ネットワーク効果とクリティカルマス:二つの強力なメンタルモデル (a16z)

この記事では、ネットワーク効果とクリティカルマスについて扱いたいと思います。同時に、これらの概念をビジネスにおける重要なメンタルモデルとして適応することについても触れます。まずは、かつて私に、ネットワーク効果について考えさせることとなったビジネス上の決定について、短くお話しさせてください。

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インターネットバブルは2002年にはじけ、多くの人々が次の大きなビジネスチャンスを探し求めていました。その夏のある日、友人から Friendster のアイデアについて話を聞きました。そして私はそこに可能性を見出したのです。それは「オンラインコンピュータシステムでユーザを接続するためのシステム、方法、および装置」(特許番号7,069,308による)というものでした。

Friendster は、後にソーシャルネットワークとして知られることになる技術を開拓していたのです。

2002年にこの投資の可能性について査定していた時には、私は Charlie Munger が提唱する、決定を下す際の「メンタルモデルの格子 (lattice)」アプローチの信奉者となっていました。このメンタルモデルのもっとも優れた説明の一つとして、ノーベル賞を受賞したこともある社会科学者の Herbert Simon が以下のように整理しています。彼によると、より良い意思決定者は可能な行動のレパートリーが十分にあり、行動する前に考えるべきことのチェックリストを持ち、「意思決定の必要に迫られた際に、これらに注意を向け、思い起こすメカニズム」を有しています。

ですから、メンタルモデルとは受動的な枠組みではなく、意思決定において積極的に使用するものと言えます。それぞれのケースで、どのメンタルモデルを適用するかだけでなく、どのモデルが最も重要かを決める必要があります。各モデルは、種類の異なるフィルターまたはツールのようなものです。メンタルモデルは並行して適用されるのであって、連続的および段階的な方法ではありません。このプロセスはその本質においてアナログです。なぜなら、ほとんどの場合、仮定は概略的で、そこに関わるシステムは複雑な適応システムであり、それぞれのモデルは自己強化型になり得るからです。このプロセスはまた、経験に基づくものでもあります。意思決定者は通常、過去に犯した過ちから獲得した判断材料を多く適用します。

メンタルモデルとは受動的な枠組みではなく、意思決定において積極的に使用するものです。

ビジネスにおける最も重要なメンタルモデルの一つは、ネットワーク効果の概念です。これは、ブランド、規制、供給サイドの規模の経済性、知的財産(例えば特許)など、競合他社に対する壕となり得る他の要因が脅威にさらされている今日、特に当てはまるでしょう。ソフトウェアが「世界を侵食」し続けるにつれ、壕を作る要因としてネットワーク効果がさらに重要になってきます。なぜならこれが、ソフトウェア会社が競合他社に対して参入障壁を築くための主要な方法だからです。そのため、ソフトウェアベースのスタートアップに投資するベンチャーキャピタル企業は、彼らが求めるビジネスの属性にネットワーク効果を含めています。

ソフトウェアビジネスの規模に匹敵するものはなく、ネットワーク効果以上に効果的にそのビジネスを守る壕 (moat) を生み出すものもありません。

もっとも、ネットワーク効果が常に直接的な財務的価値や長期的な価値につながるとは限りません。例えば、イーサネットのようなスタンダードは、供給サイドの規模の経済性に対して、期待以上に長く持続するネットワーク効果と利益を生み出します。しかし、イーサネットは同時に、スタンダード自体からは誰も直接的には金銭的利益を得られないことを示しています(所有者がいないため)。また DEC、Palm、BlackBerry のように、ネットワーク効果が当初は強力だったとしても、それらは脆く、比較的早期に消滅する可能性があります。実際、これらの企業はそれを知ることになりました。

ソフトウェアビジネスの規模に匹敵するものはなく、ネットワーク効果以上に効果的にそのビジネスを守る壕を生み出すものもありません。

メンタルモデルとしてのネットワーク効果

フォーマットやシステムの「価値」がユーザー数によって決められる場合に、ネットワーク効果は存在します。その効果はポジティブな場合(例えば、電話のネットワーク)と、ネガティブな場合(例えば渋滞)があります。またそれは直接的な場合(電話のように、使用量の増加が直接ユーザーにとっての価値の上昇に繋がる)と、間接的な場合(携帯電話のように、使用量の増加が、関連商品の生産を増加させる)があります。ネットワーク効果は、価値のある市場を保護することもあれば、財務的価値において市場のほとんどを保護しないこともあります。

ネットワーク効果は、その設定がそれほど明確ではない状況でも存在します。ESPN を例に考えてみましょう。ESPN は需要サイドの規模の経済性(ネットワーク効果)を持っています。それは、ESPN チャンネルを見る人が多ければ多いほど、各ユーザーにとってのチャンネルの価値は上昇するためで、スポーツファンにとっては、ESPN が提供する、ある特定の画像が議論の基礎になります。こうしたネットワーク効果もあって、ESPN は、需要サイドの効果を得るのに苦労している Fox など他のスポーツチャンネルに比べて、競争力を保っているのです。誰かに「Z の試合で X が Y するのを見た?」と聞かれても、Fox のバージョンの SportsCenter を見ていたら、その人が話題にしている特定の動画をあなたは見たこともないという状況もあり得ます。

技術分野では、市場が独自のフォーマットやシステムを採用することで、供給サイドの規模の経済性に似たネットワーク効果や競争優位を生み出せます。しかし、ネットワーク効果はもっと強力な可能性を秘めています。供給サイドの規模の経済性とは異なり、需要サイドの規模の経済性の利益は非線形的に増加する可能性があり、特にソフトウェアビジネスでそれは顕著に見られます。つまり、Google によって実現される利益は、供給サイドの規模の経済性に基づいて行動する、大規模な鉄鋼やセメントの生産者によって実現される利益よりもはるかに大きいのです。Google には、少なくとも2つの有益な需要サイドの規模の経済性があります。1つは検索で、もう1つはターゲティング広告です。これらは相互に補完し合うもので、つまり Google には強力な壕があるのです。Munger はこう述べています。「こんなに広い壕は、おそらく見たことがありません。」「Google に取って代わる方法など、私には見当もつきません。」Om Malik もまた、この勝者総取りの力学について書いています。

この場合の Google のようなプラットフォームの所有者にとって、ネットワーク効果は持続可能な競争優位をもたらす強力な壕の基礎を形成します。ある企業は、ある種の壕がなくても収益を上げられるかもしれませんが、それなしで長期にわたって持続的に利益を上げる可能性は非常に低いでしょう。

ネットワーク効果には強いものも弱いものもあります。例えば、広告サービス事業における Google の壕は強力です。一方、経済ニュース市場における Yahoo(Yahoo ファイナンス)の壕は非常に弱いものです。ネットワーク効果のある多面的なメーカーの影響を受ける市場には、大規模で儲かるもの(例えば、ESPN や Bloomberg のターミナル・ビジネス)もあれば、そうでないもの(Yahoo スポーツ)もあります。

企業によっては、需要サイドと供給サイドの両方に規模の経済性がある場合もあります。Amazon はその両方を持っていて、互いに補強し合っています。例えば、Amazon にコメントを提供する人が多ければ多いほど、それは他のユーザーにとって価値が高まります。それは需要サイドの経済性が理由です(アマゾンのレビューの見方は誰もが知っています)。また、アマゾンは倉庫やサプライチェーンにおいても大きな優位性を持ち、それを顧客に低コストで提供しています。

実際、ほとんどの企業は供給サイドと需要サイドの両方に規模の経済性を持っています。しかし、これらは弱いものから強いものにまで至ります。起業家にとっての聖杯は、市場を「ひっくり返す」ような需要サイドの規模の経済性であり、一つの企業(勝者総取り)によって市場全体がほぼ占有されます。規模の経済性が高く、消費者の多様性に対する需要が低い場合、市場は下落する可能性が高くなります。ある時点で、オンラインオークションの需要が eBay に大きく傾いたことがあります。それから時間の経過とともに、その現象は弱まってきています。

しかし現実には、需要サイドの経済性はほとんどの場合、市場を「ひっくり返し」、単一の勝者を生み出すことはありません。例えば、レンタカー業界では需要サイドの経済力が弱く、市場に浸透していなかったため、多くのプロバイダーが存在します。

ネットワーク効果を過度に適応するとどうなるか

ネットワーク効果のメンタルモデルを2002年の Friendster の決断に当てはめてみたとき、私はそこに大きな利益の可能性を見出しました。私はワイヤレス業界での経験から、Friendster を使う人が増えれば増えるほど、それだけ価値が高くなると考えました。

しかし、私はインターネットバブルを経験したばかりで、人々がネットワーク効果の概念をあまりにも過度に、そして十分な深さを持たずに、適応してしまった姿を目にしてきました。彼らは、Metcalfe の法則を最初に定式化した George Gilder などの唱える経済的破滅という「笛」に踊らされたのです。Briscoe、Odlyzko、Tilly の記事では、この愚かさについて書かれています。

「Metcalfe の法則は、ネットワークの価値が参加者数の2乗に比例して2乗に増加し、コストはせいぜい直線的に増加することを保証することによって、成長への熱狂と収益性無視に信憑性を与えました。今日ではありふれたことのように思えるかもしれませんが、インターネットバブルのときは注目を集めました。」

この記事では引き続き、もっと現実的にこう提案しています。

「サイズ n のネットワークの値は n log (n) に比例して大きくなります。これらの法則は成長の法則であり、ネットワークの価値をそのサイズだけでは予測出来ないことに注意する必要があります。しかし、ある特定の規模での評価額がすでに分かっていれば、将来、それがどのような規模になっても評価額の見積もりは可能で、他の要因はすべて同じとなります... 根本的な欠陥は... Metcalfe の法則は、すべての関係またはすべてのグループに対し、等しい値を割り当てるという点です。」

重要なのは、ネットワーク効果の強さは、ネットワークへ参加者の数のみでは決まらないという点です。参加者間の親近感と、参加者間の取引の価値が重要なのです。上に引用した論文の著者らが考察しているように、増加する値は「直線的な成長と指数関数的な成長の間」にあり、それを正確にどこに適合するかはケースごとに異なります。Serge Block [Thoughts Illustratedより] のこのイラストは、それを面白おかしく示しています。

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(余談ですが、Andrew Odlyzko のアイデアは過去、インターネットの成長率に関する主張を否定する重要な論文を書いたときに、特に有用だと感じました。例えば、2000年の11月に Odlyzko の論文を読んでいたとき、私は気付いたのです「Cisco のインターネット成長率は、なんてくだらないんだ」。)

ネットワーク効果の強さは、ネットワークへの参加者の数のみでは決まりません

結局、当時他にしていた仕事との兼ね合い上、私は Friednster に投資しませんでした。しかし、同社がネットワーク効果の恩恵を受けるだろうという私の直感は正しかったのです。2003年6月の時点で、同社のサービスの登録者数は835000人でしたが、それから4ヶ月後には200万人以上になりました。

しかしその成長は、そのうち失速することになります。そして Friendster は、まず MySpace、それから最終的に Facebook によって買収されました。なぜでしょうか?

関連メンタルモデルとしてのクリティカルマス

Friendster の問題点については、数多くの批判的検証がなされています。唯一共通しているのは、それらが皆、複雑な適応システムの結果について推測している点です。つまり、「Friendster に何が起こったのか」に対する意見は誰もが持っていますが、そのすべてが異なっています。Wired 誌は、スイス連邦工科大学の David Garcia 教授の言葉を引用して、ある意見の結論をまとめています。

「彼らが発見したのは、2009年までに Friendster にはまだ何千万人ものユーザーがいましたが、ネットワークを結ぶ絆はそれほど強くなかったということです。多くのユーザーは他の多くのメンバーとつながっておらず、友達になった人たちはほんの一握りの個人的なつながりを持っていたに過ぎません。その結果、ネットワークとのつながりが希薄になってしまい、新しいユーザーインターフェースを利用するだけの価値を、彼らは見出すことが出来なかったのです。『最初に、外側のコアのユーザーが離れ始め、内側のコアの利益を低下させ、ネットワークを通してコアユーザーに対し伝搬し、その結果、崩壊してしまったのです』 と Garcia は我々に語りました。」

ここで Garcia はネットワーク効果に関する重要な点を指摘しています。それはもう一つのメンタルモデルであるクリティカルマスについてです。

「クリティカルマス」という用語は1941年頃に使われるようになりました。しかし当初の定義は、核連鎖反応を一定の速度で維持するのに必要な核分裂性物質の最小量、という非常に限られた内容でした。物理学の分野でこの用語が使用されたのは初めてではありませんが、臨界量のウランから連鎖反応を起こすことを提唱したのは、物理学者の Leo Szilard が初めてだと言われています。これが、現在この概念を適用する際の重要なポイントとなります。

やがて、他の分野でも「クリティカルマス」という言葉がメンタルモデルとして使われるようになりました。これを社会科学に応用した最初の人物の一人は、メンタルモデルを構築したのと同じ人物、Herbert Simon でした。彼の評論「バンドワゴンと負け犬効果と選挙予測の可能性」は1954年に発表され、影響力を持ちました(その後 Simon は、「経済組織内部での意思決定プロセスにおける先駆的な研究」でノーベル賞を受賞しました)。

クリティカルマスの定義は、他の分野にも存在します。ビジネスにおいてクリティカルマスは「効率的かつ競争的に市場に参入するために企業が到達しなければならない規模。これは、成長と効率性を維持するために企業が達成しなければならない規模でもある」となります。テクノロジービジネスでは、クリティカルマスは特定のビジネスのための壕を築くほど強力な、ネットワーク効果の作成が必要なユーザーのレベルを意味します。ネットワーク効果が非常に強い市場では、2番手が存在しない場合もあります。

プラットフォームビジネスでは、十分な数のユーザーがシステムのイノベーションを採用し、そのイノベーションの採用が自己強化的になる場合、クリティカルマスが存在するようになります。この点を示す典型的な例として、1970年代の Beta と VHS のビデオカセットフォーマットの競争が挙げられます。Beta は品質の点で優れたフォーマットであると考えられていましたが、VHS が最初にクリティカルマスに達したのです。Sangin Park は研究論文でこう述べています。

「1981~1988年における VHS フォーマットの事実上の標準化は、ネットワーク外部性 [ネットワーク効果] によって引き起こされたと信じられています。当時、ビデオデッキを使う最も重要な理由は、映画などの録画済みビデオテープを見ることでした。したがって、VHS ビデオデッキのユーザーの増加は、利用可能な様々な映画作品を増加させ、それ故、VHS ビデオデッキの需要を増加させることが出来ました。すなわち、家庭用ビデオデッキ市場において、間接的なネットワーク外部性が意味を持つようになったと言えます。」

多面的な市場を創造する際にクリティカルマスに到達することは、ときに、「鶏が先か、卵が先かの問題」を解決することと呼ばれます。これは簡単に言えば、一方の側がプラットフォームに興味を持つようになるにはどうすればよいか(またはその逆)、ということになります。ファクスを受信する相手がまだいない時に、どうやって最初のファクス機を販売することができたのでしょうか?(当然ながら、その販売員は少なくとも2台の機械を売らなければなりませんでした。)

しかし、ゲーム機が数多く世に出る前から Sony のゲーム機向けにゲームを制作していたゲーム開発者のように、異なる補完的要素がある場合、そもそも片方の側(開発者やゲーム機購入者)を参加させるにはどうすればよいのでしょうか。Sony の場合は、開発者を惹きつけるユーザー基盤を構築するために、彼らはゲーム機を赤字で売りました。すべてのネットワーク効果と同様に、これは最終的にフライホイール効果をもたらし、十分な開発者が十分なユーザー(プレイヤー)を引きつけるのに十分なゲームを作り、それがさらに多くの開発者を惹きつけ、その結果、より多くのプレーヤーを視野に入れたより多くのゲームと、開発者のためのより強いユーザーベースがもたらされました。

一方の側が存在する以前に、もう一方の側がプラットフォームに興味を持つようにするにはどうすればよいでしょうか。

もし市場が「ひっくり返った」場合はどうなるのでしょうか...。これらのメリットを享受するのは競合他社なのでしょうか。これは Facebook に関連して MySpace に起きたことです。MySpace が収益化し始めたのは、ソーシャルネットワーク市場が「ひっくり返る」より前のことでした。Facebook は、壕が安全になるまで収益化を延期しました。Zuckerberg は市場が下落するのを辛抱強く待っていましたが、Rupert Murdoch はそうではありませんでした。そこで MySpace がその代価を支払い、Facebook が報酬を得たのです。

いくつかのメンタルモデルは他のものよりも重要視されるべきです

メンタルモデルアプローチは思ったより単純です。使用すべき重要なメンタルモデルは100種類ほどです(それぞれ異なる分野を背景に持ちます)。「幸運なことに」と Munger は言います。「それはあまり難しいものではありません。なぜなら重要な80から90種類のモデルが、90%ほどの重要な部分を担っているからです。その中でも、本当に重要なものは、ほんの一握りに過ぎません。それさえ知っておけば、あなたはこの世的に賢い人間となれます。」

私は、ネットワーク効果とクリティカルマスが、重要な部分を担う2つのメンタルモデルだと考えます。

より良い意思決定をするために、すべてのメンタルモデルを知っている必要はありませんし、深く知っている必要もありません。しかし少なくとも基本的なレベルで、それがどのように機能するかを理解する必要があります。奥行きと幅のバランスを取ることの重要性について、Charlie Munger は最近、「困ったことに、[極端な専門化] がない限り、いたるところでひどい間違いを犯すことになるので、統合は専門化後、世界への二度目の攻撃となるべきです。それは防御的であり、世界に不意打ちされないのに役立ちます」と述べています。

ビジネスにおいては専門化が、比較的優位性を獲得するのに役立ちます。しかし、賢くならなければ、あなたは背後からやられてしまうでしょう。

物理学から他の学術分野へのメンタルモデルの応用は、ビジネスや人生の問題と同様に、一般的な思考の向上を目的とします。しかし、物理学の公式を人間に適用して、同じ予測結果が得られると考えてはなりません。Richard Feynman が言うように、電子には人間のような感情はありません。複雑なシステムの集まりである実世界は、物理システムのようにモデル化することは出来ません。そのコツは、現実世界がギリシャ文字からなる公式でモデル化出来ると仮定せずに、メンタルモデルに物理学の基本的な精神を適用することです。

最終的な目標は、ネットワーク効果やクリティカルマスのようなメンタルモデルを使って、正しい意思決定の確率を上げることです。確実に間違ってしまうよりは、おおよそでも正解している方が、はるかにいいのですから。

ネットワーク効果とクリティカルマスについての12 × 2の引用

ネットワーク効果

1.「あるユーザーにとっての製品価値が他のユーザーの数に依存する場合、経済学者はこの製品がネットワーク外部性、すなわちネットワーク効果を示すと言います。」Carl Shapiro と Hal Varian

2. 「ある商品を利用する人の数が増えたために、その商品の価値が上昇するとき、ネットワーク効果は存在します。すべての条件が同じであれば、小規模なネットワークよりも大規模なネットワークに接続する方がよいでしょう。新規顧客を追加すると、全員がニーズを満たすものを見つける可能性が高くなるため、一般的に、すべての参加者にとってネットワークの価値が高まります。つまり、より早く規模を大きくすることは、より多くの価値を生み出すだけでなく、競合するネットワークが決して支配的にならないことを保証するためにも重要なのです。」Michael Mauboussin

3. 「ネットワーク効果は扱いにくく、説明するのも難しいですが、基本的には次の問いに集約されます。市場は顧客『n+1000』に対して、市場参加者を1000人増やすことによって直接顧客『n』に対してよりも、良い経験を提供出来るでしょうか。この問いは、ネットワークの需要サイドまたは供給サイドのいずれにも提示出来ます。このようなものがあるとすれば、それは魔法です。なぜならそれは、弱まることなく、時間とともに強くなるからです。」Bill Gurley

4.「企業は、『ネットワーク効果』を通じた参入へのバリアを作り(作ることが出来)、そこでは他の人々がサービスを利用するにつれて、そのサービスの利用価値が増大します。これは、独自のデータ資産など、様々な手段で発生する可能性があります。売り手と買い手の強固なセットを持つ市場力学、オープンに情報を共有したり交換したりするコミュニティを発展させることなどです。製品のプロトタイプを開発するための初期コストが劇的に削減され、その開発に利用する成熟した拡張性のあるオープンソースツールとサービスがあり、クラウドインフラストラクチャーがオンデマンドで、可変コストで利用可能な時代では、サービスの技術基盤であるコードや IP に防御性が見出せなくなるかもしれません。しかし、新しい参加者が増えるごとに、より価値が高く、より興味深いサービスが成長することで、防御性が生まれるかもしれないのです。」Union Square Ventures

5.「ブートストラッピング・ネットワークの一般的な戦略は、私が 『ツールのために参加し、ネットワークのために留まる』 と呼ぶものです。最初はシングルプレーヤーツールでユーザーを惹きつけ、やがてネットワークに参加させるのが狙いです。このツールは、初期クリティカルマスを取得するのに役立ちます。ネットワークは、ユーザーにとっての長期的な価値と、企業にとっての防御性を生み出します。」Chris Dixon

6. 「ネットワーク効果は強力なものになり得ますが、ネットワークがまだ小さい時点で、その商品が最初のユーザーにとって価値あるものとならない限りは、ネットワーク効果を得ることは出来ません。逆説的ですが、ネットワーク効果ビジネスは、特に小さな市場から始めなければなりません。Facebook はハーバードの学生だけでスタートしました。Mark Zuckerberg の最初の製品は、何も世界中の人々を惹きつけるためのものではなく、彼のクラスメートを登録させるだけのものでした。これが成功しているネットワークビジネスが MBA タイプによっては始まらない理由です。初期の市場は非常に小さいので、ビジネスの機会にさえ見えないことが多いのです。」Peter Thiel

7. 「顧客や消費者に結びついたグルーブイン効果と私が呼ぶものがあります。要するに、製品を使えば使うほど、その製品に慣れれば慣れるほど、それは私にとって便利になるというものです。私は、Microsoft Word を使っています。もっと良いプログラムがあるかもしれませんが、私は数年かけて習得した Word のコツをすべて知っているので、別の製品を使い始めるために Word の使用を諦めようとは思いません。」Brian Arthur

8. 「(フライホイールを創り出すための)答えは、市場の大きさとバリュープロポジションの強さという二つの重要な変数にあります。すべての成長は指数関数的曲線をたどり、それから飽和状態になって平坦になります。市場機会の上限が2億ドルだとすると、たとえフライホイールを手に入れたとしても、20から60、あるいは70となり、利用可能なスペースが飽和状態になってしまうでしょう。市場が大きければ大きいほど、より多くのランウェイを持つことになります。つまり、曲線のひざに当たると、指数関数的に成長し、長期にわたってそれを継続することが出来ます。3~4年かけてマテリアルサイズのビジネスを2倍にすることは、非常に大きく重要な会社への成長につながります。これはフライホイールのアイデアの重要な要素です。」Roelof Botha

9.「マーケットプレイス事業では、セルスルー率は『クローズレート』、『転換率』、『成功率』でも算出できます。それが何と呼ばれているかに関わらず、セルスルー率はマーケットプレイス事業において最も重要な指標の一つです。私たちは投資家として、サプライヤーが市場にリストを掲載するために費やした努力から良いリターンを得られるように、比較的高いレートを望んでいます。また、特に市場開発の初期段階(ネットワーク効果の発達を示すことが多い)において、この比率が時間の経過とともに改善されていくことを期待しています。」Andreessen Horowitz、16Metrics

10. 「ある歌が長期にわたって成功を収めるどうかは、それを早い時期に聴きだした一握りの個人の決定に非常に敏感に依存しています。彼らの決断は、その後増幅され、最終的に累積優位のプロセスによって固定されます。この重要な役割を果たす個人はランダムに選択され、その時々で異なる決定を下す可能性があるため、市場とはその本質に、この予測不可能性を内在させています。人々や歌について、より多くの情報を蓄積することによっても、あるいは、より洗練された予測アルゴリズムを開発することによっても、この予測不可能性を取り除くことは出来ません。どんなに注意深くサイコロを振っても、数字の6を何度も連続して出すことは出来ないのと同じです。」Duncan Watts

11.「究極的には、私たちはすべて社会的な存在であり、互いに依存しなければ、人生は耐えがたいだけでなく、無意味なものになるでしょう。しかし、私たちの相互依存は予期せぬ結果をもたらします。その1つは、人々が独立して意思決定をしない場合(たとえ彼らがそれを好きなのは、部分的には他の人がそれを気に入っているからという理由があっても)、ヒットを予測することは困難であるだけでなく、実際には不可能だということです。個人の好みをどれだけ知っていてもです。なぜなら、人が他人の好きなものを好きになる傾向がある場合、人気の違いは、いわゆる『累積的な優位性』または『金持ちはもっと金持ちになる』という効果の影響を受けやすいからです。つまり、あるオブジェクトが、ある時点において、別のオブジェクトよりもわずかに人気がある場合、そのオブジェクトはさらに人気が高くなる傾向があります。その結果、たとえ小さなランダムな変動であっても、それが爆発して、まったく区別のつかない競争相手の間に巨大な長期的な差を生み出す可能性があります。この現象は、ある意味、カオス理論の有名な『バタフライ効果』に似ています。」Duncan Watts

12.「ネットワーク効果は、より強いフォームとより弱いフォームのスペクトラムに沿って分類することが出来ます。」Michael Mauboussin

クリティカルマス

1. 「物理学から派生したクリティカルマスという概念は、非常にパワフルなモデルです。」「物理学におけるブレークポイントの概念とクリティカルマスの概念によって想起されるように、より大きな組み合わせが、しばしば非線形的に、成功を推し進めるように、成功要因を加えることです。多くの場合、その結果は線形ではありません。少しのマスを獲得するだけで、素晴らしい結果が得られます。もちろん、私はこの生涯を通して素晴らしい結果を追い求めてきましたので、その発生を説明するこのモデルにとても興味があります。多くの要因によって、非常に素晴らしいパフォーマンスを発揮できるのです。」Charlie Munger

2. 「私たちは、自動的に競争優位性を保持しているのではありません。General Re や Cort、Precision Steel を中心に保険のボリュームは増えてきていますが、私たちは自分の知性で未来の優位性を見つけなければなりません。Wesco には十分なクリティカルマスと勢いがないので、投資家は経営の方に賭けているのです。」Charlie Munger 彼は、自分が管理する事業にクリティカルマスがなく、より良い経営に頼らねばならないような状況を好まないと言っています。彼はバカでも成功するビジネスを望んでいますが、そうでないこともあるのです。

3.「あらゆるものが衝突して、新しいコンセプトや新しいものを中心にクリティカルマスに達し、多くの人や企業に大きな影響を与える時期があります。しかし、それを予測するのは非常に困難です。誰かそれを出来る人がいるとは思えません。」Marc Andreessen

4.「技術とビジネスの歴史における明確な教訓の1つは、いったんオープンスタンダードがクリティカルマスを超えると、そこから脱線するのが非常に難しいということです。x86コンピューティング・アーキテクチャーとイーサネット・ネットワーキング・スタンダードは、この現実の顕著な例です。1つの相互運用可能なスタンダードが市場で複数のベンダーに受け入れられるようになると、互換性と規模の経済性を重視する消費者の傾向によって、ほとんど太刀打ち出来ないような収益増加の現象が生じます。」Bill Gurley

5.「範囲と集積の経済性はクリティカルマスとなった消費者の存在によって得られます。化学のアナロジーを用いて、消費者と生産者のクリティカルマスは(Stuart Kaufman および Brian Arthur を参照)、消費者、生産者、アイデア、技能の十分な多様性を持つ 「スープ」 が十分な規模とクリティカルマスによって自己触媒的になると仮定しました。経済活動、新たな触媒作用によるビジネス活動、その他の驚くべき効果が現れるでしょう。予期せぬ、無計画な行動は、複雑なシステムにおいてよく知られた行動であり、Adam Smith の『見えざる手』が現れたものです。」Vinod Khosla

6. ティッピングポイントとは、「クリティカルマスの瞬間、臨界点、沸騰点です。」Malcolm Gladwell

7.「相転移は可能な状態の 『相空間』における異常な点ですが、この空間の大部分は安定状態に占有されています。」「計画的で恣意的な介入に容易に屈しないという点で、少なくとも自然の物理法則の特性を持つ社会システムがあるように思われます。過去数十年にわたり、社会科学者、経済科学者、政治科学者は、真の 「社会の物理学」 があるかどうか、またあるとすれば、その法則や原理は何かを発見するために、物理学や生物学の科学者との対話を始めてきました。特に、彼らは人間活動の複雑な様式を、相互作用する多くの 「エージェント」 の集合体と考え始めています。これは、相互作用する原子や分子の流体にいくぶん類似していますが、意思決定、学習、適応の余地があるでしょう。」Philip Ball

8.「ある規模においてシステムは、その挙動が劇的に変化するクリティカルマスまたは限界に達します。それは良くなるかもしれないし、悪くなるかもしれません。働くことを止めるかもしれないし、特性を変えるかもしれません。時間の経過とともに小さな相互作用が徐々に累積し、不安定性の程度が増大する臨界状態になります。小さな出来事が地震のような劇的な変化を引き起こすかもしれません。小さな変更は、クリティカルなしきい値に達するまでシステムに影響しない場合があります。たとえば、ある薬があるしきい値までは効果がなくても、その後有効になったり、次第に有効になっても有害になったりするします。もう一つの例は化学です。化学物質のシステムがあるレベルの相互作用に達すると、システムは劇的に変化します。係数の小さな変更は、目に見えない影響を与える可能性がありますが、さらに変更を加えると、システムがクリティカルしきい値に達し、システムの動作を改善または悪化させる可能性があります。また、システムのプロパティが、あるタイプの順序から別のタイプの順序に突然変化したときに、システムがしきい値に達することもあります。例えば、強磁性体は臨界温度に加熱されるとその磁化を失いますが、その温度以下に冷却されるとまた磁気が戻ります。」Peter Bevelin

9.「シリコンバレーは、膨大な数のエンジニアとベンチャーキャピタリスト、そしてあらゆる支援体制 ― 法律事務所、不動産など ― をクリティカルマスの地点まで発展させ、スタートアップを受け入れる態勢を整えました。」Elon Musk

10.「顧客ベースを持つスタートアップは、顧客との継続的な対話を維持する必要があります(創業者が何か新しいことが必要だと思ったときに、一連の発表をするのではなく)。これこそ、起業家精神が芸術である理由です。顧客がクリティカルマスに達するとき、現状に固執しすぎることと急激に変化することの間には微妙な違いがあるのです。」Steve Blank

11.「クリティカルマスに達する前に Facebook に自分のスタートアップのことを話すとしたら、あなたは馬鹿ものだ。」Jason Calacanis

12. 「クリティカルマス」Dr. Evil

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著者紹介

Tren Griffin

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Two Powerful Mental Models: Network Effects and Critical Mass (2016)

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