プロダクトを作る方法 II (Startup School 2017 #06, Aaron Levie)

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目次

 

Aaron Levie
みなさん、調子はいかがですか? エンタープライズ向けアプリケーションソフトウェアについて話すことに皆さんテンション上がっていますか? いいですね。今日は皆さんにそうなってもらいます。

私はAaron Levieです。Boxの共同創業者の一人であり、CEOです。今日はBoxでの私たちのストーリー、私たちがどうやって会社を立ち上げ始めたのかについて話したいと思います。

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実際には私達は初めからエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社だったわけではありません。ビジネスモデルと方針は途中で変えました。その決断に至るまでの道程、そして会社とプロダクトの立ち上げ過程について話そうと思います。そして、私は本当にそうなることを心から願っていますが、あなた方の多くが今後エンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を始めるような事があれば、私たちが長い年月を掛けて学んできた教訓を、私たちの経験を通じてより早く学ぶ事ができるかも知れません。

時間があれば質疑応答とかもしたいと思います。どうでしょうか?それでいいですか?いいですね。とてもインタラクティブなものになると思います。お互いに話し合わなければいけません。言っている事がわかりますか? インタラクティブでないといけないと言っている時が一番インタラクティブじゃないのは本当に面白いですよね。

さて。私達が近代的なエンタープライズのためにして来た事には、もしかしたらあなたたちの役に立つ教訓もあるかも知れません。

Box のはじまり

Boxを始めたのは2005年。アイデアが生まれたのは私達がまだ大学の1・2回生だったころです。12年ほど前です。

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当時はどこからでも作業したり、ファイルにアクセスしたり、ファイルを共有したり、その場に居ない誰かにデータを共有するという事はとても難しいことでした。USBフラッシュドライブを使わなければいけませんでした。あなた達には今までにそのようなものを使う必要がなかったことを祈ります。USBフラッシュドライブを使ったり、自分自身にメールを送ったり、FTPアカウントを使ったり、日常的な作業をこなす事があまりにも複雑でした。あまりにも遅く、面倒でした。

ちょうどその頃、私はコンテンツの共有とコラボレーション、及びその管理のためにエンタープライズアプリケーションソフトウェアを使っていた別の会社でインターンシップをしていました。ですが、それもあまりにも複雑で難しいものでした。

Box のアイデアの発見:3 つのトレンドに目を付ける

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アイデアが生まれたのは2004年末ぐらいです。その頃、私達はファイルを共有して他の人と仕事をこなす事がなぜこうも難しい事なのかという問題を解決できるであろうと思えるメジャーな技術的トレンドの合流を目撃しました。一握りのメジャーテクノロジトレンドが、どこからでも情報やデータを使って仕事するという問題を最終的には解決するということが見えたのです。

1. モバイル

私たちが特に着目した三つのトレンド、その一つ目がモバイルユビキタスです。

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これは今や一般的なトレンドで、モバイル戦略なしで立ち上がるソフトウェア会社なんてありません。2004年、2005年の頃にはそうではありませんでしたが、私たちには10年以内に世界中のいたるところで誰もがBlackberryを使う様になるだろうと言うビジョンと見通しがありました。それが私たちのビジョンでした。幸いにも私たちは間違っていて、より優れた端末を与えられました。とにかく、モバイルが将来非常に強力な機会になるとわかっていました。人々の情報を使った働き方を変えるものになると。より良いプラットフォームとなったことを嬉しく思っています。

2. 計算能力とストレージのコストの低下

また、コンピューティングのコストとストレージのコストも急激に下がっていくトレンドも見えました。

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当時はまだクラウドコンピューティングとは呼ばれていませんでしたが、インフラストラクチャーを大規模で大量に購入し、一箇所に集中し、インターネット上でアプリケーションを構築できるようになったことが見えました。

ソフトウェアプロバイダーがその経済規模を駆使してその技術を大勢の人に提供出来る様なことなのに、人々が自らのインフラストラクチャーとデータセンターを構築しようとするのは何故なのか、私たちはその理由について考えました。いつか、ある時点でコンピューティングが誰にとっても本当に、本当に安価になるのならクラウドもそうであるべきだと思いました。

3. ネットワーク化

最後に、ますます多くの人々がインターネットに繋がり、企業内のより多くの人々がモバイル機器で作業して、コラボレーションもより多くなるにつれて人々が互いにより強く繋がっていくと考えたんです。

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以前は組織内に自らの人材とインフラストラクチャーと能力を持たなければいけなかった企業が、世界中のパートナーや顧客やベンダーや同僚達とネットワークできるようになりそのみんなからバリューを得ることができるようになります。そうなるとこの市場が伝統的に力を入れてきた企業ネットワーク内の人間だけではなく、その他の人ともインターネット越しでお互いにより良くやりとりすることを可能とするソフトウェアが必要となります。

誰もがインターネットを使い、誰もがモバイルを使い、コンピューティングとストレージが本当に安価になる。私たちはこの3大トレンドを見て、将来的にこれらの条件が本当に揃ったとしたら、人々がファイルを共有し情報に安全にアクセスできる本当にシンプルな方法として何をデザインできるか考えました。

そこで私たちが出したのがこれです。当時はBox.netと呼ばれていました。サイトを立ち上げ、アイデアはとてもシンプルなものでした。アップロードしたファイルをどのウェブブラウザーからでも、どのモバイルデバイスからでもアクセスできるというものでした。

開始数か月で何千人もが使うように

開始後数ヶ月で何千人もの人が登録しました。可能な限りシンプルである様にいくつ化の仕組みに取り組んでいたので登録フローはとても簡単なものでした。エンドユーザーに焦点を当てていました。

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従来のITの世界ではテクノロジにアクセスするにはIT企業やセキュリティー企業に行かなければいけませんでした。 私たちは誰でも個人情報、個人メールアドレスで登録できるようにし、これは当時の従来的なIT業界にとっては結構破壊的な事でした。 誰でもオンライン化できる。誰でも数ギガバイトのストレージを買い、どこからでも情報を共有しアクセスすることができる。それが元のアイデアでした。

顧客は既存のテクノロジに本当にいらついていた

最終的に気づいたのが、その頃はまだ大学生だったので全く知らなかったことですが、世界中のあらゆる規模の企業は、本当に本当に悪いテクノロジに慣れていたということです。できることに関するハードルがあまりにも低かったんです。

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私たちの最初のアプリケーションはかなり酷いものでしたが、当時はハードルがあまりにも低かったので、基本的な問題をいくつか解決できればそのIT環境や企業内のエンドユーザー達は途端にそのテクノロジを採用したくなるものでした。私たちが気付いたのは世界中の人間、そしてあらゆる規模の企業、それがテクノロジに数億ドルを費やすフォーチュン500企業であれ中小企業であれ、誰もが本当にシンプルなツールに興味を示しそれを求めていたということです。

競合の商品はひどく複雑なデザインだった

その頃の競合の一つ、情報を共有するのに使わなければいけなかった主要プロダクトはこのようなものでした。そのプロダクトのうちの一つのスクリーンショットです。 かなりひどくデザインされたテクノロジです。なんて言ってるのかさえ分かりません。 インターネットから持ってきた画像ですが、他人とコラボレーションして一緒に働くには非常に不恰好なソフトウェアです。

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ファイルをとてもシンプルに共有する方法として始めたものが、本当にそれだけシンプルな提案だったのですが、実際にはそれが人々の未来の仕事方法の核心のようなものだったのです。 人々が働くにはより簡単な方法でした。 セキュリティメッセージが出てきましたね。 よりにもよってこんな時に。 はい。

自分たちは単にシンプルなものを作ろうとした

ファイルを共有するとてもシンプルな方法として始まったものが新しい働き方になったのです。私たちは企業のより近代的な働き方という広大な問題を解決しようとしていたわけではありません。 私たちは単にファイル共有と情報へのアクセスをどこからでも簡単にできるようにする、とてもシンプルなテクノロジを作ろうとしていただけです。

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そして、やがては戦略を進化させました。 物事があまりにも早く成長していたので…

シリコンバレーに移り、ガレージで仕事をする

スタートアップの世界ではよく聞くような話ですが、大学から中退して、ミニバンに乗って、ベイエリアに引っ越して会社を立ち上げることにしました。

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物語にはいつもこういう場面があります。少し時間を巻き戻して見ますと… これは私たちが改装されたガレージで生活し、仕事をしていた頃です。私たちの後ろに見えるのがそれですが、実は… 私たちはその中で暮らしていたんですが、実際にはガレージであって、ちょっと違法でした。

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創業者4人揃って大学から中退してここから立ち上げたわけですが、その時まだわかっていなかったのがこのエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社がいずれエンタープライズアプリケーションソフトウェアのプラットフォームそのものとなることでした。

大学を中退する

面白い話ですが、中退するときは栄光を思い浮かぶんです。よし、大学を後にして、栄光を掴むぞ、と。

僕らの前に中退した人達の例を見てみましょう。Bill Gates。

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Bill Gatesは中退した。ワクワクしますね。

Steve Jobs もそうでした。彼も中退しました。とても刺激的ですね。

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Michael Dellも中退しました。

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これらは全て刺激的なものですが、誰もこの男のことを覚えていません。

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中退の話になると栄光を掴んだ人の話しか考えません。実際にはこの人が中退したかどうかは知りませんが、なんかそうしたように見えますよね。

私たちは燃えていました。 「大学から中退するぞ。やってやる。ソフトウェア会社を始めるぞ」ってね。

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みんな一緒に暮らして仕事して、ビジネスに関して何度も繰り返し反復し、ほぼ毎日のようにピボットしていました。 スタートアップしたことのある方ならわかると思いますが、24時間に一度は自分のビジネスモデルや戦略について考え、それらが上手くいくのか、スケールするのか、経済的にうまく展開するのか、そういったことについて考えます。

B2CかB2Bかを決める

そして、消費者にサービスを提供する会社になりたいのか、企業にサービスを提供する会社になりたいのかを決めなければならない時がきました。そこにたどり着いた理由は、当時、消費者が私たちのプロダクトに費やせる金額の上限が月々$9.99だったと思います。 かなり標準的な消費者向けソフトウェアの支払い方式ですね。毎月10ドルでしたが、私たちにはGoogle、Facebook、AppleやMicrosoftのような会社がいずれ誰にでも無料でインターネット上のストレージを与え、誰もインターネット上ストレージにお金を払いたくなくなるのが見えました。

簡単な調査をしてみましょう。ここで使っているストレージソリューションのいずれかにより多くのストレージを使用するための料金を払っている人はいますか? うわ、びっくり。 はい。 よし。大量のデータを取り扱う人が多いとかですか? どういうことでしょう? よし。 はい。 払わない人は? はい。

市場の35%ぐらいしかあなたのソリューションにアップグレードする気がないのならそれは素晴らしいビジネスモデルだとは言い難いでしょう。 それより広範な人口に届けたいと思います。 いつかGoogle、Facebook、そしてその他がストレージを無制限に与え始め、長期にわたってアップセルし続けるのは非常に難しくなると私たちは考えました。 それが消費者側の話です。

企業側では、私達がコストを抑えて格安で作れるようなソフトウェアに企業は実に何百万ドルも費やしていることに気付きました。企業が数百万、数千万ドルも払っているものを私達は数十万ドルで彼らに提供できると考えました。サービスのコスト面でほぼ10、20倍の改善を得れたのです。

もう一方で、消費者に求めれる料金は月々10ドルが限度だと感じ、それもストレージが安くなるというその業界の経済性に下向きの圧力をかけられるものでした。それでも「ファイルに広告を乗せたりできないだろうか?」など考え、企業向けに進むべきだという結論を出すのに驚くほどの時間がかかりました。

結論からして言いますと、個人の税務書類や写真などを観覧している時に広告など本当に見たくないんです。消費者向けで広告モデルは成功しないと思いましたが、実際に企業が抱える情報管理とファイルを通じたコラボレーションに関連する問題を全て解決できる本当に素晴らしい企業向けソフトウェアを作ることができ、それら全てを一箇所で行えるプラットフォームを作る事ができれば、もしかしたら市場の経済性を圧縮し従来のプレーヤーに対してディスラプティブでいれるかもしれないと決断しました。

本当にエンタープライズソフトウェアをするのか?

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そこで私達は一歩下がって考えました。「よし。でも、やるとしたら、本当にエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を立ち上げるのか?」と。私達、創業者チームは当時22、23歳で、他にも従業員が数人いました。 自分にできるけど格好悪いからしたくないもののリストがあったとします。 22、23歳の時にそのリストの最下位付近にあるのが「エンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を始めること」です。 例えば一番ダサい事のマッキンゼー・マトリックスがあったとしたら、エンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を立ち上げる事です。

「私達は本当にOracleやSAPのような会社を立ち上げるのか?」って、そのアイデアにかなり困惑していました。 それは楽しいのだろうか?って。

だって、私たちの身になって考えて見てください。 企業向けやB2Bと言えば、この業界で経験があるのならまず第一に思い浮かぶのがイノベーションの乏しい遅い会社、テクノロジはあまりにも高値でバイヤーに売っているだけ、ユーザーに売っているわけではないのでテクノロジ自体はかなり複雑なもの。 とてもシンプルな企業向けソフトウェアを作るインセンティブ構造がないんです。

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なぜそうなのかと言うと、それは予算を持っている人がその複雑なテクノロジを取り扱う必要がないからです。

彼らは購入の判断にシンプルさとユーザーエクスペリエンスを優先しません。営業担当者にはイライラしますが我慢です。企業向けソフトウェア購入の向こう側にいる場合、結果としては基本的に入らないソフトウェアを売りつけようとする営業担当者達に一日中電話をかけられっぱなしになります。

不公平な規約もあります。 サービス条件はいつだって顧客にではなく売り手に有利なものです。この業界における契約書の構造そのものがクライアントにとって全く不利なものです。

ソフトウェアデザインも酷くって、それもユーザーエクスペリエンスやシンプルさを優先しない市場にいると最高のデザイナーを勧誘できないんです。最高のデザイナーはとてもシンプルなソフトウェアを作らない会社では働きたくないですから。そうなると素晴らしいデザインを持つ意味がなくなりダメなデザインになってしまいます。更新が非常に不定期です。実は企業向けに売るとこれが理に適っています。

企業は予測性を求めています。 SnapchatやFacebookが私たちのためにソフトウェアを更新するペースで彼らのテクノロジが変わると困るからです。 もし私が2万から5万人規模の会社のCIO、最高情報責任者で、ソフトウェアベンダーが常に変わっていたら、私は従業員を教育し直さなければいけなくなります。

それはつまり顧客が不定期的な更新を望んでいるのでソフトウェアベンダーはソフトウェアやテクノロジをあまりアップデートしたがらないんです。 そうなるとイノベーションが全体的に遅くなります。プロダクトのアップデートを年に1度かもしくは3年に1度しかしない会社で働くのを想像してみてください。苛立ちを覚えますよね。最高のイノベーションを得ることはできません。ガタガタなテクノロジで、常に破損したデータなどの奇妙な問題に悩まされ続け、ダウンタイムもとても多い。

まだまだ延々とリストアップし続けれますよ。 エンタープライズアプリケーションソフトウェア業界を表す言葉をリスト化したいのなら、これはまだ序の口です。

そしてそれら全てを丸くまとめて、人々が「エンタープライズソフトウェア」と聞いたら思い浮かぶイメージがこれです。

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ベンダーに怒られてるイメージです。 いや、実際にはこうですね。

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もっと海賊じみています。

企業がエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社やベンダーの事を考えるときに思い浮かぶのがこれです。少なくとも10年前までは。

消費者向けスタートアップのような、エンタープライズスタートアップを作る

そこで、もし消費者向けの企業である事に伴う全ての楽しみやワクワクを捨てて会社をピボットさせるのなら、消費者向け企業のように経営できて、機能し、行動でき、イノベーションもできるエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を作る方法を見つけなければならないと考えました。

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消費者側と消費者の日常内のみでのサービス提供を放棄するにしても、それでもただ企業に販売しているだけでそれ以外の面では消費者向け企業の様に感じる会社を立ち上げる方法を見つけなければいけないと。

テクノロジの変化

そこで、会社をとても違う方法で立ち上げる事を可能とするテクノロジの世界での変化がなんなのか、私たちはそのリスト化をしました。 

これが今日のエンタープライズソフトウェアが熱い理由だと思います。まだ「格好良い・やりたい事」ランキング1位ってわけではありませんが、トップ300ぐらいには入るんじゃないでしょうか。

「よし。他と違うエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を始めるのなら、いまの現状はなんだ?」と考えました。 2006年、2007年の頃です。私たちに他とは違うエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を立ち上げる事を可能とする2006年、2007年の現状とは何か。

古い状況を見直す

まず最初にすべきは古い方法を見直す事です。

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従来の方法はとても複雑なテクノロジを作る事でした。流通経路が販売の全てでした。 顧客を得る主な方法として営業員が必要でした。何故なら顧客は自らあなたのテクノロジにアクセスすることが出来なかったからです。彼らにはそれをインストールする必要があり、インストールするには営業員を送って顧客にそれを使うべきだと売り込む必要がありました。流通が営業員の数に制限されていました。 テクノロジは大手企業にしか利用できないものでした。これはかなり大きな欠点ですね。

世界に大きな影響を与えたくても、他の誰にもそのテクノロジをインストールするためのインフラストラクチャーや装置が無く、フォーチュン500企業にしかそのテクノロジを使う余裕がなければ世界にそれほど大きな影響をもたらすことはできません。 トップ企業に大きな影響を与えているだけです。

テクノロジのセキュリティ面でも問題があることに気づきました。 10年前、企業向けソフトウェアを購入する時にはインフラストラクチャかハードウェアも購入し、次にソフトウェアを購入し、最後にハードウェアとソフトウェアを守るためにセキュリティソフトウェアを購入しました。必要なテクノロジが多かったんです。 それを多くの異なるベンダーから購入し、それらを全て組み合わせるのは顧客の責任でした。 つまり、これらのプラットフォーム内にはセキュリティーの脆弱性が多くあったということです。

もう一つは顧客が購入時にリスクを負っているということです。それは顧客が使用例に関係なくソフトウェアのライセンスを前以て購入するからです。 顧客が本質上では永続的にソフトウェアを購入しているのでベンダーが必ず勝つという非対称性がありました。もしソフトウェアが思ったように動作しなくても、顧客はすでに支払済ですから。 企業がソフトウェアプロジェクトのためにソフトウェアに1千万ドル費やしたが結果的にそれが望んでいたものではなく、引き返すこともできないのでただ単にインストールすらしないで終わるという様な事を頻繁に見かけました。 一度購入してしまったらもうなにもできませんから。 根本的に壊れたビジネスモデルです。

そして最後に、プラットフォーム自体が独自的なものでした。閉じたシステムでした。 統合性がなく他のプラットフォームにオープンではありませんでした。とても独占的なテクノロジでした。

新しい状況を考える

私たちはこれら一つ一つに新しいバージョンがあったらどうなるか考えました。

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テクノロジをシンプルでエレガントなものにして、そして常にエンドユーザーに焦点を置いて、エンドユーザーの大切さをずっと忘れずにいれたらどうなるか。 トップダウン営業をするだけでなく、もしプロダクトがエンドユーザーによって組織内に持ち込まれたとしたらどうなるか。

もしそのソフトウェアがあまりにも良くって入手が簡単なために誰でも自ら職場に持ち込める様なものだったらどうなるか。 あらゆる規模の組織内の人にも使える様なものだったらどうなるか。 世界中のどんな中小企業にでも利用可能なものだったらどうなるか。 大企業でも可能だったらどうなるか。 三人だけのスタートアップでも可能だったらどうなるか。 どのようにすればこのテクノロジを、規模を問わずに誰にでも利用可能にできるか。 どうすればセキュリティを含めて顧客がこのツールを守るために他のテクノロジを購入しないでも良い様にできるか。ベンダーがより多くのリスクを負えるようになればどうなるか。

あなたが私たちの顧客だったとして、テクノロジに不満を持っていればあなたは契約更新をしません。もしあなたの成功に関するリスクに焦点をおくのがベンダーだったらどうなるか。 そして最後に、オープンシステムだったらどうなるか。 使われている様々な企業向けソフトウェア全てとつながることが出来て、データを閉じ込んだクローズドプラットフォームを使わなければどうなるか。

Oracleなどが彼らのテクノロジを作ったこの古いやり方があって、それとは別にこの新しいやり方もあると私たちは考えました。 現在のテクノロジで変わったこの新しい事柄をそれぞれ記述して、この主なる問題を解決できるエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を立ち上げればどうなるか。 ここ10年間、私たちが取り組んできたことの本質です。

私たちは「このランドスケープでの新しい条件はこれだ。企業向けなのに消費者向け企業の様に設立されていて経営できソフトウェア会社を立ち上げよう」と言いました。 それが2007年ぐらいからの私たちの戦略です。

クールなのは、幸いにも今まで話してきた私たちの考えの多くを支持する結果が出たことです。 私たちには今や71,000もの顧客がいます。 フォーチュン500企業の63%ほどが私たちのサービスを利用しています。

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これは主に人々が仕事先により良いテクノロジを持ち込みたかったことから始まり、そのうちに広範な組織にも売ることに成功しましたが、本質的にはこれはユーザーの問題を解決し、テクノロジを職場に持ち込んでもらい、そして最終的にそこから多くの問題を解決したというものです。クラウドで起きたことで面白いのが、クラウドがあらゆる規模・業界の企業に働き方を変えさせたことです。

映画に関して共有しコラボレーションするためにBoxを使うPixar。

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プロダクトおよびマーケティングのためにBoxを使うNike。

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そして研究開発と創薬とその他の多くの医療開発とコラボレーションのためにBoxを使うEli Lilly。

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幅広い業界の企業に対応できます。

素晴らしいのがあらゆる業界・規模の企業がクラウドに移ることでポテンシャルを解き放したことです。 私たちはこのトレンドから利益を得ている数多くの企業の一つです。

変化はまだ続く

また、私たち全員、そしてこの業界で起業しようとしている人みんなにとって素晴らしいのが、これがまだ業界での大きな変化の始まりにすぎないということです。

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10年前に戻りますと、私は当時が始まりだと思っていましたがいまに至るまでかなり遅いスタートでした。今、企業に関するトレンド全てを見ますと、多分最高の機会はまだこれからだと思います。これから今まで以上の成長と機会を期待できるという意味です。

この裏には2つの大きな要因があります。

まだ世界は従来型のテクノロジを使っている

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第一に企業が使用するテクノロジのほとんどが未だに従来的なテクノロジだからです。まだ古いです。遅いです。複雑です。高価です。 昔ながらのベンダーに販売されています。 一方では引退させて、シャットダウンして、クラウドに移動させるべきである古いものの巨大な市場があります。 それが一つ目です。

テクノロジによってすべての企業が変わる

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もう一つのトレンドは地球上の全ての企業が従来的なテクノロジを使っていては、ビジネスモデルや顧客へ提供するサービスや経営方法を変革させることはできないということに気づいていることです。 地球上の全企業が今や組織の近代化を行う必要があることを知っているという事実はご存知でしょう。 メディア会社ならNetflixに冷や汗をかいています。 ライフサイエンス会社なら23andMeのお陰で気が狂いそうでしょう。 金融サービス会社ならStripeに恐れを覚えているでしょう。 宿泊会社ならAirbnbに怖気付いているでしょう。

どんな業界のどんな企業でもシリコンバレー、そしてシリコンバレー以外のデジタル業界からディスラプティブな力が来ていてそれらが使用するテクノロジとビジネスモデルにアップグレードして経営しないといけないことに気づいています。

もしあなたが企業向けのソフトウェアを作っているのならこれは素晴らしい話です、なぜなら変革を必要とするフォーチュン500を含めた全企業が近代的な経営方法・働き方に対応するために近代的なソフトウェアを必要とし、信じられないほどの機会があるということです。 デジタル・エコノミーと高価的に競争するためにも彼らはそれを可能とする新しいテクノロジを必要としますから。 それは私たち全員にとって今まで以上の機会があるということです。

10年遡りますと、企業がITシステムやテクノロジシステムをアップグレードするための大きなきっかけなんて特にありませんでしたから。現在では全企業がどの市場に向いてみてもディスラプションにあっているという事実がきっかけになっています。

きっかけがあるということは、例えば私がGeneral ElectricかWalmartかProcter & Gambleだったとします。私には私自身の競争力を高めてより効果的にしてくれるスタートアップや新しいサプライヤーと仕事をする必要があり、それはB2Bを立ち上げようとしている人たちには良い機会です。

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エンタープライズソフトウェアを立ち上げるための教訓

もし私の話を聞いてエンタープライズアプリケーションソフトウェアの企業を立ち上げようと決めた人がいるのなら、私たちが学んできた教訓のいくつかを今から言います。

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この多くは恐らく他の業界にも適用すると思います。特にB2B市場のために立ち上げる上で学んできたものですが、この多くはあなたが消費者向けアプリを開発していても、医療機器会社でも、その他どんな起業家活動でも確かに適用すると思います。 これは私たちの旅から学んだ8つの教訓と私が今までで他の企業から学んできた事もいくつか含もうかと思います。今まで話してきたことについても少し触れます。

シンプルであること

まず1番目がこれです。

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私たちの立ち上がりの基礎的なものですが、信じられないほどシンプルなものから始めて、時間をかけて拡大させることに焦点をおく、というものです。 私たちの立ち上げ初期のソフトウェアをMicrosoftやSAP、もしくはOracleなどの競合企業で働く企業ITのプロが見たら笑い転げたことでしょう。 技術者が私たちのテクノロジを見たら「これほど馬鹿げたものを見た事がない」と思ったことでしょう。アップロードしたファイルにアクセスすることを可能にしただけでしたから。

ですがそのシンプルさこそがディスラプティブだった理由でした。なぜならベンダーたちは皆一つのソフトウェアに可能な限りの機能を叩き込む事が大切だと思っていましたから。 それは私達のバリュープロポジションに相関を示すものでした。 エンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社はそういう風に経営されていました。 主に企業に焦点を置いていなかったからですが、私たちはそれとは逆のアプローチを取りました。 私達はよりシンプルな機能を一箇所により少なく集める事こそが私達のバリュープロポジションだと言いました。

従来的なエンタープライズアプリケーションソフトウェア業界にいた者からしたら私達のプロダクトを一目見ておもちゃだと思ったでしょう。 「決して企業の役には立たないだろう。規制された事業には役に立たないだろう。複雑なワークフローの役には立たないだろう」と思ったでしょう。彼らが認識しなかったのは、それが始まりに過ぎないという事でした。 それは私達の初日のユースケースにすぎませんでした。 それは私達が初日から解決しようとしていたことにすぎませんでした。

本能的な傾向があるんです。私達の会社でも、12年前から直接学んできたはずなのに今でもまだ時折顔を見せる傾向があります。この部屋の誰もがブレインストーミングを行なってどうしたら大きなエンタープライズアプリケーションソフトウェアの会社を立ち上げれるかについてブレインストーミングしたら数え切れないほど多くのことをリスト化することから始まるでしょう。 数え切れないほどの機能をリスト化するでしょう。 「これだけすごいものを作れたら」というウィッシュリストです。 実はそうしても成功しません。

誰もが問題視するたった一つのユースケースを見事に攻略して成功するのです。 その一つのユースケースさえ捉えれば、それは解決したいその他多数のユースケースへと展開するために使える楔になります。より機能が多くって強力なソフトウェアのほうが良いという本能を抑えて、一つのことに集中してそのことにおいて他の誰よりも優れていなければいけません。

私にこのことを幾度も思い出させてくれたのがGustoという会社で、以前はZenPayrollと呼ばれていました。 彼らは単に中小企業で使われる給与計算ソフトウェアや給与計算サービスが酷いものだと主張したんです。 彼らは従業員への支払いをより効率的にこなすだけのソフトウェアアプリケーションを作りました。 そして、それがあまりにも大成功したために彼らは数多くの企業に使われるようになり、次第に人事サービスなど人事チームが従業員関係でしなければいけないいろんな事にも発展するようになりました。彼らはたった一つのユースケースから始めました、給与計算を改善して、あまりにもシンプルで効率的なあまり大成功させ、そこから時間をかけて拡大できるようにしたのです。

もう一度言いますが、駆け出しの頃は多くの機能を加えたい衝動に耐え、人々が他人に簡単に説明できる、たった一つのユースケースに集中しそこから展開しなければいけません。 それが第一の教訓です。もう一度言いますが、12年経った今でも私たちはこの事に関しては学び続けています。今でもあの機能を取り除くべきだの、あれを隠すべきだの、これをよりシンプルにすべきだの、そのようなプロダクト会議を数多く行います。 大きくなっても顧客のためにする事を非常に、信じられないほどシンプルに保つ事に本当に集中しなければいけません。 なぜならこういった場合では、より少ない機能を持った方が人々にサービスを試してみる機会を与えることができるからです。反直観的なものですが、機能が多ければ多いほどあなたのプロダクトを理解でき、使用したくなる顧客層を狭める事になるからです。 それが一つめですね。

テクノロジの追い風に乗ること

もう一つ重要なのがこれです。

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起業するにあたって、この事については本当に真剣に考える必要があります。メジャーなテクノロジの追い風に乗ることです。 多くの企業は上に乗って行ける様なテクノロジのマクロトレンドがない所で起業します。 時にはそれよりさらにまずい、抵抗にあうような状況で。 あなたが対抗しているか摩擦点の様に感じる様なテクノロジトレンドがあるかもしれません。 なので真剣に考える必要があります。今、テクノロジの世界で、私が私のイノベーションとともに乗れる波はあるのか、そのテクノロジトレンドの成長は私が共に成長できるものなのか。

私たちの場合は3つか4つのメガトレンドから得をしました。 私たちはモバイルの成長から得しました。コンピューティングの安価化からも得しました。誰もがインターネットを使い始めたことからも得しました。 その3つのトレンドはいずれも従来のエンタープライズアプリケーション・ソフトウェアを販売する現職者達にはディスラプティブなものでした。 私たちは私たちとは無縁のメガトレンドに乗り、一方それらは業界内の従来の競合には終わりなき災害の様なものでした。 現在の企業達が経済的、戦略的、もしくは能力的にうまく対応できず、あなたほど活用できないテクノロジトレンドが何なのかを探してみましょう。

PlanGridはこの良い例ですね。彼らは主にブループリントやその他の施設プロジェクトをiPadやiPhoneで出来るようになる施設会社や建築事務所、建築業者の為のソフトウェアを作っています。 かなりシンプルなアイデアですが、毎年数十億ドルがコンピューターにとどまったソフトウェアや書類ベースのプロセスに費やされているのを狙ったんです。 彼らはモバイルの成長の波に乗ることができ、野外作業者と言うシナリオでのモバイルの成長に乗って一緒に成長することができました。 彼らはタイミングも完璧でした。iPadが出てきて数年、これらのデバイスが物理的環境に姿を現し始める時期です。建築業者達や施設会社がそのテクノロジを使える様にするにはどの様なソフトウェアを作ればいいのか? メジャーな追い風から大きく得することを確認し、出来る限りは不必要な向かい風を作らないことです。

プロダクトの営業をプロダクト自身ができるようにすること

理想の話ですが、あなたのプロダクトの営業はプロダクトそのものがすべきです。

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これもまた企業のために何か作っている時の話ですが、そのプロダクトをどうしたらバイラル・アドプションさせれるかについて本能的に考えていません。 営業員チームを育てて顧客関係を築くことにあまりにも慣れているから、それは確かにいまでも大切ですが、顧客と大きな契約を結ぶには最終的には営業員が必要になるでしょう。ですが、プロダクト自体がエンドユーザーによってなんの摩擦もなく採用され、広められ、使用されるものである事を確認すべきです。

営業はプロダクト採用を押すものではなく大きな契約を結ぶために使うべきで、それは営業が企業にプロダクト採用を押す唯一の手段だった従来的なエンタープライズアプリケーションソフトウェアの世界との大きな違いです。

Boxでは共有機能全てをとても重要に扱っています。 顧客がドキュメントを共有したかった時、私たちはそのファイルを共有するのを本当に、本当にシンプルにしたかったです。そうすれば従来的な企業向けソフトウェアのベンダーがするように企業に売り込みにいかなくてもソフトウェアが勝手に広まってくれますから。そうしたら大きな契約を結ぶのに営業を使います、主にその顧客環境のナビゲーションを助けてもらうんです。

バイラルな企業向けソフトウェアプロダクトの典型的な例がSlackで、サービスの利用そのものが他の人と連絡して広めるといったものです。 彼らは可能な限り採用しやすくバイラルなプロダクトを作る事に気を使い、それを非常にうまく成し遂げています。あのプロダクトの全てがエンドユーザーに自ら広める権限を与え、自らバイラルな流通経路を作れるようにチューニングされています。営業が入ってくるのはその後で、追加サービスや機能などを企業に売ることができます。 プロダクト採用と営業、より大きな取引は自らしたいですからね、この二つの間に明確な分岐点があるべきです。はい。 次。

将来志向な顧客と過ごすこと

最も未来的な顧客とは多くの時間を過ごすべきです。しかし彼らが望むものをそっくりそのまま作ってはいけません。 企業のために作っているときに必ずあるのが… 必ずあるのが、「顧客がどれだけイノベーティブで未来に目を向けているのか」対「どれだけ保守的なのか」を表すこの釣鐘形カーブです。 この釣鐘形カーブの最初の5%から10%の顧客です。 彼らは全てにおいて最先端にいます。

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彼らは行列に並んでAirPodsを購入し、オフィスの机の上にはAmazon Alexaがおいてあります。こういう顧客とは多くの時間を過ごすべきです、彼らは彼らの環境下でのあなたのテクノロジの使い道をあなたよりも早く見つけるからです。 彼らは彼らの従業員たちの間でのトレンドに気付き、あなたが可能だと想像すらできなかった事をあなたのテクノロジから求めます。 そのような顧客から聞いた事から推進してきたイノベーションはとても多く、恐らく最終的に作ったもののかなり高い割合を占めていると思います。

ただ、現在と従来のエンタープライズアプリケーション・ソフトウェア会社の違いですが、以前は彼らに何を作って欲しいか聴き、望まれたものを作りました。そうする事が販売、もしくは売り上げに繋がりましたから。

あなたがしなければいけない事は、彼らに見えている問題を聞く事です。彼らがあなたのプロダクトにして欲しい事はなんなのか。 次に彼らと働くか、もしくは彼らが正確には頼んでいないソリューションを持って出直します。 彼らが望んだ特定の機能ではないかもしれませんが、最終的には彼らがあなたのプロダクトを押そうとした道を辿るものです。

私たちは顧客の言う事を存分に聞き、彼らが正確に望んだものとは違うものを作るのに沢山の時間を費やします。 なぜなら顧客が望むものをそのまま作ってしまえば、本質的には顧客一人一人が望む機能リクエストの合併のようなものになってしまうからです。そうなってしまえばプロダクトの一貫した目的を保つのは不可能になってしまいます。 様々な顧客から様々な方向性に引っ張られそこにロックされてしまいます。

本当に下手なベンダーがする事は、彼らアーリーアダプター達の言う事を全く聞かない事です。 彼らはより保守的な企業に焦点を当てます。彼らが望む機能全てを作らなければ採用してくれない人たちに焦点を当ててしまうのです。企業向けアプリでの失敗はそこから始まります。そうすると、あなた自身のビジョンを、そして最終的にはあなたが作ろうとしているものを見失ってしまうからです。

モジュラーな製品を作ること

私たちには、顧客が望むすべてのものを試して学ぶために、さまざまなグループがあります。 私たちには多くのアドバイザーボードがあり、何百というリクエストのリストを取得していますが、そのリクエストが何であれ、それをただ単に作るわけではありません。 人々が事前には考えもしなかったソリューションを作るために複数のリクエストや複数のアイデアをどうやって点でつなぐ事ができるかについて考えるのに私たちは多大な時間をかけます。

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また、ソフトウェア会社が過ちを犯すもう一つの面が顧客からは本質的に矛盾しているリクエストを多く受けることになると言うことです。金融サービスの方からは「銀行のためにこの機能が欲しい」と言われます。そしてライフサイエンスの方からは「製薬会社のためにこの機能が欲しい」と言われます。それらのリクエストを実際に同調させる事はできません、基本的に異なったユーザーエクスペリエンスや異なったプロダクト機能を必要としますから。

多くの企業が間違っているところはこれら全ての機能を孤立して作ろうとするところです。 5年後に視野を広めますと、この巨大なテクノロジを作ってしまい、この業界向けにこのバーティカルな提供があって、あの業界にはまた別のバーティカルな提供がある事になってしまいます。

Salesforceの様な企業から学べる事は多いです。彼らは「よし。様々な業界や業種、職務用のユーザーエクスペリエンスを作れる様にミックス・アンド・マッチ出来るモジュラーなコンポーネンツを作ろう。プロダクトに全機能を直接取り入れる様な事はしない。顧客には顧客自らがカスタマイズできる様にツールや私たちのチームを提供しよう」と決めました。多くの企業は大量の機能を考えもせずに作ると言う罠に嵌ってしまいます。 それは数年後に視野を広めてみると、様々な業界に混乱して本当に酷いユーザーエクスペリエンスを提供していることになります。

トレードオフに対して、常にユーザーファーストであること

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これは私たちが今でも忠実にしている事で… これは時が経つにつれて、特に取引がどんどん大きくなるにつれて、ますます難しくなるのですが、どんな転機でも企業用の機能やさらに大きな取引を得るための機能の為でもユーザーエクスペリエンスを妥協しない事です。

顧客がユーザーエクスペリエンスのシンプルさに正反対であるか対抗的なものを望む場面に何百回も出くわすでしょう。 セキュリティ機能だったり、コンプライアンス機能だったりするかもしれません。 もしかしたらエンドユーザーの邪魔をしようとしているだけかもしれません。

その様な判断に迫られた時、私たちは常に企業よりもエンドユーザーを重宝するようにしてきました。 それは取引が失敗してしまうことに繋がることもあります。 その顧客にはノーと言うしかないんです。なぜならその機能を作ってしまえば、私たちが長期に及んで目指している楽しみとユーザーエクスペリエンスを提供できなくなってしまうと思いますので。

それはとても心が痛みます。そうしたら何年にも渡って契約を失い続けることになりますから。 過去10年を振り返ってみますと、私たちはいくつ化の顧客にノーと言ったことから数千万ドルものビジネスを失っています。 ですが、その見返りは何年も後により幅広い顧客層に提供できるプロダクトです。 結果的に依存の顧客は私たちのプロダクトを使うことでより大きな成功を得ることができました。

面白いことに、一度は私たちにイエスと言わずに他へビジネスを持って行った企業たちが向こうのプロダクトでは成功せず、最終的にはこちら側へ戻ってきました。 あなたが正しければ、そしてここで重要なのはあなたは正しくなければいけないことですが、もしあなたが正しくて、そのトレードオフがユーザーエクスペリエンスにとって本当に悲惨なものであり、あなたが常にユーザーに焦点を当てると言う目標に忠実であれば、長期的にみれば、長期的の定義は市場によりますが、長期的にはその市場で勝ち残ることになります。ただ、途中で取引が失敗することはあります。 それはあなたにも、あなたのチームにも、投資家たちにもストレスになりますが、あなたのプロダクトの作り方と何にノーと言うのかに関する原則が非常に明白であることはとても重要です。

非対称的な強みを持つこと

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最後に、またテクノロジトレンドの話になりますが、競合に対して非対称的な強みを持つ方法を探すこと。 よくあるのは競合が、大手の既存企業ですが、プロダクトを非常に特定された方法で生産し提供する様に育てられた従業員が数万人いたりして特定のビジネスモデルに縛られていることです。

コストが高すぎるからだとか、戦略的に対応する意味がなかったりだとか、対応するためのタレントが足りていなかったりだとか、何かの理由で彼らが対応できない様なディスラプションと差別化できる点を見つけることができたら、そうすることで最終的にはそう言った大手企業に対してディスラプティブでい続けることができます。 小さなスタートアップとして生き残るには唯一の手段です。

Amazon Web Services。今ではコードをいくらか書いてAWSでデプロイするだけで最も簡単に会社を立ち上げれるのは当然のことだと思われています。 10年前、15年前は大量のサーバーを購入する必要がありました。それらをデータセンターに入れて、自ら棚上げして、自ら繋げて、スタートアップを始めるだけで何週間も何ヶ月もかかり場合によっては何十万ドルもしました。

ですが、それがソフトウェアを作る企業の利点です。 ハードウェアを作ってサーバーやデータセンタースペースを売るベンダーと比べて違いについて考えてください。 Amazon Web Servicesがどれだけディスラプティブだったか考えてみてください。どこからともなく現れ、Amazonに行けばいいだけなのでもはやサーバーを購入する必要もなく、完全に違うモデルです。

Amazonは従来のサーバーメーカーやソフトウェアプロバイダの核となるビジネスモデルにとってあまりにもディスラプティブな事をしたのでそれらの企業は今になっても反応すらしていません。 12年経った今でも彼らはクラウド越しでこれらの機能を提供出来ず、反応できずにいます。ビジネスモデル視点からして余りにもディスラプティブなものだったのです。 プロダクトの視点からしてあなたのプロダクトを顧客に届ける方法対既存ソリューションが顧客に届けられている方法で何かディスラプティブになれるかも知れないものがあるかどうか見極めてみてください。

それを見せるまで、人は何が欲しいのかを知らない

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これ全部を纏めるのに Steve Jobs の言葉を使いたいと思います。 プロダクトプレゼンテーションでは必ず Steve Jobs の言葉がなければ行けませんのでそのノルマをクリアしたいと思いまして。

この言葉は真実で、企業では特にそうです。 消費者向けでも確かにそうなんですが、これは企業向けソフトウェアではさらに的を獲ています。なぜなら企業は彼らが抱える問題全てに対して解決策を求めているからです。 大抵の場合は彼らが不可能だと思っていたような事を持ってどこからともなく現れるまでは彼ら自身正しいソリューションが何なのかわかっていません。

私たちの場合、仮に12年前に異なる企業100社からITのプロを100人集めて「企業がドキュメントとファイルを管理し情報をセキュリティーで護る最善の方法を描け」と言ったとしてもそれを100回行っても私たちのソリューションがデザインされることはなかったでしょう。「このようなインターフェイス・ボタンが必要で、意味を持つにはこれら全ての機能もなければいけない」と、誰もがテクノロジは本当に複雑でないといけないという考えに慣れていましたから。 私たちはシンプルすぎて誰も思い浮かばなかったであろうプロダクトを持って現れました。

「私たちに何をして欲しいですか」と顧客に聞くだけで本当に素晴らしいソリューションにたどり着くことはありません。将来、何が可能になるのかについて真剣に考えて、顧客が予測していなさそうなもの、それを作らなければいけません。 そしてそれを顧客側に内側から採用されるようにします。本当に気をつけたいのが顧客に望まれているものをそのまま作っていない事を確認すること。そんなやり方で本当に素晴らしいテクノロジができたことはありませんから。

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最後に… B2Bで立ち上げるというテーマで私が最もお気に入りの本4冊です。 あくまで私の個人的な意見ですが、B2Bのソフトウェア会社を立ち上げるのなら読む事を強くお勧めしたい本4冊です。 成長、ディスラプション、新しい市場を作る事、そして最終的には業界内でスケールする会社の立ち上げ方についてのマインドセットや考え方についての基準の枠を与えてくれます。 12年前にこの4冊の本を読んでいたのならこれらの教訓をより早く学べただろうと思います。 強くお勧めします。

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それでは、幸運を祈ります。 私の競争相手にはならないでください。 競合は十分足りています。私を倒すために私のアドバイスを使ってはいけません。 マーケットで会う日を楽しみにしています。 頑張ってください。

これからどうなるかはわかりませんが… 時間はあります。 5分ぐらいならありますが、皆さんのスケジュールについてはわかりません。はい。 よし。

質問があれば答えますし帰りたければ帰って結構です。 お好きなように。 はい。 はい?

Q&A

学生へのアドバイスは?

Audience
あなたは学生の頃はスタートアップなどで働く機会がなかったかも知れませんが、同じような立場にいる人のために何かアドバイスはありますか? 意見を聞かせてください。

Aaron Levi
難しいですね、私はそのような経験をしたことがありませんから… 質問は「企業内で働かずにその企業が抱える問題がなんなのかをどうやって突き止めるのか」でした。

一つの答えは毎日オフィスへ行っていろんな問題に出くわしている人達とたくさん時間を過ごす事。私ならとりあえず100人ぐらいインタビューします。 「普段の日常について話してください。あなたが効率性、効力感に欠けると思うのはどんな分野ですか。反復的で繰り返しの多い作業をしている時ですか」と。テクノロジの問題について聞いてはいけません。 彼らがどこで時間を使い、彼らが反復的に繰り返すプロセスがなんなのか聞くだけです。

そうしたらその問題をソフトウェアがどう攻めれるか想像し始めることができます。 ミーティングのスケジュール問題をソフトウェアならどう攻めれるか。 大きな市場ではありませんが一つの業界です。 給与計算の問題をソフトウェアならどう攻略できるか。 経費精算レポートの問題をソフトウェアならどう攻めれるか。 これらはみんな大手企業で働く事に伴う骨折り仕事です。

大手企業で働いたことがないのなら、少なくともその大手企業で働く人たちからできる限りの情報を集めなくてはなりません。 そうしているとパターンが見えてきます、「お、これはかなり大きな問題だ」ってね。

私たちの場合は、15年前に大手企業で働いていた人たちやクライアントをインタビューして「あなたの日常について話してください」と聞いたとします。その人たちがドキュメントで作業していてそのドキュメントを共有しようとして、様々な端末からそのドキュメントにアクセスしようとしている事に費やされる無駄な時間が多い事にいずれ気づいただろうと思います。 それをさらに剥いで正しい質問を全て問えば、真の問題を発見することができたでしょう。

私たちは大学の日常生活の中でそれを発見しましたが、職場で人々が何に時間を無駄にしているのか理解して「ちょっと待てよ、おかしいじゃないか。今日のテクノロジを使えばソリューションとして購入しているものよりずっと良い解決策があるはずだ」と言って発見することもできたと思います。 そのギャップが見つかり次第、そこに会社を立ち上げることができます。

Audience
ありがとうございます。

Aaron Levie
はい

今一番大きな波は?

Audience
テックの波に乗ると言っていましたが。 現在、一番でかいテックの波はなんだと思いますか?

Aaron Levie
とりあえず、ビットコインではないですね。 ビットコイン・スタートアップには申し訳ありませんが。 ビットコインはトップ5以内かもしれませんが、ビットコインファンの皆様を怒らせたくはありません。お怒りのメールが来そうです。いまの、ビットコインに対する私の攻撃部分を編集でカットしてもらえます? トレンドは結構あると思います。

ランキング付けすることはできませんが、言うまでもなくAR/VRは大きいと思います。 AR/VRは、今はまだユビキタスなデバイスがないのでちょっと困った立場にあるように思います。 問題はAR/VRが12年前のモバイルなのか、それともまだ5年先なのか。 最も避けたいのが2001年のモバイル・スタートアップになること、そう言ったスタートアップは潰れましたから。

こう言うのを予測するのは実はとても難しいです。 実際に何かが起こるかどうか、それを予測する事に関してのアドバイスはありませんが、モバイル企業は結構あって面白い事にもSam Altmanが2004年ごろ、iPhone以前の世界でモバイル企業を立ち上げる事がどれだけ難しかったか、その事について良い話があるはずです。 iPhone以前にモバイル業界にいることは本当に最悪でした。 今のAR/VRで何か作ろうって気なら同じような状況です。

これが多分「未来」だとはわかるんですが、その未来が面白くなるのがいつになるのかはまだ分かりません。 一つだけ警告するならそれですね。 未来ではありますが、それがいつ来るのかは分かりません。

AIは巨大なテック・トレンドです。 ですが、既存する大手企業よりスタートアップに有利だというわけではありません。それよりもっと普及するものになると思います。既存の大手を相手にどう使ったら有利になるかは分かりません。実は現存する大手企業たちの方が実はこのテクノロジでは今の所やや上手だからです。

そうですね。 コンピューティングのコストが下がり続けるのは期待できるでしょう。 12年前にもそれがトレンドだと思いました。ですが、今もなお健在で、実は以前よりも力を増しています。でも、素晴らしいものもいくつかあると思います。

例ですが、これは私自身の定義を、トレンドを二つ複合させると言うものに変更する事になりますが、今最も強力なトレンドの一つがAIと安価なコンピューティングの組み合わせです。

つい最近、Googleが動画や画像内の対象を認識する画像認識と動画認識サービスを開始しました。 APIを通じてGoogleに画像や動画を送るだけでその画像や動画の中に何が写っているのかを教えてくれます。 それを作るのに5年前だったらエンジニアが100人は必要だったでしょう。 今ではGoogleからシンプルなAPIとして利用できます。

そこで、Google、Amazon、Microsoftなどが私たちに代わってこのような新しいサービスを多く生み出し始めるとどうなるのか。 その新しいソリューションを利用して新たな問題を解決するためにはどのようなソフトウェアを作る必要があるのか。 例えばですがGoogleのコンピュータビジョンAPIにプラグインする防犯カメラを作る会社を始めることができます。 これらのAPIを利用した新たな画像やデータの検索方法を作れるかもしれません。

このテクノロジの可能性を知る以前は、問題だと気付きすらしなかった新たな問題が数多くあります。 今あるAPI全てのそれぞれの役割を完全に理解すれば世界を違う風に見始めることが出来ます。 最後の質問をどうぞ。 はい

他の企業のソフトウェアを使うこと

Audience
あなたのプラットフォーム上で他社の企業向けソフトウェアを使うスタートアップのことをどう思いますか。

Aaron Levie
何かいい例がありますか。

Audience
サーバーは簡単に利用可能だと思いますけど、例えばお金の取引、そのために何か特定のものを作るのか、それとも…

Aaron Levie
質問の本質は「自分たちで作る VS 他社のものを使う、その選択肢をどう決めるのか」だと思います。私たちは基本的に自分たちのコアコンピタンスに当てはまらないものは、確実に外部からの最高基準のソリューションを使うべきだと基本的に信じています。 自分たちがお金の支払いにおいて最高の企業にはなれないと気付いた時点で、その問題の解決にはStripeやその他のものを使うべきです。 自ら創り上げるべきではありません。

企業として絶対に避けたいのが、市場があなたより良く解決できる事に時間を費やすことで、自らのコアとなる能力が何なのかとても明確にするべきです。スタートアップが間違った方向に進むケースの多くがこの様な理由だと思います。

彼らにできる事が何なのか、マーケットが開発・コモディティ化しない物が何なのかが十分に明確ではないのです。 面白いのが、これは私たちが経験から学んだ事ですが、その定義が固定化されたものではないという事です。 市場は常に変化しています。 市場の現実に対応しなければいけないのであなたのコアコンピタンスも数年毎に変わっているかも知れません。

10、12年前に遡りますと、あの私たち4人の写真をとった頃ですが、私たちはデータセンターに入ったり、自らのストレージインフラストラクチャーから作成していました。 自らのストレージインフラストラクチャーから作っていた事に私たちは不満を覚えていました。私たちよりも上手くできる人がいるのを知っていましたから。ですが他にソリューションがありませんでした。

現在に早送りしますと、今ではそういったもののためにAmazonを使うことに対して抵抗はありません。 それが私たちにとってバリューを差別化するものだという幻想は全くありません。 市場の皆が追いつき貴方が以前得意だった何かをコモディティ化したのなら貴方は可能な限り早く市場のその箇所から離れるべきです。

はい。もう時間です。 みなさん、幸運を祈ります。頑張ってください!

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。なお原文は講義の書き起こしであり、整形された文章ではありません。今回、文章としての読みやすさを高めるために、適宜改行し、見出しも訳者がつけました。
原文: How to Build a Product II - Aaron Levie (2017)

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