VP of Engineering へのキャリアを加速させる: シリーズAのスタートアップに参加すること

あなたがエンジニアで、より大きな影響力を求めているのであれば、シリーズAのスタートアップにおけるエンジニアリング分野のリーダー的役割に関心を寄せているのではないでしょうか。私はSequoiaのヒューマンキャピタルチームの VP を務めていた7年間に、何十社もの創業間もない企業が最初のエンジニアリング部門のリーダーを採用するのを手伝いました。つまり、私は、何十人もの候補者が一か八かでシリーズAの仕事を選び、その結果大いに成功したのを見てきました。また、多くの野心的なVPE (VP of Engineering) たちが、彼らの夢の仕事から遠ざけられるのも目にしてきました。それは、彼らが企業の創業者、従業員、そして投資家たちの思考プロセスを理解していないからでした。

この記事では、あなたのキャリアをエンジニアリングリーダーからVPEへと高めるための2つの効率的な道筋をご案内します。

将来を担うチームをリードする

創業チームにとって、最初のエンジニアリングリーダーを見つけることが、運命を左右する瞬間となり得ます。立ち上げチームは製品市場に適応し、彼らのゴールを目指すのに必要な資金をなんとか獲得しました。企業成長の次なる段階において、エンジニアリングチームのリーダーの適任者を雇用することは、企業の将来のリスクを減らす上で大きな違いをもたらします。

エンジニアリング部門の強力なリーダーシップ構造を有する大企業と違い、スタートアップが成功するためのチャンスは一度きりです。エンジニアリングチームは、この非常に重要なリーダーを雇用できるかどうかで創業者の意思決定能力を大きく判断します。大きなリスクを背負っているため、ほとんどの創業者は適切な経歴を持たないエンジニアリングリーダーには社運を託そうとはしません。明らさまには言わないでしょうが、本当のところ、シリーズAの企業には現時点でのチームのためのリーダーは必要ないのです。彼らには、もっとずっと大規模なチーム、つまり自分たちが2年後にそうありたいと思う規模のチームを先導したことのある、経験に裏打ちされた人材が必要です。

必要な経験をいかに積むか

すでに20〜40人強のチームを先導した経験を持つエンジニアリングリーダーにとって、10人以下のチームのリーダーを務めることは大きな後退のような気がするかもしれません。でも私は、その企業が今から数年のうちに2倍、3倍の規模に成長するにつれて、その一歩の後退の先に大きな前進が続く可能性があると言いたいです。あなたのリーダーシップで会社の重要な転換期を乗り切ることによって、より将来性の高いスタートアップにおけるさらに大きな役割を担うことにもつながり、あなたのキャリアは充実していきます。そうなった時でさえ、あなたは将来のある時点でさらなる飛躍のために一歩後退するでしょう。このサイクルが継続していきます。

言い換えると、成功するVPEのキャリアの道、つまりインターンに始まり会社のCTOに至る道のりは、直線コースではありません。ですから、常に気を緩めず、停滞状態に陥るのを避け、より大きな目標を達成するためのリスクを取る勇気を持つ必要があります。

経路1:小さなスタートアップからマイクロソフトへ

Kevin Scottを例にとってみましょう。私のお気に入りの例です。2007年、KevinはGoogleのシニアエンジニアリングマネージャーを4年間勤めた後、当時まだとても小規模だったAdMobと言うスタートアップのVPEの役職を引き受けました。このポジションは彼がAdMobのCEOに売り込みEメールを送りながら積極的に求めたものでした。その後3年間、Kevinは自分のチームとともにAdMobのプラットフォームをモバイル広告ネットワークのトップ企業の一つに導きました。その後AdMobはGoogleに7億5千万ドルで合併吸収され、当時それはGoogleの三番目に大きな買収となりました。Kevinは、Googleで二度目のお役目が済むと、今度は当時まだ中間段階にあったLinkedInのシニアVPE に就任し、エンジニアリング、業務管理、IT、セキュリティなどのテクノロジー関係全般を監督しました。2016年にMicrosoft がLinkedInを買収した直後、KevinはCTOに昇進し、現在に至っています。

もしもKevinがGoogleにとどまっていたら、彼がエンジニアからCTOへと上り詰める確率はほぼゼロだったことでしょう。大規模なエンジニアリング企業という安全保障から離れて小規模な創業間もないスタートアップへ移るというリスクを取ることによって、Kevinは自分がまだ成長を続けながらチームを率いて重大な転換期を切り抜ける能力を持っているということを証明しました。そして世界最大で最も大きな影響力をもつテック企業のエンジニアリングを統率する機会を勝ち取りました。

もちろんすべてのスタートアップがAdMobのような成功を達成するわけではないですし、誰もがKevin Scottのような具合にいくわけではありません。ほとんどの技術系リーダーにとって、Kevinが勝ち取ったような役職へたどりつくまでには、いくつもの「…部課長」とか、一向に成長しない中小企業のVPE といった役職を経るものです。しかし、あなたが新たな学びと自分の能力向上に集中するならば、それまでの様々な職務経験の一つ一つによってより良いリーダーとなることができます。ご自分は今ツアー中のミュージシャンで、スターダムに立つ日に備え、小さな演奏場所をまわって腕を磨いている、と考えてみてください。長期休暇は決して保証されないけれど、ショーの数をこなせばこなすほど、「一夜にして生まれた」注目の人として世の中に認められる確率は高くなります。自分のことをうまく位置付けていけば、ビジネスを実際に成功させる確率が高く、いずれは現状打破をするであろう企業において、それらの成長途上にあるエンジニアリングチームを統率する機会が3、4度はあることでしょう。

経路2:コースから外れない、それとも高成長へひとっ飛び?

2014年に、当時はまだIPO前だったある企業の素晴らしいエンジニアリングディレクターと会話しました。彼女は自分の役職を楽しんではいましたが、次なる大企業のVPEとしてさらに大きな舞台で腕を振るいたいと切望していました。そこで彼女は私に、チャンスのありそうな話を紹介してほしいと頼みました。技術分野についても、部下の統率についても、彼女は私たちのポートフォリオ企業たちが皆重視する資質の多くを備えていました。しかし彼女は、当時20人体制だったチームの倍近いエンジニアリングチームを持つ企業しか考慮に入れていませんでした。私たちは充実したディスカッションをしました。私は、彼女ならきっと多くの企業がVPEの役職に考慮すると思うけれど、今彼女がこだわっている規模の会社では難しいだろうと伝えました。スタートアップのプロフィールが高ければ高いほど、 裏打ちされた経歴のないリーダーに対する創業者のリスク回避も大きくなります。ほとんどの場合、この例でも見るように、彼女が思うようにいかないのは実力のせいではなく、一段上のレベルの成長に必要とされる実証済みの成功歴が不足していることが問題でした。

彼女の目標を達成させるために、二つの方法を提案しました。2〜3倍の規模に拡大しようとしている小さなスタートアップに加わるか、急速に発展しつつある現在の会社にとどまって次のレベルに到達するのに必要な良質物件を合併吸収するか、です。両方に正当性があり、それぞれ利点と妥協点があります。彼女の現在の役職は大きなチームの管理能力を実証するための早道です。小規模な会社では一人のエンジニアリングリーダーが何年もかけて30人のエンジニアを雇用することがあり、しかもビジネスがつまづけばそれすらままなりません。それに対して、急成長企業ではすでにいる30人のエンジニアたちを、同じリーダーのもとで1〜3ヶ月でシフトさせることも可能なわけです。一方、彼女が創業間もない小規模のスタートアップを選べば、貴重な経験を積むことができます。大企業のセーフティネット無しに自分一人で人材をリクルートする方法を学びます。 人事部の補佐無しに自分の作ろうとしているチームを動機付けし、テコ入れする方法を学びます。さらに経営幹部職の立場から直接企業の成功に貢献できることはほぼ間違いありません。彼女は急成長する現在の会社にとどまることを選び、2年後にはエンジニアリング部門のVPに昇進しました。

優れたシリーズAのVPEの三大資質

本当に優れたVPE候補は単に経験を積んでいるだけではありません。以下にシリーズA企業が求めるVPEの三大資質を挙げてみましょう。

  • 不確定状況にもかかわらず成果をコントロールする能力。これを避けて通ることはできません:スタートアップの企業生命はほぼ予測不可能です。そんな環境の中でも成果をあげることができますか?移り変わる条件のもとで適切な判断を下すことができますか?組織だった意思決定ができますか?創業者は、あなたが成功を導くための資質を備えていると確信したいのです。
  • チームを育てる能力。あなたが育て、管理していくチームには、部下のことを信じてくれるリーダー、そして燃え尽きリスクを低減させてくれるリーダーが必要です。 組織全体のキャリアアップに関して個人的なコミットメントをし、それをサポートしていくことができますか?
  • コミュニケーション能力。最も優れたVPEは、セールス、マーケティング、製品管理といった部門の同僚と強い関係を築いています。優れたVPEは組織全体のニーズを理解し、そのニーズをエンジニアリング上の成果に反映させてビジネス目標をサポートすることができます。彼らは語り方に長け、新たな着目点や変化する着目点の裏にある「なぜ」をチームのメンバーが理解できるように助けます。また、チーム全員が企業目標を強く意識し、自分たちの影響力を確実に理解するように心がけます。

論証する:面接では論拠を含める

優れたシリーズAのVPEについてあなたがすべてのボックスにチェックマークをつけたとしても、創業者があなたの資質を認識しなければ意味はありません。私たちが共に仕事をしている創業間もないシード段階の会社創業者の多くは、まだVPEの面接を行ったことがありません。 候補者の皆さんはすべての質問に対して「なぜ」を含めるよう、お勧めします。例えば、マネージャーを管理したことがあるかと尋ねられたら、ただ「はい」と言うのではなく、プロジェクト内容やチームの規模を説明します。なぜ自分の組織を階層化したのか、どのように各階層に自律性を付与しながらも確実に成果を出すことができたのか、といったことへの説明を自分の方から話してください。目標をどのように定めたのか、そしてその目標をどのように達成したのかを共有します。言い換えると、面接の度に、あなたの思考の仕方を同僚となる可能性のある相手により深く理解してもらえるよう気を配るということです。

スタートアップの最初のエンジニアリングリーダーという役割はエキサイティングな機会ではありますが、棚ボタ的に手に入る仕事ではありません。積極的に自分の資質を高め、次のキャリアレベルにおける問題を解決しながら自分の経験を実証し、創業者にあなたこそ最高の適任候補であることを確信させることが必要です。

SequoiaコミュニティにおけるVPEの仕事について詳細を知りたいとお考えの方は、Theresa Leeまでご連絡ください。

 

著者紹介

Bret Reckard

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Accelerate Your Path to VPE: Join a Series A Startup (2019)

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