どちらに向かって走るか? (Ben Horowitz)

痛みが消えるまで飲もうとしていた。
だけどより悪いのはどっちだ、痛みか、二日酔いか。
—Kanye West、「ダーク・ファンタジー

起業をすると、まるで会社が自分の神経系に組み込まれたかのように感じる人が多いです。会社に何か悪いことがあるたびに身体的な問題を抱えたものでした。たとえそれが何かわからなかったとしても、です。理解できていなかったとしても、感じることができたのです。それは愉快な感覚ではありませんでした。私の知る優れた創業者/CEOのほとんどが、これと同じ厄介な経験をしています。残念ながら、これを感じることは創業者という仕事の楽な方の一面です。

より厳しい方の一面は、その不安を感じた時に何をするかということです。その不安に立ち向かいますか?それとも不安から逃げますか?

半年前にセールスの責任者を採用し、予想販売数における一部の取引についての彼の理解が非常に薄っぺらなものであることに気づいたとします。彼が見かけ倒しだといういくつかの意見を耳にしたことはあるものの、彼は最初の2回の四半期で目標値を達成しています。内心、問題を感じ取ることはできていますが、今、最も避けたいのは、責任者の採用をやり直すことです。どうしますか?

最新のラウンドの評価額が高すぎたので、評価額全体は落ちています。営業収益の成長は若干、予想よりも小さく、支出率は計画通りです。これが大きな問題になることは感覚でわかります。もっともらしい理由を挙げて問題に目を瞑りますか? 「私たちはすばらしい新製品を近々発売し、後ですばらしい評判を手にする。だから今四半期は大丈夫だ」としますか? それとも、恐ろしい状況に立ち向かって、今、解決策を考えようとしますか?

私がLoudcloudのCEOだった時、私たちは急成長し、消防署長から電話がかかってきて、会社員の全員のためのオフィスとしては、もっとスペースを作らないと、会社を閉鎖すると警告されたほどでした。私はオフィスマネージャーにすぐにいくらかのスペースを探すようにと指示しましたが、何かおかしいと感じていました。暗闇にいるようでした。私は体のどこかで、インターネットブームの終焉が見え始めていることを察知していましたが、それを論理的に説明することができませんでした。ですから、私は決断を委ねました。不安から逃げたのです。

私たちは「Maude Building」として後に有名になる場所を新規に賃貸する契約を結びました。名前の由来は、元の会社の建物があったMathilda Avenueを一つ曲がったところのMaude Avenueにあったことから来ています。そこに引っ越せば、その後の数年間、その場所で余裕をもって成長できると考えました。限りある現金の中から、3,000万ドルが必要でした。

ネットバブルの崩壊が訪れ、私たちは顧客の約半分を失い、Maude Buildingに引っ越すことはありませんでした。私たちが結んだ賃貸契約は月額1平方フィートあたり10ドルでした。私たちがその場所を貸し出そうとした時には、ネットバブル崩壊後で、市場価格が月額1平方フィートあたり0.90ドルであることがわかりました。しかし、多くの会社が廃業した状況では、その料金でも借り手はいませんでした。私は不安から逃げて、3,000万ドルを失ったのです。喉から手が出るほど欲しかった3,000万ドルです。しかし、どういうわけか、どうにかして、私たちは生き延びました。おそらく、私たちが生き延びた理由は、私が二度と逃げなかったからです。今日に至るまで、私は不安を感じるたびに、それに立ち向かい、恐ろしければ恐ろしいほど、すばやく対処するようにしています。

逃げるのか、対処するのか、どちらの方向に走るかが、往往にして、有能なCEOとそうでないCEOを分ける決め手です。 ほぼすべてのCEOが、問題がどこにあるかを知っていますが、本当の選りすぐりのCEOだけが、不安に立ち向かいます。

 

Benの新書、『What You Do is Who You Are』が10月29日に発売されました。この本は、どの組織にとっても重要な疑問に答えようとしているものです。自分の望む社風を創出し、維持する方法は? Benは、通常の事業事例研究が扱ってこなかった、リーダーシップとカルチャーの確立の魅力的な4つのモデルを検証して、ミッションに満ちたカルチャーの確立の方法を説明しています。詳細および予約注文はこちらから。あるいは、書籍販売を扱っているところなら、どこでもオンラインで見つけることができます。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Ben Horowitz

Ben Horowitz は、Andreessen Horowitz の共同創業者兼ジェネラルパートナーの一人であり、New York Times のベストセラーである Hard Thing about Hard Things の著者です。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Which Way Do You Run? (2019)

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