまうからです。
でも、最近分かったのは、とても簡単なことで、ただ「あの問題、この問題があれば、この2〜4人の人に話をしてください」と言うだけです。私でなくてもいいし、私に関わる問題なのであれば、チームの他のメンバーに話せます。幸運にも、頼れるリーダーが揃っています。でも、文字通り、その一言を伝えるだけで、問題は消え去ります。
新人研修に投資する
Jennifer Kim [33:50]
スタートアップを運営していると、何もかもテンポが速く、常に変化しています。初めて加わって、仕事やそのまわりの文化などすべてを把握しようとしている人がどんなに混乱するか、私たちは軽く見ているところがあります。ですから、私は何でもきちんと明文化すること、そして繰り返しになりますが、新人研修に投資することが、成功の鍵だと気づきました。
避けたいことと言えば、期待を明確にしなかったために、人に自分で推測しなければならないと思わせたり、あるいは「自分は間違っていないだろうか」と不安にさせたりした失敗がありました。「私はもう少しはっきりした指示がほしい」と言われて優秀な従業員を失ったりして、「困惑を減らすためにもっと手をかければよかった」と気づきました。企業を経営していると大変ですが、物事を書き出し、明示的なコミュニケーションをはかるためにリソースを割くと大きな効果があります。
Claire McDonnell [34:50]
完全に同意します。私もその学びを何度も繰り返してきて、まだ十分理解したとは言えないかもしれませんが、本当にそのとおりです。「この件については暗黙のポリシーがあると思います。45分かけてそれを書き出し、社内共有ウェブサイトに載せれば、6か月間に30回も同じ質問に答えずに済みますよ」と言えます。小さな初期投資で膨大な時間が節約でき、混乱をなくせます。それに、30回質問を受けるとすると、30人の従業員が実際にそれについて考え、答えを探し、私や同じ疑問を持っている同僚に尋ねるまでにもたくさんの時間を無駄にしていることになります。
Jennifer Kim [35:26]
書き出してしまえば、それに関する議論も起こり、「改良できるよう力を貸してほしい」と言いやすくなります。でも、頭の中にしかないうちは、誰にも分かりません。ですから私たちは努めて考えを整理し、それを書き出します。ポリシーを書き留めるイントラネットに投資して、毎週、または隔週の全員参加ミーティングでコミュニケーションをとることは非常に役立ちます。
D&I のリソース
Kat Manalac [35:49]
お2人のお気に入りのリソースについて詳しく知りたいです。創業者は文化について学ぶようになっていますが、私たちはD&Iもよく知らない状況です。勉強を始めたいと思ったときにすすめたい資料はありますか。
私が読んだ中でとくに気に入っているのは、Jenniferが書いた「今日から始める職場のアイデア 50」という記事です。私たちのブログにリンクを貼ります。これは入門的な内容だと思いますが、アーリーステージの企業で簡単に実行できることが50点挙げられているので、まずはどのようにスタートするか、という記事として見てもらいたいです。
Claire McDonnell [36:32]
私がすすめたいリソースは3つあります。まず、Facebookがオンライントレーニング「偏見を管理する」を公開しています。基本的には偏見の管理がテーマで、インクルージョンのトレーニングです。私のチームメンバー、Isaacは社内にこのトレーニングを採用し、いろいろな方法で活用しています。優れたリソースで、これがあれば、かなり込み入ったトピックのトレーニングの準備もはるかに短時間で簡単にできます。すごく面白いので、自分でやってみてもいいでしょう。とても勉強になりますし、すべてオンラインに揃っています。
インクルージョンに焦点を絞ったリソースがたくさん手に入るのは、Kapor Capitalの創業者誓約書です。創業者誓約書は、アーリーステージのスタートアップが、ダイバーシティとインクルージョンに関して小さくても有意義な行動にコミットすることを約束する誓約です。多くの素晴らしい企業が参画していて、シンプルかつ簡単に取り組みを進められるようにするための膨大な優れたリソースがまとめられています。ぜひチェックして、参加を考えてみてください。
最後に、First Round Reviewが好きです。文化とインクルージョンについての良い記事がいっぱいです。この分野で目覚ましい成果を上げた人たちが書いています。中でも15本ほどの記事が私には特に役立ちました。
Jennifer Kim [37:49]
ええ、どれも同意します。ひとつ付け加えるなら、Project Includeです。ProjectInclude.orgはシリコンバレーで経験を積んだ本当に優秀な女性たちが集まってつくった非営利団体です。彼女たちは何もかも目にしてきました。採用の文化や、まさに立ち上げの日々から適切な足場や土台を構築するためにやるべきことまで何でもあります。どの創業者も少なくとも1度は通読したほうがいいです。かなりのことが学べるでしょう。
Kat Manalac [38:28]
素晴らしい。他にも何かありますか。
妨害を避ける
Claire McDonnell [38:31]
もうひとつ、困難だけれども、インクルーシブの実現には重要なのは、妨害、会議中の妨害と、それがいかに権力の力学を固定化してしまうかということです。私自身が話を遮ってしまうことが多いので、これは難しい課題です。常に録音して、自分の前にマイクを置くのがいいかもしれません。
会議中にお互いの妨害を減らす簡単な方法がいくつかあります。会議ごとに誰かを「妨害警察」に任命し、話の妨害を防ぐ仕事をしてもらう。あるいは、壁に1文貼っておいて常に思い出させる。偏見や不合理な権力の力学の再生産を手っ取り早く防ぎたければ、企業内で妨害の発生を抑えるといいです。
Jennifer Kim [39:20]
D&Iを真に理解しているチームリーダーは、より敏感な人、構造的な不公平や障壁によって平均的な人たちよりも大きな影響を受けている人に注意を払います。その人たちが情報を教えてくれ、シグナルを発していたら、そこに一緒に取り組むべきです。適切なプログラムを開始し、正しい改善に導くことができれば、結局は企業全体を助けられるからです。全員にとっての利益になります。「上げ潮は船をみな持ち上げる」という格言のとおりです。持続可能な文化構築、D&Iはそのためのものだと思います。私たち対あなたたち、ではありません。あなたがこれを手に入れれば、私はこれを手にいれる、ということです。つまるところ、いかにより良い企業を築くかという話であり、私たち全員がそこから利益を得られます。
D&I に取り組む際のアドバイス
Kat Manalac [40:08]
お2人への最後の質問です。第1日目から意識して考え始めたい創業者やチームリーダーに1つすすめるとしたら何でしょうか。
Jennifer Kim [40:24]
Googleで検索すれば、イニシアチブやプログラムが無限に見つかります。すぐに始められるアイデアはたくさんあります。文化のリーダーとして成長するにはどのように学んだらよいかは、今回、あまり話さなかったテーマです。
1つ、現在進行中の短期的な例があります。私がYCをとても好きなのは、次のような助言を必ず行うからです。つまり創業者に、自分を大事にしなさい、ということを徹底的に叩き込みます。睡眠をとり、運動をし、きちんと休み、友人や家族と過ごすこと。これは非常に重要です。
というのも、あらゆるプレッシャーの中で驚異的な成長を成し遂げようとして、そして同時に自分も普段の何倍も力を発揮しようとして、燃え尽きたり、イライラしながら走っているのでは、本当に優れた文化のリーダーになるのは不可能です。なぜなら、きちんと考えて文化を構築するには、まず自分が、大切な人たちに対して寛大で深い思いやりの精神を体現する必要があるからです。
Claireはそれを実行しています。あなたが心からチームを思いやっていなければ、さらにそれを彼らが知っているのでなければ、あなたの従業員はあのように話してくれないはずだからです。偉大な文化を築きたければ、まずは自分からです。絶対に自分を大事にしてください。元気でなければ仕事はできません。
そして、さらに直近の課題かもしれませんが、D&Iと文化について「私には関係ない、専門ではない」という人がいます。でも、関係のない人などいません。文化は全員の事業です。チームの一員だったり、さらに何らかのリーダーであればなおさらです。私は、この課題について自分が学んでいて、大事に思っていて、みんなにも興味を持ってほしいということを社内に伝えるにはどうすればいいか、よく考えてほしいと思います。このポッドキャストや、気に入ったブログ記事をチームと共有してもいいでしょう。Twitterで共有すれば、暗号通貨ばかりを話題にしているツイートの合間の良い息抜きになるでしょう。
特にすすめたいのは、今、学んだことについて数行だけ共有することです。他の人たちと、学んだことや同意、共鳴した点を述べ合ったり、実際に始めてみるかどうか話し合ったりするきっかけになるからです。文化についての会話に誘導し、自分が学んでいることに加えて、一緒に学んで、一緒に取り組もう、と伝えられる良い方法です。
なぜ重要で、具体的に何が重要なのかを示す
Claire McDonnell [42:46]
私のアドバイスは2つです。1つ目は、なぜ大事だと思うのか、具体的に何が重要だと思うのかを把握することです。なぜインクルージョンを推進したいと思うのか。文化の何に力を注ぎたいのか。2つ目は、Jennの話の延長ですが、チームのメンバーに権限を持たせることです。True Linkでは、実際に私とKai以外のチームメンバーが担当しています。このポッドキャストでも何度か話しました。
Isaac、Paigeとその他の何人かは、実際に社内のインクルーシブな文化作りのリーダーです。このような体制になったのは、彼らが社内のリーダーになる自信をつけ、話し合いをし、価値を共有しているからです。他の人がリーダーになれるよう、オープンに会話をしたからです。燃え尽きたり、疲れたりしたときはとても助けられます。
自分に構う暇がないとき、ベストを発揮できないときも、リーダーの役割を果たしてくれる頼れる仲間がいると思えば救われます。たとえ、エネルギー不足の日でも、やることリストが長すぎてその仕事に着手できないときも、求めている文化の構築が続けられます。
Kat Manalac [43:57]
なるほど。まずは創業者から。創業者が他の人たちにも関わるように力を与える必要があります。始まりは創業者かもしれませんが、他の人たちにも自主的にその役割を担う権限を与えなければなりません。Leverの功績のすばらしいところです。またLeverが成長するにつれて、あなた自身もそうしたよさを積極的に活用してきました。
Jennifer Kim [44:19]
ええ、私はLeverの創業者から本当に最高の機会を与えられたと思っています。「ほら、やってみなよ、試してみなよ」と言ってくれて、ごくごく小さな対話がこの大きなブランドになり、数多くのイニシアチブを生み、LeverはD&Iを積極的に推進している企業として知られるようになっています。4年ほど前にこの仕事を始めたときは、どのようになるか予想もつきませんでした。でも、Claireが言ったように、創業者は重要だと思うことに対して忠実で、他の人に任せてそれを進めていきました。結果、クリエイティブな効果が魔法のように増幅しました。
Kat Manalac [44:55]
素晴らしいです。今日は、お2人とも、ありがとうございました。
Claire McDonnell [44:58]
Kat、ありがとうございます。
Jennifer Kim [44:58]
ありがとうございます。
Craig Cannon [45:00]
お聞きいただき、ありがとうございます。いつものようにトランスクリプトとビデオはblog.ycombinator.comで閲覧できます。ポッドキャストに評価とレビューをいただければ幸いです。ではまた次回にお会いしましょう。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Claire McDonnell and Jennifer Kim on Building an Inclusive Company Culture (2018)