Ben Horowitz はなぜ新しい本を書いたか(そしてお金の寄付先について) (Ben Horowitz)

俺は見てるぜお前のアクション
くだらないお前の投稿のキャプションだけじゃなく
—Rick Ross, “Big Tyme

今月、私は企業文化に関する新しい本、What You Do Is Who You Are (あなたのすることがあなた自身である)を出します。

なぜこの本を書いたか

過去数年間で、多くのテック会社が企業文化の問題でニュース沙汰になっています。実際に企業文化の問題であった場合も、企業文化の問題とみなされた場合もありました。

このような会社を助け、導くことを仕事とする私としては、会社やCEOに対する批判を興味深く読みました。批判の多くは示唆に富むものでしたが、提案された解決策のほとんどは、まったくもって馬鹿馬鹿しいものばかりでした。それらにはCEOをクビにする、テック系の創業者にリベラルアーツを学ばせる、「ただ正しいことをやる」、等が含まれました。あまりにひどいものばかりだったために、本当にすばらしい企業文化を作りたいと願っているけれど、どうすればよいか皆目見当がつかない創業者が数多く存在することに、改めて気づかされました。

彼らの気持ちはよくわかります。なぜなら私が Loudcloud のCEOだったときも、企業文化の醸成の仕方などまったくわからなかったからです。私は、私の会社の文化は単に私の価値観や行動態度、性格が反映されたものになるのだろうと思っていました。ですから私は自分のエネルギーをすべて「手本を示すことでリードする」ことに集中しました。驚くことに、そして恐ろしいことに、この方法は会社の成長と多様化には対応できませんでした。私の会社の文化は様々なマネージャーの下で育まれた様々な文化のごちゃ混ぜとなってしまい、そしてこれらの文化のほとんどは意図されたものではありませんでした。怒鳴り散らして部下を威圧するマネージャーもいれば、フィードバックを一切行わないマネージャーや、メールの返信もしないマネージャーもいました——まったくひどいありさまでした。

私は自分に問いました。「会社の文化とは、職場に犬を連れてくることとか、休憩室でのヨガとか、そういうことなのだろうか?」と。いいえ、これらは特典や福利厚生の類です。ではバリューのことか? いいえ、バリューは会社が目指すものです。CEOの性格やプライオリティか? これらは文化の形成を助けるでしょうが、文化自体からは程遠いものだと知ったばかりでした。では一体何なのでしょう?

簡単なエクササイズから始めましょう:以下の問いのうち、バリューやミッションステートメントを参照することで解決できるものはいくつあるでしょうか?

  • その電話は今すぐに折り返すべきほどに重要か、それとも明日でも大丈夫か?
  • 年間レビューの前に昇給を求めてもいいだろうか?
  • この資料の質はこれで十分だろうか、それとももう少し手を加えるべきか?
  • その会議には時間通りに出席する必要があるだろうか?
  • 出張ではフォーシーズンズに泊まるべきか、それともレッドルーフ・インか?
  • この契約書の交渉でより重要なのは、金額かそれともパートナーシップか?
  • 同僚の過ちは指摘すべきか、それとも正しくできていることを指摘すべきか?
  • 午後5時に帰るべきか、8時に帰るべきか?
  • 競合についてどれくらいしっかり研究すべきか?
  • 新製品の色に関する議論は5分間でよいか、それとも30時間かけるべきか?
  • 社内で何かの決まりがひどく破られていたり、破綻していることを知っているとき、声を上げるべきか? 誰に言えばよいか?
  • 勝つことは倫理より大事か?

答えは、ひとつもない、です。

これらの問いに「正しい答え」はありません。あなたの会社にとっての正解は、あなたの会社が何の会社か、何をしているか、何になりたいかによって異なります。それどころか、従業員がこれらの問いにどう答えるかがあなたの会社の文化です。なぜなら会社の文化とは、あなたが不在のとき会社がどのように意思決定を行うか、ということだからです。それは、従業員が毎日直面する問題を解決する際の一連の前提です。それは、誰も見ていないときの従業員の行動態度です。もしあなたが会社の文化を系統的に規定しなければ、その2/3は偶発的な産物となり、残りは過ちとなるでしょう。

あなたの文化とは、あなたの人となりです。あなたの人となりとは、壁に掲示する価値観のリストではありません。全社員会議であなたが発言する内容でもありません。あなたのマーケティングキャンペーンでもありません。あなたが信じることですらありません。

それは、あなたの行動です。あなたがやることこそが、あなたの人となりです。私の本は、あなたがなりたい人になるためにやらなければならないことをお手伝いすることを目指しています。

お金はどこに行くか、およびその理由

私はこの本による収益の100%を再犯防止活動(刑務所から出所した人々が再び戻らないよう助ける)およびハイチ復興のために寄付します。この寄付は、私からのいわばお返しです。なぜならこの本の大部分は、私がハイチ革命、およびシャカ・センゴールがアメリカの刑務所システムを旅した経験から学んだことに着想を得たものだからです。

刑務所は文化を理解するのに非常に好条件の場所です。なぜなら刑務所に入ることになる人々は壊れた文化の出身であることが多いからです。親に出ていかれたり、殴られたりしています。友達に売られたという人もいます。また、彼らは約束を守るなどの基本的な概念の共通理解を信頼することができません。刑務所では文化の最も困難なテストケースがもたらされます。刑務所で文化を形成するには一番初めの、第一原則から始める必要があります。センゴールはこれらの原則をマスターし、凶暴な囚人のヒエラルキーを上り詰めて強力なギャングを率いただけでなく、後に自分の文化を顧みて、それを変えました。そうすることで彼は何人もの人生を変えました。彼自身の人生も含め。

19世紀初めにトゥーサン・ルーヴェルチュールにより導かれたハイチ革命は、人類の歴史上で唯一成功した奴隷による反乱でした。漢王朝の奴隷やオスマン帝国におけるキリスト教徒の奴隷による蜂起も確かにありましたし、大西洋横断奴隷貿易のさなかには身体的に拘束された1千万人のアフリカ人の一部による暴動の記録が多数残っています。しかし成功した反乱は一つだけでした。もちろん、すべての反乱の試みが強い動機により駆り立てられたものだったことでしょう——自由ほど人を奮い立たせる動機はありません。ではなぜ勝利は一度しかなかったのでしょうか?

奴隷制度では対象者を非人間化することで、文化の形成が妨げられました。壊れた文化では戦争に勝てません。

奴隷として行った仕事は、一切自分の実にはなりません。あなたや家族がいつ何時売られたり殺されたりするかわからない状況では、物事を丁寧に考えて系統的に行うべき理由などありません。あなたが他の生き方を知ったり、他の奴隷とやりとりしたり、主人の考えを知ったりすることを防ぐため、文字の読み方を学ぶことは禁じられ、知識を蓄えたり記録したりするのに使える道具もありません。主人の気分次第でレイプされ、鞭で打たれ、手足を切断されるかもしれません。このような一連の残虐行為は、低水準の教育や低い信頼感、また生き抜くことへの短期的な視点へとつながります。そしてこれらのどれひとつとして、結束力のある戦闘集団を構築するのに役に立つものはありません。

では奴隷として生まれた一人の男が、どうやって奴隷カルチャーを作り変えたのでしょうか? トゥーサン・ルーヴェルチュールはどのように奴隷の部隊を、ヨーロッパ最強の軍隊であったスペインやイギリス、フランスの軍を打倒するほどの恐るべき戦闘部隊へと作り上げたのでしょうか? この奴隷部隊はどのようにしてワーテルローでの死傷者数を凌駕するほどの打撃をナポレオンに与えたのでしょうか?

この本は10月29日に発売されます。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Ben Horowitz

Ben Horowitz は、Andreessen Horowitz の共同創業者兼ジェネラルパートナーの一人であり、New York Times のベストセラーである Hard Thing about Hard Things の著者です。

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: My New Book, Why I Wrote It, and Where the Money Will Go (2019)

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