エンジニア・クランチ (Sam Altman)

ベイエリアのほとんどのスタートアップにとって、シリーズAクランチよりもエンジニアクランチ(エンジニア不足)の方が深刻な問題です(これはデザイナーにもある程度該当しますが、大多数のスタートアップはデザイナーよりもはるかに多くの開発者を必要としています)。開発者とその他の職種の人材とでは、その採用の難しさに雲泥の差があります。スタートアップが口にすることで、私がよく耳にするのは、エンジニア以外の職種は本気で探さなくても多数の優秀な候補者を見つけることができるが、たった1人の優秀なエンジニアを探す時には、どんなに探してもなかなか見つけることができないということです。

この困難はスタートアップ自らが招いていることもあります。

第一に、投資家が提供するあらゆる典型的なひどいアドバイスの中でも最悪なのは、エクイティの付与をけちる、ということです。なぜこんなにも多くの投資家が(創業者の一部も)、こんなに誤った知識を身につけているのか、はっきりとはわかりません。しかしスタートアップがエンジニアを採用できないと不平を言いながら、続く言葉で、「アーリーステージの企業として自分は 0.1%から0.2%のオファーをしています」と話す時、私は瞬く間に同情心を大きく失います。

エクイティの付与は実行しやすいはずです。誰かが業績をあげ、4年以上、報酬を稼ぎ続けたなら、1%であろうと何であろうと、あなたが彼らに付与するエクイティをはるかに超えて、会社の価値を上昇させてくれる可能性が高いのです。誤った採用をしてしまったとしても、余裕を持ってすぐに解雇することができたなら、彼らはクリフによってエクイティを付与されることはいずれにせよありません。

私は、初期採用の従業員にエクィティを気前よく付与したことで後悔しているスタートアップを見たことがありません。一方、いかにうまくオプション・プールの予算を切り詰めているかを誇らしく思っているスタートアップで、失敗した例を数多く見てきました。

ほとんどのエンジニアにとって、これは、金銭の問題であるのと同じぐらいに、公平性と評価されているという感覚の問題でもあるのです。そして、当然のことながら、彼らがGoogleでの確かな巨額の給料を選ばないのであれば、彼らはそのリスクをとるにふさわしいリワードを手にするべきです。

ポジティブな兆候として、アーリーステージの企業のエンジニアの平均的なエクイティ付与は、上昇しているように見えます。しかし、需要と供給の仕組みに照らして考えれば、まだ彼らが受け取るべきものには達していません。

第二に、ミッションを原動力にしている会社は、そうでない会社に比べてかなり簡単にエンジニアを採用しています。優秀なエンジニアは世界を変えることを望んでいると言われてきましたが、これは概して真実です。あなたの会社の社員募集の売り込みのもっとも魅力的な部分が、会社がどれだけの収益を上げるかというものであれば、才能ある人材の採用は困難になるでしょう。それよりも、あなたのスタートアップが使命を達成することが世界にとって非常に重要である理由を話すことの方が雇用しやすいのです。もしあなたが世界で17番目の食品配達のスタートアップならば、あなたの会社がいかに世界を変えるかについて話を作り上げるのはやめてください――それはうまくいきません。それでも優秀な人材は雇用できますが、飾り立てられたミッションはその方法として有効ではありません。

優秀なハッカーはまた、本当に賢い人々と一緒に仕事をする機会、また、興味深い問題に取り組む機会を欲しています。そしてミッションを重視する会社は、その性質上、大抵は、最終的にそれらの機会をも提供します。

あなたの会社が、ミッションを重視する会社でないならば、私の考えでは、最善の戦略は、元々期待していたであろうものよりも格段に小さなエンジニアのチームで成功する方法を考えることです。2、3人のエンジニアのチームはすばらしい成果をあげますし、小さなエンジニア・チームと非常に大規模なオペレーション/セールスチームを必要とする優れた事業は数多くあります。また、その場合は、ハッカーの共同創業者が何にも増して必要です。なぜなら、優秀な開発者を採用することはかなり難しいことが予想されるからです。

第三に、自分の人脈の外で採用するつもりならば(これは通常は間違いですが、時として他に本当に選択肢がないこともあります)、シリコンバレー以外の採用に焦点をあててください。国内全土に優秀なハッカーがおり、その多くは、シリコンバレーに引っ越すように説得することができます。それどころか、合衆国にいるのは最も優秀なハッカーのおそらく5%未満です。[1]

最後に、ほとんどの創業者は、エンジニアの候補者の身元を確認し、面接に来るように説得することに時間を使いたがりません。きちんとした一流企業になるまでは、こうした作業を外部委託することはできません。自分でこなす必要があります。

[1] 政府関係者が来て、スタートアップのためにできることは何かと私に尋ねる度に、私はいつも同じことを言っています。「政府がすべき唯一のことは、創業者やエンジニアに対する入国審査を修正することです。これは、政府の革新的プログラムをすべて合わせたよりも、はるかに影響力があるでしょう。」

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Sam Altman

Sam Altman は YC グループの社長です。彼は Loopt の共同創業者兼 CEO でした。Loopt は 2005 年に Y Combinator に投資され、2012 年に Green Dot に買収されました。Green Dot で彼は CTO を務め、現在は取締役です。Sam は Hydrazine Capital も創業しました。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The Engineer Crunch (2014)

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