どうやって良いエンジェル投資家になるか (Investor School #11, Aaron Harris)

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:  Investor School (Y Combinator)

目次

Geoff Ralston
このスタートアップの投資講座を締めくくる前に、エンジェル投資家になる時に一番大切なことについてお話します。それは、良いエンジェル投資家になる方法、即ち善良でいる方法です。これは中立的な問題ではなく、あなたが投資して様々なことが起こった際に自分自身に問わなければならない大切な問題です。ときには良くないことも起こります。その時にどう対処するかあなたが決めないといけません。

私の良い友達でありパートナーでもあるAaron Harrisに、良い投資家になるということの意味について教えていただきます。彼はこれについてよく知っており、企業を立ち上げたり、何回も投資家になっています。今まで5年間YCカンパニーのパートナーも勤めていました。5年ですよね?私達のように、彼も何千もの企業を見てきています。Aaronの話を聞く時は、「専門家のいうことは大体正しい。間違ったことを言うまではね」という彼の言葉を覚えておいてください。では、Aaron。

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Aaron Harris
ありがとう、Geoff。幸い、私は自分のことを専門家だとは思っていません。だからといって、私の方が正しいのか間違っているのかはわかりませんが。それでは始めましょう。

良い投資家とは「お金を生み出す人」か「評判の良い人」

Geoffと私で良い投資家になるための講座をしようと話していた時、よく考えると良い投資家になる際「良い」という言葉を定義する事が難しいと気づきました。

単純に考えると、良い投資家といえばお金をたくさん儲けている人を思いつくでしょう。利益を得る事が投資家の目的であり、良い投資家と言われるとそういうことを想像します。

しかし、特にスタートアップでは、ただ利益を出すことよりも大事な、別の定義があると私は思います。それは、評判です。

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確かに、評判について考えるなんて少し変に思えますよね。投資といえば、お金を出して利益を出すからお金のことを想像するし、その行動から市場やリスクが生まれているわけですから。しかし、スタートアップに投資をする時評判が利益を左右させます。理由はこちらです。

評判の良い人が一番良い取引ができる

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公開市場では、誰でも株を変えます。だから、ヘッジファンドのボスが嫌な奴であっても何も影響しません。何をしたって利益を生めるので。そういう人が他人をひどく扱っているというとんでもない事もたまに聞きます。私はウォール・ストリートで4年間働いていたので、こういうことを知っています。

私や友人が働いていたような普通の投資銀行では、私たちの取引相手を好きだとか友達になりたいとか思うことはありませんでした。彼達はただ単に取引をして利益を上げる事が上手でした。これはヘッジファンドの世界でも同じですが、スタートアップとなるとそうではありません。なぜなら、これは公開市場ではないため、良いスタートアップと投資家の需要と供給が合っていないからです。

YCカンパニーから出てきた好きなスタートアップの権利を、自分の裁量で買える訳ではありません。ICOとなると話は少し変わりますが、ICOでもプレセール、その前のプレプレセール、さらにその前のプレプレプレセールに参加したければ人脈が必要になります。あの場所でさえもネットワークが広がっている様子を見た事があります。

そこで気づくのは、評判が良い人が一番良い値段で一番人気のスタートアップを入手できているという事です。特に好調な企業、良いスタートアップ、素晴らしいスタートアップではこうです。さて、今週皆が言っていたように良い企業は事前にわからないため、これは少し難しいです。

スタートアップへの投資家のラッシュは、その企業の長期的な成長の失敗を暗示するともいいます。しかし、いつかは現時点で分かる事に頼らなければいけません。もし関わりたい取引があれば、関わるために自分を優位にする方法を見つけなければいけません。だから企業に投資する時には強みが必要なのです。そして強みは評判の良さの結果だと思います。こういうことです。

良い投資家は評判によって良いディールフローを持つ

良い投資家になることは、ディールフローと関係性があります。

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あなたが初めて投資するとしましょう。エンジェルとしてすべき事は何でしょうか?彼らは助けを必要としない巨大企業というわけではないので、エンジェル投資家としてのあなたの役目はそのスタートアップの成功の可能性を上げることです。あなたの援助は有益なものになるでしょうか? あ、スライド進めるのを忘れていました、ごめんなさい。

もし企業の成功を援助できたら、あなたは創業者たちの話題になります。全く他の創業者とつながっていない創業者というのはそうそういません。なのであなたが役に立つという噂があれば、多くの商談をもらえます。ディールが増えれば、企業の成功を援助する機会が増えます。さらに多くの企業を成功させられれば、ディールが増えます。繰り返されるループなのです。これを沢山するほど上手になり、多くの企業に話題にされます。

もちろん、反対のパターンもあります。もし大失敗して企業に害を与える人と見られると、ディールフローは枯渇します。私にもあまり良くしてくれなかった投資家がいたので、これはよくわかります。彼らはあまり Demo DAy へ招待されません。Eladも彼の買収や自分の企業の売却を邪魔しようとした人がいたと昨日言っていましたし、Geoffも「二度とあんなクソ野郎と関わらない」と言ってました。そう。創業者はずっと前のことも覚えています。スタートアップは小さな世界です。なので、これはどちらの方向にも速く動くものだと覚えておきましょう。

投資のライフサイクルの各フェーズで支援する

では企業の成功や取引の可能性を上手く増やすためにはどうしたら良いでしょうか?

私が考えるに、投資を通してあなたが起業家に良くできるとアピールできる機会は4つあります。

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まず、投資する前に取引を始める時です。次に、創業者に初めて会って投資の条件を話し合う時。あなたが追いかける人から投資家になる、また投資家から株主になる時、取引が設立した時ですね。最後は取引が成立して企業との長期的な付き合いが生まれた時。それぞれの段階で、企業の役に立って良い投資家になる機会があります。一つずつ見ていきましょう。

ソーシング

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上手くディールソースするにはどうしたら良いでしょう?良い投資先がある場所を見つける事が大切です。Demo Day がオススメです。Demo Day では150ぐらいの企業が一気に来て、6ヶ月分の情報収集を1日でできます。関係を築いていく上で、目立ちたいですよね。なので多くの人は創業者にメールしてリストをもらい、他の創業者を知る創業者を見つけ、その知り合いの知り合いの兄弟からYCカンパニーに創業者がいると聞き、その人にもメールします。

もしかしたらその人は忙しくて返信しないかもしれません。すると投資家は厳しい選択に追いやられます。創業者の今話したくないという考えを尊重して「こんにちは、忙しい事は存じ上げていますが、このまま連絡を続けて忙しくない時に会う時間を設ける事はできますか?」と丁寧にメールするか。良いですね。それか、しつこく創業者をストーキングしてカフェなどに出没しだすか。近所をぐるぐるしながら、創業者が外に出てこないか待ってたり。実際に起きたことです。投資家がドアの外で、創業者と会える事を期待してうろついていることもあります。これはしないでください。気味悪いし、創業者に好かれて欲しい取引がもらえるという事はないでしょう。

「粘り強くいれば私が勝って取引をもらえる」と考えている人からすると変ですが、そういう仕組みではありません。企業は資金が必要な時は自分で探しにいきます。

会って交渉するときのエチケット:投資家がおごる

もしあなたが良い企業を見つけて、初めて連絡して誰かと会う時には、創業者と会う時の簡単なエチケットがあります。一つめは、彼らの時間を尊重する事。新しい企業で3時間のミーティングを要求してはだめです。もし創業者が「会える」と言ったら、30分に収めてください。もし関係がうまくいっていたら、長めにしても良いです。もしお茶やご飯に行ったら、奢ってください。

私にとってのエンジェル投資家であり、プロ投資家をずっとやっている私の友人は、素晴らしいアドバイスをくれました。もし投資家と創業者が会ったら、投資家が奢る。もし二人の投資家が会ったら、AUM(運用資産残高)が高い方が奢る。素晴らしいアドバイスだと思うし、いつも使っています。

創業者が裕福か貧乏かも、今いるカフェのオーナーであるかも関係ないし、創業者が良さげなアボカドトーストを頼んであなたがお茶しか頼んでいないとしても関係ありません。単にこの創業者に良くして、助けたい気持ちを伝えるのです。創業者に5,000、1万、1万5千、10万ドルあげる話をしているのだったら、コーヒー1つの値段なんてどうでも良くないですか?創業者を助けたいと伝えるために努力すれば、その事を覚えてもらえ、そうしなかったら悪い噂をされるでしょう。

交渉するときも創業者の時間を尊重する

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また、交渉する時も創業者の時間を尊重しましょう。話が進むにつれてあなたが質問をすると、答えが返ってくるものもあれば返ってこないものもあります。それは大丈夫です。新しい企業ですし、答えが全て分かるわけではないのでしょう。もし全部知っている事を期待していたら、落胆します。もし創業者が質問を断るか「わからない」と言ったら、1、2回聞き方を変えて情報を探すことは良いですが、15回も聞かないでください。創業者を絶対に嫌がらせるし、全然関係ない事だけど彼らも知りたがっている事かもしれません。

創業者に集中する

創業者と話す時はその人に集中しましょう。これは Demo Day 後のカクテルアワーなど沢山の創業者がいる時には難しいです。誰もが10数億ドル企業を立ち上げているかもしれないので、誰かと話していても「あそこにいるのは誰?もしかしたら... 」と話し相手から離れていってしまうからです。これはただの会話の問題ですが、よく起こります。やらないでください。話し相手に集中して、あなたの時間を与えてください。相手は素晴らしい創業者であなたの欲しい取引相手かもしれないし、もし失礼な事をしたら相手は覚えていますから。

契約条件を理解する

また、何に投資したいか話し合う時は、条件を理解する事です。何を要求しているか、それが何を意味するか、何が大丈夫か。こういう事の多くが不透明であることがここでの問題なので、Investor Schoolをやっています。

SAFE(Simple Agreement for Future Equity)のそれぞれの条件の意味、キャップとは何か、残余財産優先分配権の意味などについて話しています。ちなみに、エンジェル投資家はそういう事を求めてはいけません。

つい先週投資家が創業者とディールを成立させていて、SAFEを互いに送りあっていて良い感じに進んでいました。と思えば投資家が「最後に一つだけ」と言って10個ぐらい新たな要求をしてきました。重役の座、2倍の利益配当優先株のDrag-Along 権、売却のブロック権... 他は思い出せません。

創業者が私のところに来て、「どうしましょう?これだけのお金で合意があったのに、どうしましょう?」と聞いて来ました。私は「引き上げなさい。他にも投資家はいるし、この人は悪い投資家だから友達にも教えてあげなさい」と言いました。

YCカンパニーに大きな投資家のデータベースがある事は公然の秘密ですが、こういう情報が投資家データベースに入ります。そういう投資家はその後あまり商談をもらえません。交渉をする時は、片側がもう片側より力をもっていることが普通です。それは大丈夫。それがあっての交渉ですから。影響力のバランスがどこにあるか理解して、うまく利用してください。

無茶をしないこと。これは創業者と関わる上で何回も出てきます。限度を超えると今まで見えてなかった何かが手に入るかもしれません。その時には正しい選択に見えても、二つ以上の取引を行おうとしているので長期的には間違っています。少し頑張って一つの取引でちょっと多く権利をもらえたとしても、それだけあなたのエンジェル投資家としての良し悪しを大して影響しません。いつも誠実に交渉しましょう。やると言った事はやりましょう。もし交渉しているなら、ちゃんと目的を持って交渉しましょう。

他の投資家の探りを入れてくる投資家は避けること

私たちがいつも創業者に言うことは、他に投資家がいるのか探ってくる投資家は避ける事です。彼らは「はい、投資したいです、この条件で。他に誰がいますか?教えてくださいよ。他は誰が投資しましたか?」と聞いて来ます。

他にも沢山投資家がいる時のみ投資します。これは二つの理由から最悪です。一つは、集団で考えると、よく悪い決断に繋がること。二つは、ここ数年間で何回も見ているように、YCカンパニーの Demo Day から出て来た良い企業の何個かは、そのとき投資家に興味を持たれていなかったこと。

異なる考え方で波に逆らう投資家は、他人に関係なく本当に面白いと思うものを見つけ、成功する企業を見つけるだけでなく良い値段で多くの権利をもらっています。私たちは頭の良い投資家を覚えています。思い出して「すごい、この人たちは思ったより賢い」と思い、その人に色々送ります。「これを見て、あなたがしていた他の取引に似ているし、他の人は気づけないけどあなたなら出来る」と言います。その位置にあなたはいたいものですね。

約束を守ること

最後に、交渉が終わって何かをすると決めた時、握手でも言葉でもメールでも、言った事は約束です。これは創業者にたたき教えます。もし何かに合意したら、それは絶対です。何かが明らかになっていなかったり新しい情報で条件が変わったりすることもあり、それは大丈夫ですが、約束を破ってはいけません。皆に知れ渡り、信用できる関係を気づこうとしているのに誰にも信用されなくなります。

良い株主へと移行する

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交渉を終えたとしましょう。皆合意して満足しています。次は何?合意したらすぐに「では書類を送ってくれますか?」と言いましょう。もし創業者が送るのが遅かったら、「書類を送ってくれますか?」と追って送りましょう。この時はしつこくなっても大丈夫です。あなたは株主なので、書類を書かないといけません。書いたらすぐに送金しましょう。パソコンから離れないで。Hello SignとかClerkyとかを使って、すぐにGodlman Sachsでウェルス・マネジメント口座を開いて、Smith Barneyの人に電話して... あれってまだあるの?ない?そう。それでお金を口座になるべく早く送ってもらいましょう。

他の投資家を誘う

その後すぐ、お金の置き場に困っている友達に電話して取引に誘いましょう。連携して、シンジケートを連れて来て、創業者の必要に応じて投資家を連れて来てください。

「Aaron、25,000ドル入れさせてくれてありがとう。あと50万集めようとしてるらしいですが、私はこの理由よりあなたのビジネスにぴったりの人を5人知っています。大体いつも25,000か5万ドル投資していますが、参加させられますか?」と聞いて、もし創業者が「はい」と言えば、すぐにメールや電話でその人たちを集めてください。そうしたらみんなに覚えてもらえます。

逆に「投資するお金はどうにか見つけます。他の人も探す約束はするけど、それが集まるまで投資はできません」とは言わないうぴも。先に投資してリードしてから他の人を集める事で、関係を良好に始められます。

CEO の邪魔をしない

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そのあとは企業の邪魔をしないことです。

よく投資家は、投資をして資金集めをしている時に、まるで自分がCEOのような振舞いをします。特にCEOやリーダーになった事がある人は、「よし、投資した。あなたの商品を分析しましたが、こことこことここがおかしいです。あとウェブサイトに書いてあるこれも駄目、句点の場所が違う」なんてメールを沢山送ってます。創業者は交渉を終えて仕事に戻ろうとしているのに、メールに気を取られてイライラしてしまいます。

我々のパートナーのDaltonは、こういう投資家をDNS攻撃人間と読んでいます。沢山要求をしてくるせいでメール受信箱が溢れかえって、何もできなくなるから。それはしないでください。気長に創業者からの連絡を待ってから、援助を始めましょう。

良い投資家はすぐにお金を送る

なぜなら...いえ、先に小話を2つ。結構面白い話です。今まで見た中で、一番上手に志望者から投資家また株主になれた人は、Demo Day で創業者と会って握手して、終わって5分で出ていって、帰る飛行機の中から送金していました。その日の夜に、です。

しばらくの間、私たちはこれが本当なのか、また投資家が本物なのかわかりませんでした。すると何個かの企業が、「変な話なのですが、この人にSAFEを送ったら今から飛行機に乗ると言われました。しかしお金が送られて来たので、返事しようとしたのですが、アシスタントに機内だから応答できないと言われました。かっこいい、速く取引を決められている」と言ってきました。

悪い投資家は払えない約束をする

逆のパターンもあります。企業への投資を決めた人がいて、頑張っていました。「私は大物になれる」と。高額なで、50万ドルだったと思います。「絶対あなたの役に立ちます」と。書類を書いた後に創業者が「お金はどこですか?」と聞くのですが、返事はなし。さらに「お金は?」と聞くと、1週間後に投資家から返事があり、「ごめんなさい、まだ資金がないんです。もう少し待ってくれますか?」と。

創業者は「そんな馬鹿な、お金は必要です。合意したじゃないですか。あなたを降ろします」と返事します。投資家は「小切手を送るので保管しておいてくれますか?何週間かしたら換金できるので」と言ってきます。これは色々な理由で最悪です。

まず、払えない投資額を約束してはだめです。また、この人が創業者に投資するお金があると説得したのだから、創業者は他の投資家に連絡しなくなりました。なので興味を持ってくれている投資家から資金はもらえず、存在しないお金を待っていて、契約の制約が出来てしまったので、最初から興味を示していた他の投資家にも当たれず、お金をもらえなくなります。ブラックリストに載るレベルの被害です。集められない金額を約束することは、あなたの評判をボロボロにします。

無理やり助けるのではなく、求めに応じる

そして最後に、長期的に企業の役に立つ方法です。今週の講座で話した他の人も、できるアドバイスの内容、方法、リズムなどについて話していました。あなたの企業との関係を、長期的で時間とともに強くなるものにしたいです。あなたがする全ての投資でこれが起こる訳ではありません。本当に。もし運良く二つ以上の投資ができたら、あまり連絡をくれない所もあるでしょう。

投資家へ情報や援助が必要なことについて送ってくれるかもしれませんが、あなたを必要と考えていない創業者もいるわけで、あなたも無理やり関わるべきではありません。良い創業者は必要に応じて助けを求めます。連絡をくれない創業者はどうせ何も達成しないので追いかける必要はありません。

投資家向けアップデートを送る起業家はパフォーマンスが良い

毎月投資家向けアップデートをくれる創業者は、半年か1年ごとにしか現れない人よりも業績が良い傾向があることに私たちは気づきました。透明性や関係を保つことの大切さを理解しないといけません。これは互いに協力する事なので。これを理解している創業者は業績が良いです。私はそういう人と働く事が好きです。

投資家になった事で知る秘密もあります。投資家向けアップデートもこれに値します。創業者に個人情報と専有情報と機密情報の違いを理解させなければいけません。専有情報は、収入金額、従業員数、バーンレート、残高など。自由に公開はできませんが、正直企業の生死を分けるようなものではありません。あなたは許可なしに公開できませんが、創業者は共有しても良いし、投資家も聞いていい情報です。ただソースコードを見せてくれと頼んではいけません。それに競争相手に見られているかもしれないので、自分のパソコンで書類を開いてはいけません。それは良くないので、要求してはだめです。もし創業者にそういう情報を渡したくないと言われたら、それを尊重しましょう。どこであなたは役立っているのか把握する事が大事です。

投資家として、起業家に適切に役立つ

私もよく、自分があまり理解していない分野で企業を助けたいと思ってしまいます。誰かに質問された時にできるだけ答えてあげたくなる事に似た衝動です。お金や経験が豊富な人は、それを使って聞かれた質問に全て答えようとするでしょう。その気持ちを押さえましょう。答えを知らない時は、答えないでください。「あなたを助けたいのですが、本当にわかりません。答えられるかもしれない人を数人知っているので、その人たちに聞いても良いですか?」と聞いてみましょう。そうして創業者の役に立てます。

答えを知っている時は、助けましょう。援助やアドバイスをして、オフィスへ行って何かをする方法を教えたり電話をかけたりしても良いと提案しましょう。もしあなたが投資した企業と電話で話したくないのなら、悪い投資をしたか、企業を選び間違えたのでしょう。それを頭に入れて、あなたが投資した企業の中で電話しても良い企業としたくない企業との比率を考えましょう。あなたが企業を見極められているかの指針になるでしょう。

投資家は率直であり、正直であれ

そして私が何よりも大事だと思うことは、正直であることです。多くの創業者は難しい質問をしてきます。あなたは真実を隠したり、「うまく行っています」「大丈夫、今月は風邪をひいてたし目標達成できなかったのも仕方ない」「そういう解雇の仕方で大丈夫ですよ」など言ってあげたくなるでしょう。創業者もあなたも、たまには受け入れがたい現実を知らなければいけません。もしあなたが正直でいなければ、向こうも正直にはなってくれません。あなたが教えてくれないと思ったら、向こうもあなたが仕事していないと思っていても、教えてくれません。あなたが正直で公平でいれば、相手もそれに応えて情報をくれます。

これはいつも私がPG (Paul Graham) と話す時に実感することです。彼と話すと私の立ち位置や何が上手で何が下手かをいつも率直に言ってくれます。私たち双方のために言ってくれていると分かっているので、攻撃されたように感じません。知識もお金もあると、つい間違っているところを攻撃して、どれだけ相手が間違っていて自分が合っているか証明したくなってしまいますが、これは何の役にも立ちません。悪い反応をされます。正直で、率直で、優しくなりましょう。

自分の知性や権利の限界を知ろう

最後に、どんな状況でもあなたの影響や権利の限界を尊重してください。小さい株主がCEOのような決断をする、という事は避けてください。取締役会を動かそうとしないでください。創業者が間違いを犯したと思ったからと影で取締役会に連絡しないでください。創業者が不正行為を認めないなどの極端な場合以外は、あなたには関係ありません。どんな状況でも慎重に動いてください。

一つ、よくアーリーステージの投資家とレイターステージの創業者と投資家との間で論点になる権利があります。私はシリーズAプログラムを管理していて、シード資金を集めた企業を見て、シリーズ Aプログラムの準備ができたら企業の教育をして、より良いものを集められるようにしていますが、論点はいつもPro-Rata権利になります。それが何か知らなかったら、調べてください。

Pro-rata を守ること

アーリーステージの投資家が交渉して勝ち取れる最も重要な権利の一つです。この権利があれば、資金さえあれば希薄化しないように今後も投資を続ける事ができます。後のラウンドで創業者が一億ドル集めるとすると、新しい投資家が「1億ドル集めたいのならその1億ドル全て欲しいです。アーリーステージの投資家はどこか行って」と言ってきます。これは良くありません。特にこれを予想していなかった創業者は難しい位置に立たされて途方にくれてしまいます。

こういう時は「少しPro-Rata権利を減らしてください、相手にSequoiaかAccelか誰かがいるので」とメールするのが創業者からすると簡単でしょう。圧力が大きいですね。多分これは途中で生まれた誤解で、Sequoiaの人が「皆の権利を減らせ」と言ったのではなくて、弁護士を通す時などに誤解が生じて、創業者が命令だと思い込み、あなたに連絡したのでしょう。わざとあなたに損害を与えようとしている訳ではない事を理解して、理性的になりましょう。

しかしここは断固に「交渉して合意した事なので、これだけのPro-Rata権利が必要です」と言っても良いと思います。もし本当に追いやられた状況で権利をくれなさそうだったら、理解的になって双方的に有益な道を見つけましょう。たまには小さな契約での利益を犠牲にして投資家としての長期的なキャリアを積む事が大事だと覚えておきましょう。

投資家にとっての「良さ」とは

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「良い」事ではない事が数個あります。スマートさは良さと関係ありません。頭が良い投資家が一番利益を産んで企業に役立っている訳ではありません。馬鹿のお金でも天才のお金でも、創業者からするとお金はお金です。

自分のことを知っている投資家は良い

私が分かった事は、自分がどちら側に入るか分かっている投資家は良い、という事です。俗に言うバカ金 (dump money) は、スタートアップや投資についての知識がありませんが、役に立とうとして必要な時に資金を提供し、正直で迅速でいようとします。私からするとそれは良い投資家であり、他の企業にも喜んで勧めます。頭が良くて起業経験がある投資家も、素晴らしい知識や発想を持っていたりして同様に良い投資家です。

どちらの投資家も、今まで話していたルールを破って悪い投資家にもなれます。投資額が大きくても良いとは限りません。私が創業者だった時最も良かった投資家の中には、投資額が少なくても電話で協力する意気がすごい人がいました。Sequoiaのような一番高額だった投資家も、素晴らしいかったです。

どのような関係を築くかによって全てが決まります。有名だからといって良い訳でもありません。YCカンパニーにいる素晴らしいエンジェル投資家の中には名前を聞いた事ない人もいるでしょう。とても良くて有名な人もいますが、あなたが知らなくても創業者や私たちが知る素晴らしい投資家も沢山います。

なので新聞を読んでいても「このエンジェル投資家があの取引に関わっている、良い取引なんだろうな、彼も彼女も凄い、彼女が一番に違いない」と言わないでください。知名度ではなく、企業を助けて良い取引を確保する事が大事だと覚えておいてください。そうして上手くなったら、貴方が良い投資家だったら、きっとその「良さ」から利益が生まれるでしょう。

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それが私たちの希望です。あなた達に良い投資家になってほしく、その手助けをしたいです。ありがとう。

Q&A 

Geoff Ralston
ではQ&Aへ。質問がある人?

投資家向けアップデートの内容は?

聴衆
シード投資家なのですが、企業統治と情報獲得の権利の二つが発行される投資をして苦労しました。あなたが(音声不明瞭)する企業には、取締役は普通ありますか?私が役員でもそうではなくても、こういう事が見直されていると知って安心しています。情報権利についてなのですが、投資家向けアップデートは普通どのような感じですか?一つ毎月くれる企業があってとても良いのですが、それに時間をとられすぎているのではないかと心配になります。他にはほとんど投資家向けアップデートをくれない企業もあり、嫌になります。どのくらいが適切なのでしょうか?アップデートには何を... 2ヶ月ごとにくれる企業もありますが、雑談みたいな内容で財務情報がありません。

Geoff Ralston
はい。

聴衆
最初の2つの事についてだけ教えてください。

Aaron Harris
あなたが期待できる事は...

Geoff Ralston
すみません、質問を繰り返してくれますか?

Aaron Harris
はい。投資家としてシードステージにいる企業の統治について何を期待するべきか、また投資家向けアップデートに何を期待するべきか。統治については、シードのスタートアップには外部の取締役はなく、設立チームから1、2人が取締役のような役割を果たしてオプション取引などを承認していますがそれだけです。自然とこうなるんだと思います。初期段階では取締役は助けよりも邪魔になるので、これで良いと思います。

企業が400万ぐらい調達した頃にこれが変わってきます。この時に私は、投資家にその権利がないとしても取締役を作れと助言します。たまに投資家達と非公式の取締役を作って、クォーターごとに集まって軌道に乗っているか確認します。もし統治のことでよくない事があると思ったら、それを提議して話し合います。

投資家向けアップデートについては、実は私は「Investors Updates」というエッセイを書いていて、そこに良いアップデートの書き方が載っています。しっかりした企業は15分ほどで終わらせられます。

プロダクト前とプロダクト後では少し違いますが、基本的には収益、成長、バーンレート、残高、必要な事、うまく行っている所、苦戦している所が書かれているべきです。月ごとに15分か、20~30分ほどかかるでしょう。

シードステージの企業は毎月です。頻繁に送っていないという事は、あまり進展がないと言う事でしょう。中には「忙しいから半年ごとに送る」という企業もいます。投資家に忘れられるからそれは良くないと私は伝えています。

Geoff Ralston
創業者の態度を良くしようとする事は、投資家として悪いことではありません。創業者の態度が悪いからといって自分も態度を悪くしてはいけませんが、あなたには権利を守る権利があります。ここで質問がありましたね。

評判が現実に合わないときは?

聴衆
スタートアップを悪くあしらう投資家がいるのは知っていますが...

Geoff Ralston
質問は、評判がたまに現実を反映しない事についてです。質問者は、企業の扱いが悪くても評判が良い投資家を知っています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

Aaron Harris
どんな評判のシステムも完璧ではありません。評判が最悪な人がなぜか良い地位に選ばれることもあります。

Geoff Ralston
それはないですね。

Aaron Harris
ないですね。今までずっとそうだと思います。正直に言うと、これは小さな世界だから少し時間がかかっても普通は噂が広まります。それでも、悪い人はちらほら取引をもらっています。難しいのは、外から見てもその人がどのような配分をもらったのかはわからないという事です。TwitterやAngelListやLinkedInに 大成功している企業の投資家であると書いていても、実際は流通市場で数千ドル買っただけの人もいます。早く取引を確保した優秀なエンジェル投資家であると書いているんですけどね。

Geoff Ralston
そこで実際何が起こっているのか分かると思います。嫌なことですが、ここには力の不均衡が生じています。創業者にとって、いくら嫌な奴でも自分より権力がある投資家と戦うのは難しい事です。ちなみにYCカンパニーのグループ企業になる利点の一つは、私たちがそういう人を止めることですね。運良く私たちは、私達の企業に害を与える人がいたら教えてもらう地位にいます。例えそれがRon Conwayでも。そんな事絶対ないですけど。世界一有力なエンジェル投資家なのに。

しかしそういう評判は広まります。それに、悪い関係は続かないでしょう。企業を不当に扱う人は、不正をする政治家のようにいつかばれます。昔のような情報の不均衡はもう存在しないので、情報が漏れるからです。

Pro-rata 権をなくすか、評判を悪くするか

聴衆
(質問)

Geoff Ralston
質問は聞こえましたか?すみません、声が聞こえにくいのですが、Pro-Rata権利をなくす事について聞いているんですよね?権利を取られたらどうなるのか、と?

Aaron Harris
実は私もGeoffもこれについて書いたことがあります。企業のアーリーステージから期待してくれている投資家からPro-Rataの権利を奪う事はひどいと、二人とも思っていますから。しかし、正直良い答えが思いつきません。ひどい話です。できるだけ戦うべきだとは思いますが、そういう状況での自分の力と、どのようにどこまで戦うべきかを知っておきましょう。結局色々被害をうけるかもしれないし、そこで終わってはいけないので。

Geoff Ralston
この講座、特にAaronのプレゼンテーションの教訓は、安物買いの銭失いにならないようにしよう、だと思います。もしあなたが素晴らしいスタートアップに投資したのに欲しかったPro-Rata権をもらえなかったとしても、どうせ元の投資から利益を生み出せるでしょう。なので、自分の評判を下げたり企業の成長を妨げてはいけません。嫌な事ですけどね。
もしPro-Rata権が契約されたら、YCカンパニーの SAFEからコンバートされるラウンド以外全てのラウンドで権利がもらえます。もし誰よりも先に信用していた創業者がそれを取り上げるのだったら、せめて話し合いをすべきでしょう。ちなみに、ほとんどの場合創業者はこのことを把握さえもしていませんが、もし創業者自身の決断だったなら頑固になるでしょうね。最後のほうでこの事について話しますが、契約でもらえたPro-Rata権利を取り上げる事は良くないと思います。皆のPro-Rata権利がそれぞれどれくだいだったか把握するのは複雑で大変ですが、契約で合意したならそれは約束です。

Aaron Harris
すみません、最後に一つ。私達のシリーズAプログラムで全ての企業のためにやっていることの一つは、計画を立てられるように、Pro-Rata権利や希薄化が様々な状況でどのようになるか予測する事です。

Geoff Ralston
計画は大事です。

Aaron Harris
よくあったのは、計画しなかったせいで契約に必然的に伴う事を推測せずに合意してしまう事です。なので創業者は契約後にそれを変えようとします。もし情報を事前に知っていれば、普通はエンジェルを守ろうとします。絶対ではないですが、普通は。

Geoff Ralston
どうぞ。

投資契約はどこまで細かい条件を付けるべき?

聴衆
Pro-Rata権についての私の質問に答えてくれました。契約をする事に関してなのですが、細かい条件を要求してはいけないと講座で言う人もいましたが、一方でPro-Rata権利を契約するのは良いと仰っています。SAFEを使っていない人や、使っていてもConvertするラウンドのPro-Rata権利が欲しい人は、強く要求するべきでしょうか。

Geoff Ralston
質問は、特にSAFEを使っていない時、Pro-Rata権利を要求する事は適切かどうかです。また、SAFE使っていたとしても、コンバートするラウンドでPro-Rata権利がもらえない時は何を要求するのが妥当でしょうか?限度はどこまでですか?

Aaron Harris
交渉の話をしてる時に言った事に戻りますが、条件は何か、標準は何か、自分に力はあるか知っておくべきです。私は、もしあなたの要求することが一般的また現実的で、あなたがそれをもらうに値すると思うなら、求める事に害はないと信じています。どれだけ強く押すべきか知っておきましょう。

私が思うにPro-Rata権利は一般的で、要求する事は普通です。私はエンジェル投資をする時にPro-Rata権は大切だと思うので、いつも要求しています。2倍利益配当優先株はそうではありません。エンジェルの中には、企業が必死だと分かっていて要求を押し続け、欲しいものをもらう人もいます。その小競り合いには勝ちましたが、長期戦では負けます。

Geoff Ralston
次の人?

評判が異なるときの対処法

聴衆
(質問)

Geoff Ralston
質問は、評判の二つの面です。一つは創業者と、もう一つは仲間の投資家とです。この二つが衝突するかもしれない時どうしたら良いのか、というものですね。

Aaron Harris
この二つが衝突する事はあまりないと思います。一つありえるのは、あなたが言ったように、創業者に投資家を勧めてくれと言われたものの、あまり乗り気になれない時。あなたがその企業の投資家ではなく、ただ会話しているだけの場合は、「自分で投資した企業しか勧めたくない」と言って乗り切れます。もし創業者が企業の推薦を求めてきても、それが嫌なら、正直になりましょう。「推薦してあげたいけど、こういう理由で良くないと思う」と伝えましょう。もし「お願い、お願い」と本当にしつこかったら、どのようにその企業を説明して推薦するつもりか正直に教えましょう。

Geoff Ralston
残念ながら時間が限られているので、次が最後の質問になります。

創業者間契約を投資家は見るべき?

聴衆
こんにちは。創業者から見ると、一番大事な契約は一番最初のもので、投資家とではなく他の創業者とのものだと思います。USCの教授がいるのですが、彼は最初に創業者の間で率直な話し合いをする方法を教えています。私は権利が50/50のスタートアップの創業者になったことがありますが、絶対にうまくいきません。次のラウンドになる時には、悪い関係になっている。私が知りたいのは、どのように創業者は投資家に「私たちはこのような編成になっています」と言うべきか。またこれが明らかになった時、握手以外にどのような事を予想するべきか、というものです。

Geoff Ralston
最後の質問は難しいですね。創業者が投資家と話す際にどのように資本政策表の内容を説明して投資をしてもらうか。そうですか?

聴衆
はい。

Aaron Harris
投資家が資本政策表を見せる用要求する事は普通だし、創業者も見せて大丈夫だと思います。それは適切な情報ですし...

聴衆
はい、ただの株式分割よりも大きな事なので。

Aaron Harris
そうですね。

聴衆
資本政策表はとても簡単な表です。私がいまわかったことや、私が創業者の時に他の創業者と取り決めなかったことがー

Geoff Ralston
では、資本政策表だけではなくてどのような契約をしているか聞く事ですか?初期の投資家はどれだけデューデリジェンスが必要でしょうか?そういう事について聞くのは良いと思います。しかし、あなたが投資するかどうかをあまり影響しないと思います。資本政策表はそうするかもしれません。あまりにもおかしなエクイティの分割があったりしましたらそれは企業にとって良い兆候ではありませんし。YCカンパニーでもその事について聞きます。

創業者間の契約についてはあまり聞きません。想像してください、契約があまり良いものではなかったからって、DropboxやAirbnbへ投資する事をやめますか?投資家としてするかもしれないことは、今後どのような契約が良いのか提案する事ぐらいです。一般的に、アーリーステージの投資家ができるデューデリジェンスは限られています。悪い初期投資家は「今後3年の見積損益はどうですか?」とかいろんな事を聞き過ぎて「こいつ真剣か?」と思われます。この企業はどのように利益を産むか考えているわけで、あなたの聞いている事は無関連で決断の助けにもなりません。

ありがとう、Aaron。

Aaron Harris
どういたしまして。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:  Investor School (Y Combinator)

 

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