Andy Bromberg との ICO に関する対話 (Startup School 2018 #10)

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Geoff Ralston
今日は木曜日です。普段木曜はAdoraと私はここにどなたか著名な方を迎えて、興味深いお話をするということになっています。

今日お迎えしている著名人は、Andy Bromberg氏です。Andyは私の友人でもありますが、CoinList社の社長であり共同創業者です。CoinListはとても面白いことを行っている素晴らしい会社で、彼らの業務内容については今日これから話していきたいと思います。

さてAndy、まずはあなたの起業家としてのバックグラウンドについて、少々話してもらえると良いかと思います。興味深いことに、あなたは2年ほど前にスタンフォード大学を卒業しているわけですが、CoinListが最初のベンチャーというわけではないんですよね。

CoinList 創業者のバックグラウンド

Andy Bromberg
その通りです。最初に、ここにお呼びいただいたこと、そして皆さんのご参加にお礼を申し上げます。今日は楽しい場にしましょう。

私の起業家としての歴史は大学に入る前、高校時代から既に始まっています。高校では、ウェブデザインとマーケティングのビジネスを開業したグループの一員でした。これらのビジネス自体は特記するようなことではないですが、初めて何かを構築し従業員を雇って管理したり、また解雇することもあったし、様々なことを検討するなど、こうした経験が非常に価値あるものでした。

Geoff Ralston
高校時代に、それら全てをやったのですか。

Andy Bromberg
そうです。これが始まりでした。そして非常に楽しかったのです。

他のバイトをしたくなかったからサービスを始めた

Geoff Ralston
どんなきっかけで?まだ高校生なのに起業家になることに魅了されたというのは、どうしてですか。私なんて、高校時代はもっと別のことで頭がいっぱいだったものですよ。

Andy Bromberg
実際のところ、起業家になりたいということではなく、高校生ができる他の仕事をやりたくなかっただけなんです。ただ座って何らかの仕事をする、例えばピザをサーブしたりアイスクリームをすくうなど…。

Geoff Ralston
私はスーパーで働きました。素晴らしい経験でしたよ。

Andy Bromberg
私もアイスクリーム屋で働きましたよ。楽しかったけど、ただ心の中で思っていたことは、「地元の業者たちは皆ひどいウェブサイトしか持っておらず、私の友人達は暇な時間を使ってもっと良いものを作れる。そしてこのビジネスのほうが、ピザをサーブするよりも、高校生としてお金を稼ぐのにもっと良い方法だ」ということです。そして、実際にやってみました。動画やマーケティング写真等の活用にまで発展させたり。かなり成功したウェブサイトもいくつか運営しました。

でも、それは「起業家になりたい」というよりは、「他のバイトをやりたくない」ということでした。そこから、物事を最初から構築していくことや創造することが大好きになってきたのです。でもその頃は、単に代替手段としてやっていたことで、第一の選択肢ということではなかったです。

Geoff Ralston
ということは、「自分は起業家であり、こうしたい」とか、「家系的にずっと起業家が続く一家だから」とか、そういうことは全然頭に無かったのですね。それよりは、ある意味逃げというか、普通の高校生活ではない替わりのルートというか。

普通に「あんまり面白そうではないバイトをやってみる」というのではなく、「もっと面白いことをやってみよう」と。そして、きっとそうすることでもっとたくさんお金も稼げたことでしょう。

自分の楽しいことをやってみる

Andy Bromberg
全くその通りです。起業に関する決まり文句みたいなことは、言いたくないのですが、でも実際、自分が本当に楽しめることをやっていたんですよ。友人達と一緒に過ごしながら何かを構築する、それは非常に楽しかったです。とても有意義でした。

私たちは、自分たちが好きなことに関連するウェブサイトを制作しましたが、それは必ずしも「このオポチュニティを分析して、TAMの計算をし、そしてビジネス戦略を検討して…」みたいなことでは無かったです。そうではなく、「サッカーをするのが大好き。サッカーのクリート(訳注:スパイクの突起)のレビューサイトを作ったらどうだろうか」から始まり、「じゃあ、やってみよう」と。そして実際にやってみると、そのサイトがとてもうまく行ったのです。

そしてまた「パソコンで遊ぶのが好き。Macの内部へ入って操作できるようなものを作ろう。よしやってみよう」と言う感じでやってみたら、これもとてもうまく行ったのです。そしてこれは、まさに自分たちが楽しんでできることが元となっていたものです。自分たちでやり方を探し当てて、そして自分たちが情熱をささげるものに関連したものをやりたいと思って実践したのです。

Geoff Ralston
非常に興味深いです。相当うまく行っていたみたいですね。恐らく高校の最終学年だったでしょうか、あなたは西海岸の小さな学校に入りましたね。「自分はスタンフォードにはいかない。例えば、次世代の、誰か、Mark Zuckerbergみたいになるぞ」とか、そういう気持ちを持ったことは無かったのですか。

Andy Bromberg
ええ、そういった考えを持ったとしたら、それはきっと大きな妄想となっていたことでしょう。自分たちがやっていたのは些細なことで、単に、楽しくて当時必要なお金も稼げ、自分が好きなことができた、それだけです。どれも、大きなビジネスにつながるようなものではありませんでした。

もちろん、「これで稼げているし、このまま続けていくこともできる。それも楽しそうだ」という気持ちは起こるものです。でも最終的には、素晴らしい学校に進級する好機があり、その機会を活かすことにしました。そこで、しばらくの間、在学中は続けましたが、そこにいた2年ほどの間で徐々に手を引いて、最後は完全にやめてしまいました。

スタンフォード大学で学ぶ実用的な授業

Geoff Ralston
でも会社を興すという考えは消え去らなかったでしょう。だって、スタンフォード在学中にまた起業の虫に取りつかれたようですからね。

Andy Bromberg
そうですね。2年ほど在学しましたが、とても楽しかったです。実際、自分にとって最もインパクトのあったことはアントレプレナーシップに関連しています。スタートアップ・エンジニアリングという、Balaji Srinivasan による素晴らしい授業でした。

Srinivasan氏は現在CoinBase社のCTOで、 以前はEarn.comのCEO、そして Andreessen Horowitzのパートナーでもあり、 Counsylの創業者でした。かつて、元祖スタートアップスクールで講義をしたという、素晴らしい人です。

彼がこのクラスを教えていたわけですが… よく考えるのですが、大学のアントレプレナーシップの授業は、ビジネスを始めるために必要な本当のスキルを教えてくれない。ハイレベルなことか、もしくはすごく基本的なことは教えてくれるけれど、実際的なステップは教えてくれないですね。

彼は「実際にこれをやりたい場合、何をしたら良いのか」ということを伝える授業を作り上げてくれました。ゲストレクチャーもたくさんありました。それから、コンピュータサイエンスの授業みたいなことを、たくさんやりました。コードをどうやって展開するか、どうやってコードのrevision controlを行うか、GitHubにどのようにして載せるか、そういったあらゆることの手順など、実用的なことです。

私たち生徒は、この授業を取って、とても素晴らしい時間を過ごしました。そしてここに立ち戻るようにして、このクラスの数名の仲間たちが集まって、2012、2013年にStanford Bitcoin Groupを創業したのです。

ビットコインとの出会いとグループの設立、そして諦め

Geoff Ralston
彼ら自身、ビットコインを購入していたなら良いですが。

Andy Bromberg
多少は。でも充分では無かったです。「このビットコインは、将来的に実現する」と言って彼は説得しようとしましたが、私たちはその当時は彼の言うことに「まさか」としか思わなかったのです。2012年のことですから。私たちは「実在しないマジック・インターネット・マネーの話でしょう。君の言うことは全く信じられない。上手く行くはずない」と。でも彼は「そんなこと言わず、一緒にやろう」と言うので、皆でStanford Bitcoin Groupを始めたのです。

私たちは在学しながら2年ほど意義ある調査や啓蒙活動をして、人々に暗号資産について伝えて回ったり、構築作業をしたり、リサーチしたりしながら、素晴らしい時を過ごしたのです。

でも、最終的には、私は他の会社を始めるために手を引いて、この件には関与しなくなりました。

最初のサービスのリリース

Geoff Ralston
ええと、その会社というのが、Sidewire ですね。面白いことに、Sidewireは真実のニュースにフォーカスしたもので、たぶんビットコインよりも今日の社会に即したビジネスであると思うのですが、どうでしょう。

Andy Bromberg
そうですね。私はSidewireというプラットフォームを構築して、そして2014年にはこの会社を始めるため学校を辞めました。中途で辞めたのは、Tuckerという完璧なパートナーと巡り合えたと感じたからです。

共同創業者となったTuckerは政治のバックグラウンドを持っており、私自身はコンピュータサイエンスや何かを構築するという経験を持っていたので、私たちは共同で、政治の専門家がその日のニュースについて公に話をし、それを誰もが読んで参加できる、ただし同等のレベルでのディスカッション参加ではない、という形のプラットフォームを創りました。

私たちは、いわば余計な雑音の入らないTwitterみたいなものを作りたかったのです。専門家だけを集めてお互いでディスカッションさせるというのはどうか、と。そして実に2016年の選挙の頃にこれを実現しました。2014年から始めて、昨年2017年には徐々にクローズしたわけですが…

Geoff Ralston
きっと私たちにとって、ものすごく必要なものですね。

Andy Bromberg
ええ、今も必要だと思います。私自身、他にもシグナルをノイズから切り離すという、似たようなプロダクトを作っている多くの人たちと話す機会があります。そして、ここに参加している皆さんやオンラインで聴講している人々の中に、同じような試みをしている人がいることを願います。これは、重大な問題だと思うからです。様々な理由から、非常に難しい問題であるわけですが、それを誰かが解決したということ自体が、非常に重要だと思います。

Geoff Ralston
では、そういった皆さんのためにも… まあ、暗号資産の話は後でするから心配なく。

よろしければここで会社を興した際のことを少々話してもらえますか。そのために学校を途中で辞めたけれど、徐々にクローズした。何が起こったのですか。もしその経験から何か学んだ教訓があれば。

Andy Bromberg
はい、もちろん。起業はとても… 自分の素晴らしいアイデアがあり、それを何か形にするということは、いつでも一番素晴らしい部分です。そして実際にスタートした。Tuckerと私は出会い、話し合いを始めたわけですが、もともと共通の友人であったAdamから紹介されて、私が在学中に知り合いました。 そしてお互い、今日特に政治やその他の話題に関して、あまりにも多くのノイズが存在するという考えについて、話し始めたわけです。これを他の様々な意見と区別することができるか、またそれをどうやったら良いか、更にあらゆる方法を使って繰り返し伝達するということがどうやったらできるだろうか、と。

結局のところ、彼は当時とても良い仕事に就いていたし、私はまだ在学中だったわけで、多くの人が間違いなく「快適な環境から、大きなリスクに飛び込むようなもの」だと言っていたはずです。私は2年ほど大学が残っていたし、彼は仕事で成功していましたから。そして私たちは、それまで9か月間とりとめのない協議をしてきて、まだ企画半ば、学んでいる途中という段階ではあったけれど、「よし、自分たちのやりたいことが分かった」という状況に達したのです。

Geoff Ralston
そして、時期的には言わば…

Andy Bromberg
素晴らしいタイミングでした。ちょうど2014年夏の前で、選挙の前に準備する時間が取れ、そしてちょうど選挙期間に向けて開始できるだろうという考えでした。自分たちが構築したいことが認識でき、互いに「よし、始める前に何らかの妥当性の検証(バリデーション)が必要だ」と言ったのですが、それは自分らの気持ちの問題でした。

起業家が常にそうだとは全く思いませんが、私たちは「自分たちは互いに良い立場にいる。困難なことをやろうとしている。だから何か検証をしてみよう」という考え方だったのです。そして私たちは「お金を集めよう。そして資金を集めることに成功したら、やろうじゃないか」と。

そして約束というのが、夏前に資金集めができれば、私は夏の間そしてその後もフルにこの仕事に従事し、彼は仕事を辞めて一緒に従事するということでした。そして、私たちは資金集めに成功し、検証結果を得て、構築を始めたのです。

Geoff Ralston
エンジェル投資家から集めたのですか。

Andy Bromberg
ええ、ほぼ全てエンジェル投資家からの資金でした。素晴らしい投資家たちに出会えました。ここで教訓を得たわけですが、有難いことにネガティブな形で学ばずに済みました。

素晴らしい投資家を持つということは、ビジネスが上手く行っているときも、そうでないときも、常に大きな恩恵だということです。結局はクローズすることになるわけですが、その際も、私たちとアラインメントを共にし、人として気にかけてくれ、私たちがやっていることをサポートしてくれる素晴らしい投資家たちに恵まれたことは、当時非常に大事なことでした。

そして、彼らがどんなモチベーションを持って協力してくれるのか、それを良く掘り下げるということも、非常に大事でした。私たちは多くの人から投資を受けました。正確な数は覚えていませんが、44の投資家が私たちのシードラウンドに名を連ねていたとか、そんな感じだったと思います。

Geoff Ralston
多すぎると思ったことは無いですか。

Andy Bromberg
イエスでもあり、ノーでもあります。唯一、真剣にそう思った時というのは…

Geoff Ralston
お金は決して辞退したくないですものね。

Andy Bromberg
多すぎと言えば、そうですね。唯一、多すぎるなと感じた時というのは、全員にサインをもらわなくてはならなかった時です。ともかく、投資家たちの質というものが重要なわけです。彼らは協力的で私たちを困らせることもなく、がみがみ言ってくることも無かったです。私たちは毎月アップデート情報を発信して彼らがきちんと情報を得るようにしており、全く問題はありませんでした。44通ものDocuSignを送信するというのは、相当な数でしたが、でもそれ以外は、楽しいものでした。

Geoff Ralston
想像するに、40、50、60という投資家を相手にする場合、たとえ質の良い投資家だけをと思っても、1,2名は難しい人物がいるという確率は、かなり高いですよね。

Andy Bromberg
全くその通りです。もちろん、44名の中でも、全く完璧な人からそこまでは、という人まで、幅がありました。でも全体的には、素晴らしい方たちの集まりで、私たちは彼らに協力して貰えて本当に幸運だったと思います。

こうして私たちはスタートしたわけですが、この会社について端的に話すと、構築に約1年、その後ラウンドの最終部分を募りました。

一つの大きなラウンドでしたが、その最後の部分はSmart Capitalからの資金でした。彼らは素晴らしい投資家たちでした。彼らと一緒にビジネスをすることを、強くお勧めします。

そして彼らが我が社のシードラウンドを完結してくれました。そしてプロダクトをローンチし2年ほど運営したあと、最終的には昨年の夏に終了しました。2017年…、2017年中盤だったと思います。製品という側面からは…

資金調達して3年継続するものの、失敗する

Geoff Ralston
その話の前に。2016年の大統領選期間中ずっと続けていたわけですよね。あなたたちは、2016年11月に何が起こるか、専門家のディスカッションを元に、私たち一般人よりも結末を予測できていましたか。

Andy Bromberg
ええ、言えることと言えないことがありますね。

私たちは多くの賢明な方々と話しており…

Geoff Ralston
言えないことを言って下さいよ。

Andy Bromberg
面白いですね。そう、たくさんの…

Speaker 3
まさに実際起こったことなんでしょう。

Andy Bromberg
まさに、実際に起こったこと。それは..

Speaker 3
予期しなかった結果ということ。

Andy Bromberg
たくさんの賢い人々が参加していたこと、これはSidewireだからこそ成し得たことです。どんな人と会話していたかというと、素晴らしい専門家のチームが討論の場を作り、そこで上院議員、大統領候補者、レポーター、アナリスト、新聞記者たち等々、誰もが意見を求めたいと思うような人々、約1,000人もの人々を巻き込んで展開されました。非常に賢明な発言者、賢いコメンテーターたちが集まり、素晴らしい討論が展開され、発言が行ったり来たり、熱弁が繰り返され、面白いものでした。

そして私たちが気づいたことは、これは一つの市場であるから、このコンテンツに関しても需要と供給が、誰もお金を払っていないけれど、需要と供給があるのだということです。私たちが供給の流れを潰すと、もうどんなことをしても人々の関心を取り戻すことはできなかったのです。それはとても興味深いことでした。

だから、私たちの命題(thesis)として…スタートアップというのは、しばしば命題を掲げてそれを試すということだと思うのですが、私たちが強く心に思った命題は、創ってみれば人は集まる、ということではなく、「これは市場、二面性のある市場である。私たちが供給を、つまり賢い人々がニュースについて賢明な会話をするということを提供できれば、人々がやってきてそこに留まり、それらの会話に参加し続け、読み続けてくれるのだ」ということでした。

しかし、いかなることをしても、なぜだか分からなかったけれど、人々が戻ってきて留まるということは、私たちには実現できなかったのです。人々はやってきて一つ会話を読み、そのまま戻ってくることはありませんでした。そして最終的に私たちが感じたことは、人々に賢明な会話について関心を持たせるということ自体が、難しいということでした。人々はそういうことを求めているとは言うものの、それが直接の動機では無かったり、また実際に求めているものでは無かったりするのです。

Geoff Ralston
人々は、140か280文字のセンセーショナルなツイートを求めているんですよ。

Andy Bromberg
まあ、そうですね。それが真実でないことを願いますし、自分たちがツイート云々よりも深いことに携わっていたと思いたいし、またそういったものが、自分たちがユーザーを保持できない理由となったとは考えたくないです。

でも、最終的には、どんなに世界最高レベルの人々によるものすごく高品質な内容のコンテンツを提供しても、参加者を留まらせるということは、非常に難しかったのです。

会社を閉じる決断をする

Geoff Ralston
これはどんなスタートアップにとっても厳しい質問でしょうけれど、ある段階であなたは、これはもう、ちょっとひねる(トゥイーク)どころの問題ではないと判断したわけですね。PMF(Product Market Fit)の問題でも無く、たとえ10度、20度、180度ピボットしたとしても、それは無理だったということ。どうやってその問題を乗り越えたのですか?

Andy Bromberg
私たちは、10度や20度以上のひねり(トゥイーク)を加えてみました。関連するトピックを試し、短期間ですが購読サービスをやってみて、エンタープライズ関連のトピックを投げかけてみました。私たちは可能性を見極めていたのですが、最終的には、たとえこれが成功したとしても、自分たちが賭けるべきベンチャースケールのビジネスにはならないという結論に達しました。

この話を投資家たちと話し、全く正直に、透明性のある会話を投資家や仲間たちとし合ったのです。そして「オーケー、自分たちが思い描き2,3年の間作り上げてきた中核ビジネスは、人々の考え方がまるっきり転換するか、または自分たちが、ずたずたに壊れたものを修復できるようなすごい眼識を持つか、そうでない限りは上手くいかないのだ」ということになりました。

他のビジネスに関しては、可能性はありましたが、どれもこの中核ビジネスを始めた当時に自分たちや投資家たちが求めていたようなリターンが得られるようなものではなかったのです。そして当時、私たちは「これで生計を立てようとするよりも、ここで畳んで次のことを始め、そこからまたスタートしよう」と決めたのです。

そして、この決断には皆、深く理解を示してくれました。これもまた、良い投資家を持つという話に繋がります。このような決断において、人々が悲痛な声を投げかけることはありがちですが、我が素晴らしい投資家たちは、その際もサポートしてくれ、私たちは本当に恵まれていました。

Geoff Ralston
オーケー。Sidewireについての最後の質問です。もしも、トランプ大統領をもって“フェイクニュース”と呼ばせるに至っていたら、もしかしたら生き残っていたかもしれないと思いますか。

Andy Bromberg
そのことについては、たくさん議論しました。私はそう思わないです。

不可解なことですが、何時間議論しても、人々はやってきて参加し、そしてそのまま去って行くのです。「これは、自分が求めていたものではない」と言って。人々に聞いてみたら、「ああ、素晴らしいですね。内容はすごく良い。でも自分はここでたくさん読み込んだり、わざわざ購読したりはしないかな」と言うのです。ニューヨークタイムズ紙を毎日買って最初から最後まで読む人は、余り多くいないでしょう。私たちが求めていたのは、それと同じようなタイプの人であり、このレベルの言論に関心を持つような人なのです。

Geoff Ralston
何らかの形で習慣化しなくてはならないのです。これは、どんなスタートアップにも言えます。何らかのバリューを創造し、それをもって人々の生活に溶け込んでいかなくてはならない。でもニュースに関しては、それが難しいですね。

Andy Bromberg
140文字やら280文字の何がし、それをほのめかしているのでしょう。確かに。人々は、フェイクニュースだ何だといったものを発する、そういったおかしなものに関心を持つという要素はあります。

ただ一方で、一口サイズのものを習慣づけるのは、最も簡単なことです。私たちが人々に求めていたのは、真実の会話を読んで欲しいということでした。それはiMessageのフォーマットみたいに、お互いにメッセージを送り合い返信し合うような形で会話が展開されるものでした。一口大では無かった。相当内容の深い会話は、読むのに最低でも数分はかかるものでした。そして頭の良い人たちによる、賢明な会話であったから、何が話されているのかきちんと考えなくてはならないのです。

しかも、フォローしていなかった状態から突然戻って長い会話を読むというのは、相当ハードルが高いものでした。だから、あなたが指摘した通り習慣を作り出すのが重要なのですが、将来大きなものに発展しうる小さなことから始めるのが、一番やり易いですね。

人々がFacebookに費やしている時間を考えてみてください。でもしばしば、その習慣は、最初は些細なことから始まっているものです。Facebookは初期登録すると色んなことを提供してきて、10人と友達になろうとか、何人必要だ、こうしなくてはならない、等々があります。ごく簡単で、限られた時間でできる。そしてその習慣が根深く浸透してきて、そこからもっと大きなものに発展させられるわけです。

暗号資産に戻ってくる

Geoff Ralston
オーケー。それでは、ここでAndy Brombergのフェーズ2.5の話に移りましょう。暗号資産のルーツとまでは言わないけれど、スタンフォードでのもっと初期の頃に携わっていた分野に、少々戻ったということについてです。Naval、AngelListそしてCoinListという変遷ですね。どのような経緯ですか。

Andy Bromberg
はい、それよりも遡りますが、2014年に学校を辞めた時、暗号資産に熱狂的に関心を持っていたのです。Stanford Bitcoin Groupや友人、業界の人達とともに、多くの時間をそれに費やしていました。その当時、私が暗号資産に関して何かを始めることに躊躇があったのは、俗っぽい理由からです。

2014年当時は、自分自身決断できなかったのです。一つの暗号資産がずっと生き残っていくのかどうか、ビットコインがそれに該当し、そしてそれでお仕舞いなのか。それとも、他にたくさんの暗号資産が出てくるのか。それはイチかバチかの賭けだと思ったのです。

そう検討しつつ、「スタートアップは、既に高い失敗の可能性。それに加えて50%もの賭けを始めてしまって良いものか」と思いました。自分が賭けに出られるもの全て、失敗か成功かの結果につながっていましたから、「既にリスクのある状況に、更に50%の賭けをするのは、やめよう。今はやらないことにしよう」と思ったのです。昨年末か半ば頃に再開した頃までには…

Geoff Ralston
良い側面としては、失敗率が非常に高いので、50%増えてもほとんど違いはないということです。

Andy Bromberg
それも別の視点ではありますが、でも失敗の可能性を2倍にするのは…

Geoff Ralston
難しいですよね。

Andy Bromberg
あまりやりたくないことです。

そして2017年、私は「これからビリーバー(信念を持つ人)になろう。どのくらいが成功するか、誰も分かるものか。長い目で見て、少なくとも複数の暗号資産が成功するはずだ」と思ったのです。「どのくらいの数が成功しそうか、どのように考えたら良いのかということを、もっと議論しよう。今ならこの分野に、気持ちよく戻って行ける」と感じました。

CoinListについては、約1年前というか、1年ちょっと前に始まりました。ちょうど社内で1周年記念を祝ったところです。 CoinListは、誇り高きYCカンパニーであるProtocol Labsと、そしてAngelListのコラボレーションとして、Protocol Labs製品であるFilecoinのトークンセールを実施するために創設されたものです。

Geoff Ralston
もう少し砕いて話して貰えると、と思います。と言うのも、私自身考えているのですが… ここにいる人やあちら側で聴いている人の多くが暗号資産について理解していれば良いのですが。これについては、非常にたくさん、たくさん、そして更にたくさん書かれたり話されたりはしていますが、でもここで、簡単に暗号資産について概要に触れたいと思います。暗号資産とは何か、トークンセールとは、そしてトークンとは、またなぜこれらを売るのか、など。

Andy Bromberg
はい、はい。それではあと3時間は必要ですね、皆さん?

Geoff Ralston
それはなかなかの長時間ですね。

トークンとは

Andy Bromberg
そうですね、本質的には、トークンというのは希少なデジタル資産ですが、また後で、それら個々のものが何を意味するかを話します。最も一般的にはトークンネットワークの所有権を表す、希少なデジタル資産といったところです。

トークンネットワークがローンチされると、そこから誰の管理下にも置かれない状態になります。皆さんが知っているビットコインは、サトシ・ナカモトという仮名のもと創られました。それが彼なのか彼女なのか、または一人の人なのかグループなのか、分かりません。誰も、サトシが誰なのか分からないのです。そしてなぜか…

Geoff Ralston
不可解な話ですね。多くの人の富を築きまた消失させた、この重大なもの、そして将来の経済の基盤になるかもしれないもの、それについて誰もどこから発生したのか分からないとは、不可解ですよね。

Andy Bromberg
ええ。実際のところ現在ビットコインの時価総額は、1,000億ドルほどの価値があるんです。そして誰も、誰が創ったのか知らない。そして実は、サトシ自身がかなりの大きな数のトークンをどこかウォレットに入れて、そのまま一度も使われていないという事実があるのです。何十億ドルに値するビットコインがあり、でもそれを誰が所有しているのか、全く分からないのです。

Geoff Ralston
もし誰かが所有しているというのなら。

Andy Bromberg
そう、もし誰か所有者がいるとしたら。ということで、究極的には、考え方としては、トークンネットワークをローンチして世に出しても、誰も管理していない状況になるということ、これ自体起こり得ることなんです。 新しいトークンをローンチする際にこれらの会社が今何をしているのか、例えばProtocol LabsがFilecoinをローンチする際ですが、彼らの意図は、ネットワークを構築することなのです。

たくさんのコードを書いて、これを構築しなくてはならない。そしてそれを世に出す。そして彼らはもちろん、このプロダクトの中核ディベロッパーとして常にサポートしネットワークを改良していかなくてはならないのですが、ただ彼ら自身はそれを管理することは無いのです。 ユーザーが誰であれ、また固有のネットワーク内でどんなカテゴリーに属する人であれ、個々のユーザー達がネットワークをコントロールすることになるのです。

Geoff Ralston
Protocol Labsが何をしているかについては、また後で話しましょう。と言うのも、トークンと言うのは… Protocol Labsは、CoinListが最初に携わっていたトークンですが…これは異なり… ビットコインはそれ自体に価値があると言えます。新しい貨幣のようなもの。でもProtocol Labsのトークンはまた異なった価値に密接に結びついており、それは消費者に譲渡される価値なのですよね?

Andy Bromberg
ええ、そうです。そのことは是非話さなくては。

トークンに関して一般論として、もう一つ言及しておきたいことがあります。この類推は少々乱用されてはいますが、でも私が用いるには訳があるのです。大事な論点として、トークン及び、インターネットのように多くのトークンに動力を与えているブロックチェーン技術について考えてみます。

もし私が「Geoff, 私はあるウェブサイトを作って、ここにそのデータがある。これをどう価値付ける?」と聞いたとしたら、答えることはできないですね。なぜならそのウェブサイトがNYTimes.com なのか、Amazon.comなのか、Google.comなのか、Facebook.comなのか分からず、これらはそれぞれ全く異なったビジネスだからです。それら全てインターネット上に構築されているわけですが、それぞれの収益を見てみると、大きく異なるわけです。

これらのビジネスがどう構築されたと思いますか。あるウェブサイトをどう価値づけるかと聞くのは、意味のない質問なのです。もっと詳細に特定の使われ方やどうやって創られたかを知らなくてはなりません。

同じように、多くの人から「これらのトークンをどう価値評価しますか」という質問を受けるなど、こうした議論が多くなされているのです。私にとって、これはある意味回答不可能な質問なのです。なぜならトークンは異なる前提のもと作られ、異なるアプリケーションを持っているのです。

カテゴリーに分けて、「あるSNSのウェブサイトをどう価値付けするか」とか「あるニュースのサイトをどう価値付けするか」とか「あるCPGウェブサイトをどう価値付けするか」というのと同じように、個々のカテゴリーを価値評価することはできます。 これらの個々のカテゴリーについて考えなくてはならないのです。

そしてトークンとかブロックチェーン技術といった概念は、概念を超える概念のようなもので、これらの上に更に他のものが構築されて成り立っているのです。

もう一つ例示ですが、インターネットは情報を交換したりやり取りしたりするインフラであり、情報を動かしているわけです。一方、トークンやトークンネットワークは、価値を交換し、やり取りするインフラなのです。こうして初めて、プログラムに従って価値を取り引きするということができるわけです。

Geoff Ralston
この会話の中で、一つ腑に落ちないことがあるのですが… ウェブサイトをどう価値付けするかという質問に、答えてみましょう。

これは実際、価値付けのために常に使われてきた方法ですが、そのウェブサイトがある時間枠の中で生じさせるキャッシュフローについて聞かせてほしい、ということです。そして昔から、私たちは正味現在価値(NPV)などの経済学上の概念を使って価値を図る方法を編み出してきたものです。 でもトークンは、キャッシュフローに必ずしも結びついていないので、また異なるかと思います。

Filecoin の例

Andy Bromberg
そうですね。ではFilecoinについて話しましょう。あなたがおっしゃっていたように、一つの例として話します。因みにこれは、多くのカテゴリーの中のある一つのカテゴリー中、そのまた更に多くの例の中の一つです。

Filecoinについて、ここでは簡潔な説明をし、これがどう機能するのかについて話し、そして必要ならQ&Aの時にもっと深く話しましょう。

Filecoinはファイルやそのストレージのやり取りを可能にするトークンです。どうやってファイルを保管しやり取りをするか、そしてどうやってファイルを保管するための市場を構築するかという問題を解決するために作られました。どうやって、この問題を解決するためのビジネスを創設するか、ということへの最も簡単な解決策を考えた時、その解決策は、きっとAmazon S3のようなものでしょう。

もしGeoffが保管したいファイルを持っていて、私が「ファイル保管の助けとなるビジネスを始める」となったら、私は恐らくたくさんサーバを購入して、Geoffは私にファイルを渡すでしょう。そして私はそれらをサーバに載せる。彼がファイルを求めたら、私がそれを彼に戻す。そして彼が私に代金を支払う。こうして機能するわけです。

今日の大きなビジネスはこのように成り立っています。でもいくつか問題があります。一つ目は、誰かが代金を受け取るわけですが、私としては、ストレージの費用に加えて追加のコストを請求します。

でも他にも、センサーシップ(検閲)のような問題があります。私は彼のファイルにアクセスできるわけです。見ることもできるし、検閲もできるし、なんでもやりたいことをできるのです。 そしてあなたは、一人の第三者を信頼して、何も問題を起こさないということを信じているわけです。私は、ファイルを壊すこともできるのです。時にはダウンタイムがあって、ファイルを希望通り返せないかもしれない。

そこで「これよりもっと良い方法は無いものか」というふうになるのです。そして最初の改善策というのは、ファイルストレージのAirbnbみたいなものだと私は思います。「そうだ、他の多数の人々が、パソコンに余分なストレージを持っている」ということです。

Geoff Ralston
確かに。パソコンに余分なストレージがある人、手を挙げてみてください。

Andy Bromberg
ストレージ、フルでは無いでしょう。

Geoff Ralston
冗談なしで、手を挙げてみて。ほら、皆さん。みんなスペースに余りがあるでしょう。本当にパソコンのストレージがフルですか?まあ、それなら。

Andy Bromberg
じゃあ、ピボットしてみましょう。ファイルのためのAirbnbをやってみましょう。

私は「Geoff、ファイルを渡して。誰か探すから」と言います。私は全員と繋がっていて、それぞれのパソコンにソフトを持っている。あなたのパソコンにファイルを入れて、そしてGeoffが欲しいときに返すので、その時に声を掛けます。ファイルを取り出して彼に渡し、そして彼が私に支払う。そして私があなたに支払います。

Geoff Ralston
なるほど、手を挙げた少数の人たちが未使用のストレージを、Airbnbのようにネットワークにレンタルするわけですね。

Andy Bromberg
これは良い解決策でしょう。でも私が挙げた全ての問題を解決するわけではないです。

まず最初に、潜在ストレージを使うので、きっと少し安くなるでしょう。新しいサーバを買うよりは安いです。 でも、仲介者がいることは変わりません。私という間に入る業者がいて、倒産する可能性もありますし、ダウンタイムがあるかもしれないし、ファイルを検閲したり、見てしまうかもしれません。だから、あなたはまだ誰かを信頼してこれを利用していることになります。

Filecoinやこれを構築しているProtocol Labs、基盤となっているInterplanetary File System(IPFS)、なんともカッコいいネーミングですが、これらは、「これを解決する方法はあるか」ということを考えました。「信頼に基づいた仲介者なしに、Geoffとストレージを持っている他の人と直接結びつけることはできないものか」と。これが、Filecoinが解決しようとしている問題なのです。 彼らはいくつかの理由があってこのトークンを構築しました。

まず一つ目として、Filecoinは支払いのメカニズムとして使われています。つまりGeoffは自分のファイルを、Filecoinを通じて保管するため、あなたに代金を支払います。でも、ここには2点ほど、興味深い未解決課題があります。

まずは、もし誰かが悪いことをしたら、ということ。彼のファイルを壊したり、失くしたり、迅速に戻さなかったり。そこで、解決への最初のステップとして、彼のファイルを保管しているそれぞれの人に、Filecoinを保有させることです。もしあなたが余分なストレージを持っていたら、既にFilecoinを保有しているというか、持たなくてはならず、つまりステーキングと呼ばれることをしなくてはならないということになります。 トークンを得て、エスクローにきちんと配置します。

そしてあなたは、「ほら、ここに自分のトークンを置いている。何かをリスクにかけている。もし悪いことをして見つかったり、ファイルを早急に返さなかったり、または返却自体しなかったり、そういうことがあれば、自分のトークンを失うのだ」と言えるのです。こうしてあなたは、Geoffのファイルに何か悪いことをすると自分に不利になるという状態になります。これが、興味深い第一のステップです。

そして第2の問題にぶち当たるわけですが、それは、誰が審査するのかということです。信頼できる中央集中的な仲介者がいない場合、ファイルがきちんと保管されているか、それともダメにされているか、また、迅速にファイルを返却できているのか、どうやって分かりますか。

ここで、この非常に面白い解決策のステップ2が機能するのです。それが、外部にある何千人もの巨大ネットワークで、verifier(検証者)と呼ばれるものです。 それらは “proof of space time”と言われる複雑なことに関わっているので、ここでは私は彼らがやっていることを大幅に簡略して説明します。これについては、話そうと思えば何時間でも話せるくらいなのです。

一人一人が彼のファイルを適正に扱うようにするための簡単な解決策としては、1,000人の人たちがGeoffのところへ来て、それぞれに「Geoff、 君のファイルの46番目の文字は何?」「127番目は?」「196番目は?」と聞くのです。そしてGeoffはそれぞれに、「J」、「A」、 「K」、「そうでしょう?」と答える。そして、全く同じ質問を、ファイルを保管しているそれぞれの人に聞くのです。47番目の文字について聞いた人は、「あなたが保管しているファイルの47番目の文字は何?」と言い、あなたは「J」だと回答を得る。そして次にAとKについても同じように確認する。

そして突如、必要な数だけの検証者の回答が得られたら、そこで初めて、私たちは自信を持って、Geoffのファイルを保管している人は、それをきちんと扱っているのだということが言えるのです。そしてその際、ネットワークは「皆さん、お疲れさま」と言うわけです。

Geoffはあなたにファイルの保管に対する代金を払います。あなたは、賭けていたトークンを取り戻せるのです。Geoffは、もし希望する場合はファイルを取り戻します。検証者たちは、マイニングが成功したことに対しての対価を貰います。新しいトークンがネットワークにより鋳造され、検証者たちに報酬として渡されるのです。

Geoff Ralston
こうして時間が経つにつれ、コインの流通が拡大していくわけですね。

Andy Bromberg
全くその通りです。そして、ファイルを持っている人、ストレージを持っている人、そして検証者という3者がそれぞれに正しいことをし、逆に正しくないことをしないというインセンティブを持った市場ができるわけです。そして信頼に基づいた仲介者が存在しません。私が最初にS3の例を通して挙げた問題、どれも避けられる状況になります。そして、これらの最も重要なことに触れますが…その後すぐに、とりとめなくおしゃべりするのは止めますから。

ブロックチェーンやトークンはインセンティブアラインメントという考え方から成っています。これは、どうやったら信頼に基づかないシステムを作れるか、つまり誰も管理者なしで、お互いに信頼する必要がないというシステムをどう作るか、という問いかけなのです。そしてその方法とは、全員に適切にインセンティブを与え、この取引が成り立つ経済システムを構築することなのです。

Geoff Ralston
ブロックチェーンをベースにしたトークンについての、最も良く説明されたお話の一つだったと思いますよ。インセンティブアラインメントという考え方。

でも、他にもう一つありますね。排除するということ… 。ネットワーク内のメンバーに統一したインセンティブを与えるということで、中央集中的な権利者を排除することができる。つまり、S3の例で言うとAmazonをここから排除し、またはビットコインで言えば米国連邦政府を排除することができるということですよね。

Andy Bromberg
そうです。そしてここにはあらゆる理由があります。料金面からも言えます。仲介者が適正ではない手数料を取っている場合とか、センサーシップの問題であったり。仲介者が検閲をしているとか、監視されるのを心配するという問題だったり。いくつでも理由は挙げられます。でも終局的には、最も一般的で効果の高いブロックチェーンシステムの使い方としては、その通りで、仲介者を排除して、この信頼に基づかないシステムが取り引きに関わるべき当事者たちの間のみで存在できるようにするということです。

Geoff Ralston
究極的には、いわば民主主義的なネットワーキングということになりますね。

Andy Bromberg
ええ、あらゆるものの市場と成り得るのです。

Geoff Ralston
さて、このスタートアップスクールのみんなは、「暗号資産、すごい。トークンも、すごい、でも自分とは関係ないのでは?スターアップとどう関係があるのか」と思っているかもしれません。

投資の歴史について少々話しましたが、スタートアップ達が資金を集め、そして存在すること自体のためにも、トークンは重要な要素の一つであるという考えに到達しました。

ICO、つまりイニシャル・コイン・オファリングへの進化について、そしてCoinListがどのような役割を果たしているのか、少々話していただけると良いかと思います。

CoinList の役割

Andy Bromberg
はい。あまり聞きなれない概念かと思いますが、CoinListでは、トークンセールを運営しています。人々がトークンセールを行うために私たちと協働した際に、私たちに利益が出ます。素晴らしいことです。今日、トークンセールというのは、ものすごく、ほんのごく少数の会社にしか適していないと感じています。例えばStartup Schoolの確か、27,000ある会社の中で、ごく少数しかトークンを保有するのに適している会社はなく、27,000社全てがそうではないのです。将来的な視点で見ると、確かに意義あると思われる場合もありますが、今日の段階では、ほんの少数であると思うのです。

具体的なデータについてお話すると、CoinListは約1年存在しています。去年、公には5つのトークンセールを扱いました。外部からのお客が、2,500以上ものトークンセールをしたいということでした。帯域幅(bandwith)のキャパシティーの問題や、自分たちが対応できないということでもなく、私たちは「そのうち2,495のトークンが自分たちに適さない」と判断したのです。それは言わば…

Geoff Ralston
それはそれは、大そうな“靴のフィッテイング問題”みたいな感じですね。 「自分には合わないから」とは。つまり合法的じゃあなかったということでしょうか。

Andy Bromberg
まあ、そうかも… ペテンとか詐欺とかスパムとか、悪いことをする人達や、そもそも関与すべきでない人々もたくさんいるのです。

Geoff Ralston
どのくらい…

ちょっとだけ繰り返しになりますが、2018年これまでの間でどのくらいの額がICOで集められたのですか。

Andy Bromberg
いろいろ異なる推計があります。この業界というのはなかなか調査するのが難しい分野なんです。でも多分150億ドルくらいでしょう。大きな数字です。ベンチャーキャピタルよりも大きな規模ですね。

Geoff Ralston
きちんと聞けなかった人のために、もう一度繰り返しますが、2018年この時点までにベンチャーキャピタルとして会社につぎ込まれたお金よりも、もっと大きな金額がICOで集められたということになります。

Andy Bromberg
はい。人によっては「ICO業界にとって素晴らしい兆候だ。繁盛している」と言う人もいますが、私には、懸念すべきことと思われるのです。既に話したように、ベンチャーキャピタルはほぼ1世紀もの間、殊にテクノロジー分野の企業の、実質的な開発資本として存在してきたのです。既に発展を遂げた業界です。典型パターンが出来上がり、どのように創設されるべきかも良く分かっています。

ICOはたったの4年、実質的には2年しか経っていないこと、そして開発途中にそこまで急速に突出できたということ、これ自体、私はICO業界にとっては良い展望というよりは懸念材料だと思うのです。

Geoff Ralston
一つ確かなことは、需要はあるということ。なぜならそれらはスタートアップへの投資のプロキシ(代理となるもの)だからです。

一方で、人々が本来信頼すべきではないものを信じているという傾向を示しているかもしれません。

Andy Bromberg
ええ。その通りだと思います。そしてこうした機能を果たすのは、全く新しい業界であり、まさに真新しいものなのです。

これらの投資家たちにとってデューディリジェンスを実施することは、とても大変なことです。規範というのがありませんから。

どのトークンが成功してどれが成功しないか、現段階では解析されたデータが無いわけで、私たちは、まだ稼働始めてから時期尚早の段階なのです。そしてそれは、全て失敗に終わったとかいうことではなく、単に、分かるためにはまだ早すぎるということです。そして投資家たちは、デューディリジェンスをどうしたら良いか、あまり見識を持っていないのです。プロセスについて考えると…

Geoff Ralston
それが何を象徴しているのかも理解できていないでしょう。ペニー株を買う際には、これが何らかの形で、その会社の将来のキャッシュフローの中でリターンを求めるという返還要求を意味していると分かっています。確かに、これは理論上のことではありますが、でも少なくとも具体的な物事の上に成り立っているのです。でもしばしば、ICOは何の基盤もなく存在しています。

Andy Bromberg
でも、一方で私は、必ずしも質量的なものでなくとも良いと思うのです。YCが会社を受け入れるプロセスや、何年もの間スタートアップについて蓄積したデータや、何が成功して何が成功しないか、どんな良い兆候が見られたか、またその逆の兆候はどうだったかなど、そして応募を審査するプロセスなどを考えてみましょう。

こうしたことは、現時点ではトークンではできません。参照できるトレーニングのデータもありません。こうした背景から、「さあやろう、やろう。これでお金持ちになれる」と言ったように、とにかくアグレッシブな精神性が投資家に見られるようになったのです。こうして、適正な額を超えてお金が注ぎ込まれることになったのだと思います。

そして、それは業界の発展のためには大事なステップなのかもしれません。このような資金の注ぎ込みによって、勝ち続けるために必要な資本を勝者に提供する、そしてその後、進行する過程で、どうより適切にデューディリジェンスを行うべきかを検討するということです。でも確実に、これまでにICOに注ぎ込まれた大多数のお金は、将来成功しないICOに払われているのです。

ICOとは

Geoff Ralston
ここにいる皆さんへの啓発のために、ちょっと立ち戻って「ICOとは?」ということを話してくれませんか。トークンとは何なのか。CoinListは何を… CoinListをなぜ使うのか。使わずにはできないのか。

その後、あなたが話し始めた課題、つまり「どんな人がICOを始めることを検討すべきか、また検討すべきでないのはどんな人か」に移っていきましょう。

Andy Bromberg
はい。なお、初めての人へ向けて、用語について話しますが、私はトークン、コイン、暗号通貨、さらには暗号資産というのを同義として使いがちですが、人によっては少しずつ異なる定義を持っています。私自身は、これらすべてを同じように使うことが多いです。

そしてICOとトークンセールは、私の目からしたら、同じようなものです。これらは、概ね同義語となっています。

ICOまたはトークンセールについてですが、ICO、つまりイニシャル・コイン・オファリングとは、新しいネットワークが創設される段階で、会社が初めてトークンを発行し、そのネットワークがそれを流通させようとしている際のことです。そして一般的には、会社はある2つのことをするためにトークンセールを実施します。

一つ目は、将来的なネットワークの発展と長期的にそのネットワークを支えるための資金を調達するため。2つ目は、早期にこれらトークンを流通させること。なぜなら、例えばFilecoinのようなネットワークは、人々がファイルの保管のやり取りのために保有してくれない限り、またそこにインセンティブアラインメントが無い限り、機能しないからです。だから、最初にこれらのトークンを流通させる手段が必要なのです。

その手段の一つは、トークンを売るということです。そこで彼らは行った先で販売を行い、投資家やネットワークに参加したいと思っているユーザーにトークンを売るのです。

Geoff Ralston
そうですね。これはトークンが無い限りネットワークが機能しないというケースの場合ですね。

Andy Bromberg
ええ、その通りです。そしてFilecoinはCoinListが最初に支援したトークンセールです。彼らは驚異的な2億500万ドルをイニシャル・コイン・オファリング (ICO) で集めました。その後私たちは、Blockstack、PROPS、Origin and TrustTokenなど数社携わりました。CoinListはこれらの小規模な会社のトークンセールにおいて、ロジスティクス面でサポートします。なので、さまざまなコンプライアンスが必要になりますが、その点の詳細についてはここで触れる必要は無いでしょう。ただ、KYC(Know Your Customer)だ、顧客を知ることだ、それから対マネーローンダリングだとか、そういったキーワードはよく耳にするわけです。

Geoff Ralston
弁護士の協力が必要ですね。

Andy Bromberg
たくさんいます。それで、コンプライアンスの部分をカバーしているんです。私たちは取り引き、つまり支払いのしかたや入金の件などを扱います。そして他にも…

Geoff Ralston
米国証券取引委員会への対応もしっかりしないと。なぜなら…

Andy Bromberg
その通り。

Geoff Ralston
既に深く関与しているのですよね?

Andy Bromberg
取り締まるための質問が、公開、非公開ともにたくさんあって、正しく答えるにはどうしたら良いか知っていないといけないんです。こうしたプロセスにおいて、それらの会社のサポートをします。

それから、いくつかの取引を公に販売したり、自分たちのプラットフォームに属する投資家にオファーしたりします。他にもサービスを提供しており、さきほどのコンプライアンスみたいなサービスを、トークン発行者たちに行うようなマーケティングのサービスは無しで提供します。

トークンをユーザーに提供するAirdropsというプロダクトも展開しています。これから、このAirdropsというキーワードを何度も聞くことになりますよ。

これは、提供する手段で… 先に、ICOは資金集めやトークンをユーザーに流通させるための手段であると、話しましたね。

時に、資金集めは不要で、単にトークンをユーザーに流通させることだけ希望していることがありますね。その場合はどうしますか。贈呈するのです。

そして個人的意見として、最初のAirdropの例、もしくはそのうちの一つと思っているのは、PayPalです。当初Paypalは、新規登録すると10ドルのPaypalクレジットを貰えました。

もちろんトークンでは無いですが、「自分らはネットワークを持っている。このネットワークを人々に使ってほしい。使い始めてもらうために、多少のお金をあげよう。そこで送金が可能となり、友人への送金や代金の支払いに使える。徐々に人々はこれに依存するようになり、そしてもっと多くのお金を入れることになる」と言う狙いなのです。 これが、Airdropが行っていることです。これは言わば…

Geoff Ralston
そして、それは上手く行った。

Andy Bromberg
正に、成功しました。

Geoff Ralston
そう、すごく上手く行ったのですね。

Andy Bromberg
はい、トークンを無償提供し、まず人々がそれをネットワーク上で使い始めるようにする。そして願わくば、それらのユーザがそのネットワークのファンになり、もっと自らの資金を積んで使うようになるということです。

Geoff Ralston
それでは、可能性として、Startup Schoolの中では、誰がトークンを使って新たなネットワークを開始し、資金集めを目指すべきだと思いますか。また誰がそうすべきでないと思いますか。

Andy Bromberg
今日、因みに私は今日と、明日または将来を立て分けていますが、今日の段階で、このテクノロジーの最も価値のある適用は、お互いを信頼したくない当事者たちがいて、更に中央集中型の仲介者も信頼したくないという場合であって、こういう場合にこの信頼に基づかないシステムを構築する必要があるのです。これは、多くのビジネスには当てはまりません。でも、もしあなたが…

Geoff Ralston
どんな製品であれ、それが機能するために、信頼というものがある意味不可欠である場合、ということですね。

Andy Bromberg
その通りです。もしトークンに向いていないビジネスの候補を挙げるとしたら、あまり適していないのは、Airbnbです。

表面的には良さそうに見えますね。「どこかに滞在したい。面識のない人が、私が泊まれる家を持っている。その人は信頼しない。会ったことないし、なんの関係もない人。でもAirbnbは信頼できる。だからこの仲介者を使おう。Airbnbは問題なく信じられる。いつも使っているし。Airbnbが審査をして、保険とかその他もろもろきちんとして、私をサポートしてくれるし、問題ない。Airbnbは信頼できる。よし、使おう」と。

こうなると、トークンを使うには向いていないということになります。でも、あなたが、あちら側にいる人は当然のこと、仲介者までも信頼しないというシステムを始めるとしたら、その場合はトークンが適しているかもしれないです。そして私が…

Geoff Ralston
Airbnbのロシア版なら、もしかしたら。

Andy Bromberg
確かに。

Geoff Ralston
それには、(仮想)コインを使いたいと思うかもしれないですよ。

Andy Bromberg
全く可能性有りですね。本当に。

機関に対する信頼というのは、衰退しつつあります。これには、様々なリサーチがなされていて、Edelmanは、信頼に関するとても良い調査を毎年やっています。ということで、もっと将来的に発展するという考えもあります。

でも、私が、あなたの質問に対してたくさんの例を挙げて、具体的に誰のビジネスがこれに適している、是非トークンを始めましょう、というような答え方をしないのには、理由があるのです。というのも、今日それほど多くのビジネスが当てはまらないからなのです。

トークンで成功するかもしれないというカテゴリーにビジネスを当てはめようとするのではなく、トークンを持つことが特に価値があるという非常に限られた特定のケースを探すことです。

Geoff Ralston
質問の時間を残しておきたいと思っていますが、次の話に進む前にお願いしたいのですが。

過去にあなたは、スタートアップの立場から、また投資家としての立場から、トークンに対して、他のさまざまな転換株式(コンバーチブル)はどうか、賛否両論について話してくれました。例えばYCが展開するSAFE(Simple Agreement for Future Equity)ですが、これは恐らく今日ほとんどのスタートアップが資金集めのために使っているものですね。この比較について、少しお話できますか。

Andy Bromberg
はい。ここにいる皆さん、特にこのクラスを取っているなら、伝統的な資金調達については既にたくさん勉強しているでしょう。例えば…

Geoff Ralston
もしまだなら、学ぶことになるはずです。

Andy Bromberg
全くその通りです。それらの講義は、見逃さないように。

例えば投資家保護に関して。投資家はどのような権利を持つのか、どのように取り引きすべきか、どうやって彼らから資金集めをするか、ということなどです。対面で話す、フォローアップをする、電話を入れる等々、これらは昔からある資金集めのやり方ですが、トークンについては、こうしたことの多くが最初から省かれるわけです。

最も大きな違いは、最初に話したトークンとは何かと言う話に関連するのですが、トークンを買う際、その会社はネットワークをコントロールしないということです。会社はこのネットワークをリリースし、これが世に出る。そしてあなたがそのネットワークのトークンを所有し、ひいてはネットワークの一部を所有するということになるのです。

これは、あなたはその会社に対し、トークンへの投資家としては何ら形式的な関係性は持たないということを意味します。会社としては、実質上、トークンを所有する投資家に対し、何ら形式的な関係性は持たないのです。

これまでに話したように、スタートアップには良い投資家と悪い投資家がいるわけですが、例えば、彼らは電話してきたり、監視したりするし、またあなた自身最新情報を送る義務があり、取り引きの際には書類にサインしてもらうなどの義務も発生するわけです。

人々が、ある会社によるトークンネットワークを買った際、こうした義務が無くなります。そして、この対等性については、確実に良い面と悪い面があります。

スタートアップとしては、ずいぶん楽になるということ。人々はあなたのビジネスに対して何ら利害関係を持たず、あなた自身が会社を好きなようにできます。彼らは何ら管理権を持っていません。

不利益な点としては、彼らは必ずしもあなたとアラインメントを共有しているわけではないことです。エクイティの良い点は、アップサイドであることです。誰かがエクイティで勝てば、通常はみんなが勝つことになります。きわどいケースもありますが。インセンティブが一致しており、それは素晴らしいことです。

トークンでは、インセンティブに関しては、投資家はその会社とアラインメントを共にしているとは限りません。だから、もしトークンが何らかの理由で急騰して急上昇したとしても、多額を出資した投資家は、ロックアップを持ちません。投資家たちは、ただ「手を引こう。現段階で10倍。手を引くのが得策だろう」と言えるのです。

そして彼らがトークンを捨てると、二次的効果として、価格にダメージを与え会社にもダメージを与えます。このようなアライメントの失敗(ミスアラインメント)が起こるのです。彼らがあなたの会社に利害関係を持っていないから、あなたは勝つ、そして逆に彼らがあなたの会社に利害関係を持たないが故に負ける、ということが起こるのです。

投資家の視点からは、まるっきり逆面となります。ある側面として、会社に対して何の義務も負わないので、何でも好きなことができます。単に、彼らがリリースしたネットワークにトークンを持っているというだけです。

でも一方で、何が起こっているのか、よく見えないという点があります。毎月のアップデート(進捗報告)もなく、創業者に一度も会ったことがなく余り関与しないかもしれないということです。スタートアップの資金調達では、一度も会ったことの無い人に対して資金提供をするということは、あまりありません。時には、特定のことでそういうケースもありますが。

Geoff Ralston
ええ、そして普通はそういうことをしないように助言します。

Andy Bromberg
普通はそうしないようにアドバイスします。トークンの世界では、何百、何千という投資家が、ウェブサイト上でトークンセールにサインアップをしました。CoinListはこれを間で手助けします。人々は、創業者に一度もあったことも話したことも無いという状況で、投資をしていきます。

Geoff Ralston
今すぐにCoinListのページに行ってトークンセールに新規登録することができますね。

Andy Bromberg
もちろん、できます。ただ、残念ながら承認された投資家のみが参加できるのです。あいにく、サイトの規則です。でもその通りで、創業者とは全く関係ないという状況がありうるわけですね。繰り返しますが、お互いにとって良い面と悪い面はあります。

Geoff Ralston
投資家にとっては素晴らしいことです。というのも、スタートアップの会社に投資すれば、何らかのリターンを得るまでには長い時間がかかります。5年や10年など。でもトークンでは、明日トークンが上がれば、投資して翌日に売却してしまうことができる。

Andy Bromberg
その通りです。なお、私は、コンバージェンスが始まっていると思っています。

話したように、トークンはまだ歴史が浅い。このことは、自分自身にいつも言い聞かせていることです。本当に若い業界です。ベンチャーキャピタル寄りに、多少収斂傾向にあります。

私が説明したような自由なインセンティブアラインメントではなく、もう少し厳しくしようと、投資家たちのべスティングスケジュールやロックアップが見られるようになってきています。 そしてこれらの多くが同じようにしてコンバージすると思います。ICOマーケットの序盤に、一度複数社が上昇したことがあります。彼らは「一つ巨大なトークンセールを打ち立てるぞ。それでおしまい。その後は資金集めをしなくて良いはず」と考えたのです。

昔からあるシードシリーズA、シリーズBみたいな、段階的なものがより多く見聞きされるようになってきています。だから、将来的にはより一層ベンチャーキャピタルのような様相を見せることと思いますし、一方でまだそこには、何を買うか、そこに関与している人々同士の相互関係についてどんな意味を持つかといった点で主要な違いが存在しているわけです。

Q&A

Geoff Ralston
素晴らしい。それでは、残りの時間で、今日の話題の中で何か質問があれば。オーケー。一番前の方。

Speaker 4
はい。2つ質問があります。一つ目はベンチャー投資家についてです。あなたは良い投資家について話しましたが、良い投資家を見分けるための3つのポイントがあれば、教えていただけると幸いです。

Geoff Ralston
オーケー、オーケー。待ってくださいね。一つ一つ答えましょう。あなたの視点から、何が良い投資家の特徴でしょうか。

Andy Bromberg
はい、それでは、2つほど特徴について話し、それからそれをどう見分けたら良いか話します。

投資家にとって非常に大事なことだと私が思うのは、一つ目は、あなたが起業家としていかなる目標を持っているにせよ、それに対してのアライメントということです。ここにいる人たちのゴールは、皆同じと言うことではありません。人によっては「自分にとっては100憶ドル稼ぐこと、そうでなければ倒産。とにかくそれに尽きる。そして自分は常にその目標に向かって判断を下す」と言うでしょう。

また別の人は「聞いてください。もし私が年収1,000万ドルのビジネスを構築できたら、大満足です。それを後押ししてくれる投資家を探しています」と言うかもしれません。もし投資家がその目標にアライアンスを持っていなければ、あなたは大変なことになるでしょう。というのも、いつかあなたは投資家が求めることと反対の決断をしなくてはならなくなるからです。だから、投資家がしっかりあなたのビジネスとアラインメントを持っていることを確認しなくてはなりません。

2つ目は、あなたが投資家たちとどのように接するかです。やり取りは親睦的なものかということです。もしかしたらとても濃いやり取りかもしれないし、彼らはデューディリジェンスを行うかもしれない。お互いのやり合い、激しいやり取りがあるかもしれない。

でもあなたは、彼らとやり取りした後に、気分良く帰っていくことができるだろうか。もしそうできないなら、それは良くない兆候です。なぜなら、ポジティブな状況でなければならない、そんな時に彼らを相手にするからです。

1+1が2でなく3になるような、そんなパワーを与えてくれるようなチームを作ろうとしているところです。もしあなたが「これは、何かが違う」と感じながら帰るようなら、それはとても良くない兆候です。というのも、こんなことは言いたくないですが、どんなことでもいつか上手くいかない時が来るからです。

ビジネスを畳むことになるとかそういう話ではなく、いつか難しい壁にぶち当たることがあるでしょう 。そして投資家が、物事がうまく行っているときにさほど良くなくて、それなのに一緒に働いて素晴らしい何かを作り上げようという話をするのでは、物事がうまく行かくなった時には、その投資家は本当に酷くなるでしょう。だから、私自身、そういうことに気を配っています。これらは、私にとって2つの一番大事なポイントです。

もう一つ最後のポイントとして、よく議論されていることですが、付加価値という考え方です。 全ての投資家が全く完璧で、あなたのビジネスに大きな素晴らしい変化を与えてくれる必要は無いです。彼らがアライアンスを持って、そしてあなたは資本が必要で、彼らもその投資が良いものだと思っている、それで良いのです。必ずしも、全てをやってくれるような人は、必要は無いです。でも、そういった条件に沿う投資家と出会えたならば、きっと、それが何であれ意義ある紹介や顧客フィードバックを得られるでしょうし、また、人材を雇うことに繋がるなど、それは非常に価値あることなのです。

最後に付け加えたいのは、資金調達に関して余りにも軽視されている点と言うのは、投資家に対するデューディリジェンスとリファレンスチェックです。ほとんどの人がやっていないけれど、これは本当に意義あることです。

ある投資家と話し、核心に迫ります。あなたは言います。「Geoff、素晴らしい相互関係ですよ。あなたと一緒に仕事ができることに、とてもワクワクしています。私たちは何か素晴らしいことを成し遂げられるはずです。あなたを、私の投資家の一人として、是非一緒に働きたいと思っていますが、どうですか。あなたが投資したことのある誰かに話してみたいのですが。あなたの働き方とか、将来的にどう一緒にやっていくべきかなどを知りたいと思っています」と。

最初に、もし相手がノーと言ったら、それはとても悪い兆候です。だれかがリファレンスチェックを断ることがあったら、それは悪い兆候なのです。基本的に、相手は了解するでしょう。そうしたら、彼が送ってくる人と話してみることです。できれば、その人以外に他にも過去に投資を受けた人物と2人くらい話してみてください。

そして彼らに、こういった質問を投げかけるのです。投資家を持ったことのあるビジネス創業者なら誰しも、とても直感的な意見を言ってくれるはずです。例えば「Geoffは素晴らしいよ。もっとも大変な時期にいてくれたんだ。非常に大変だったけれど、彼はオフィスに来て、私たちが商品戦略を編み出すのを、手助けしてくれた。そしてこんなことも、あんなこともあった」というように。

そうしたら、あなたは彼のところへ戻って「Geoff、私は更にわくわくしてきましたよ。なぜなら何人もの人と話して、彼らが、あなたがこう手助けしてくれた、ああいった手助けになったと、口々に教えてくれたからです。是非一緒にやりましょう」と言うのです。これが、投資家との会話を終えるのに一番素晴らしい終わり方ですね。そしてお金を受けられる可能性も最も高い。

さらに、あなたは、自分が求めている相互関係に沿っていろいろと見通しが立てられているでしょう。だから、私だったら必ずこのように、人々から話を聞きます。時間はかかりますが、一緒に働きたいと考えている投資家たちに対しては、すごく意義あることです。

Geoff Ralston
黄金のように価値のある回答でしたね。ぜひとも、このAndyの賢者の言葉にしっかり耳を傾けてくださいね。はい、次の方どうぞ。

Speaker 5
ブロックチェーンの暗号資産に携わっていますが、核の冬の時代に入っている今、CoinListはピボットしてSTOをサポートするようになるのか、それともICOのほうに残るつもりでしょうか。

Geoff Ralston
オーケー。質問は、暗号資産の世界が核の冬の時代にある今、CoinListはSTOへピボットするのか、それともICOとの取引のみに留まるつもりか、ということですね。

Andy Bromberg
少々かみ砕いてみますと、STOは、セキュリティ・トークン・オファリングのことです。 前に話しましたが、ブロックチェーンやトークンの構造について、様々なものをその上に構築することができると説明しました。よく話題になっているのが、一般にセキュリティトークンまたはアセット・バックド・ トークン(資産に基づいたトークン)と呼ばれるものです。

これは、社会に実在する既存の資産、例えばスタートアップエクイティや不動産、金の延べ棒だったり、何でも良いのですが、これを取りあげて、その資産を象徴するトークンを作ることです。例えば、1トークンがこの建物、もしくは建物から得られる収入の1パーセントに値する、とか何でも良いのです。

そして今の質問ですが、私たちはこれまで専らネットワーク上にのみ存在して実際の物理的な世界には存在しないトークンネットワークのICOをサポートしてきたわけですが、私たちが上述のようなものをサポートするつもりがあるのか、ということですね。

Geoff Ralston
うーん、STOのICOをサポートするということは、できるんじゃないでしょうか。これは何とも…

Andy Bromberg
全くその通り。ちょうどそのことを言おうとしていたのです。私たちは、確かにSTOをサポートすることを検討しています。これをピボットだとは思いません。 私たちは、自らをトークンの販売をサポートするためのインフラであると考えています。

これまで、一般的にプロトコルトークンと呼ばれる、ネットワーク上でのみ機能するトークンを扱っていました。でも、私たちが提供するトークンが、ネットワークに基づいたものではなく、資産に基づいたものであっても、プラットフォームとしての私たちのビジネスにとっては、何ら違いは生じないのです。

ただ私たちは、これが私たちの投資家基盤に適するものか、そしてまた本当に実現しうるものかということについて、良く考えなくてはなりません。でも究極的には、それらのセールスを運営するプロセスは、全く同じです。

Geoff Ralston
すごいですね。はいどうぞ。

Speaker 6
トークンは通貨なのですか。

Andy Bromberg
トークンは通貨か。既定の回答をしますと、場合によるということです。

実際的な回答は、イエスでもありノーでもあるということです。口語として使っている、何かの対価としての貨幣という意味では、そのまま当てはまります。これらトークンのほとんどは、このカテゴリーに当てはめられるような何らかの物体です。例外はありますが。

一つの例として、私はよく、ビットコインの価値について、価値の貯蔵(store of value)だと言っています。私はビットコインをデジタルゴールド的な概念として見ています。 ゴールドは貨幣ではありません。物と交換するために使うことはできますが、それには余り適していません。それより、価値を貯蔵するために使われるのです。

それに価値付けをしたり、その価値を取り上げたりするのです。これと同じことがビットコインの価値に言えると思うのです。それは、全てのトークンに当てはまることではありません。多くのトークンが、この、何かと交換するというカテゴリーに当てはまります。

でも、口語的な定義はさておき規範的な立場からは、答えはほぼノーとなるでしょう。でもある特定の場合には、イエスかもしれませんし、やはり個々の特徴により異なるということでしょう。具体的な例を述べたいと思います。

Geoff Ralston
ビットコイン自体、複雑なものですね。例えばビットコインキャッシュがありますが、これは貨幣かもしれません。

Andy Bromberg
これは全く異なるトークンですね。ビットコインキャッシュは…

Geoff Ralston
でもこれは、また異なった貨幣ですが…、これ以上は掘り下げないほうがいいですね。
はいどうぞ。

Speaker 7
質問ですが、もしAirbnbが始めたら、ICOの候補(candidate)としては適正だと思いますか。

Andy Bromberg
もしAirbnbがやったとしたら、ということですか。

Speaker 7
はい、もしAirbnbが始めるとしたら…

Geoff Ralston
もしAirbnbが今日始めるとしたら、ICOの候補としてはどうでしょうか。

Andy Bromberg
必ずしも適しているとは思いません。また、Airbnbを信頼するとかの話に戻りますが、私個人的には、Airbnbを介して誰かの家を借りて、それで満足します。仲介者が減ると安くなるので、そういう意味では成功するものという議論があります。

でもAirbnbは消費者としての私には、価値あるサービスを提供してくれ、私はそのサービスへの対価を喜んで支払います。たくさんのサービスを提供してくれますし、Airbnbが取り引きに対して理にかなわない料金を取っているとは思いません。彼らはネットワークが必要でしょうか。私はそうは思いません。それは面白いサービスとなり得るでしょうか。競合し合うようなサービスになり得るでしょうか。もちろんです。

でももし私がこのサービスを今日始めるとして、家主やアパートの持ち主たちを宿泊希望者と結び付けたいとしたら、たぶん最初は中央集中的な方法を取るでしょう。暗号資産の世界に目をつけながら、将来的に機会があるかどうか判断しながら。

最後に言いたいのは、今日、どれだけトークンネットワークを構築することが難しいことか、軽視されているということです。非常に難しく、そして歴史は浅い。ツールもなく、開発は非常にハードルが高い。

Augurは大規模に正式なローンチをした初めてのICOでした。3年かけて、ちょうどこの夏にローンチをしましたが、そのために費やした労働量というのは、想像を絶するものです。

Geoff Ralston
この場合、信頼に基づかないネットワークを構築するために、Airbnbで手続きやインフラを作っている実際の人間を取りかえる必要がありますね。

Andy Bromberg
しかも、前例の無い状況で。そのこと自体、できるだけ少額のお金を集めて、あるだけの資金で前に進むというビジネスモデルになるわけで、それは厳しい転向です。

Geoff Ralston
でも、暗号資産の世界に「中央集中的な権力は良くない、全て信頼に基づかないネットワークに変えるべきだ」と主張する派閥があると言っても良いと思いますか。

Andy Bromberg
もちろん。もともと多くの暗号資産がアナキズム的自由主義の考え方に基づいていて、それは初期段階では非常に大事なことだったと思うのです。なぜなら、それが最も中核的な使われ方だったからです。仲介者を持つことを避け、こうした哲学を持って業界を盛り上げることは、とても大事なことです。

でも、真に実用的なビジネスの視点から考えると、全く異なります。共通する点はあるかもしれませんが、100パーセントではありません。

Geoff Ralston
はい、あちらの方。

Speaker 8
2つの質問になるかもしれませんが…

Geoff Ralston
一度に一つだけでお願いします。重ねて質問していくのは面白いですが、他にもたくさんの人が質問したいと思っているので。なので、どうしても答えてほしい質問のほうを聞いてください。

Speaker 8
分かりました。価値と情報の違いについてです。情報は情報のためにあり、トークンは価値の貯蔵のためにあると言及されましたが、この2つをどうすみ分けるのでしょうか。

Geoff Ralston
価値と情報を、どう区別するのか。

Andy Bromberg
はい、これはとても重要な質問です。根本的には、情報の中に価値を表現することができると思います。例えば、トークン無しのオンライン取り引きを行って、価値を動かすことができます。

でも実際にはそれは、価値を象徴的に表したものを動かしているだけで、それを動かすために他のいろいろな実体を操作していることなのです。 私がクレジットカードを使ってインターネット上で支払いをすると、確かに、そこではただ情報が動いているだけです。認証コードを送っているだけですね。私のCVV(カードID)が送られて、取り引きが生じる。

究極的には、一つのカード発行元にこれが送られて、そこに「Andyがこの小売りに10ドルを消費しました。彼のカードから10ドル引くか、10ドル借りにしてください。そして小売り側の方、こちら10ドルどうぞ。これであなたのサービスへの対価が支払われたということになります」という情報を伝達するということです。

ここで起こっていることは、インターネットは、実際はその価値自体を送信したわけではないということです。両側のそれぞれの個体は、価値を片方から逆側へ押し動かしました。それをインターネットという架け橋のもと行ったかもしれませんが、その価値を維持していたのは彼らです。

このトークンのエコシステムで面白いところは、価値はネットワークの中に内在されているということです。 そこに存在する個体が、その価値をあなたのために保持している形です。クレジットカード発行者がいて、私の利用状況をチェックして料金を回収するということはありません。そして、一方に銀行が存在し小売り側に払うべきお金を保管しているということもありません。

その代わり、全ての価値はネットワーク上に表され、人々は実際その価値を所有しているのです。ということで、私はそのネットワーク上に自分のキーを持っていて、それらのトークン、もしくはトークンを象徴するものを所有しているのです。私は、単にその価値を持っている他の人へアクセスするための情報を持っているということでは無いのです。

だから最終的には、個人的な例として挙げてみると、私の銀行口座にあるのは私のお金です。でも、実際には本当に私のお金ということではありません。銀行はお金を持っていて、私はそのお金にアクセスするための情報を持っているというだけです。

トークンの世界では、私は実際にその所有権を持ちます。それらトークンは私のトークンであり、私はそれらに直接アクセスするためのキーを持っているのです。そして他の誰も、私のトークンに関して何もすることはできません。情報を送信するのではなく、価値を送るということについて議論する際、それはノード同士の直接的な相互作用の話になります。

私がトークンでGeoffに支払いをすることはできますが、他の第三者、誰もそれに関与することはありません。一方で情報の場合、第三者が間に入り情報に従って当事者間でお金を動かすことが必要になります。

Geoff Ralston
はいどうぞ。

Speaker 9
私は[inaudible]プロトコール。分散化していて[inaudible]プロトコールに上位互換性(backwards-compatible)が…、とてもアップグレードするのが難しいです。ネットワーク上にスプリット(分裂)を生じさせているわけですね。

Geoff Ralston
これは、どちらかというとネットワークの硬直性に関するコメントという感じですね。一度上げたら、その後変更したりアップグレードしたり、他のものに対して上位互換性のあるようにするのが難しいということ。これに対してどんな意見ですか。

Andy Bromberg
イエスでもあり、ノーでもあります。初期の頃は、ネットワークのアップグレードを可能にするために構築できることが少なく、そのため一度上げたら変更を加えるのが難しく、特に変更を崩すことが難しくなっています。

今はもっとたくさん、こうしたことができるようなインフラが作られています。ですから、私はこの点は、将来について心配はしていません。これらのネットワークが簡単にアップグレードされるようになる段階に、必ず到達するものと思います。

と同時に、またこの概念に立ち戻りますが、どの会社もネットワークをコントロールしていないということです。だから、会社が独断的に変更を加えることはできません。もし会社が変更を加えて、ネットワークのユーザーたちがそれに賛同できない場合、ネットワークはフォーキング(分岐)ということを行います。

これについては、何時間も話せるくらいですが、つまりは2つのネットワークに分かれるということです。そしてここでビットコインやビットコインキャッシュが関わってきます。

もしFacebookが変更したら、私は、過去の変更に戻る新たなFacebookを作ることはできません。それは有り得ません。私はFacebookのインフラやコードの全てにアクセスできるわけではありません。

暗号資産の世界では、例えばProtocol Labsが、評判が良くなかったFilecoinに変更を加えたら、人々が過去の全ての取引履歴のコードをたどって、ちょうどその変更が加えられる直前のところに戻って再出発することも可能なわけです。その結果新しいバージョンのFilecoinができ、Filecoinキャッシュ…

Geoff Ralston
そしてProtocol Labsの管理下ではなくなってしまいますね。

Andy Bromberg
全く関与できなくなります。またインセンティブアラインメントの件になりますが、誰かがこのプロトコールに書き込んで変更を加えることはあり得ますが、その場合は他の全てのユーザーが、インセンティブ面において一致し、分岐するのではなく、その同じ新しいネットワークに参加するようにしなくてはなりません。

Geoff Ralston
もしくは、逆にフォーキングすることもでき、そしてその分岐したネットワークが上位互換性を持っており、新しいほうは…

Andy Bromberg
その通りです。

Geoff Ralston
またその逆もあり得ます。分岐できるということで、物事がよりスムーズかもしれませんね。

Andy Bromberg
全くその通り。

Geoff Ralston
他に質問は。あちらの方。

Speaker 10
話が[inaudible]に戻りますが、ネットワークを使っている人々が[inaudible]ネットワークに変更を加えることを提案することはできますか。

Geoff Ralston
ノードである人、つまりネットワークの一員が、そのネットワークに組み込まれていくような変更を提案することは可能ですか。

Andy Bromberg
もちろんできます。ノードでなくても、誰でも、ネットワークを分岐しようと試みることはでき、変更を加えて新しいバージョンのものを作ることができます。

繰り返しになりますが、会社はある種の道徳的権限のほかは、ネットワークにはコントロール権を持たないわけです。彼らがそのネットワークを創ったのなら、たぶん彼らが最も運営が上手でどう構築したら良いかを一番良くしっているのだと思います。最初に創ったのだから、その会社がきっと一番のエキスパートでしょう。だから、特段の理由が出てこない限り、あなたはきっとその会社のバージョンのほうを選択するでしょう。

そしてそれを使わないという理由、例えばその会社が何か悪いことをしているとか、他の人からもっと良いものを教えてもらったとか、どちらかでしょう。そうなったら、たとえ彼らが素晴らしいプロダクトを作って繁盛していても、誰か他の人、他のノードが「ビットコインの改善版がある。

これは、既存の中核ディベロッパーたちがやっていることよりも、もっと良いものになるはず。これを提案して、人々のアラインメントを得て、人々の関心を得たいと思う」と言ってきたならば、そのネットワークは分岐して成功するかもしれない。そういうことを試みるかどうかは、その人次第ということです。

Geoff Ralston
ちょっとだけ、反論させてください。

Andy Bromberg
どうぞ。

Geoff Ralston
これは事実では無いと…これらの決断は、ある意味民主主義的なもので、ひいてはネットワーク自体が決めるということ。でもICOを行っている会社、トークンの創始者は、相当な割合の貨幣を持っているので、そのネットワーク上で一番大きな発言権を持っているということになりませんか。

Andy Bromberg
2つほどお話します。一つは、私が暗号資産についてのこのような高度な質問に回答する時、私は少数の優良トークンに限って話をしています。あらゆる不可解な方法でネットワークに影響を与えようと悪だくみする人たちはたくさんいます。でも、質問への回答としては、理想的な優良なトークンやブロックチェーンネットワークに関して話しています。

確かに、ネットワークに相当な量のトークンを持っている発行者がいますが、そこでは2つのことが起こります。一つは、発言権は必ずしも最も多くのステークを持っている人にあるわけではないこと。マイニングを行っている人が、非常に重要な意見を挙げられる立場にあります。これはまた、全く異なる話のテーマになりますが、コンセンサスを得る機能がいかなるものかということです。

ビットコインにおいては、中核ディベロッパーはアクセス権を持っているグループであり、ビットコインのコードを変えようとすることはできます。でもそれはマイニングを行っている人、つまりビットコインのネットワークのサーバファームに携わる人々を管理している人たちですが、それらのマイナーたち全員の賛同を得なくてはできません。もし彼らが採択しなければ、たとえ…

ビットコインはサトシ・ナカモトと言う仮名のもと創られたので事実とは異なりますが、例えば中核ディベロッパーたちがビットコインを創ったエンティティ出身者であると考えます。権力を持っているのは、彼ら中核的に開発を行っている人々ではなく、マイナーたちなのです。繰り返しになりますが、そのネットワークがどのように意思決定をしているかによって、異なるのです。

Geoff Ralston
複雑ですね。

Andy Bromberg
複雑です。

Geoff Ralston
さて、あと2つくらい質問を受けます。あちらの方。

Speaker 11
より多くのスタートアップたちがICOを実際に活用するようになるまでに、この業界にどんな発展が期待されますか。

Andy Bromberg
Yeah. もっと多くのスタートアップたちがICOを使うようになるために、私がICO業界にどんな発展を期待するかということですね。やはり場合によるでしょう。また繰り返しになりますが、この質問は…

ICOと言ったとき、イニシャル・コイン・オファリングを意味しますね。コインまたはトークンと言ったとき、何を意味しているでしょうか。様々な異なる意味があるのです。私たちが話してきたことは、成功している、または成功しそうなプロトコルトークンの歴史です。

これらはネットワークを基盤にしたトークンであり、信頼に基づかないネットワークを持っています。 スタートアップの誰もがこれを必要とするという社会は、無いと思います。私は、いつもの角のお店が良い食品を提供してくれると、信頼しています。他にも信頼して…こういう信頼は、常に存在します。だから全ての会社がこの種のトークンを必要とするとは思いません。

しかし、STOの質問に戻りますが、企業のエクイティを象徴するトークンが存在するという世界は考えられます。その場合私は、企業のエクイティを、他の書類を通してではなく、エクイティラウンド、またはSAFEその他の方法で、トークンを通じて購入するわけです。そこには、根底にSAFEがありそれを象徴するトークンがあるのです。それが起こり得るためには、もっとたくさんのインフラが構築されなくてはならないと思います。

資産に投資されたトークンを所有するのが得策だというのには、理由があります。例えば、流動化へのアクセスが増えるということなどです。あらゆるやり取りが構築される中で、流動性が更に、こうした資産に投資されたトークンへの更なる流動性を促進するのです。これらは互いに相互運用性があり、より簡単に動かすことができます。

Geoff と私が、以前このトレンドについて話をしたと思います。一般的に、ベンチャーキャピタルの弧は、更なる流動性、そして迅速な流動性に向かう傾向があります。そしてこれらのスピードはどんどん加速されています。近年少々スピードバンプ(訳注:自動車を減速させるために路面に作られた隆起)がありましたが、一般的にはこのように進んでいると思います。

そしてトークンは、そのトレンドを継続するでしょう。だから、インフラが構築されるのに従って、会社にとっては、エクイティを象徴するトークンを通じてエクイティを調達するということが、理にかなったことなのです。これは、シードステージのスタートアップが「私のトークンは2億ドルの価値がある」なんて言ってしまえるような、そんな怪奇なICO現象みたいなものでは無いです。そうではなく、エクイティを象徴するものなのです。

したがってトークン化しているという面では少々のプレミアがつくのかもしれませんが、基本的にエクイティの価値と同等です。しかしここにはインフラが必要であり、インフラが存在しない限りは、概念の上で存在を証明するということ以外、何ら価値はありません。もっと多くのインフラが構築される必要があるのです。この先何か月とか何年とかいう間に構築されることを願っています。

Geoff Ralston
素晴らしい。もう一つ質問。はいこちら。

Speaker 12
[inaudible] 将来的に、ブロックチェーンは幾つかで留まるか、それとも何百ものブロックチェーンが存在することになるか、どうでしょうか。そしてその理由[inaudible]?

Andy Bromberg
はい。将来は幾つかのブロックチェーンか、それとも何百ものブロックチェーンか、という質問ですね。比較的少数のブロックチェーンで、比較的多めのトークンだと思います。

少々説明してみますと、多くのトークンネットワークは、その上に他のトークンが発行されることが可能です。もっともよく聞くキーワードは、Ethereumでしょう。

Ethereumは2番目に大きな暗号資産ですが、Ethereumブロックチェーンと呼ばれるブロックチェーンを持っています。彼らは、Ethereum上に他のトークンを発行するということを標準化しました。そして、頻繁にやり取りされているものとして、ERC20トークンについて良く耳にしますね。これはEthereumブロックチェーン上に発行され、しかもEthereumでは無いものを象徴します。価格も必ずしもEthereumの価格と連動してはいないのです。

管理するのが大変なものなので、そんなに何百ものブロックチェーンが存在する必要は無いと思いますが、そこにあらゆるユーザーは必要であり、ユーザーたちは相互にどう作用し合うかについて様々なメカニズムを持ち合わせている必要があります。一方で、たくさんの様々なトークンが存在する世界にはなると思っています。ある特定の人々が予測しているほどの数にはならないかもしれませんが。

私は、トークンが全てという人間ではないのですが、でももし、建物が所有権を象徴するトークンを持つことができ、企業が自社の所有権を象徴するトークンを持つなど、資産に投資されたトークンの世界になったとしたら、それはたくさんのトークンが存在しうるということになります。そして、それら全てがブロックチェーンを持つわけではありません。それらはきっと何かの上に構築…

Geoff Ralston
もしそうなったら、非常にエラーが生じやすい。ですよね?なぜなら…

Andy Bromberg
全くその通りです。

Geoff Ralston
全て新しいコードで、壊れる可能性があるものでいっぱいですから。

Andy Bromberg
安全で安心なものであるためには、ある種の最小必要量(critical mass)が必要です。それら全てEthererumかStellar、もしくはその類のネットワーク上に築かれるのかと思います。でもトークンはたくさん、そして比較的少ないブロックチェーンというのは、私自身の予見です。

最後に強調しておきたいのは、暗号資産に関して、まだ10年にも到底満たないということです。ごく基礎的な構成要素を除いては、トークンについては5年未満の経験です。このエコシステムに関して、考え得る限りのごくごく初期の段階であり、今日私が打ち立てる予測は、真実となる可能性はそれほど期待できません。誰が知っているでしょうか。結局のところ、次の何十年という間に分かることです・

Geoff Ralston
素晴らしい終わり方ですね。Andy、 お時間いただきありがとうございました。
Andy Bromberg
ありがとうございました。皆さんもありがとう。楽しかったです。

 

 

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
動画: A Conversation with Andy Bromberg – Moderated by Geoff Ralston (2018)

トランスクリプト:A Conversation with Andy Bromberg - Moderated by Geoff Ralston

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