どのようにYCが女性創業者を奨励できるか意見を寄せてほしい、という私のリクエストに対して、全体的に素晴らしい反応をもらいました。2つの独立した問題があることは明らかです。
1)スタートアップを既に始めている女性のいくらかは、Y Combinatorに関心がない。
2)素晴らしい創業者になる素質を持つ女性のいくらかは、スタートアップを始めない。
男である自分が女性創業者にとっての環境を語るのは少し馬鹿げていることは承知しています。でも、ベンチャー業界はこれまで間違いなく女性に対してフェアでなかったですし、私は自分にできることは何でもしたいと思っています。私たちのチームの女性もこのことについては心から案じていて、改善にあたっては私よりも活躍してくれることでしょう。
まずは1つ目の問題に関して。最も多く寄せられた意見の1つは、私たちがこの問題について考えていて、もっとたくさんの女性創業者に資金提供を行いたいと思っていることを明確に示す必要があるというものでした。というわけで早速宣言しておきます。女性創業者の皆さん、お待ちしています。アウトリーチの場でも発信を続けます。
私たちが女性創業者へ資金を提供したい理由ですが、そうすることが正しいことであるからというのもありますが、それはなにも多様性のためだけではありません。私たちは肯定的な意味で欲張りだからこそ、より多くの女性を応援したいのです。私たちが資金を出したいのは最も成功しそうなスタートアップで、その多くは女性によって創業されるのですから。
その多くはまた、異なる人種や信仰、出身国、ストレート、ゲイ、年齢は20代、もしかすると50代といったように、様々なバックグラウンドを持つ人々によって創業されます。現在のYCバッチのメンバーも同様です。実際のところ、これはYCのパートナーシップにも当てはまります。繰り返しますが、多様性のためだけではありません。私たちが求めているのは最高の人材であって、そこに個人の属性は関係ありません。
現在のYCバッチでいうと、資金提供を行った企業の24%が1人かそれ以上の女性創業者を有しており、その中からロールモデルとなる可能性を持つ企業はたくさん生まれるはずです。これからYCの女性出身者数が増えていくと同時に、より多くの女性がYCは女性を応援して尊重する場所だと感じるようになって欲しいと願っています。
もう1つの意見は、女性が歓迎されていると感じられるように私たちはもっと頑張るべきというものでした。私たちのサイトに登場するのはほぼ男性のみだと指摘するEメールがたくさん届きました。改善します。同時に、YCが誇る最も成功した女性創業者と協力して彼女たちの経験を聞き、将来創業者となるかもしれない女性たちを指導していくことも続けます。また、夕食会に女性を招いて講演してもらうことも続けます。今回のバッチでは、私が良いと思ったスピーカー4人のうち2人が女性でした(Adora CheungとJulia Hartz)。Hacker Newsのコメントの質の向上にも取り組んでいます。
資金提供にあたって行う面談に女性を加えるべきというリクエストも非常に多かったです。前回のバッチでは、3回実施した面談トラックのうちの2回に女性を1人配置しました。YCパートナーにも女性が増えたので、次回のバッチでは全てのトラックに女性を加える予定です。
Eメールをくれたほぼ全ての女性が、私たちが引き続き男女に同様の基準を課すべきだと考えているようです(そうでなければ、バッチごとに資金提供を行う凄腕の女性たちに失礼です)。しかし、例えば男女では自信の表し方に違いがあるといったように、女性の良さは男性とは異なる方向や物事において発揮されるもので、私たちが課す基準がそこをしっかりと捉えられるものでなければならないという意見もたくさんありました。
寄せられた具体的な課題として、私たちが探しているのはMark Zuckerbergのような創業者だという考えがありました。ちなみに、あのミームはもともと自虐的なネタとして始まったものです。私たちは以前にMark Zuckerbergに似た男性に資金提供したことがあるのですが、これが失敗に終わりました。このZuckerbergのそっくりさんについて面白おかしく話すよう記者から頼まれたPGが、どうやらこれが1つの方法のようだと話したのです。Zuckerbergを彷彿とさせたところで何の意味もない、どれだけZuckerbergに似ていてもぶざまに失敗することがある、これがPGの真意でした。今日のZuckerbergを作り上げた資質のいくつかを持った創業者を探しているというのがより正確な表現かなと思います。
最後に、Female Founders Conferenceのようなイベントや、このようなイベントが業界を変える助けとなるという考えに対して多くの支持が集まりました。たくさんの人が、YCが今後もより多くの女性創業者に資金を出すことでVCもそれに続くと考えています。
2つ目の問題について。私は、もっと早い段階で若い女性に手を差し伸べ、スタートアップやコーディングについて彼女たちに教えるために私たちができることはもっとたくさんあると考えています。コーダーでなくても創業者になれると、多くの女性からツッコミがありました。その通りですね。この指摘は個人的に良いリマインダーになりました。でも、コーディング習得は検討する価値のあるものだと伝えるだけでも良いのではと思います。
今後もっとたくさんのイベントを開催するにあたって、私たちはより多くの女性と出会う努力を続けます。アウトリーチディレクターのKatと創業パートナーのJessica共々、私はこの課題に具体的に取り組んでいきます。一例として、今年後半にハッカソンの開催を考えています。たくさんの女性が参加してくれることを願っています。
YCが誇る成功した女性創業者の何人かにもアウトリーチを手伝ってもらうつもりです。これまでに少なくとも1人、今後時価総額数十億ドルの企業を築くであろう女性創業者 / CEOに私たちは資金を提供したはずです。彼女たちはこの上ないロールモデルです。
やるべきことはまだまだたくさんありますが、私たちの取り組みは始まっています。他の投資家も私たちに続いてくれることを祈っています。
著者紹介 (本記事投稿時の情報)
Sam Altman は YC グループの社長です。彼は Loopt の共同創業者兼 CEO でした。Loopt は 2005 年に Y Combinator に投資され、2012 年に Green Dot に買収されました。Green Dot で彼は CTO を務め、現在は取締役です。Sam は Hydrazine Capital も創業しました。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: What I've Learned From Female Founders So Far (2014)