この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Investor School (Y Combiantor)
(※訳注:ここでのSAFEに少し近い投資契約書として、日本には J-KISS があります。本記事は J-KISS を利用するときにも一部役立つ内容だと思います)
目次
- 本日の講義の概要
- SAFE
- SAFE の転換の計算方法
- M&A や清算などのイベントが起こったときに起こること
- SAFE の契約プロセス
- 投資に関するアドバイス
- Q&A
- SAFE 投資家は十分なリワードを得られるのか?
- SAFE で調達する金額を決めるのは誰? 別のキャップで別の投資家が投資した時は?
- Pro-rata が次の投資家に拒否されたときは?
- エンジェル投資はLLCとしてすべき?もしくは個人?
- なぜ SAFE の Pro-rata は転換が起こるラウンドではなく、その次のラウンドで与えらえるのか?
- 返還期日のある Convertible Note のほうが良いのでは?
- SAFE のときに PPM は必要?
- 世界中で SAFE は使える?
- SAFE の転換のトレンド
- SAFEを理解している人はどれだけいるか?
- スタートアップの登記で最適なものは?
- SAFE での最恵国待遇条項はどれぐらい普通か?
- Geoff Ralston によるまとめ
Geoff Ralston
次のセッションは、実は私が最も気に入っている講義の一つとなります。スタートアップ投資を実際どのように行う方法 –スタートアップ投資とは実際何をすることなのか、どのような仕組みなのかという根本的なことは、謎に包まれているからです。
それを私の同僚 Carolynn Levy と Kirsty Nathoo 以上に上手く説明できる人は、この地球上にはいないでしょう。彼女たちはもう数千の会社とこの問題に取り組んでいるのではないでしょうか。たしか1600, 1700社と…実際何社ですか?誰かが知っているのか、誰も知らないのか。とにかく、数百社は下りません。これに関しては誰も彼女たちに太刀打ちできません。
Carolynnは実はSAFEを開発した人物なのです。彼女は元々ここに来る前はWilson Sonsiniで働く弁護士でした。Kirsty はYCのCFOです。
ここで二人の含蓄ある言葉を紹介しますね。誰がどれを言ったのかは想像してください。というのも私も分からないので。
「助けの手を差し伸べられる投資家は皆そうすべきだ」
「決まった額より多い取り分を要求するのは、無料の試供品をくれと言っているようなものだ」
…私はこれはKirstyの言葉かと思います。しかし確証はないです。
「お金を持っているということは非常に有益なことだが、戦略と方向性をもって手を差し伸べてくれる人はお金では買えないくらい貴重だ。だから、慎重にパートナーを選びなさい」
この言葉の紹介をもって、マイクをCarolynnに譲りたいとおもいます。
本日の講義の概要
Carolynn Levy
私も、Geoffが紹介した言葉のどれが私のものでどれがKirstyのものかわかりません。自己紹介をする予定でしたがGeoffがすでにすませてくれたので、本題にすぐ入ろうと思います。
Geoffが言ったようにこの講義は基本原理の部分にあたります。この講義では投資をどのようにY CombinatorのSAFEを使って行うかをお話しします。これはまず私が担当し、KirstyはSAFEをどのようにエクイティファイナンシングのなかで転換するかを説明します。
それからわたしがSAFEをその他の場面でどのように変換するかについて話します。手短にプロセスをなぞったあと、Samが述べた幾つかのアドバイスをおさらいします。重要なことなので。
SAFE
GeoffやSamが、会場内で既にエンジェル投資をしたことがある人はどれくらいいるのかと聞いたときに大勢が手を挙げていましたが、ではどれくらい既にSAFEを使ったことがある方がいらっしゃるのでしょうか。あら、沢山いますね。
基本をお話ししますので、既に知っていらっしゃる方もいるかもしれません。しかしまだSAFEを使ったことがないかたにはきっと役にたつ知識だと思います。
SAFEをスタートアップのアーリーステージに起草するということは、この会社がおそらく、というか確実に、プライスドラウンド(訳注:企業の価格がついたラウンド)を行っておらず、また社外発行済の優先株がない時点だろうということです。
もちろんSAFEはこれよりあとのステージの、プライスドラウンドや優先株発行を経ている会社でも利用可能です。もしかしたらもう会場の何人かの方々は既にここまで行われたことがあるかもしれませんが、かなり初期のスタートアップを想定してお話ししています。
SAFE を使わないほうが良いとき
SAFEを使わないほうが良いのは、すでに新株予約権付転換社債を以前の投資家にむけて発行したことがある会社の契約を考えているときです。そのような場合には、SAFEではなく以前発行したのと同じ社債を使ったほうが良いと判断できるでしょう。それは、同じドキュメントに投資家を皆記載できるほうが会社にとってかなり面倒が少ないのと、同じ基盤を共有するほうが投資家にとって公平だからです。
SAFE のメリットは「効率的、迅速、安い」
投資したいと思う会社を見つけ、その会社がプライスドラウンドを行っていたならば、そのプライスドラウンドに投資して優先株を得ることになります。しかし大半のアーリーステージのスタートアップは、一人のメインの投資家から投資を受け取っているというわけではありません。誰か一人が投資の契約条件を決め、ラウンドの額を決めているわけではないのです。
また、たいていその時点では会社の方向性も固まっていません。このステージがSAFEが使われるタイミングです、なぜなら本当にアーリーステージの会社は、友人や家族、エンジェル投資家から少額の資金を調達したいだけなので。
このときはSAFEを使うことで、とても効率的、迅速、そして安く達成できます。なぜなら投資家も会社も法律顧問を設置する必要がないからです。
SAFEというのはSimple Agreement for Future Equityの頭文字をとった造語で、「将来のエクイティに関する簡潔な同意書」の意味です。
SAFE は Convertible Security (転換可能な証券) であって借入ではない
先ほど言いましたように、これは転換可能な証券 (convertible security) です。この証券は会社の株の割り当てに後ほど転換されます。この前提はとてもシンプルです。投資家が今資金を提供すると、将来のある時点で株を手にいれるというわけです。
大事なことなので、何度も言いますが、SAFEは借り入れではないということです。借金ではないのです。利益も生じません。満期での全額返済の権利もありません。わたしの機嫌を損ねますのでそういうものをSAFE社債と呼ばないでくださいね。
SAFE の重要なポイントは導入部の二つのパラグラフ:投資金額とバリュエーションキャップ
では、SAFEとはどのようなものでしょうか。ここに一セット持ってきました。5ページの長さになります。通常の金融書類一式、5種類ほどのドキュメントのものと比べると、どの書類も5ページで終わることなく、それよりもずっと長くなっています。
鍵となる条件事項は2つしかありません。それを今からお見せします。
これはSAFEの導入部分のパラグラフです。2つ空白スペースがありますね。最初の空白はスタートアップに投資をする額を記入する欄で、2つ目はバリュエーションキャップの記入欄です。
バリュエーションキャップに関してはKirstyがこのあと詳細をお話ししますが、とにかくこの2つのみが会社と交渉するべき事項となります。ただただシンプルなんです。
最初のパラグラフの後、まるまる1セクションでコンバージョンの場面について記述しています。この後すぐご説明します。
これは法的書類なので、定義のセクションもあります。法的書類にはいつでも定義の言及が必要ですよね。それから残りは定型表現です。
その例としてあげると「会社は、代表者を有し、その状況について投資家にと保証をするものとする」というものがあります。信任された投資家としてなにかを建議する(ことができる)、という意味ですね。
それから最後に少々の雑多な記述が含まれたセクションがあります。SAFEでないものについても言っておきます。優先株を持っている方、すでにある会社に投資をして優先株を得ている方はSAFEの契約をしていないことになります。SAFEはすぐに株の取得をするためのものではないですから。
SAFE で重要な Pro-rata
SAFEが転換されると、あなたは優先株を手に入れ、リード投資家が優先株のために交渉した権利とおなじ条件に乗っかることになります。SAFE独自の条件などというものはないのです。SAFEにあるのは「Pro-Rata」だけです。
Samが、まだこのPro-Rata権のことをよく知らない方のために、これ適切に定義づけていました。将来のラウンドで株を買い増やす権利のことです。そうすることで株の保有率を維持することができます。
SAFEにはPro-Rata権を次回のラウンドで得ることができると書かれたセクションがあります。転換のラウンドでなく、次回のラウンドです。あなたのSAFEがシリーズAの優先株に転換されたならば、SAFEのPro-Rata権というのはシリーズBで有効になります。そうすると保有株式のパーセンテージを維持することができますね。
SAFE はいくつかのバージョンがある(基本はキャップSAFE)
ここまでキャップSAFEと呼ばれるものについてお話ししてきました。これはターゲットバリュエーションがあるもので、Kirstyがより詳しくお話しします。これは最もよく使われるSAFEです。しかし他に幾つかのバージョンのSAFEもあります。手短にお話ししますね。
Discount SAFE (ディスカウント SAFE)
ディスカウントSAFEと呼ばれるものがひとつです。最初のパラグラフでバリュエーションキャップを交渉する代わりにディスカウントレートを交渉します。このディスカウントレートはSAFEを転換するときの持株率に適用されます。典型的なディスカウントレートは10%から20%です。
たとえばSAFEが転換されるシリーズAのラウンドで、リード投資家が(一株あたり)1.00ドルという値をつけたとします。あなたは20%のディスカウントで契約書を交わしているのであなたの(取得する)一株あたりの値段は0.80ドルということになります。シンプルですね。
Uncapped SAFE (キャップなし SAFE)
また、キャップなしSAFEというのも、あまり使われませんが、あります。ターゲットバリュエーションもディスカウントレートもないので、SAFEをただシリーズAが支払うのとおなじ額に転換するだけになります。このSAFEには早期投資へのリワードがなにもありません。だからこれは一般的なSAFEではないのです。
しかしときには会社にたくさん投資の需要があつまる場合があり、そうするとキャップなしSAFEでも同意に至る場合があります。ですから頭に入れておくだけ入れておきましょう。
MFN SAFE (最恵待遇付きの SAFE)
3つ目はMFN SAFEと呼ばれるものです。MFNはmost favored nationの略で「最恵国待遇」の意味です。これは契約に関する法律から借りてきたコンセプトです。
ターゲットバリュエーションはないですが、MFNに関するパラグラフではもし後に続く投資家がターゲットキャップやターゲットバリュエーション、ディスカウントレートを交渉した場合、あなたのSAFEを修正し、その投資家の得た条件をあなたも得ることができます。そうするとあなたのSAFEはキャップ無しではなくなりますね。次は、Kirsty,お願いします。
SAFE の転換の計算方法
Kirsty Nathoo
では、これからどのようにSAFEが株式に転換されるかについてお話しします。バリュエーションキャップのしくみについて、SAFE転換を動かす数式についてカバーします。この部分は数学の授業になりそうです。また、投資家のオーナーシップをどう理解するかもお話しします。
はじめに、バリュエーションキャップです。Carolynnがすでに述べたように、これは投資家が起業家と交渉する事項のひとつです。バリュエーションキャップだけでなくターゲットバリュエーションや、そもそもキャップとはなにかについてもお話しします。
「キャップ」で転換時のバリュエーションの最高値を決める
キャップとは、SAFEが転換される、バリュエーションの最高値です。プライスドラウンドがSAFEのバリュエーションキャップより低ければそのラウンドのバリュエーション額の株式に転換されます。
キャップは評価額ではなく、投資家へのリワードの方法
キャップについてよく混乱する人がいますので注意してください。キャップを現在の会社の評価額だと捉えてしまうのです。しかしそうではありません。キャップの目的は理論的にリスクの高い早期ステージで投資をしていることへのリワードの方法なのです。あなたにとってのリワードやボーナスを得る手段です。
ですから「このキャップの大きさで投資をしたら、シリーズAの金額はどうなるだろうか、次のプライスドラウンドはいくらくらいのになるだろうか」としっかり考えるべきです。理想的には、キャップは高い方がいいですね、リワードが大きくなりますから。
転換のタイミングはプライスドラウンド
会社がエクイティファイナンシングを完了したときにSAFEは株に転換されます。たとえばプライスドラウンドです。会社によっては、その会社の進行段階次第でプライスドラウンドがシリーズシードと呼ばれる場合があります。シリーズAというときもあります。もしくはすでにシリーズAを調達している場合にSAFEをシリーズBまでのつなぎにするときもあります。これは次のプライスドラウンドはなんなのかによります。
ここではプライスドラウンドとして言及しますが、シリーズAに例えられている場合もあります。しかし基本的にどのプライスドラウンドでも構いません。
このエクイティファイナンシングでは会社、創業者は代表投資家ラウンドにおいてその都度交渉し、タームシートをつくることになります。これらの条件事項はどのようにSAFEは転換されるかには影響しません。SAFEそのものを前提として始まっているので。しかしSAFEが何株に転換されるかには影響します。これについてこの後見ていきます。
転換時に起こるのは「オプションプールの増加」「SAFEの転換」「新しい投資家からの投資」の3つ
プライスドラウンドがクローズしたら、3つのことが起こります。書類では同時に起こることになっていますが、計算上は順に起こることになっています。いまから理由をお話ししますね。
まずはじめに、オプションプールがつくられるか、もしすでに存在するならその量が増やされます。たいていは、タームシートの一部として交渉されるこのクロージングオプションプールは後のラウンドの株式の10%ほどになります。これから説明しますが、これがあるので計算が少しややこしくなります。
次に、SAFEを株式に転換することです。SAFEそのものにでは言及されないのですが、このタームシートはたいていSAFEがプレ・マネーに転換されることを明記しています。
どういう意味かというとSAFEが転換される株式はリード投資家にむけた一株あたりの値段が見積もられるときに同様に考慮されます。この事例もこのあと見ていきます。
三つ目に、新しい資金が入ってきます。リード投資家やそのラウンドに投資しているその他の投資家は資金を投資して株を買います。
ここで数学がでてきます。ハイレベルでの理解としては、どんな投資家にとっても、受け取る株式数は投資額を株の値段で割ったものです。一株あたりの値段はバリュエーションを会社が発行した株数で割って計算されます。
そうでなければ、発行株式数はたいてい、会社のキャピタリゼーションとして書類内で参照されます。
SAFEの持ち主にとっては、バリュエーションはたいていキャップの額で、キャピタリゼーションは株式発行数に増額されたオプションプールを足したものです。
新規の投資家には、バリュエーションはプライスドラウンドのバリュエーションで、キャピタリゼーションは株式発行数、オプションプールの増加分とSAFEが転換された株式数です。
例を使った解説
一つ例を挙げます。この左にある事例では、創業者が発行された900万株をもっています。創業者は3人いて、平等に発行済株式をシェアしています。3月のデモデーで会社はSAFEにて80万ドルを調達します。皆同じバリュエーション・キャップがあります。800万ドルのキャップです。
それから2019年11月に目を移してみましょう。プライスドラウンドがあるまでこのくらいの期間かもしれませんし、もっと長くかかる場合もあります。
プライスドラウンドで1,600万ドルのプレ・マネーバリュエーションで400万ドルを調達します。 オプションプールと同様にタームシートで交渉された条件はポスト・マネーとプレ・マネーのSAFE転換額の10%まで増やされます。
このあとわかるように、回りくどくなるのでオプションプールの増加額がどのように働くかの計算については深入りしません。しかし、これは140万株を大きく上回る数にはならないと確信しています。これはその詳細です。
最初に起こるのはオプションプールの増額です。その次はSAFEの転換ですね。
SAFEの中で定義されたSAFEのキャピタリゼーションは、発行済株式にオプションプールの増加を追加するので1,043万株になりますね。
キャップがキャピタリゼーションでプライスドラウンドを割った転換価格0.77ドルより低いので、SAFE転換の値段はバリュエーション・キャップになります。ですのでSAFEの投資家が買う株式数は80万ドルの投資をキャップの転換価格で割ったもので、100万株を超えるくらいになります。
皆さんついてきていますか?では、次ニューマネーの計算のステップです。これはリード投資家でプライスドラウンドです。
ここではキャピタリゼーションは発行株式数やオプションプールを含みません。そこにはSAFEが転換された株式も含まれます。この例では1,140万株分の資産があります。そして一株あたりの値段はまたタームシートのバリュエーションを使って計算されます。
1,600万割る1,147万株で一株あたり1.39ドルと計算されました。ニューマネーの投資家からの400万ドルは287万株になります。
全てを合わせてみると、とてもシンプルな資産政策表です。
普通の資産政策表よりも整っていますね。資産政策表に馴染みのない方にご説明しますと、これは会社のオーナーシップを説明する方法のひとつで、誰が何をどのくらい持っているかをみるものです。
事例をまた見ますと、ここに3人の創業者がいて、普通株 (common shares) を保持しています。この株数、創業者の持っている株式数は変わりません、前と同じです。また、オプションプールの増加分があります。ここから会社の被雇用者に対して株が将来発行されます。
さらにおよそ100万株を持っているSAFEの投資家と280万株を持っているプライスドラウンドの投資家がいます。SAFE投資家とプライスド投資家は優先株 (preferred shares) を持っています。創業者と会社の被雇用者は普通株 (common shares) を持っています。
ここからわかることは、SAFE投資家は会社が調達した合計480万ドルのうち80万ドルのみを投資しているのに、他の投資家と比べた比重としてずっと多くの株数を持っているということです。
これはキャップが効果を発揮しているからで、このようにSAFEの投資家は早期の投資に対するリワードを受けることになります。SAFEの株式転換は以上のような仕組みになっています。
そこではオーナーシップのパーセンテージも出ていますね。わたしの数学がうまくいったことがわかります。オプションプールはポストマネー株式の合計、この2つの数を足したものの10%です。
さて、SAFEの投資家は少し難しい時期となります。なぜならSAFEにサインをした時には、プライスドラウンドのあとに会社のオーナーシップを何パーセント得られるのかわからないからです。その理由は、SAFEには株に転換される旨が書かれているにも関わらず、何パーセントの株に転換されるのかは特記されていないからです。プライスドラウンドの条件によりますから。
この事例では、SAFE投資家は7%強の株式を持っています。SAFEにサインするときにはこう考えるかもしれません、だいたい80万ドルを800万ドルのキャップで投資したら、会社は880万ドルのポストマネーバリュエーションをもつことになります。ですのでSAFE投資家はおよそ9%の株を持つことになる、と。
しかしそれはSAFEがサイン後すぐに転換されると、ニューマネーがまったくないということが想定されますが、実際にはそんなことは起こりません。SAFE投資家のシェアが9%でなく7%なのは、ニューマネーによってSAFE分が薄められるからです。
一例として、もう少しお話しします。プライスドラウンドで投資家がこれと同条件で、しかし400万ドルではなく200万ドルしか投資しなかったら、ここのオーナーシップ比率は8%ほどになります。プライスドラウンドがあるまで会社の保有率が何%になるかはっきりしない、ということがここからわかると思います。
これはかなり難しいことなので、ご自身のモデリングを行ってみることと、どんなシナリオが起こりオーナーシップに影響しうるのか検討することが大切です。
AngelCalc を使ってみる
2点ほど、この点に関してお手伝いできるような情報をお伝えしておきます。Geoffは、以前にAngelCalcというソフトウェアを開発しています。これはモデリング用のソフトウェアで、様々に異なったシナリオを見ることができるものです。
また、のちほどInvestor Schoolのウェブサイトのリソースページにスプレッドシートをアップしますので、算出などを試して、またSAFEがどのように将来転換されうるのか確認してみてください。
M&A や清算などのイベントが起こったときに起こること
Carolynn Levy
もしあなたがある会社に投資をしたとして、プライスドラウンドを調達するまえに何か他のことが起こったとします。起こりうる「何か他のこと」とは例えば他の会社に買収されたり、事業が失敗したりです。何も起こらないかもしれません。
M&A が起こったときにSAFE投資家に起こること
これらについてお話ししていきますが、起こりうるケースの両端をあげて、買収合併の際にSAFEがどうなるかをお話しします。
ホームランのケース
一つの極端なケースは「ホームラン」が出た際です。Samがこの用語について言及したかと思います。これは買収企業が現れてあなたの投資したスタートアップに多くのお金を支払った場合です。
SAFEには何が起こるでしょうか。これは、普通株に転換されることになります。
転換は、手に入る普通株の数を決めるためにターゲットバリュエーションを利用して行います。そして創業者や他の普通株保有者と共に合併の利益にもあずかることになります。この場合、SAFEに支払った額を超えるリターンを期待することができます。ちなみにこれはIPOの場合にも起きることです。同じ結果ですね。
Acqui-hire のケース
もう片方のケースは買収による人材の獲得 (acquihire) です。この部屋にいる皆が皆この用語に馴染みがあるのかはわかりませんが、これは買収企業が現れ、そしてあなたが投資をしているスタートアップの有能な人材を引き抜くことです。創業者や主要な社員ですね。知的財産やその他の財産にお金を払うわけではありません。
これらの取引が起こるとほとんどお金になりません。この場合、SAFEの金額の支払いを受けることを選ぶことになります。
SAFEにはこのようなオプションがあります。なぜならほとんどの取引はこの二つの極端なケースのようではないからです。たいていどこか間に位置します。このような状況で行うべきは計算をしてご自身にとってなにが一番いい結果となるかを判断することです。
SAFEを普通株に転換するのか、合併の利益をとるのか、もしくはただSAFEの投資額の払い戻しを受けるのか。
会社が失敗して清算するときに起こること
時には会社があなたや他のエンジェル投資家から資金を調達しても、会社がうまく回らないことがあります。だいたいは本当に一生懸命事業に取り組んでいるのだと思うのですが、しかし事業がどうしてもうまくいかず失敗することがあります。
事業が失敗した場合は、会社は清算のプロセスを取ることになります。このプロセスの一部では債権者への返済を必要とします。企業解体の場面では、会社は取引債務を支払わなければなりません。それらはベンダー、家主への支払いです。そして絶対に、絶対に雇用している社員に給与を支払わなければなりません。
もし幾らかでも残りのお金があったら、その次の支払いの順番があなたたちである、とSAFEに書かれています。ですからもし資金が残っていたら、SAFE保有者とその他の投資家が支払いを受けることになります。
たいがいその額は元の投資額のほんの数%なのですが、他のステークホルダーよりは先に何かを得ることはできます。正直なところ企業解体では、ステークホルダーへの資金がないだけでなく、投資家に払い戻すだけの十分な資金があることはまれにしかありません。
もうこれは完全に失敗した場合で、たまにそういうことが起こります。
IPO も M&A も清算も……何も起こらないとき
「なにも起こらない」ときにはどうなるのでしょうか。これは、会社がエンジェル投資家から資金を調達したあと自力運転可能になり、利益がでるようになった状況です。
会社が生き残ることができて、また突然プライスドラウンドを調達する意欲がなくなり、また誰も買収のためにアプローチしてこないといった状況です。
ではその時、SAFEはどうなるのでしょうか。SAFEにはこの条項のことは言及されていません。
その理由は、第一にこのような稀なケースについていちいち記述すると複雑で長い書類になって、簡潔な書類とはいえなくなるからです。
第二に、あまり起こるケースではないということが挙げられます。高成長期の世界では、このケースは本当にレアです。しかしライフスタイル企業に資金提供したいときにはこの問題が常に起こるのでSAFEを使うのは良くありません。もし偶然ライフスタイル企業に投資してしまったなら、創業者と話しに行くことが私たちからできるアドバイスかと思います。
おそらくとてもいい人たちに投資されているだろうと思いますので、そういう起業家はまっとうに取引をしたいでしょうし、どうすれば投資家のあなたが健全な状況でいられるかを判断したいと思っているでしょう。こういう話は投資をする起業家を注意深く選ばなければならないというSamの講義の要点にもどります。
さて、KirstyがここからSAFE契約のプロセスについてお話しします。
SAFE の契約プロセス
Kirsty Nathoo
ここまでSAFEとはなにか、どのように株に転換されるかをお話ししてきましたが、ここから実際のSAFEの締結のプロセスと、株式への転換のプロセスについて見ていきます。
ハンドシェイクプロトコルでコミットする
プロセスのはじめにすることは「ハンドシェイクプロトコル」です。このプロセスをわたしたちが作ったのは、相互の誤解を避けられるようにするためです。
創業者はとても楽観的な性質です。私たちは投資家が「興味があります」と言った時に、「会社についてより知りたく思います」という意味で言っているのに対し創業者は「会社に投資をしますよ」と言っていると捉えているといった場面をたくさん見てきました。これはたくさんの誤解と混乱を引き起こしますね。
ハンドシェイクプロトコルは単に一連のeメールで、重要事項を書きおこし、そして全員が同意に至っているかを確認するためのものです。
会社の創業者は投資家にメールを送り、こう言います、「あなたがYのキャップでXドルの投資をすることに同意していることを確認したいと思います」。それから投資家側が承認のメールを返信します。
この時点で双方の同意を伴う取引が成立しているので、ここで約束を破ることは良くないマナーだと捉えられます。
再度になりますが、この世界では評判が全てです。自分の評判を傷つけなくなければ、約束は破らないことです。逆に言えば、創業者にはあなたの投資を受け取る義務はハンドシェイクの成立まで生じません。
ですから、特にたくさんの人が投資に参加しようとしているようなヒートアップした取引の最に、ハンドシェイクディールのプロセスを経ることで実際にラウンドに参加できるかを確認することができます。
これについては私たちのウェブサイト上で詳細をお読みいただけます。同様にもう少し詳しいブログ投稿もありますが、ここにあるのが要点です。
Clerky や HelloSign でサインする
大半のYCを使う創業者はSAFEにサインし、送信するのにClerkyを使います。これはオンラインプラットフォームで、標準のYC SAFEをテンプレートフォームとして使っています。そして創業者は投資に関してその会社に特有の詳細情報をテンプレートに追加します。
あなたは署名の依頼を、Clerkyを通して受け取ります。そしてソフト上で詳細に関してサマリーフォームかSAFE全文でレビューします。それからオンライン上で書類に署名をできるので対面で全ての取引を行う必要は生じません。
創業者は電話番号もこの時点で記述に含めるので、署名をしたらすぐに携帯電話を手にすることができます。創業者はその他のプラットフォームを使う場合もあります。YC関係でない創業者は特にそうかもしれません。選択肢はたくさんあります。
HelloSignはClerkyとは別のオンライン署名プラットフォームです。DocuSignに似ています。もしくは単に、SAFEを私たちのウェブサイトのこのリンクからダウンロードして、メールで送ってくるかもしれません。その場合あなたも署名をしてまたメールで送信することになります。全部okな方法です。好みに合うかどうかの違いだけです。
Clerkyからであれ何からであれ、署名のリクエストを受け取ったらそこに書かれている詳細、以前に同意した内容についてチェックしなければなりません。加えて、SAFE上の名前と署名の箇所が正しいかの確認も必要です。特にあなたが信託会社やファンドを通じて投資するとき、またはLLCを設立していたときには。
創業者は、あなたがあらかじめ明記していない場合、いつも(会社名や個人名などの)法的な正式名称を知っているわけではありません。そのような詳細情報が正しいか、SAFEに署名するまえに確認してください。SAFEにサインした後で変更を求めるのではないですよ。SAFEに署名したらすぐに送金する準備ができていなければなりません。
SAFEは送金がされるまで有効になりません。私たちが創業者に、いい投資家の要素を聞いたときに多く返ってくる答えのひとつは、投資家がサインしてすぐに送金してくれることです。
創業者を仕事に戻らせよう
大事なのは、創業者は資金を調達したら仕事に戻る、ということです。
ときに投資家はこのプロセスを遅らせます。または投資をしたいと言っておいてその後で「ちょっと待って、ファンドをクローズしなきゃならないんだ」とか「この会社がもうすぐ売り抜けるから、その送金を待ってて、それができたら金が手に入るから」だとか言うんです。そういう状況にある人は会社設立者に投資をしたいという話しを持ちかけるべきではありません。実際に投資に使えるお金が手元にできるまでは。
プライスドラウンドが起こったときのプロセス
さて、SAFEがプライスドラウンドで転換されるときですが、より多くの書類に署名することを求められます。これらはリード投資家がサインしたのと同じ書類になり、リード投資家と彼らの法律顧問チーム、企業の法律顧問チームが条件を交渉します。
あなたは創業者かその弁護士から複数の書類への署名を依頼するメールを受け取るでしょう。この時点で、もしかしたら企業側に転換価格の算出、違う言い方ではPro-Forma Cap Tableとして知られているもの、を依頼する必要があるかもしれません。
そうすることで実際にSAFEがいくらの株式に転換されるかを確認し、ポストマネーの保有率を知ることができます。かならずこれは確認しなければなりません。資本政策表をこれまで何千も見てきましたが、驚くほど何回も弁護士たちが転換価格を間違えるのです。
資本政策表を絶対に確認し、SAFEの転換の計算に満足できるか確認することを本当に強くおすすめします。
ただし実際には確認する時間がほとんどないことも
しかしながら、実際には書類や資本政策表の精査の時間があまりないかもしれません。創業者はリード投資家に注力しているでしょう。彼らはリード投資家と交渉をし、期日を決めているはずです。そしてあなたには青天の霹靂のように突然メールを送ってきて、「明日契約をクローズしなければなりません。これがその書類です。署名が必要なのでお願いします」と言うでしょう。
もちろんあなたは善良な市民でありたいと思っているでしょうし、クロージング期日を遅延させたくはないでしょう。しかし同時にこれはあなたの投資ですし、自分が満足できるかを確認する必要があり、それゆえ書類を精査し書かれている条件事項を承認しなければなりません。書類に同意できなければ署名してはいけません。では、Carolynnお願いします。
投資に関するアドバイス
Carolynn Levy
先にも述べたように、これはSamがすでに話してくれている事項ですがもう一度繰り返します。とても大事なポイントです。
アップサイドを考える
アップサイドのことを考えるというのが最初の点です。これはちょうどSamのべき乗則の点と同じです。もしあなたがべき乗則を信じてそのように投資をするなら、損失から身を守るための交渉で時間を無駄にしないことです。
なぜなら次世代のGoogleに投資して100倍のリターンを期待しているマインドセットがあるときに、少量の投資の1.5倍のリターンをやりくりしているのには価値がないと気づくからです。
人助けをしよう
次の点は、人助けをしようということです。Samもこの点に何度も触れていましたね。創業者が頼んできた場合には手を差し伸べましょう。
エンジェル投資家はときには小切手を切って、そのまま息を潜めていますが、ときには本当に小さい額の小切手を切って、それについて創業者にしつこくしつこくまとわりつくことがあります。そんなことをしないでくださいね。ちょうど良い塩梅の助けを与えられるようなエンジェル投資家であってください。
ときには公に手助けができるように取締役員になれるよう要請する必要があるのではと思ってしまいますが、そうはしないでください。創業者はそのような援助を求めていないかもしれません。例外はありますが、たいてい創業者は早期の投資家には取締役にはなって欲しくないものです。
失敗に寛大であろう
最後に、失敗に寛大であってください。
このコースの他のスピーカーも皆こういうことを何度もいうかと思います。会社が苦しくなったときに株の買い手は簡単に後悔しがちだと思います。創業者がピボットを決断するとなったら一層悪くなりそうですが、しかし投資家はピボットを予想して準備をすべきだと思います。
思い出してください、SAFEはローンではありません。創業者が違うことを始めたからと言って、走り込んでいって金を返せとは要求できないのです。失敗やピボットには寛容になり、そしてサポートをしてください。創業者にチャンスをあげてください。
Kirsty Nathoo
ではまとめです。ここではかなりたくさんのことをお話ししました。SAFEは、一目見たときにはシンプルですが、しかしかなり複雑にもなり得ます。この項目から何かすくい上げることができるものがあるとしたら、それは以下の要点です。
SAFEを投資に利用しましょう。迅速でもっとも容易な方法です。
SAFE保有者としての株式への転換時点での権利を理解しましょう。十分に念押しすることができませんでしたが、会社のオーナーシップとそれがどこから生じるかを把握しましょう。
そして最後に、忍耐強くあることです。投資は長期戦です。会社と苦楽を共にし、見届けることが必要です。皆さん頑張って下さいね。皆さんがたくさんの実りある投資をできますよう幸運を祈ります。
いくらか質疑応答の時間があるようです。
Q&A
SAFE 投資家は十分なリワードを得られるのか?
聴衆
エンジェル投資家の中にはSAFEは彼らがとっているリスクを十分に保障しないと考える人もいます。彼らは、低いキャップであっても、後から入ってくる投資にたいして脆弱な立場に置かれています。
例えば、7万ドルを投資しているときに3,000万のシリーズAラウンドの投資が入ってくるというシナリオです。このような不満にどう応えますか?
Kirsty Nathoo
ご質問は、どうしたら確実に十分なリワードを得られるか、ということですか?そう言う意味ですか?
聴衆
そうです。キャップの…
Kirsty Nathoo
キャップの後続投資に対する脆弱性ですね。
ここでお話しした事例では800万のキャップと6,000万のシリーズA プレマネーバリュエーションでした。次世代のGoogleのような企業に投資しているとすると、3,000億ドルやそれくらいの数字でエグジットすることになります。
キャップが800万ドルでシリーズAのラウンドが6000万ドルであろうが、キャップが1,000万ドルでシリーズAが1,400万ドルであろうが、そこには巨大な額のアップサイドがあります。考えなければならないのはそこです。
早期の時価総額での投資を通じた株式分のオーナーシップを持っているので、そのアップサイドにアクセスすることができる、というところです。
Carolynn Levy
それと、Pro-Rata権があることも覚えておいてください。また、Samがこの点については頭を使うべきだと述べていましたが、早期投資をするわけなので、本当に本当に持ち株の比率が薄まります。
しかし、もし資金的に可能であれば株を買い増すことができます。流動化が起こる場合、アップサイドも認識してください。
Geoff Ralston
質問は潜在的な脆弱性があるという前提でSAFEそのものに向けられたものかと思うのですが、わたしはそうは思いません。おそらくそれはConvertible DebtまたはSAFEが株に転換される方法への誤解かと思います。
プレゼンターが言ったように、SamのSAFE、Convertible NoteもしくはConvertible Equityのどれに投資しているかは最終的には関係ないという考えに耳を傾けてほしいと思います。
もしAirBnBに10、15、20もしくは30億ドルの時価総額で投資していたとしても、Doriotが言及した種類のリターンを受けられます。700万ドルを投資していたら、どうなるかは計算してみてください。100、200または300億ドルの価値になる会社に1,000または2,000万ドルのバリュエーションキャップで7万ドルを投資していたらときを計算してください。すごいことになるでしょう。
SAFE で調達する金額を決めるのは誰? 別のキャップで別の投資家が投資した時は?
Kirsty Nathoo
前の方にいってみましょう。どうぞ。(聴衆からの質問)。ご質問は、いくらの資金を創業者がSAFEで調達するかを決めるかを、誰が決めるのか、ということと、例えばあなたが800万ドルのキャップで今日SAFEでの投資に署名して、明日他の投資家が別のSAFEに500万ドルのキャップで署名したらどうするのか、ということですね。
質問の最初の部分ですが、創業者がSAFEで調達する額を決めます。私たちから創業者にするアドバイスは、会社を売っているわけですからSAFEで実際いくら調達するかを考え抜くように、というものです。
投資家は会社を一部分買っているわけですから、私たちは創業者には株の希薄化によく注意し考えるようにと助言します。投資家は言うことがあまりない一方で、創業者はどうしたら調達がうまくいくかを考えています。
ご質問の第二の部分はキャップについてですね。800万ドルのバリュエーションキャップがついたSAFEにあなたが署名した次の日にその他の投資家が500万ドルのキャップで署名をするというのはあまり起こりえない事です。
SamとGeoffが述べたように、たいていは群れの心理の要素というものが投資にはあります。ですからもし800万ドルのキャップが他の投資家にとってうまくいくなら、その次の投資家も同じようにするでしょう。しばらく時間がたったあとの状況なら、もう少し低いキャップで資金を調達するかもしれません。これはその時点の状況によります。
ただこの書類にはこのような状況からあなたを守ることについては何も書かれていません。MFNの規定が入っていない限りは。しかし私達は創業者たちに皆を公平に扱うように助言しています。もし事業の何かが変わったり、新しく始まったりしたら、何を投資家たちにできるのか考えるように言っています。
Pro-rata が次の投資家に拒否されたときは?
Geoff Ralston
オンラインからの質問がきました。個人的に好きな質問です。こういう質問が来て嬉しいですね。
シード投資家は、新しいリード投資家によって(株式保有の)割合が制限された場合どうすればいいか、というものです。例えばPro-Rata権は主な投資家の転換時にのみあたえられるなんでしょうか?
Carolynn Levy
これはいつも起こりうることかと思っています。リード投資家が、例えばあなたがSAFEを持っていてそれをシリーズAラウンドにて転換するとき、そしてリード投資家がSAFEの権利を尊重してくれないとき何が起こるのでしょうか。
例えば、Pro-Rata権の行使を許されない場合、抵抗しなくてはいけないです。よく起こることだとは私たちも承知していますので、これについては啓発活動をしています。いつも創業者たちに「SAFEの権利を無視してはいけない」といいます。これは契約としての権利です。SAFE保有者にPro-Rata権を与えないのは契約を破棄していることになります。
Kirstyが言っていたことに戻りますが、24時間しか書類を読む時間を与えられないのであれば、まずあなた自身にそれらの権利を保証しているかを確認せねばならないので厄介ですね。また資本政策表をチェックし、SAFEが正しく転換されているかを確認することも必要です。
質問に短く答えますと、権利については、積極的に掘り出していきましょう。そのまま凍りつかせておくのではなく。権利があるのに行使できないのはおかしいとリード投資家や会社に反論し、契約内容を尊重してもらいましょう。
Kirsty Nathoo
そしてたいていは投資の流れの効率改善を担当しているのは弁護士たちで、創業者は何が起こっているか、SAFE投資家が権利を持っている者として登録されていないことを知らないのです。
ですから、創業者のところへ行って「見てください、Pro-Rata権があるんです」と言うと彼らは結構前向きに書類を変更してくれます。
Carolynn Levy
ちなみに、彼らにとっても評判は重要ですからね。あなた方投資家だけではありません。もし彼らがあなたにひどくあたって、権利を使わせないのであれば、彼らの評判もしっぺ返しを食らうことになります。まだ質問がありますか?
エンジェル投資はLLCとしてすべき?もしくは個人?
聴衆
もしエンジェル投資家がLLCや…を代表している場合…
Kirsty Nathoo
ご質問は、税金対策などのためには投資は個人投資家としてすべきかあるいはLLCとしてするべきか、ということですね。
もしLLCとして投資をするとしても結局法人を通すことになります。税金は個人の税金還付に依然として掛かってくるでしょう。
たいていは状況次第です。ご自身のお金を投資しているのであれば、直接投資が一番理にかなっていることが多いですし、信託会社があるのであれば、それを通じて投資することもできます。もし他の投資家と合同でお金をプールしたり他人のお金を投資するのであれば、LLCやなんらかのファンドの仕組みをつくるのがより理にかなっています。
なぜ SAFE の Pro-rata は転換が起こるラウンドではなく、その次のラウンドで与えらえるのか?
聴衆
なぜPro-Rata権はたいていコンバージョンラウンドでなく後に続くラウンドに与えられるのですか?それと、書面以外のところで、ラウンドでPro-Rata権を持っていることを示す方法はありますか?
Carolynn Levy
ご質問は、なぜコンバージョンラウンドにはPro-Rata権がないかということと、その権利がほしいときに得る方法、でしょうか。
コンバージョンラウンドにPro-Rata権をつけなかった理由は、SAFEのドラフトを作ったとき、2013年ごろになるでしょうか、その頃はシードラウンドは今とは少し違っていたのです。シードラウンドとシリーズAの間にはたいがい今よりもっと短い期間しかありませんでした。
ここ数年で多くのことが変わったのです。ですから実は書き直しが必要なのではと考えています。スケジュール感が今は変わっているので、記述も変わるほうがいいでしょう。
しかし実際書類が改訂されるまでの間は、多くのエンジェル投資家がすることは今あなたの言った通りのことです。付属の書面にサインし、権利があることを示すのです。会社とこの付属書面について交渉し、Pro-Rata権を付与してもらいます、SAFEをシリーズAで転換するだけでなく、そのときリード投資家の株式購入の価格にて株式を買い増す権利を。きちんと動く仕組みです。
返還期日のある Convertible Note のほうが良いのでは?
聴衆
私は主に新興の市場に投資しています。何も起こらなかった場合について質問です。ほとんどの場合…あなたの説明されたConvertible Noteを気に入っている理由ですが、何にでも有効期限というのを設けていることです。不満に思うのは私の株式投資が…
Carolynn Levy
そうですね…もし、そのほうがあなたにとって上手くいくならそのまま利用し続けるべきです。あなたの投資戦略とアプローチ方法が全てです。このクラスでは、Samが述べたアプローチについてたくさん聞くことになると思います。そのような種類の投資については、SAFEは非常にうまくいくと考えています。しかし明らかに、あなたは違った戦略をとっているので、どんな方法であれあなたの戦略に一番合った方法をとるべきですね。
SAFE のときに PPM は必要?
Geoff Ralston
あと二つオンラインから質問です。まず、SAFEを使うときに、PPM(目論見書)は必要ですか。だいたいこの答えは見えていますね。それから、以前あった質問に関連のあるものです。SAFEは世界中で使えるか、という質問がありました。SAFEはどこで行われる投資にでも使えるのでしょうか?
Carolynn Levy
最初の質問にお答えしますね。SAFEの契約にはPPMが必要なのか、という質問でした。答えははっきり、ノーです。SAFE契約にはタームシートすら必要ありません。最近はプライスドラウンドでもPPMはいりません。もう最近は誰もそういうものは使わないのです。SAFEはただ一つの書類です。あなたが必要なのはそれだけです。プライスドラウンドではたいていタームシートだけですね。それが必要なものの全てです。私はもう何年もPPMを見ていません。これが答えです。
世界中で SAFE は使える?
Kirsty Nathoo
二つ目の質問は、世界中でSAFEが使えるかというものでした。一般的に答えはイエスですが、必ずしもうまく働くとは限らない場面もあります。インドのいくつかの会社がSAFEを使えなかったと私たちの会社に報告がありました。また、英国ではなんらかの改訂を少々行ったと思います。そうすることで英国で利用できる事業投資スキームの救済がうまく適用できるようになります。
外国で投資を行うとき、また外国の会社に投資を行うときは、その国でSAFEが有効なのかを確認するという宿題がでることになります。
SAFE の転換のトレンド
(質問者からの質問)
Kirsty Nathoo
さて、次のご質問は、SAFEはプレマネーで転換されないことがあるのか、またそれはどのくらい普通なのかということですね。
まずSAFEをプレマネーのラウンドと同時に転換することはどんどん少なくなってきています。シリーズAのリード投資家はより知恵をつけてきていて、もしSAFEがプレマネーで転換されると希薄化の効果が弱まると気づいてきています。
SAFEがそのラウンドで転換されたときに起こるのは、(SAFEの要望どおりの)位置にバリュエーションが落ち着くということだけです。それはたいていシリーズA後の会社の20%ほどになります。今の回答のなかで質問の後ろの部分にもお答えしました。
Carolynn Levy
私は、質問者の方はPro-Rata権について聞いていたのではと思います。なぜなら、私たちが認識してる最近の流行りとしては、議論はさらに進んでいて、コンバージョンラウンドにおいてSAFEとPro-Rata権を付与することがあるからです。これらは全部結びついています。もとに戻りますね。
質問者はこの計算がうまくいかないと言いました。 先ほども言いましたが、SAFEのドラフトを作った2013年には、状況は今と少し違っていました。Pro-Rata権が注目されるようになってきましたので、これをSAFE内で言及する方法について当社でも考えなければと思っています。
Kirsty Nathoo
繰り返しになりますが、SAFEそのものはこれについて言及していません。Pro-Rata権がプレマネーの段階であるのか、そのラウンドであるのかは書面ではわかりません。
SAFEが言っていることのすべては、SAFE転換の価格を見積もるためにどのようにキャピタリゼーションを定義するのか、です。後ろの方質問どうぞ。
SAFEを理解している人はどれだけいるか?
(質問者からの質問)
Kirsty Nathoo:創業者たちもよく理解できないポイントですね、これ。本当にそうなんです。デモデーで資金調達をする際に何時間もわたしが彼らと一緒に取り組むのは、SAFEがどう働くか、希薄化をどう捉えるか、プレマネーでの転換とは実際どういうことか、といったこれらの様々な事項を理解してもらうことです。
これらのことを学んだ日の終わりにはたくさんのことをできるようになっています。創業者たちが仕組みを理解しようとしないなら私たちが彼らのためにできることはあまりありません。
Carolynn Levy
たくさん学習資料はありますけどね。たぶんみなさんに必要なのは、それにアクセス可能かどうかでしょう。Pro Forma Cap Tableの算出をしてみて、みんながその表の出来に賛成すれば、それがいいでしょう。みなさん、ただ自分で組み立ててみる時間が必要なんです。自分でやってみることで多くの混乱が取り除けます。
聴衆
特にLLCからでなく個人で投資している場合、投資家への法的責任に関するいい判例はなにかありますか。とくにヘルスケアのスタートアップなどで………
Carolynn Levy
ご質問は法人としてではなく個人で投資をしている場合、投資家の法的責任にまつわる判例があるか、ですね。判例はたくさんあります。株主について、免責について、会社が行ってしまった悪い事について。株主に法的な責任がなけば、当然、そのサークルから出て、Convertible Securityとお金を交換している人を見つけることができます。問題はありません。わたしがちゃんとあなたの質問を理解していたとしたら、以上でお答えになっていると思います。
スタートアップの登記で最適なものは?
聴衆
スタートアップに最適な法的な枠組みはありますか?
Kirsty Nathoo
ご質問は、スタートアップに最適な法的枠組みはなにかということですね。
YCは主にDelaware C Corpsに投資します。SAFEに署名するみなさんにとっては、投資先の会社がC Corpsかどうかを確認したほうがいいでしょう。カリフォルニアで組織された会社であるかそれ以外であるか、も。外国企業に投資をするのであれば、よりたくさん調べ物をする必要があります。
私たちが必ずしもすべての異なる国で各々のうまくいく枠組みを知っているわけではないので。LLCに投資したというケースもいくらか見てきています。しかしそれが実際どう動いているのかについては私たちにはわかりません。C Corpsのみに絞ることをお勧めしたく思います。
Carolynn Levy
高成長をしている会社はLLCではありませんね。
SAFE での最恵国待遇条項はどれぐらい普通か?
Geoff
もう一つオンラインからの質問いいですか。MFNに関してです。これはSAFE内ではスタンダードですか?
Carolynn Levy
MFNはSAFEでのスタンダードか、ですか?いいえ、ちがいます。プレゼンの半ばでお話ししたMFNは、SAFEのスタンダードではありません。それらはキャップ無しSAFEの一部分になります。
おそらくこの方が聞きたいのは、ターゲットバリュエーションやディスカウントレートを交渉し、かつ誰かがもっといい条件を得たときのためにMFNの権利を持っていられるか、ということかと思います。SAFEを発行後にもっといい条件に修正できるか、と。そういう質問かと思います。
もしわたしが800万ドルのキャップでの投資に合意して、次の日に別のエンジェル投資家が500万ドルのキャップで投資することになったら?それと同じ利益をえることができるでしょうか?そのような条件はSAFEには記載されていません、みなさんに交渉をしていただきたいので。投資は交渉の必要な世界です。可能性にかけてみましょう。投資家であるあなたと会社が、投資家の得る最良の条件を交渉するのが、投資の世界です。
そのようなSAFEはウェブサイトには載せていませんが、会社とあなたが双方公平だとして合意するならMFNをSAFEに入れ込むこともできます。可能ではあります。望むならば、そのパラグラフをコピーペーストしてキャップとディスカウントレートのあるSAFEに入れ込むことができます。もしわたしが創業者に助言する立場なら、それはあまりいい方法ではないというでしょうが、しかし試してみることはできます。
Geoff Ralston によるまとめ
Geoff Ralstion
ありがとうございました。いくかコメントをしてそれで今日はおしまいです。SAFEはなんだか奇妙ですし、convertible も変わっていますね。わたしはこれまで100回を超える投資をしてきましたが、すべてはSAFEでないものの、大半はconvertibleで、株式に転換されるときに、何が起こっているか知っておいた方がいいと思いました。仕組みについてほとんど何もしらないと気づいたんです。
後ろにいらっしゃるどなたかが指摘されましたが、投資家も創業者もよくわからなくなりがちです。Carolynnも言っていたように、今はたくさんのツールがあります。 私も実際AngelCalcというツールを作って、オープンにしています。このソフトではSAFEの転換がどうなるかを簡単で素早く組み立てることができます。
ところで、AngelCalcでは常に、転換がプレマネーで行われるものとして予想数値をだします。今もほとんどプレマネー時点でおこなわれますから。だいたいほとんどだと思いますが、そうでないとしたら、どのくらいの割合かはわかりません。プレマネーでないときの算定をするツールも組み立てたほうがいいのかもしれませんが、しかし今はほとんどはプレマネーで行われているんです。
もし複数のSAFEの複数のバリュエーションと複数のディスカウントレートがあったら、もっとまずいことになります。複数あるのは今はそんなに珍しくなくなってきたんですが。
一番良いのは実際に計算してみること
Carolynnが言ったように一番いいのはモデリングをやってみて、実際いくらに転換されるのか確かめてみることです。創業者たちと一緒に仕事をするためには、これを覚えておいてください。もし後々の投資家にかき回されそうになったら、どうすればいいのか。
私は「スタートアップ投資における透明性」という投稿をしました。また私は創業者やアップデートを送ってくるチーム全体に送って「私の権利は契約書類の内容から何か変更されましたか」と聞くフォームを用意しています。もしなんらかの変更があるならそれに関して会話をするべきです。弁護士とではなく、ベンチャーキャピタルとでもなく、おそらくきちんとあなたとの関係性を覚えている創業者とです。
あなたは、最初に投資した投資家です。残りの投資家よりも先にその会社を信用して投資した人物です。彼らにとって、あなたの目を見て「さようなら、Pro-Rataは取り上げましたので」というのは難しいことです。
もう一度になりますが、これらに関しては注意深くならないといけないと思います。みなさんは起業家たちの取引をめちゃくちゃにしたくはないし、いい投資家でありたいと思うはずです。しかし会話を持つのはフェアなやり方です。
創業者たちはだいたいのケースでパワーを持っている側で、そして投資家やその弁護士のところへ行って、「なんでこんなことをするんですか」と聞くのです。Kirstyは私のところの一番いい投資家だったとしたら、彼女のPro-Rata権を取り上げるなんてことができるでしょうか。
またライフスタイル企業についてと、なぜ私がSAFEの方が一般的に借金より好ましいと考えるかを述べたいと思います。
その理由は、借金があると、倒産の必然性がない会社の息が絶えてしまうことが往々にしてあるというのを目にしてきたからです。返済不可能な場合でも投資家が借金を請求するのはいとも簡単です。
私たちは会社創業者の側につくことが多いです。投資家の側からすると奇妙に聞こえるかもしれません。しかしそれは創業者の側につくと、決まって他の全く関係ない投資よりも、リターンを得る可能性がずっと高くなるとわかっているからなのです。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Investor School