「〇〇版のUber」を作る前に知ってほしいこと

私たちは今でも頻繁にこんな言葉を耳にします:「私はX版のUber (Uber for X) を作ります」と。

このアイデア、つまり消費者が必要とするときに具体的なサービスを提供し、同時にサービスプロフェッショナル(「プロ」)に即時に仕事を提供するアプリは非常に理にかなっています。地元交通サービスでうまくいったのだから、すべての業界でも同様にうまくいくのでしょうか? 求めるサービスを誰もが効率的に得られるようになるべきですし、それらのサービスの提供者は提供サービスに対する対価を得られるべきでしょう。

ただし問題は、このアイデアの実行の部分で起こります。つまり技術者側は、まさにすべてのサービスエコノミーをディスラプト(破壊)するためのロードマップとしてUberのような考え方を使おうとしてきました。これはますます多くの業界で起きています。家庭教師、犬の散歩、家の掃除、芝刈り、その他様々な業界で。しかし何かがおかしいのです。なぜなら「X用Uber」の失敗例も同じく増え続けているからです。

この失敗率の高さの原因は、ほとんどの創業者がUber化しようとしている具体的なサービス業界の複雑さやニュアンスを甘く見すぎるからです。消費者とプロ双方にとっての価値を最大化するには、創業者はそのサービスタイプがスキル対オンデマンドスケール(ビジュアルはこちら)上どこに位置するかを見て、プロダクトロードマップを特定しなくてはいけません。そして価値の最大化とは、クライアントには最大の利便性を、プロには最大の活用率を提供することを意味します。

消費者:スキル vs 必要なスケジューリング

煎じ詰めると、消費者向けUber的プロダクトを開発する前に評価すべき主要な特性は2点しかありません:

1) スキル:クライアントが求めるサービスを提供するために、プロはどれくらい高いスキルを有していなければならないか?

2) スケジュール:クライアントへのサービス提供はいつ(そしてどれくらいの頻度で)行われなければならないか?

スキル

いくつかのサービスは「専門サービス」とされ、その他は「コモディティ化(一般)サービス」と捉えられています。サービスがコモディティに近いほど、消費者が経験するサービス品質の幅は小さくなります。

例えば最適な例として地元交通(例:タクシー)を考えてみましょう。

A地点からB地点まで乗客を運ぶスキルはそれほど要求値の高いものではありません。運転は18歳以上の人ならほとんどがやり方を知っているものですし(つまりサービスコモディティである)、その結果マイル当たりの運転コストは運転するプロによって開きがあるものではありません。

またこのスキルはコモディティ化されているため、消費者からのサービスリクエストも「タップ1回」で可能です。サービスの具体化もシンプルなものです:私はここにいて、あそこに行きたいです。さらにシンプルにするため、Uberアプリは利便性をワンランクアップしています。GPSですでにあなたの居場所がわかっているので、あなたは行き先を入力すればよいだけです。Ergoはシンプルなサービスを、シンプルなリクエストで提供します。

さらに(再びタクシーの例ですが)、Uberでは消費者が「自分に合った」プロを探すニーズもほとんどありません。もちろん、Uberには評価システムがありますが、これはむしろ異常値(正気とは思えない人等)をはじくために使われます。消費者は次の乗車が前回乗車時と「同等レベル」になるかどうかはあまり気にしません。これにより適切なプロを探すニーズは抑えられ、また同じプロをリピートするニーズも抑えられます。

ただし、もしあなたが例えばガレージの扉を修理したい場合、そのサービスリクエストはもう少し複雑なものとなります。このサービスの仕事内容は「タップ1回」では済みません。ガレージへの破損は凹みでしょうか、それともドアが開かないのでしょうか。いつどのように起こったのでしょうか。どれくらいの大きさのガレージなのでしょうか。自動か手動か。必要となる作業内容を特定するにはスキルの高いプロが必要となり、問題についてやりとりするにはある程度体系的なコミュニケーション方法も必要です。

または、しつけが必要なあなたの攻撃的な飼い犬はどうでしょう?あなたの犬をトレーニングできる人は様々です。この種類の専門サービスの料金は資格や経験、トレーナーの認定等により大きく異なります。その結果、消費者は自分の仕事に「合った」人を自分で選びたいと思います。

あるサービスを提供するのに必要なスキルセットが深いものであるほど、従来型のUberモデルがそのサービス業界で機能する可能性は低くなります。テクノロジーのフレームワークで考慮すべき点として、要求されるサービスやプロジェクトのカスタマイズ、そして当該プロがその仕事に適するかどうか事前に判断できること、さらには複雑なサービスリクエスト内容についてやり取りしやすい柔軟性等を挙げることができます。

スケジュール

「オンデマンド」という言葉には、即時性のニュアンスが含まれます。

現実には、オンデマンドは必ずしも「今すぐ」ではなく、「私が必要とするとき」を意味します。

タクシー業界では、即時サービス(つまり「今すぐ」)はサービス自体の根底をなすものです。誰かが1日の予定を交通の都合に合わせて組むことは稀です。通常はその逆です。交通サービスはリクエストが生じた際にすぐに必要なものであり、通常は1日に複数回、短時間のものが発生します(タクシーだけでなく、バス、地下鉄等も)。Uberの「ボタン一つでサービスを」のモデルはこの目的を果たすのに役立っています。

しかし、もし消費者が例えば家庭教師やライフコーチやセラピストを必要としているなら、必ずしも2〜4分内に必要としているわけではありません。それだけでなく、サービスのセッションはたった数分間で終わるものではありません。数時間かかることもあります。

リードタイムと長時間のサービスニーズにより、舞台裏で多くのスケジューリング調整が発生します。具体的にはスケジュールのバッティングや変更、直前キャンセル、すっぽかし等があります。さらに、多くの専門スキルでは、サービスは一回きりのものとはなりません。週一回のアポイントや、複数回にわたる一連の突発的な予約もありえます。単発型のモデルは終わりです。

消費者が信頼・尊敬できる熟練のプロを見つけると、スケジューリングの要素はスキルと絡み合ってきます。消費者にとって、現在確保しているプロと同じくらいスキルが高く予約調整がしやすい別のプロを見つけられる確率は、その手間に見合わず非常に低いのです。ゆえによく知っていて気に入っているプロとの予約を調整するニーズが高まります。そしてほとんどの職業において、消費者とプロの関係は生涯にわたることも多くあります。

テクノロジーフレームワークの開発において、クライアントがプロを予約する際のデフォルトの態度が「即時」「新規」前提であると捉えてはいけません。ほとんどの場合、プラットフォームでは二者間の継続的な関係だけでなく、サービス提供の物理的なプランニングについてより深くサポートする必要があります。

以下に様々なサービス業のビジュアルを図示します。スキル対緊急性スケール上でどこに位置するかもわかります:

f:id:foundx_caster:20190917032231p:plain

プロの活用率を最大化する

すべてのプロが同じものを求めています:それは、より多く稼ぐことです。

この目的を達成する最も直接的なルートは活用率を最大化することです。これはプロのカレンダーが、最も利益率の高い顧客で最大限埋まるようにすることを意味します。

真の起業家でありビジネスを起こすことを望むプロにとって、最大活用とは経済的でなければならないことに留意する必要があります。さもなければプロはデマンド・シェアリングエコノミーの一部となってしまい、仕事に費やした時間と収入が持続的ではなくなってしまいます。私は起業家とフルタイム・パートタイムのオンデマンド仕事人との間には根本的な違いがあると信じています。

ですから、高度なスキルのサービスを提供するプロにとって、最大活用率の最適化とは煎じ詰めれば単に顧客のコンバージョンとリテンションとなります。

コンバージョン

ここでの焦点は(プロにとっての)(a) サービスリクエストおよび (b) その顧客の透明性に置く必要があります。

プロはクライアントから入ってくるサービスリクエストの詳細をすぐに簡単に確認できなければなりません。これはプロがいかに早く対応できるかだけでなく、より重要なこととして、対応の質につながります。対応の際にはフォローの質問や見積もり、見込み納期、初回確認用電話リクエスト等が必要となるかもしれません。最初の対応は(多くの場合)プロが消費者に与えられる第一印象となります。これはプロが自分のスキルセットのレベルの高さを伝えたいと思えば非常に重要になってきます。究極的には、消費者をお金を払うクライアントへと変身させることにつながるからです。

プロからの対応内容は、仕事だけでなく消費者にも依存します。もし新規顧客がサービスリクエストを出してきた場合、コンバージョンの確率を上げるためにより低い料金を提示するか。リピート顧客の場合、満足度を高めるためカレンダー上のより早い時間帯に入れてあげるか。ケチで支払いを渋ることがわかっている顧客の場合、その時間帯が質の高い別の顧客で埋まることを願いつつスルーするか。 

しかしコモディティ化したサービスでは、コンバージョンに注目することはあまり関係がありません。

タクシーを待つ消費者の前にどんなタクシーが現れようと、その消費者はおそらく乗るでしょう。セールスピッチも説得も必要ないのです。他のドライバーが有意な差を持ってよりうまく目的地まで乗客を運ぶということはほぼないでしょうし、ドライバーのプロフィールによって料金も変わりません。

専門スキルを持つプロにとってカレンダーの空き枠を埋める最初のステップはコンバージョンとなるため、サービスと顧客タイプを知ることはコンバージョンファンネルを最適化する上で極めて重要です。プロ側のフレームワークは、コンバージョンバリューを最大化するためにリクエスト詳細と顧客の履歴に素早くアクセスできなければなりません。

リテンション

テクノロジーでプロのスキルを奇跡的に向上させることは必ずしもできませんが、プロがクライアントに提供する全体的カスタマーエクスペリエンスを向上するのを助けることはできます。

リテンションが重要なのは、リテンションが増すとプロにとってカレンダー活用率の視認性が上がるからです。これにより新規顧客に関してどれくらいコンバージョン改善に注力すれば良いかの管理がしやすくなります。

この多くはクライアントにとって最重要である、前述の「スケジューリング」要素に関わってきます。スケジューリング要素はプロが自分の立場からも管理ができるという点で有用です。これはさらに顧客にとってシームレスで快適な経験へとつながります。そして顧客の満足度が高いほど、リピート顧客となって帰ってくる確率が高まります。もちろん諸々が正しく行われる必要がありますが、もしスケジューリングのミスや予約忘れ、返信忘れ、請求ミス等が提供サービスの邪魔となった場合は、チャーンの原因となります。そしてリピート顧客が年間売上の50%を占めるほとんどの専門職業界では、高いチャーンはプロを廃業に追い込むこともあります。

直接コミュニケーションがとれ、シームレスなスケジューリングができ、顧客への適切な請求を可能とするテクノロジーでプロをエンパワーできれば、リテンション率を向上し、スモールビジネスに成功をもたらすことができます。

開発する前に…

次の「X版のUber」プロダクトを早速開発し始める前に、いくつかの基本的な変数について必ず考え抜いておいてください。

消費者側については、あなたがどんな種類のサービス業界をディスラプトしようとしているのか、その業界がスキル対緊急性グラフ(チャート参照)でどこに位置するかについて考え抜いてください。これを行うことで、クライアントの利便性の最大化に正しく集中できるよう導かれます。

プロ側については、顧客コンバージョン対リテンションニーズについて考え抜き、活用率を最も高く最も経済的にするための最適化はどんなバランスであるべきかを特定してください。

結局のところ、あなたがクライアント・プロ間の関係を最適化するために開発時間をかければかけるほど、あなたのプラットフォームの成功の可能性は高まるのです。

 

著者紹介

Sam Madden

Sam は PocketSuite (YC W16) の共同創業者です。 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Read This Before You Build Uber for X (2017)

FoundX Review はスタートアップに関するノウハウを届けるメディアです

運営元