創業者の鬱 (Sam Altman)

創業者にスタートアップの調子はどうかと尋ねたら、ほぼ間違いなく「最高!」といった感じの答えが帰ってくるでしょう。

創業者には、決して弱みを見せず、社内でも社外でもいつでも前向きなチアリーダーのように振舞わなければならないという、多大なプレッシャーがのしかかります。自分の周りの世界が崩れ去っているように感じられても(会社を運営しているとほとんどいつでもそんな感じですが)、創業者は強く、自身に満ち溢れ、楽観的でいなくてはいけません。失敗するのは恐ろしいですが、バカみたいに見られるのも恐ろしいものです。

創業者は、従業員、家族、顧客、投資家等、多くのものを肩に背負ってしまいます。創業者は皆を幸せにしなければいけないと、責任を感じてしまいがちです。皆の利害はたいてい対立するものであるにも関わらず、です。そして、共同創業者がいたとしても、説明は難しいのですが、ある意味孤独なのです(Y Combinator のような組織で上手くいっていることの1つは、サポートを得るのに頼れる仲間がいることです)。

そのため、多くの創業者はどこかの時点で精神的に非常に落ち込み、たいていの場合、誰にもそのことを打ち明けません。企業は多くの場合、このような暗闇の時期を乗り越えることができません。

失敗は最悪です。そのことはどう取り繕うこともできません。しかしスタートアップは生死をかけた問題ではありません。単なる仕事なのです。

私の知る創業者の大半は、本当に困難な時期を経験し、頼りにできる人が誰もいないと感じたことがあります。こんなことを言っても役に立つかは分かりませんが、あなたは1人ではありません。そして恥じることなどないのです。

「上手くいっているよ」と言う代わりに、直面している困難について誰かに話してみてください。一度やってみると、どれほど気持ちが楽になるか、きっと驚くことになるでしょう。そして、他の創業者たちがどれだけ話を聞いてくれるかということにも、驚かされることになります。

 

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Sam Altman

Sam Altman は YC グループの社長です。彼は Loopt の共同創業者兼 CEO でした。Loopt は 2005 年に Y Combinator に投資され、2012 年に Green Dot に買収されました。Green Dot で彼は CTO を務め、現在は取締役です。Sam は Hydrazine Capital も創業しました。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Founder Depression (2014)

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