急成長するスタートアップに向けた Elad Gil からのアドバイス (Y Combinator)

Elad Gil氏は起業家であり、経営者、そして投資家です。またColor GenomicsとMixer Labsの共同創業者でもあり、GoogleとTwitterでの勤務経験もあります。彼がこれまでに投資した企業には、Airbnb、Coinbase、Stripeなどがあります。

Gil氏は最近、スタートアップのスケーリング(規模拡大)に関する手引となる「High Growth Handbook」をStripe Pressから出版しました。

同書には、Product/Market Fitを達成した後の重要な課題、つまりCEOの役割、管理職の採用、レイターステージの資金調達、M&Aなどに関する戦術的なアドバイスが書かれています。またYC GroupのSam Altman会長を含む、テック分野で活躍する人々のインタビューも含まれています。

このHigh Growth HandbookはAmazonから購入できます。


トピック

00:14 - 起業家がHigh Growth Handbookを読むべき理由

4:45- 「料金設定が高い企業ほど早く成長する」というMarc Andreessen氏のコメントについて

6:00 - スタートアップにまつわる迷信

7:00 - Leon Coe氏:「投資を避けるべきビジネスの種類は?」

8:30 - 「NO」というべきこと

11:50 - 時期尚早だと思われる企業

14:02 - 「シリコンバレーで最も成功し、安定しているクラスはベンチャーキャピタリスト、もしくはProduct/market fitを達成したばかりの企業を見つけるのが得意な人々だ。彼らは、そのような企業のスケーリングに必要な経験、知識、そしてリファレンスを持っている」というNaval Ravikant氏のコメントについて

16:51 - Claire Hughes Johnson氏の「Guide to Working with Claire (クレアと一緒に仕事するためのガイド)」について

18:50 - Masud Hossain氏:「インタビューした企業はどのようにして最初の顧客10社を獲得したのか?」

20:05 - Masud Hossain氏:「コンテンツは本当に王か?」

22:00 - Narayan Mallapur氏:「創業者が最も犯しやすいミスとは採用なのか?また、これらの落とし穴を避けるためにできることとは?」

24:05 - Brianne Kimmel氏:「規制が非常に厳しいセクターで得られた教訓とは?顧問弁護士を雇うタイミングは?どうすれば公共政策とロビー活動を優先できるか?」

28:15 - メディアサイクル

30:05 - Marius Chawa氏:「VC企業が投資を申し出る前にスタートアップが達成『すべき』3つのこととは?」

33:55 - Taylor Caforio氏:「自分の会社はMVP早期段階にあるが、迅速な指数関数的成長を考慮しながら初期の顧客に6つ星の対応をするというバランスはどうすれば見つけられるか?」

36:04 - Tanmay Khandelwal氏:「成長段階を全力疾走しながら、どのように必要なエンジニアを想定し、採用すればよいか?」

37:51 - TD Bryant II氏:「あなたの会社が指数関数的な成長を遂げているとき、アウトソースする機能と社内で構築または採用すべき機能をどのように選定すればよいか?」

41:00 - Andrew Pikul氏:「一番好きなドラゴンボール(Z/GT/Super)の悪役は?」


 

 


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トランスクリプト

Craig Cannon [00:00] 
こんにちは、Y Combinatorのポッドキャストをお聞きの皆さん、お元気ですか?Craig Cannonです。YCの2019年冬バッチの受付が始まりました。詳しくはycombinator.com/applyをご覧ください。

今日のエピソードではElad Gil氏をご紹介します。Elad Gil氏は起業家であり、経営者、そして投資家です。またColor GenomicsとMixer Labsの共同創業者でもあり、GoogleとTwitterでの勤務経験もあります。Gil氏はこれまでに投資した企業には、Airbnb、Coinbase、Stripeなどが含まれています。

Gil氏は最近、スタートアップのスケーリングの手引となる「High Growth Handbook」をStripe Pressから出版しました。同書には、Product/Market Fitの達成後の重要な課題、つまりCEOの役割、管理職の採用、レイターステージの資金調達、M&Aなどに関する戦術的なアドバイスが書かれています。またYC GroupのSam Altmanを含む、テック分野で活躍する人々のインタビューも含まれています。

High Growth HandbookはAmazonから購入できますので、リンクを後ほどアップロードしておきます。それでは始めましょう。

まずお聞きしたいのは、この本のタイトル「High Growth Handbook」についてです。「The High Growth Handbook」ではなく、ただ単に「High Growth Handbook」となっています。数千人もの従業員を抱える高成長企業に到達できる企業の少なさを考慮すると、なぜ普通の起業家がこの本を読む必要があるのでしょうか。

Elad Gil [01:07] 
この本には万人に共通する原則がいくつか載っています。例えば、採用のプロセスや管理職を含むスタッフを雇うときに気を付けることとは何なのか。あなたの会社を買収しようとする会社があるなら、その会社が実際どのように買収しようと考えているかが分かるM&Aに関するセクションを読むことをお勧めします。

また、プロダクトマネジメントや、ベストプラクティスについて、そしてプロダクトマネジメントをどう考えるかについても書かれていますし、他にもPR、コミュニケーション、マーケティングなどの様々なセクションがあります。これらの様々な分野の違いとはどのようなもので、またこれらをどのように考えるべきなのか。この本の中には一般的なトピックに触れるセクションがいくつもありますが、結局のところ、この本は高成長を遂げている企業の社員、幹部、創業者に向けられています。それはある意味、単にこのようにまとめられて体系化された情報がないと私が思ったからです。

Craig Cannon [02:00]
なぜそれをSEO向けコンテンツとなっているご自身のブログではなく、本にして出版されたのですか?

Elad Gil [02:08]
元々はウェブサイトにしようと思っていたのですが、Stripeの共同創業者であるJohn Collison氏がコンテンツを見て興奮し、これは高成長を目指して取り組んでいる他の創業者だけではなく、Stripeがサービスを提供しているデベロッパーや起業家の幅広いコミュニティーにも関連性があると考えたのです。これが、Stripeがこの本を出版することになった所以です。

Craig Cannon [02:30]
なるほど。もしかしたらページに含まれているのかもしれませんが、1ページ目より前、1行目の「親愛なる妻Jenniferへ、そして突然すべてがまた可能になった」という献辞について興味を持ったのですが、これはどういう意味なのでしょう。

Elad Gil [02:49]
確か題名は「Eating Animal」だったと思うのですが、Jonathan Safran Foer氏が書いた素晴らしい本があります。色々なことが書かれていますが、その中でご自分の息子さんについて少し触れています。お子さんが生まれたとき、誰かが「突然すべてがまた可能になった」と書かれたカードを送ってくれたそうです。

この本当の意味は、自分の子どもを見たとき、その子の前途にはあらゆる可能性が広がっていて、その子を通して人生が再生することに気付くということです。つまり、大きくなってオリンピックのスケート選手、または次世代のMark Zuckerbergになるかも知れませんし、もしかしたら酷い人生を送ることもあり得ます。でも、ある意味、子どもたちにはこの世に存在するありとあらゆる可能性があるという、そういう意味です。

Craig Cannon [03:31]
それはご自身についてもそのようにお考えですか。

Elad Gil [03:35]
私はもう年ですが、次の世代にとってはすべてが可能だと思います。老化防止などの分野で技術革新でもない限り、私の進む道はある程度はっきりしていると思います。

Craig Cannon [03:46]
分かりました。これだけのインタビューをされて、文字起こしや編集作業を繰り返されたと思いますが、本としてまとめる前、インタビューをする中で大きな議論になったことはありましたか。

Elad Gil [04:01]
議論はなく、また出版されたインタビュー内容は実際の会話に非常に近いものです。編集作業もそれほどなく、むしろ明確さや流れをスムーズにするためどのようにセクションをアレンジするかが中心でしたが、インタビュー内容と関係のない余談以外に大きく削った箇所はありません。話の内容に同意できない部分もありましたが、そういうところこそ絶対に本に載せたいと思いました。

その理由は、結局のところ、スタートアップに対する唯一の汎用的なアドバイスというものは存在しないからです。つまり、状況が全てだということです。インタビューした人々の経歴や状況はそれぞれ大きく異なっていますし、そのような議論を本に含めたかったのは、私とは違う意見を提供してくれるからです。

Craig Cannon [04:40]
分かりやすい例を教えていただけませんか。

Elad Gil [04:44]
正直言って、インタビューのほぼすべてで1、2の納得がいかない点がありましたし、読者の皆さんもきっと同感したり、自分の場合はそうじゃなかったとか、自分なら少し違うアドバイスをするだろうと思われたりするのではないでしょうか。

実はそれはとても良いことです。ケーキ作りに例えるならば、ケーキの正しい作り方について哲学的な議論をして、様々な意見が出るとします。最終的に、ケーキ作りには欠かせない中核となる要素がいくつかありますが、それと同時にケーキ作りには様々な他の手法もあります。スタートアップもそれと同じです。それなしではケーキやスタートアップとして成り立たない、絶対に欠かせないという基本的なことがいくつかありますが、それ以外の部分では色々な攻め方があるということです。

Craig Cannon [05:20]
今朝、Investor Schoolでの講演をもう一度観ていて、Gilさんが企業を選ぶ基準は第1に市場、第2にも市場、そして第3はチームか何かだと仰っていました。

Elad Gil [05:31]
はい、その通りです。

Craig Cannon [05:33]
Marc Andreessen氏ともこのトピックについて少しお話されていたと思いますが、私が面白いと思ったのは、価格設定が高い企業ほど早く成長するという彼の発言です。これについては同じようにお考えですか。

Elad Gil [05:44]
価格設定が高くてもやっていけるということは、人々が本当に求める製品を持っている、だから早く成長することができるのです。

その理由は、人々が本当に必要とする製品があるということがひとつと、もうひとつはMarcの言う資本レバレッジが非常に重要だということです。つまり、Marcはこの点を本の中で非常にうまく伝えていますが、マージンや価格決定力が高いほど、そのお金をエンジニアの増員に再投資したり、セールスチームの販売や顧客獲得方法に費やしたりすることができます。

マージンが多いということは、スケールアップできるということです。 価格を引き上げることができるというのは、実は成長における非常に強力なツールなのです。

シリコンバレーにおける大きな誤解のひとつは、みんな自分の会社がAmazonだと思い込み、最大の市場シェアを獲得するために価格は最小限に抑えるというAmazonのビジネスモデルに従うべきだと考えていることなのですが、実は価格を低くするかわりに高く設定することで市場シェアを拡大することが可能なのです。彼の意見の中で私が最も強く同意するのはこの点です。

Craig Cannon [06:38]
なるほど。これについて、Lyftに投資すべきかどうかという観点からも触れていますね。全ての市場がAmazonの独り勝ちのような状況ではないと。ほとんどの創業者はネットワーク効果で勝てると思い込んでいると。

Elad Gil [06:51]
一般的に、シリコンバレーでは何をもって優秀なスタートアップとするかについて、様々な迷信が作り上げられてきました。そしてソーシャルネットワーキングの時代では、まさに独り勝ちという状況になりました。その理由は、ソーシャルネットワークの定義自体が独り勝ちだからです。

世界には独り勝ちではない市場に存在するビジネスが多くあります。実際に、確か「Rule of Three」というタイトルの本があり、その中で、2~3社が市場を独占することで安定を保っている寡占市場となる業界がどれだけあるかが書かれています。

市場の構造は非常に重要なものですが、シリコンバレーの人々は、市場の構造が実際にどうなっていて、それが起業するのに良い機会か悪い機会かということをあまり考慮しません。その良い例がEdTech (エドテック)です。これは非常に厳しく、影響力が大きい市場なので、人々が努力していることは喜ばしいのですが、その構造上、成功するのが非常に困難な市場でもあります。そのため、この市場で起業するのは大変なのです。

Craig Cannon [07:51]
Twitterでこれに関係する質問がありました。@LeonKohから、投資を避けるのはどのようなビジネスか、そして「良いビジネス」だけれど興味がないのはどのようなものか。そういう意味で、マイナスの兆しがある他の市場はあるか、という質問が来ています。

Elad Gil [08:07]
はい。EdTechは間違いなくそのひとつです。私はこれまでEdTechに投資したことはありません。先ほども言いましたが、社会的影響は非常に大きいのですが、ただ成功するのが非常に難しいと思います。

その理由のひとつは、アメリカにこのようなプロダクトに投資する力や意思を持った人がいないというのがあります。アジアの一部の地域では、実はEdTechは投資するのにとても良い市場なのですが、私はアメリカ国外への投資はあまりしません。

でも考えてみてください。教師には高すぎる、あるいは購入するためのお金がないプロダクトがあるとします。親もあまり子供のために余分なプロダクトを買いたいとは思いませんし、子供にはもちろんそんなお金はありません。公立学校は多くの場合資金不足の状態ですので、教育市場にはペイヤーがいないのです。

また、小規模なスタートアップではなく、既存の大手に任せた方が良い市場もあります。Internet of Thingsが良い例で、大手電子機器メーカーが市場に出ているほとんどのプロダクトを作っており、これらのメーカーはプロダクトを何かと組み合わせて流通させることができます。スマート電球、スマートロック、スマートがつく何かを作っているような新規参入の一発屋的な会社とは違うのです。

Craig Cannon [09:08]
そのような企業は最初のプロダクトを出した後には、次のプロダクト発売など、かなり苦心していますね。スマートバックパックのようなものでも売らない限りは…

アジアについて触れられましたが、面白いと思ったことがあったので本の初めから最後に飛びたいと思います。とにかく「NO」と断るものについて書かれたページがあります。そのリストについては後ほどお聞きしますが、アジアについてお話させてください。

第1に、封筒いっぱいの現金。第2に中国。第3がジャイアント・クロム・パンダ、第4にビリヤード台となっています。これについてご説明いただけますか。

Elad Gil [09:41]
そのセクションは冗談のつもりで、ギリギリになって足したものです。私はここ10年とちょっとの期間シリコンバレーで過ごしてきました。その時は素晴らしいアイデアのように見えたのに、振り返ってみるとそうでもなかったというものが多くありました。

例えば封筒いっぱいに入った現金というのは、Googleに勤めていた時の話で、クリスマスの時期に会社からボーナスのような感じで、100ドル札が確か10枚入った封筒が全員に配られました。そしてこれに関して本当かどうかは分かりませんが、その後サンフランシスコで現金入りの封筒を持った社員がGoogleのシャトルやバスから降りるときに強盗に遭うという都市伝説がありました。

そのようなことが実際に起こったとは思いませんが、それ以上に、何百万ドルというお金を現金で社員に配るというのは、まるでギャングのようで、社員にとって良くないと感じました。中国というのは、単に中国市場に参入を試みた企業のほとんどが失敗に終わったというのが理由です。これについては常に反例もあります。

中国におけるUberの戦略は、Didiと合併したのが賢明だったと言えます。確かDidiの15~20%を所有して、それ自体で価値が1,000億ドルを超える会社を得られたので、上手くいったのだと思います。同様に、Airbnbも中国で成功しているようです。それでもほとんどの企業がしっかりとした戦略を立てることなく中国に参入しようとし、地元企業のプレゼンスや競争を理解していないために潰されてしまいます。

中国でのビジネス展開が難しい理由のひとつには、政府の規制によって外国が市場に参入しにくいということがあります。それが中国です。ジャイアント・クロム・パンダではなくクロム・パンダはDropboxですが、彼らは後にそれを倹約の象徴としました。つまり「何かを選んで、それを会社のあるべき姿のシンボルにしてしまおう」という、とても賢明なアプローチだったと思いますし、 文化的に賢明な動きだったと思います。

最後にビリヤード台についてですが、私は最後のバブル崩壊直後にここに移ってきました。当時私はスタートアップに入社し、従業員の数は一時120人から160人に増えたものの、5回にわたる一時解雇で15人にまで減りました。

2度目の一時解雇後、従業員は多分60~70人になり、創業者たちは士気を上げるためにビリヤード台を買いました。崩壊する業界の中でこれだけ多くの人が一時解雇されていたのに、ビリヤード台が一体どうやって士気を上げるのか理解できませんでしたが、彼らなりに気を利かせたのでしょう。

しかしその後何が起こったかというと、ビリヤードをする時間がある人は、急降下する会社の経営にとって当然ながら不可欠な存在ではないということになり、数週間の間に解雇され、突然姿が消えるようになり、ビリヤード台は、そこに行けば解雇されるという場所になったのです。

Craig Cannon [12:12]
私にはそのような経験はありませんが、酷そうですね。

Elad Gil [12:16]
今の時代にシリコンバレーにいる人たちは皆さんそうでしょう。強気相場が8年続いていて、もちろん潰れた会社もあり、それは辛いことですが、体系的な引き上げをセクター全体で一斉に行うというのは目にしていません。いつか必ず同じことが起こるので、その時には人々の対応方法に巨大な変化の波が訪れるでしょう。

Craig Cannon [12:36]
しかし市場のタイミングを計るのは不可能です。それに関連して、今現在、99年や2001年に出たアイデアのように、小さな泡から今では大企業になったというような資金が注がれてはいるけれど、時期尚早かもしれないと思われるアイデアはありますか。また、現在あるそのようなアイデアが次のサイクルの一部になると思われますか。

Elad Gil [13:02]
確実にそうだと言える大きな分野が2つあります。ひとつはAR/VRで、その大部分は時期尚早ですが、いずれは大きくなるでしょう。もうひとつはクリプトです。現在の仮想通貨界と90年代後半のインターネット界には大きな類似点があります。

90年代後半、巨大なフランチャイズとなったものはわずか一握りでした。PayPal、Google、Amazonなどはすべてこの第一世代になります。そして、当時は存在すらしなかったのに巨大に成長したFacebookのようなものが増えました。一方、多くの新しい企業が失敗に終わり、馬鹿げたアイデアだと指摘されたものの、今となってはそのアイデアから大きく成長した企業もあります。

例えば、Webvanは10億ドル以上を調達して潰れましたが、今はそのコンセプトの再発明ともいえるInstacartがあります。また、pets.comは、なぜペットフードをオンラインで注文する必要があるのかとかなり馬鹿にされましたが、それが、確か30億ドルで買収されたChewyとなりました。

90年代後半の時点ではまだ時期が早すぎたか、フォーマットが間違っていた多くの会社が、今では大手フランチャイズになっています。クリプトも同様で、今はまだクリプトのインフラが不十分なのが現実です。このように、様々なサービスを分散させるのに、本当に面白いアイデアが多数あるのですが、その多くは潰れると思います。そして10年、15年後に同じアイデアが違う形で生まれ変わり、成功することになるでしょう。

それと同時に、今すでに存在していて、クリプト界のAmazonのように、そのまま巨大に成長するものもあります。それはBitcoinかも知れませんし、Ethereumかも知れません。もしくはプライバシートークンのようなものかも知れませんが、今日のクリプトの一部も、大きくなり続けると考えています。

Craig Cannon [14:41]
一定の割合の人々は、従業員としてそのような企業を見抜くことができます。これは私がとても気に入っているNaval氏の言葉です。1回目か2回目、どちらのインタビューだったか確かではありませんが。いや2回目のはずです。311ページに載っています。

Naval氏は、「シリコンバレーで常に成功する人々とは、ベンチャーキャピタリストか、またはproduct/market fitを達成したばかりの企業を特定するのが得意な人々だ。彼らは、そのような企業のスケーリングに必要とされる経歴、知識、そしてリファレンスを持っている」と述べています。 問題は、どうやってそのような会社を見つけるかです。

Elad Gil [15:16]
Naval氏によると、会社が急成長している時、あるいはしそうになっている時に見られる兆候がいくつかあり、それを見抜くのが得意な人がいると言います。例えば、Matt Kohlerは始めLinkedInに勤めていましたが、その後Facebook、そして最終的にBenchmarkへと転職しました。これは、一連の興味深い出来事を特定できた人のキャリアの良い例です。

会社が大きく急成長するとき、3つのカギとなる兆候があります。第1は、逸話的な顧客への魅力です。周囲の人々に、様々な会社で何を使っているのかを聞いても良いですし、また、何が、どれくらいの速さで市場に採用されているかといった市場のシグナルを探すこともできます。回転や循環、その他いくつかのポイントから見ることができる具体的な指標があります。

第2に、その周りにいる人のネットワークはどうかです。一般的に、本当にそのビジネスが成長している企業のみが特定の人々を巻き込むことがでるのです。そして最後に、資金調達が兆候となるときもあれば、そうでない場合もあります。しかし一般的に、急成長する優良な会社は、資金が必要な場合には9~18カ月毎に新たな資金調達を行います。

一部のケースでは、資金不足が理由ですが、優良企業の場合、人々が先制的に入り込み、高い評価を与えることがよくあります。この点から企業を観察するという手もあります。

一般的に、キャリアの観点からベストな選択をしたいけれど、その企業の非常に初期の時点で入社しなかったという場合、入社に最も適しているのは社員が大体40~50人で、最終的に1~20億ドルに成長できるのであれば企業価値が5,000万~5億ドルの時です。

どの企業がこれを達成できるかを見抜くのは難しいですが、通常、従業員数が50人から1,000人に、または50人から5,000人に増えているときが、最大の成長期で、入社すればオプション制度により取得できる株式の価値は20~100倍も増えるので、大きな違いがあります。

Craig Cannon [17:17]
今そのような状態にある会社を名指しすることはできますか。

Elad Gil [17:22]
最大手になる企業を当てることは難しいです。かなり有望と言えるのは、Airtable、Checkr、Frontです。これらの企業は私も関与しており、創業者が素晴らしく、魅力が高く、そして事業内容が面白いのです。

Craig Cannon [17:40]
創業者のミスだけを指摘するのは良くありませんので、ベストプラクティスについて少し話しましょう。初めて耳にして、素晴らしいと思ったのは、StripeのCOOであるClaire Hughes Johnson氏が、就任時に自身とうまく付き合う方法を書いた手紙を社員に配布したそうです。これについて興味があるのですが、このようなことをしたことはありますか?これは今では常識なのでしょうか。どのような背景があるのでしょう。

Elad Gil [18:03]
いいえ、やったことはありませんが、彼女にその話を聞いたとき、非常に素晴らしいと思いました。新たに入社した人々、特に管理職の場合は、周囲の人々からのその人との接し方についていくつかの希望があります。

通常、会社がそれを理解するのには6~12カ月かかり、特に成長速度が非常に速い場合は、1度の増員につき2年かかります。このような手紙を配布することで、彼女はどうすれば自身と最も良い関係を持てるかを明確化しました。

連絡手段はメールが良いのか、それとも5分間話す方が良いのか。彼女の注意を引くにはデータを使って伝えるべきか、それとも彼女が共感できる他のメカニズムを使うべきか。

私は、これは入社時のツールとして素晴らしいものだと思います。高成長企業に入社する管理職員やマネージャーも同じような手紙を用意すれば、社員に求める対応を明確にし、組織内での戦力を高めることができるのではないでしょうか。

Craig Cannon [18:58]
これはとてもよいアイデアなのでどの企業もこの手法を取り入れるべきだと思います。人当たりが良い人もいれば、それが苦手な人もいるので、他の人に察してもらおうとするのはフェアではありません。

Elad Gil [19:13]
それに、人はそれぞれ癖を持っているものです。その癖をはっきりと伝えることは非常に役立ちます。Twitterに勤めていた時、私はヨガにはまっていて、経営チーム会議の最中に本当にロータスポーズで床に座ることがありました。役員会議でも床に座っていたのは私だけでした。周りの人はそのうち慣れてきて、「彼はこういう人だ」と受け入れてくれました。そういうことを始めにはっきりしておけば、多くの手間が省けます。

Craig Cannon [19:35]
はい、素晴らしいアイデアだと思います。それではTwitterに関する質問に移りましょう。Massoud Hussain氏から3つの質問が来ています。インタビューした会社のほとんどは、どのようにして最初の顧客10社を獲得したのですか?

Elad Gil [19:50]
はい。最初の顧客10社については企業によって違います。これらの企業のうち数社は文字通り最初の10社を募集して、製品を使ってもらうというやり方でした。Stripeの創業者が、誰かに会うたびにStripeを見せて使ってもらっていたというのは有名な話です。

Craig Cannon [20:06]
コリソン・インストールですね。

Elad Gil [20:07]
はい、コリソン・インストールです。他には、単に製品をインターネットにアップロードして、そこから広がっていったという会社もあります。ZuckはそのようにしてFacebookを始めたと言われています。アップして友達にそれを教えて、バイラリティが組み込まれていたおかげで拡散されていったと。

製品はどれもユニークですが、概して、工夫が必要となるものです。まずは最初の顧客2、3社を見つける必要があります。企業向けアプリケーションを作っているなら、初期段階の試験的顧客またはデザインパートナーと呼ばれるパートナーを見つける必要があるでしょう。

製品を開発する中でフィードバックをもらい、そのフィードバックに基づいて製品の方向性を定めることで、実際に人々が求めるものを作ることができます。それが個人向けか企業向けかなど、製品によって違いますし、その後は最初の顧客を獲得する方法によっても違います。

Craig Cannon [20:55]
それでは1,000人の顧客についてはいかがでしょう。Massoud氏はこれに関する質問として、コンテンツは本当に最も重要なものなのかと聞いています。つまりコンテンツが無限の成長のカギなのかということです。

Elad Gil [21:06]
必ずしもそうではなく、事業内容によって異なります。消費者向けのソーシャルプロダクトを作っているなら、その製品を拡散させる構造がそれ自体に組み込まれているでしょう。時に、製品は有機的にある程度拡散するので、後は様々な作戦を使って工夫することになります。

例えばFacebookの場合はメールスクレイパーで、実際彼らは欧州のユーザー獲得のために欧州に住む人の名前に対して広告を出していました。最も優秀な企業は、実は早期の段階から積極的にセールスに注力します。会社が時価総額や市場規模で限界に達することが良くありますが、それは、創業者が早期段階からの販売に積極的でなく、その後他社に追いつかれるからです。

例えばGoogleの積極的な販売を挙げるとすると、FirefoxはGoogleのホームページの目立つ場所に表示させるために、年間何百億ドルも費やしました。彼らはツールバーというクライアントアプリケーションを持っていました。これはブラウザクライアントのように効果的にブラウザにインストールされるものです。

そして年間何百億ドルも払って、ダウンロードされる様々なアプリと共にインストールされるようにしました。AdobeをダウンロードしたらGoogleツールバーも突然インストールされるということです。このような話を耳にすることはありません。「こういうものは勝手に成長するからすごい」と人々は言いますが、 時価総額が 何百億、何千億にもなる企業のほぼすべては、多くの場合は、早期の段階から積極的なセールスに取り組んでいます。

Craig Cannon [22:28]
コンテンツ部門では多くのクリエイターが、システムの中で求められるやり方に従っています。それはある程度までは良いことだと思うのですが、ルールに従っているだけでは、それ以上の報酬を得ることはできません。ルールを破れという訳ではありませんが、戦略をもう少し工夫した方が良いと思います。

では次の質問です。Narian Malapa氏から、創業者が最も犯しやすいミスとは何なのか、採用に関するものなのか、またどのようなミスであれ、このような落とし穴を避けるにはどうすれば良いのか、という質問です。

Elad Gil [23:04]
そうですね、その会社がいる段階によって大きく違います。アーリーステージの会社では、調達すべき資金の金額を間違える人が多く、調達額が少なすぎて、さらに増資するためのマイルストーンに達する前に現金が足りなくなることがあります。

採用に関するミスもあれば、解雇、または共同創業者との争いもあります。早期にはありとあらゆる種類のミスを犯してしまいかねないと思います。

最もよく起こる問題は、おそらく採用に関するもので、しっかりとした選定プロセスが確立されていない、または会社に合わない人を採用してしまったり、解雇することになったりするというものです。

採用が得意な会社もあれば、解雇が得意な会社もあるという古い言葉があります。どちらかがきちんとできれば、優秀な組織を作ることができるのですが、ほとんどの会社は根本的にどちらも不得意で、そのため社員を獲得するのに必死となり、「辛いけれど適切な人材が見つかるまで待とう」と言えず、苦しむことになります。

Craig Cannon [23:55]
なるほど。社員は1,000人いるけれど、実際に必要なのは500人ということですね。難しいですね。では、うまく解決できる企業のおおよその数は割合でいうとどれぐらいでしょうか。

Elad Gil [24:11]
それはまちまちです。もう一度言いますが、採用のやり方によります。例えば、Googleは採用が非常に得意な企業の例です。一時期、彼らは1人当たり最低8回のインタビューを行っていました。8回すべてを完了しなければ採用されないというようなものでした。そして、早期には解雇がとても下手でした。一度採用した人を手放すのがとても不得意だったため、何人かの不適切な人材がしばらくの間会社に居続けました。

一方、Facebookなど他の会社は、早期には採用があまり上手ではなかったと言われていましたが、時間とともに改善されました。しかし初期の始まりの時期には、採用は下手でも、会社に合わないと判断された人材の解雇はとても得意でした。どちらの会社も最終的には良くなったと思います。結局のところ、その会社のカルチャーによるのです。

Craig Cannon [24:54]
次は、Breann Kimmel氏の規制に関する質問です。Stripeと一緒に仕事をしていらっしゃって、バイオテクなど、規制対象のセクターについてはなじみがあると思います。例えば、顧問弁護士を雇うタイミングや、ロビー活動と公共政策を優先する方法など規制の厳しいセクターで学んだ教訓をいくつか教えていただけますか。

Elad Gil [25:17]
関与しているセクターによっても大きく異なります。コンプライアンス担当者や顧問弁護士をかなり早い段階で雇う会社もあります。Coinbaseがその良い例で、最初に採用した10人の中にそのようなプロフィールの社員が含まれていたため、彼らは常に規制を順守することを重視していました。

また、社外コンサルタントや特定の分野を得意とする優秀な弁護士を活用するという方法もあります。例えばバイオテクやヘルスケアの分野で、問題解決に取り組んでいる科学者がすでに6人いるとしたら、フルタイムのコンプライアンス担当者を雇う必要はありませんが、FDAや規制に関することが視野に入ってきたときには、コンサルタントを通して行うことができます。

早い段階から考慮することが必要ですが、それが製品を作るという中核部分の妨げになってはいけません。製品がなければ市場にも出られないので意味がありません。未発売の段階で規制に縛られる必要はないからなのです。

公共政策とロビー活動の優先については、通常もっと後の段階の話になります。シリコンバレーにある企業の多くは時間をかけすぎて、後になってもっと早く考えるべきだったと気づきます。

簡単に言うと、これはロビー活動というよりも、正しいことをしたい人たちをどのように教育するかということなのですが、既存の企業からの話しか聞かなければ、全体像が伝わらないかも知れません。業界がどのようなものに進化しているのか、企業理念はどのようなものか、そして誰を教育すべきかといったストーリーはどのように共有できるのかというと、それは必ずしも政治家やその他の利害関係者と話すべきだということではありません。

バイオテク分野なら特定の医療団体、EdTechなら教員団体と話す方が良いかもしれません。私なら、誰を教育するべきか、今何をしていて、このような会話をどのように始めるかについて広く考えて、人々の認識を高め、最終的には敵ではなく味方になってもらえるようにするでしょうね。

Craig Cannon [27:05]
現在Facebookが行っている広告キャンペーンについて何か意見はありますか。「悪いけどフェイクニュースには関わりたくない」とか。

Elad Gil [27:13]
そのような広告は目にしていません。何人かから、シリコンバレーがそのような弁解的な広告を出していると聞きました。

Craig Cannon [27:21]
Wells Fargo、Facebookなどの複数の企業です。あとUberもです。

Elad Gil [27:27]
私がここに引っ越してきてから大きく変わったのは、いわゆるシリコンバレーの未来に対する希望の低下です。これはとても残念なことです。

私が知るテクノロジー分野にいる最も優秀な人たちは、本気で技術が役立つもの、そして世界をさらに良くするための力になると信じています。スーパーコンピューターを10億人以上のポケットに収めたこと、価格や市場に透明性をもたらしたこと、また例えばあなたが農家で、自分のプロダクトを適切な時に適切な場所で売ることができるようになったことなどを考えてみてください。これは本当に世界を良い意味で大きく変えました。

人々はその希望を見失ってしまったように感じます。私にとって最も悲しいのは、誰かが会社を辞めて4年後に、その会社がいかにひどくて、そこにいた自分を恥じるというような自虐的な内容のブログを投稿するのを目にするときです。私は、「一体何のことなんだ。」と思います。

これらの企業は世界にとって非常に価値のあることを成し遂げてきましたが、企業がミスを犯していたのならすぐに是正しなくてはいけません。早い段階から、世界にダメージを与えることを避ける方法を考える必要があります。技術とは根本的に非常に強力で、非常に重要であり、これまで世界にとって良いことを可能にしてきたものなのでそれを見失わず、強調していくべきです。

これは、自分が素晴らしいことをしていると信じなければ、本当に素晴らしいことはできないからです。

Craig Cannon [28:49]
でも私はここという、素晴らしいことが数多く起こっているところにいて、用心する必要はあるもののいまだかつてなかったほどに楽観的になっています。ここにあまり繋がりのない東海岸に住む家族と話して分かるのは、彼らはどこからか恐ろしいストーリーばかりを耳にしているようです。

Elad Gil [29:06]
色々な会社と一緒に仕事をする中で、一般的に会社レベルでよく目にするのは、彼らが何かを作り上げ、その後に破壊され、そしてまた贖罪のストーリーとして立ち上がるという、何らかのメディアサイクルに巻き込まれるということです。

ストーリー・アークは大体、この素晴らしい会社を見てください、良いことをして世界を変えています、というところから始まります。そして何か小さなことがメディアで爆発し、「何てことでしょう。この会社はこんなに悪いことをしているので、堕落し、潰れるでしょう。残念なことです。」となります。

その後少し経ってから、「あの会社は罪を償って生まれ変わりました。またこんなに素晴らしいことをしています。ご覧ください。」とメディアに書かれるのです。

シリコンバレーはこのようなサイクルをマクロレベルで経験しているのかも知れません。2000年代の上昇期には、「テック分野は素晴らしい。iPhoneやその他の製品を見てください。Googleもこんなに人の役に立っています」という状態でしたが、 今は「何てことでしょう。テックは悪です。贖罪の時期にまた戻ってこられることを願いましょう。」という状態になっています。

Craig Cannon [29:59]
残念ながら、テクノロジーは目立ちやすいターゲットとなりやすいようなので、次期の選挙周期でさらに叩かれるでしょう。しかも、特にとても素晴らしいものを作っているときに限ってそのようなことが起こるようです。

Elad Gil [30:13]
そうですね。それをはっきりと感じたのは、かなり初期からお手伝いをしていた、ある創業者の話を聞いた時です。彼は「今友達とディナーパーティーに出席して、自分が何をしているか、そしてそれでどうやって世界を変えるかを考えるとワクワクする、と話していたんだ。そしたらそこにいたみんなに笑われたんだ」と言っていたので、私は、「もっと良い友達を見つけなよ」と言いました。

長い目で見れば、違う意見を持つ人たちと付き合うことは必要ですが、前向きな意見の中に自分を置くことも重要です。それは、まだやるべきことは多く残っていて、テクノロジーはこれからも世界に変革的なインパクトを与え続けるので、人々は自分たちの仕事に誇りを持つべきだと思うからなのです。

Craig Cannon [30:48]
私はくだらない話をして楽しむのも好きですが、情熱を持った人を罰するのは間違っていると思います。それでは次の質問に行きましょう。Marius Chawha氏から、これは非常によくある質問ですが、VCやエンジェル投資家が喜んで投資をしてくれるようになるまでにスタートアップが達成すべき3つのことは何ですか、という質問です。

Elad Gil [31:11]
この質問にはたくさんの答えがあります。順位をつけるとすれば、ダントツで重要なのは、これは当然のことで、この後トップから順に説明しますが、最も重要なのは、高マージンで、急成長し、魅力の高いプロダクトを持つことです。つまり、前月比の成長率が30%、マージンは90%で、誰もが買うプロダクトがあるということです。

大手ブランドもまた小さなブランドも買っており、消費者向けプロダクトの場合は、維持率が非常に高く、広く浸透しているということです。最も重要なのは魅力です。

第2にあると良いのは人々に投資や関与したいと思わせるような、盛り上がっている市場のプロダクトです。今は仮想通貨がそのような状態にあり、それが良いからというよりも、単にクリプト市場にあるからという理由だけで、あらゆるものに投資されています。

第3は、優秀なチーム、そして最後はこれらとは全く違いますが、人を引き付けるストーリーです。階層にするとこのような感じですが、シリコンバレーでは、というか一般的に、様々なトレンドがあります。人々は特定の分野に注目すると、魅力の有無にかかわらずその分野の物なら何にでも資金を提供します。これと同様に、非常に評判の良いチームや個人も、条件なしに資金を得ることができます。時にはそのようなことがひとつでもあるだけで十分なのです。

Craig Cannon [32:31]
PGはAirbnbについて、ゴキブリのようにしぶとく生き残っていると話しています。それは、どのように最初の資金を調達するかというのが問題だからだと思うのですが、そうでないなら黒字を達成して生き残っているというのは、レバレッジを生み出すことができるため会社が魅力的になると思います。

よくは分からないのですが、これについて多くの記事を書いているMichael Seibel氏とこの件について良く話してきています。企業が「シリーズAの資金調達がすぐに必要だ」と言って彼にアプローチしてくるのですが、 残念ながらもうレバレッジがないという。

Elad Gil [33:03]
その点をさらに掘り下げると、VCからの出資だけが事業の構築方法ではありません。何百億ドル規模のBloombergは非公開企業で、外部の資金を調達したのは確かMorgan Stanleyからのたった1度きりだったと思います。Morgan Stanleyか誰かが、確かではありませんが、10%か15%を買収しました。つまり彼はブートストラップという道を選んだのですが、人々がもっと考えるべきことのひとつに、他の資金源があります。

素晴らしい製品に顧客が支払う対価から生まれる利益の場合もあります。時には、NREと呼ばれる、経常外のエンジニアリング費を前払い請求して、誰かのために何かを開発することができ、このプロダクトを、その後他社に再販売することもできます。Microsoftは初期にこれを行っていたため、資金調達をする必要がありませんでした。ある関係から、上場する直前に1度だけ資金調達を行いましたが、基本的にはブートストラップで資金を賄っていました。

人はついVCの資金が必要だと考えがちですが、実は事業を構築する方法は他にも多くあり、そして、そのような方法が創業者にとって最終的に都合が良いという場合もあります。

Craig Cannon [34:05]
それは間違いないですね。これから足を踏み入れようとしているゲームがどのようなものかを考える人が少なすぎます。アイデアを考え始めるときですら、シリコンバレーでは、これこそが投資対象であるべきだという枠に縛られていては、本質的にアイデアも限られてきます。人々は1,000人規模の企業を経営するということの意味、そしてそれが自分の生活にどう影響するかを考えていないのです。

Elad Gil [34:28]
はい。1度も外部からの資金調達をすることなく1,000人規模の会社を経営するということは可能です。

Craig Cannon [34:32]
はい、それは素晴らしいことだと思います。どのように成功したかはそれぞれなので、価値判断が難しいところです。それでは最初のページにあった質問に戻りましょう。Taylor Kaforio氏から、「私の会社は初期のMVPステージにありますが、成長に注力しながら初期の顧客を大切にするというバランスはどのように取ればよいですか」という質問です。

Elad Gil [35:00]
そうですね、まったく相反するアドバイスを2つお教えしたいと思います。

第1のポイントは、重要なのは少数の顧客に喜ばせることで、あなたの会社の代弁者となってもらい、口コミをもとに拡大するのが良いということですが、これは、どのような事業か、そしてそれが事業にとって重要かどうかによります。また製品が何か、何が成長の妨げとなるか、またはならないか、6つ星サービスの一部を自動化できるか、自動化にはどれくらい時間がかかるか、というように、その質問の裏には多くの要素があります。

それと反対のアドバイスとは、もし5人顧客がいて、彼らをがっかりさせたとすれば、それは残念であり修復に向けた努力は必要ですが、その人数はたった5人だということです。大事なのはその次の1万人の顧客ですから、彼らにとって大損害となるような失敗でも犯さない限り、修復は可能です。色々実験して、失敗もする覚悟が必要です。

Reid Hoffman氏の素晴らしい言葉に、「最初のプロダクトが恥ずかしいと思わなければ、それはリリースまで時間をかけすぎたということだ」というのがあります。 これについて彼は、何を作っているのかなど、他の条件にもよると修正していますが、発売の時期が早すぎるのではなく、遅すぎるというのは良くあることなので、これは素晴らしい言葉だと思いますし、少しぐらい失敗しても良いという余裕が必要です。

Craig Cannon [36:11]
はい。特にメーカーであるべきだと思い込んでしまう人は、実際には問題を解決することが大事なのに、問題に対する解決策の方にこだわりがちです。

Elad Gil [36:20]
唯一補足するとすれば、例えばペースメーカーのメーカーのように医療分野に関わっている企業の場合は、急ぎすぎたために失敗するというのは避けるべきでしょう。これも、先ほど触れましたが、誰かを傷つけてしまうようなことはするべきではないというポイントです。

しかし、例えば顧客サポートツールに関するSaaSプロダクトなどであれば、完璧でなくても許されるでしょう。初めは顧客に対して正直に、新プロダクトで不具合もあるということを伝えるべきです。

Craig Cannon [36:48]
自動運転車の車輪が外れたら大ごとですね。

Elad Gil [36:50]
その通りです。

Craig Cannon [36:51]
それは良くないですね。この件に関連して、Timay Condowall氏から採用に関する質問が来ています。成長期を全力疾走しているとき、どのように必要なエンジニアを想定して採用すれば良いですか、という内容です。

Elad Gil [37:04]
はい、これについては2点あります。

全体的な考え方としては、少しきつく感じるくらいが丁度いいということです。人が多すぎるという状況は避け、常に人手不足だと感じるべきです。一般的に、こんなに人がいるのに仕事が十分ないという場合、間違いなく失敗していることになります。

計画プロセスの観点から、そしてこれはHigh Growth HandbookでもClare Hughes Johnson氏との対話の中でも触れられていますが、どのようなタイムフレームで何を作りたいかを問い始める、シンプルな計画プロセスがあります。これを達成するには何人必要か、比較的な優先順位はどうかを問うことで、採用計画を作ることができます。通常このような採用計画は1年間を通してブレることはありません。

それは非常に初期の段階にあって、社員3~4人で多くの物を作らなくてならない場合や、資金を受け取った直後の場合でもそうです。資金調達に踏み込む際、そのような採用計画を用意しておくことをお勧めします。採用計画から資金燃焼率や必要な資金額を割り出すことができるからです。

例えば、本当は300万ドル必要だったり、実はそれほど必要なかったりするのに、200万ドル調達しようというように創業者は多くの場合、適当な数字を挙げがちです。しかし、具体的な資金の使い道やその資金がどれぐらいの期間もつのかという計画がある場合に比べ、

Elad Gil [38:17]
その数字は非常に独断的に感じられます。これは誰にとっても非常に役立つものである上に、実際どのようなものを作るのかを伝えることもできます。

Craig Cannon [38:23]
ビジネスの基礎のようなものですね。

Elad Gil [38:27]
はい、でもこれを行っている人は驚くほど少ないのです。

Craig Cannon [38:29]
分かります。私の周りでも、まるで資金調達は勝つことを目指すゲームのようになってしまっていて、それ自体で完結するように感じますが、実際はそうではありません。

質問は残りあと2つです。TD Bryant II氏からは、指数関数的な成長を遂げているときには、外注する機能と誰かを雇って自社で構築する機能をどのように選定すればよいかという質問が来ています。

Elad Gil [38:55]
それは何を作っているかに左右されます。有名な話ですが、InstagramがFacebookに買収された当時、社員数は約12人ほどでした。当時はまだ収益化の段階に踏みだしておらず、広告やその他の物を作っていて、チームを最小限に保っており、エンジニアリングとせいぜい他に1、2の業務に集中していました。

プロダクトを売りたいのか、またはプロダクトを一から作り上げたいのかなどの会社としての目標も少し影響してきます。拡大が重要ならば、業務をいくつか追加する必要がありますが、そのタイミングは事業内容に大きく左右されます。

先ほど、顧問弁護士やコンプライアンス担当者を雇うタイミングについての質問がありましたが、規制が厳しい業界では、最初の10人または50人の採用者にそのような人材も含めるべきでしょう。しかし規制がそれほど厳しくない業界の場合は、もっと会社が大きくなるまで顧問弁護士は必要ないでしょう。

状況によるとは思いますが、結局のところ、外注した方が良い業務は多く思い浮かびませんが、業務の一部を外注することはできます。例えば、福利厚生に関して言うと、福利厚生制度を自分たちで作ることはないと思いますので、そこは外部の人材を見つけ、保険や確定拠出型年金などに関する業務を担当してもらうことになるでしょう。

Craig Cannon [40:12]
それは投資の際に使うフレームワークのようなものですか。

Elad Gil [40:15]
どういう意味ですか。

Craig Cannon [40:16]
Gilさん個人として、例えばStripeやZenefitsのようにです。

Elad Gil [40:20]
そうですね、質問を誤解していなければ、私はそれを業務の外注というよりは、皆が作り続けているインフラの一部を外注していると思っています。私の頭の中では、業務とはHR、エンジニアリング、プロダクト、または職能組織を意味します。もし、私のIT関係や個人的な業務のうち、どの部分を外注すべきなのかという質問でしたら、迷わず支払いなどに関しては外部業者のサービスを利用すると答えます。こういうものを1から作り上げるのは大変ですから。

Craig Cannon [40:49]
先ほども触れたメーカーの考え方によって、すべてを革新させなければならないと感じてしまいますが、実際はそうではありません。

Elad Gil [40:57]
Andreessen氏のサイトに、テック系の創業者がいかにセールスを常に1から作り直そうとするかについて書かれた、面白いブログかポッドキャストが掲載されていました。ある販売方法があり、何十年もそれが成功してきたのであれば、すべての役割に技術的人材を採用する必要はなく、またそのセールスが非常に技術的なものでない限り、営業担当者にエンジニアリングの博士号を持った人を雇う必要はありません。

Craig Cannon [41:22]
私もそう感じます。独創的な株式の発行方法などを行っている会社を見ると、やめなよ、と思います。

Elad Gil [41:29]
はい。企業とその存続にとって重要なものと、そうでないものがあります。ときには重要でないことをするのは面白いですし、仕事が楽しくなるので良いのですが、それが全くの時間の無駄という場合もあります。

Craig Cannon [41:40]
同感です。それではドラゴンボールZの質問をしたいと思います。当然ながらこれは1番皆が聞きたいと思っている重要な質問です。Andres Pacool氏から、ドラゴンボールZ/GT/Superで1番好きな悪役は誰ですかという質問がきています。これはTwitterのアバターに関する質問だと思いますが。

Elad Gil [42:00]
はい、その通りです。私のTwitterのアバターは悟空です。最近では少し古くなってきたアニメ/漫画だと感じています。実はNARUTOの方が好きで、本当はうちはイタチをアバターにしたかったのですが、Twitterには少し不気味すぎるかと思いました。また当然ながら、彼はいつも正しいことをしようとしているのに、木の葉が暮れの里などすべての罪をなすりつけられたり、暁に入ったりするなど、非常に誤解されているキャラクターなので、私はシンプルな悟空にしようと思っただけです。もしお勧めのアニメや漫画があれば、Twitterで教えてください。

Craig Cannon [42:39]
なるほど。では連絡を取りたい、または本を買いたいという方はどうすれば良いですか。

Elad Gil [42:43]
本についてはAmazonがベストです。現在、一時的に在庫がないという表示がされていますが、それは無視してもらって結構です。これはStripeが持っている本が多数溜まっていて、処理中または配送中になっているというだけですので、注文すれば1~2週間で届きます。

Craig Cannon [43:01]
ウェブサイト、eladgil.comもありますよね。

Elad Gil [43:03]
そうです。

Craig Cannon [43:04]
分かりました。ありがとうございました。

Elad Gil [43:05]
お招きありがとうございました。

Craig Cannon [43:06]
ご傾聴ありがとうございました。いつも通り、トランスクリプトと動画はblog.ycombinator.comでご覧いただけます。もしお時間があれば、ポッドキャストで評価とレビューをしていただければ幸いです。それではまた次回お会いしましょう。

 記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Elad Gil Shares Advice from the High Growth Handbook, a Guide to Scaling Startups (2018)

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