スタートアップ、プラットフォーム、イノベーションに関する意見 (a16z)

編集後記——これはScott Kuporが、連邦取引委員会(FTC)の2018年10月のヒアリングの場で、マルチサイドプラットフォームと競合について証言したものです。Scott Kuporは、a16zのマネージングパートナーであり、National Venture Capital Associationの前取締役会長でもあります。ヒアリングには様々な教授、政策立案者、業界代表者、および、その他の討論参加者が同席しました。

 

合衆国のテクノロジ・コミュニティーにおける市場支配力と統合、および、考えられうる政策的対応に関して、FTCでお話しする機会をいただき、大変感謝しています。私は、起業家精神主導の世界経済において、合衆国が確固たる参加者であり続けることができるように、FTCが努めてこの領域を詳しく調べようとしていることに賛同しています。

私の背景からお話しますと、私は、 AH Capital Managementの業務執行役員です。[…] 今日の私の発言は、当然、私の職務上の役割から得た知識によるものです。私の役割とは、新規スタートアップ事業が息の長い自立した価値ある企業になることを願いつつ、そうしたスタートアップ事業の可能性を見定め、それらを経済援助することを目的とした組織を代表するというものです。

私は、FTCが2つの関連した問題に注目していると理解しています。

1つ目は、FacebookやGoogle、Apple、 Amazonといった企業(あるいはその他にもあるかもしれません)の成功が、スタートアップにとって、経済成長や資本の利用といった面で、肯定的な影響を与えているのかどうかという問題です。2つ目は、これらの企業への規制を試みる場合、とくにこれらの企業による将来的な買収を詳しく調べることによってそうする場合、それがFTCの規制に関する権限の有効活用なのかどうかという問題です。2つ目の問題の答えは、1つ目の問題の答えに依存します。

私は今日、これらの話題に関連して、3つの点を取り上げたいと思います。

  • まずこれらの企業が、市場における非常に強い立場を謳歌している一方で、それらの企業の潜在的な配信プラットフォームとしての価値は、依然として非常に重要であり、実際に競争促進的であると私は主張します。それらのプラットフォームは、テクノロジ・コミュニティーにとって、またとくに新規スタートアップの投資のペースにとって価値あるものです。
  • 次にこれらの大企業は、ベンチャーを支えとするスタートアップ企業の重要な買収者です。つまりベンチャーのエコシステムの現行の健全性を維持するのに重要な役割を担っています。
  • 3つ目として、これらの企業の潜在的な市場支配力について、スタートアップは懸念してはいるものの、それらの点に関しては自由市場が非常にうまく機能して、それらの懸念に対応しています。Crypto ネットワークの発達を、自由市場が十分に機能して、既存の企業の懸念に対応している例として私は使いたいと思います。

配信プラットフォームの問題から始めましょう。

これらの大規模な消費者プラットフォームができるまでは、消費者向けスタートアップ企業にとって、費用効率が高い顧客基盤の構築に成功するのは非常に難しいことでした。つまり、新規スタートアップの顧客獲得単価は高いものでした。なぜなら、それぞれの新規スタートアップが自社の顧客獲得経路を構築する必要があったからです。これが、1980年代終わりから1990年代半ばまでにかけて、アーリーステージの消費者向けインターネット基盤のスタートアップの多くが失敗した理由の1つです。彼らにとって、直接的な消費者の獲得は単純に費用がかかりすぎ、また獲得した消費者から最終的に得られる経済的超過利潤は、顧客獲得費用を回収するには少なすぎました。要するに、インターネットはまだ十分に発達しておらず、最終的に自社サービスを売り込むことのできる顧客数が非常に限られていました。

過去7年から10年の消費者関連のスタートアップの活動に目を向けると、前代未聞の数の大企業の新規設立が成功裏に進められてきました。例えば、私たちは、まったく新しい一連の数十億ドル規模の企業が、途方もない利便性を消費者に提供するのを目の当たりにしてきました […]

これらの企業は、当然のことながら、インターネットの仮想空間上の偏在性(それ自体が、Apple製やSamsungを含む、大手のプラットフォーム・プロバイダー製のスマートフォンの商品化によって支えられています)で利益を上げてきました。これにより、対象となる市場規模がとてつもなく拡大しました。しかし、彼らはまた、他の大手のプラットフォーム・プロバイダーによって活用可能になった顧客獲得経路からも利益を得ました。そのプロバイダーは、現在、この類の話題の主役となっているGoogleやFacebook、Amazon、そしてもちろん、Appleです。

つまりスタートアップは顧客獲得のために新規の販売経路を大量に構築する費用をかける必要がなかったということです。そうではなく、むしろ広告やこれらの既存の大企業のSEOプラットフォームに力を入れました。これは顧客獲得単価を抑えるもので、成長に応じた支払いモデルとなります。会社の発展の段階や、最も成功したプラットフォームの成果に合わせて、広告費や顧客獲得単価を増額するものです。ですから最終的には、起業家やベンチャーキャピタリストにとっては、スタートアップ界における実験に投資する魅力的なモデルということになります。

過去7年から10年の間に、消費者向けスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)のファイナンス活動が著しく拡大しています。私たちが目にしてきたこの状況は多くの点で、これらのプラットフォームの存在により説明がつきます。簡単に言えば、計算が合うのです—— 企業は、これらの経路を使って顧客獲得の実験ができ、資本に最高の収益をもたらすものを土台として、マーケティングキャンペーンに繰り返し投資をすることができます。

敢えて言いますが、これらのプラットフォームがなければ、顧客獲得のエコノミクスはほとんどのスタートアップにとってあり得ない出費を伴うことになり、その結果VCコミュニティは、より費用効果の高い領域に投資先を変えるでしょう。

公平に見れば、過剰なプラットフォームのリスクが企業に問題を生じさせるのは間違いありません。つまり、これらの第三者のプラットフォームへの完全な依存が事業に影響を及ぼす可能性があります。例えばZyngaは、Facebookでこの問題にぶつかりました。顧客獲得の形式として完全にFacebookだけに依存するようになり、その間、顧客と直接的な関係を確立することができませんでした。

先ほど言及した好調なスタートアップは、この問題を認識しており、そのようなプラットフォームを最初の顧客獲得の取り組みを活性化させたり、効果の高いものにしたりするための仕組みとして活用しています。彼らはプラットフォームへの長期的依存のリスクを軽減するために、時間の経過とともに自社の顧客と直接的な関係を構築する必要があると理解しています。このように、プラットフォームは潜在的な長期ネットワーク効果事業のアーリーステージの発展において不可欠の役割を果たす一方で、スタートアップが成熟した時に採用することのできる、成熟した顧客の継続と獲得のための戦略に道を譲ることになります。

M&A環境においてプラットフォーム企業が果たす重要な役割に目を向けてみましょう。

ベンチャーキャピタル事業はハイリスクな事業です——私たちは、これらの企業のほとんどが著しい経済的価値は生み出さないだろうと考えながら、設立初期に企業に投資します(何を構築するつもりかというアイデアのみで、提示できる製品やサービスのない状態の、創業者に過ぎない人に対して行う場合もよくあります)。現に、私たちが投資した企業の約50%が失敗しています。これはつまり、それらの企業には経済的価値がほとんど、もしくは全く残っていないということです。私たちの投資先の約25〜30%が小さな収益を生むようになります—— それらの企業は価値のあるものを構築していますが、最終的にはその能力を最大限に引き出すまで成長できていないということです。そして最後に、私たちが投資した会社のごく少数が大きな機会へと変わります。比類なき上場企業になったり、代表的な大企業に買収されてかなりの経済的見返りをもたらしたりしています。 私たちはこのリスクを知っており、かつ理解していますが、それでも非常に少数の企業に対しては、資本への極めて高額な回収額を生み出すことを条件としています。最終的にベンチャー事業を成功させるためです。

その目的に向けて、約15〜20年前、ベンチャー事業は「流動性」のイベント(投資を実質利益に変換する能力で、それにより、資本を私たちの基盤となっている投資家に返します)と呼ばれるものを謳歌していました。その形態は、約50%がIPO、約50%がM&Aのイベントです。現在では、その数値は、ほぼ80〜90%がM&A、10〜20%がIPOになっています。

その理由については、この聞き取りの範囲を超えていますが、この傾向は産業界の大手のプラットフォームのいくつかの代表的企業との関連で本委員会が検討している措置においては、非常に重要な役割を果たしています。

完全に情報を開示するなら、私たちはポートフォリオ上ではこれらの代表的ないくつかの企業の買収から、これまで利益を受けています […]

しかし、委員会がベンチャーのエコシステムにおいてM&A取引が果たす重要な役割を理解するのは大事なことです。私たちは機関投資家から資金集めをしています(大学基金、公益財団法人、年金基金など)。彼らは投資に収益を期待し、それらのベンチャー投資の収益を長期ポートフォリオに再投入することを望んでいます。これを実現するためには、私たちは買収やIPOからの現金収入という形で、彼らに流動性を提供する必要があります。

IPOの数が激減し(長期の出来高の中央値と比較して、過去15〜20年間で50〜60%減少しています)、IPOまでの時間が著しく長くなっているため(現在は創業から約10〜13年ですが、長期の中央値は6.5〜7年です)、流動性の提供というIPOの役割も縮小し続けています。

結果として、エコシステムが十分に機能する上で、M&Aが有する重要性は増し続けています——機関投資家に対して必要性の高い流動性を提供すると、機関投資家はその流動性を利用して自分のベンチャー資本投資をさらに増やします。M&Aの時機と可能性に影響を与え得るような政策は、ベンチャー事業の資本の流れにかなりの損害を与える可能性があります。これは資本市場がベンチャーに支えられた企業に対して、あまりにも遅すぎる、また小さすぎるイグジットの機会しか与えない時代においては、なおさら当てはまります。

最後に、私は、代表的なプラットフォームの企業が抱えるであろうあらゆる潜在的な競合の懸念に対応するという、自由市場の役割に目を向けたいと思います。

いわゆるCryptoネットワークの成長は、多くの点において、次のような開発者コミュニティーの懸念への反応としても理解できると考えています。その懸念とは、顧客獲得のために大規模なプラットフォームにあまりにも依存しすぎているというものです。合衆国の政策立案者が、テクノロジ産業における集中の可能性を議論するために聞き取りを行っているのと時期を同じくして、Cryptoネットワーク業界におけるベンチャー資本の投資や新規の会社設立の成長が勢いを増しているのを、私たちは偶然だとは思っていません。

その理由は何でしょうか。

私が先ほどお話したのを思い出してください。成功している企業は、顧客獲得の取り組みを活性化させるためにプラットフォームを活用していますが、時間の経過とともに、自分たちの運命を自分たちで管理する方法を開発しています。プラットフォームが自分の事業の慣習を変えるかもしれないので、彼らはプラットフォームに長期間、過剰に依存したくありません。プラットフォームはそのような変更を通じて、全く公正かつ合法的な仕方で、ネットワークの他の特定の参加者たちを優遇したり、冷遇したりする可能性があります。多くの企業が、こうした潜在的なリスクを緩和しようとしています。

Cryptoネットワークの話に入りましょう。

私たちは「Cryptoネットワーク」を次のように定義しています——

  • 「デジタルサービス」を構築する新しい形式である、
  • そのサービスは、中心となる企業ではなく、「ネットワーク参加者のコミュニティー」が「所有し、運営している」、および
  • ネットワーク上の活動源(つまりデータベース)が脱中心化しており、コミュニティーによって維持されている。

「デジタルサービス」とは何でしょうか。それは単純にいって、私たちが現在その多くを楽しんでいるインターネット基盤のアプリケーションです。いくつか例を挙げると、ライドシェアリング、メッセージの送受信、食料雑貨配達、および企業向けアプリケーションなどです。 開発者がCryptoネットワークの原則を活用して、全く新しい一連のデジタルサービスを創造するだろうと私たちは信じています。その多くが、現在の私たちの想像の範囲を超えているものでしょうが、同時に消費者の利便性をはるかに高めるものでしょう。

では、そのCryptoネットワークの原則とはどのようなものでしょうか。それは、開発、保守、活用をするコミュニティーが所有と管理の両方を行うというものです。これはサービスの所有と管理を中心となる企業が支配する現在の大規模なプラットフォームとは全く異なります。

これは、一見すると狂っているように聞こえるかもしれません——コミュニティーによる資産の所有と管理には価値があり、中心となる企業の支配下で所有と管理がされている資産の価値を超えているということですから。けれども、実はこの点に関しては、テクノロジ業界の歴史において、十分に名を馳せている先駆的存在があります。

第一に、オープンソースソフトウェアの運動があります。これはRichard StallmanというMITの研究者が先頭に立って1983年に始めたフリー・ソフトウェアを作成する運動です。当然のことながら、これは当時では急進的な概念でした。これは開発者のコミュニティーが自分たちのソフトウェアを自由に公開し、他の人がそれを修正し、他の様々なオープンプロジェクトに組み込むというものでした。けれども、時間が経つにつれ、この取り組みはオープンソースソフトウェア開発の主流に形を変えました。これは現在、ソフトウェア開発で主に使われている手法です。幅広い採用を経験してきたオープンソースソフトウェアの例として、LinuxやGitが挙げられます。Linuxは現在のほとんどのデータセンターサービスを支配しているオペレーション・システムで、ほぼすべてのスマートフォンやタブレットの主要な構成要素です。Gitは、何百万人もの世界中のソフトウェアエンジニアが利用している、オープンソースソフトウェア開発システムです。

第二に、次のようなインターネットプロトコルの開発があります。つまり、おびただしい数の仕事、経済成長、消費者の利便性を生み出してきたプロトコルです。私たちは皆、現行のデジタルサービスが存在するおかげで、これらを謳歌しています。例えばSMTP(電子メール送受信のプロトコル)やHTTP(インターネット上で構造化されたテキストを交換するためのプロトコル)、TCP/IP(端末間のデータ通信のためのプロトコル)などです。これらのプロトコルは、ほとんどが学術界や政府出資の活動から派生したものであり、ほとんどの場合、学術界または開発者のコミュニティーによって保守が行われてきました。これらは、十分に構築された基盤であるという意味で、「オープン」プロトコルです。中心となる企業がプロトコル自体を変更することはあり得ないとわかっていることから、その基盤の上に多くの非常に刺激的な営利事業が築かれてきました(例えば、Facebook、Amazon、Googleなどです)。

Crypto ネットワークの価値は多面的(マルチサイド)です。

まず中央集権型プラットフォームに完全に依存していることで懸念が生じますが、Cryptoネットワークが新会社設立の土台となるプラットフォームを提供する場合には、この懸念はありません。つまり、脱中心化と透明性がさらに透明なガバナンスのモデルを確実にもたらします。そして、これらのプラットフォームの上に設立される当のスタートアップが、プラットフォームのガバナンスの活動的な一員になれるようにします。

第二に、Cryptoネットワークは、ネットワーク自体の価値とネットワークを支配・管理する人々が取り組んだ仕事との間に、共生的な経済関係を提供します。その場合のネットワークの支配・管理は、ネットワーク独自のトークンの導入によって行われます。Cryptoネットワーク界の「トークン」は、一連の役割を果たします。(i) トークンはネットワーク参加者間の価値交換の手段です——つまり、消費者はトークンでサービスの料金を「支払い」、売り手はサービスの料金をトークンで「受領」します。かつ、(ii) トークンは、ネットワークの開発者と、保守を行うその他の人々に、リワードを与える経済的誘因を提供します——つまり、人々は、ネットワーク上で完結される取引の信頼性を確実にすることで、トークンを受け取ることができます。

私がこうした一連の話を持ち出すのは、Cryptoネットワーク自体を称賛するためではありません。Cryptoネットワークを、非常に現実的な最新の現象としてこの話に使うためです。その現象とは、自由市場が市場において見られる難題に対応する上で果たしている役割の現れです。つまり、開発者がプラットフォームを自分が期待するよりも力強すぎるものと見なしているのであれば、Cryptoネットワークはそのような開発者の認識に対する自由市場のソリューションとなります。

言い換えれば、非常に進歩的で変化の速いテクノロジ市場の変化に対応するために、政府による新たな規制や変更は必要ありません。むしろ、産業界は経済的利己主義の運営によって、目に見える課題はどんなものでも救済する方法を手にしています。

興味深いことに、まったく同様の事例が企業のコミュニティーにおいても見られます。それは世界の消費者向けのプラットフォームの側で、私たちが目にしてきたものと非常に似ています。

2000年代初頭は、多くの評論家が、代表的な大企業(例えば、Microsoft、IBM、Cisco、Oracleなど)の間に存在する市場の力と強化によって、反競争的姿勢と消費者の非利便性が生まれると考えていました。さらに多くの点において、その懸念は現在、私たちが経験しているものと一致するものでした。これらの巨大組織が、顧客との接触を支配していました(現在の顧客プラットフォームがしているのと同様です)。これにより、新規参入者が全く同じ顧客に対して競合ソリューションを提供することは困難でした。その場合の「顧客」とは企業ITソリューションの中央集権型購入者でした(要するに、最高情報責任者(CIO)です)。彼らはIT予算を管理し、結果的に新たなテクノロジの採用(または不採用)を決定していました。

しかしながら、ここでもまた自由市場は新たなテクノロジの開発によって、目に見える集中化の問題を解決しました。特にクラウドコンピューティングの開発は、中央集権型のIT組織によるトップダウン式のテクノロジの採用とは対照的に、個人部門での点的ソリューションの採用を可能にし、企業におけるテクノロジの利用を民主化しました。テクノロジの利用が民主化されたように、テクノロジを生み出す予算額の利用も民主化されました。このように、CIOの中央集権型管理を打ち負かし、その結果として既存の大手ITプロバイダーの権力を抑えました。

全く新しい起業ITプロバイダーを出現させたのは、基盤となるテクノロジにおけるこうした大規模な転換です。市況を把握しているベンチャー資本家がこれを盛り上げました。そのような企業の例として、とりわけ、Salesforce.com、Workday、Splunk、Servicenow、Box、Oktaが挙げられます。

言うまでもありませんが、自由市場が常に機能するわけではなく、依然として政府の規制には、そのような市場機能を救済する重要な役割があります。しかし、特にテクノロジのような動きの速い市場においては、政府による新たな規制を開発することによって、自由市場の適切に対処する能力を奪うことがないよう、警戒しなければいけません。

多くの場合において、政府の規制は意図せぬ結果を生み出す可能性があります。特に規制は、既存の大企業に市場の力をより多く提供することによって、意図したものとは正反対の結果をもたらすこともよくあります。それらの企業だけが、規制の費用を吸収する余裕がある場合が多いからです。既存の大企業には規制に従うリソースが無限にあり、規制においては目に見えて有利であるため、ベンチャーキャピタルは新規事業に投資しないでしょう。そのためそのような環境では、スタートアップは間違いなく不利になります。新しい会社は市場の既存の大企業に対して、実際に競争を生むことを促す可能性があります。そうした新しい会社への投資に障害があるということは、スタートアップの成長に伴い新しい仕事が創出されないという経済的な損失があるだけでなく、既存の大企業による市場の支配を硬化させることにもなるでしょう。

そのようなリスクは、スタートアップを発展させる機会が世界中にあり、外国政府が新たな投資の誘致のためにスタートアップ推進政策を活用することができる現代においては特に深刻です。20年前であれば、合衆国は、ベンチャー資本金の市場の90%を占めていました。現在はわずかに50%を上回る程度です。外国政府が起業家精神を推進する政策(例えば、税金、移民、規制緩和の枠組み)を開発して、スタートアップ誘致を模索し続けているからです。資本は世界的に非常に流動性が高く、そのため善意の規制政策によって、本拠地が海外にある競争相手が有利になり、合衆国のスタートアップが不利にならないように、私たちは慎重になる必要があります。

今日の議論に参加する機会をいただき大変感謝しています。皆さんのご質問にお答えするのが楽しみです。

 

著者紹介

Scott Kupor

Scott Kupor は Andreessen Horowitz のマネージング・パートナーで、運営全般を担当しています。2009年の設立以来、Andreessen Horowitzに入社し、3名の従業員から150名以上に、また3億ドルの運用資産から100億ドル以上にまで急成長を遂げてきました。

Andreessen Horowitzに入社する前は、Hewlett PackardでSoftware-as-a-Serviceのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めていました。2007年にOpsware買収の一環としてHPに入社し、カスタマー・ソリューション担当シニア・バイス・プレジデントを務めました。この役職では、プロフェッショナル・サービス、技術的なプリセールス、カスタマー・サポートなど、顧客とのやり取りをグローバルに担当していました。Scottは、Opswareの設立直後に入社し、財務計画担当バイス・プレジデントや企業開発担当バイス・プレジデントなど、数多くの管理職を歴任しました。これらの職務では、2001年の新規株式公開と同時に、同社のプライベート・ファイナンス活動を指揮しました。また、Opswareのアジア太平洋地域での事業を開始し、複数の買収の実行を指揮しました。

Opsware入社以前は、Credit Suisse First BostonおよびLehman Brothersでソフトウェア企業の資金調達およびM&A取引の代理を務めました。彼は、スタンフォード大学のファイ・ベータ・カッパ(Phi Beta Kappa)を卒業し、公共政策の学士号を優等かつ優秀な成績で取得しています。また、スタンフォード大学で優秀な成績で法学士号を取得し、カリフォルニア州弁護士会の会員でもあります。Genesys Works の取締役会長、Stanford Venture Capital Director’s College の共同設立者兼共同ディレクター、Stanford Rock Centerのベンチャー・バック・ボード・メンバーシップ・ガイドの共同設立者兼共同ディレクター、Haas School of Business および Boalt School of Lawのエグゼクティブ・イン・レジデンス、Stanford Law School の講師を務めています。また、St. Jude's Children's Cancer Research Hospital の投資委員会の副委員長を務めているほか、Stanford Medical Center、Silicon Valley Community Foundation、Lick Wilmerding High School の投資委員会のメンバーも務めています。

Scottは、全米ベンチャーキャピタル協会 (National Venture Capital Association) の理事会会長を務めています(2017年~2018年)。彼は、全米ベストセラーの本「Secrets of Sand Hill Road」の著者でもあります。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: On Startups, Platforms, and Innovation (2019)

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