現代的なスタートアップファイナンス (Startup School 2019 #17)

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Carolynn Levy
Kevinから説明がありましたように、私の講義では最新のスタートアップファイナンシングを取り上げます。

私は弁護士を専業としてまだ21年です。ですから、私の知っている「古いこと、新しいこと」はその期間内におけるものに限られます。とは言え、スタートアップエコシステムに関しては多くの変化を目にしてきました。

スタートアップエコシステムに関する多くの変化については、ファイナンシングという点でYCが大きく関わっています。

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この写真をご覧ください。これらはクロージングボリュームと呼ばれるもので、民間企業や公共企業のファイナンシングに長く携わる企業弁護士は、皆こうしたものをたくさん持っています。従来、法務チームのもとには、こういったファイナンシングに関する全ての書類が製本されたものが届いていました。

これには私たちの名前や日付が記されていますが、今はこうしたものはありません。しかし、私は自分が携わったものをいくつか残していたので、今回の講義に使うのに良い写真だと思いました。

皆さんの多くは、これからお話しすることをすでにご存知でしょう。しかし、これはスタートアップスクールですので、基本的な部分を説明しておきたいと思います。

会社設立と資金

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会社に関するアイデアを持っている皆さんが最初にすることは会社設立です。なぜなら、会社とは独立した法人であり、個人的責任から創業者を守るものだからです。知っていましたよね?会社設立は独力でも可能でしょうし、初期においては共同創業者と協力してある程度のことをこなすのも可能でしょう。しかし、最終的には人を雇ったり会社を大きくしたりする必要があり、そのためには資金が必要となります。

普通株と優先株

では、資金はどのように調達するのでしょうか?親戚から借りることもできます。銀行でローンを組んでもらうという手もあります。しかし、大半のスタートアップは会社の一部を売却して資金を調達します。つまり、創業者である皆さんは普通株を購入することになります。

これにより、皆さんは会社の所有者となり、一般的にはわずかな費用で普通株を購入することになります。株式購入の一部として知的財産を提供することも可能ですが、基本的には、ほとんど無料で購入した株の100%を所有することになります。つまり、普通株の売却では多額の資金調達はできません。

そこで登場する選択肢が、投資家に対して優先株と呼ばれる全く種類が異なる株式を発行する、というものです。優先株は、より高価になります。

優先株ラウンド

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もう1つ、基本的な話になりますが、皆さんがどのような専門用語をご存知かわからなかったので、このスライドは役立つのではないかと思い、入れておきました。

ここに挙げたのがいわゆる専門用語です。まず、ファイナンシングとラウンドは全く同じ意味です。プライスド・エクイティファイナンシング、優先株ラウンド、優先株ファイナンシング、シリーズAファイナンシング、シリーズ・シード・ファイナンシングなど、いずれも基本的には同じことを意味し、計算に基づく特定の1株当たり価格での優先株発行による資金調達を指します。

コンバーティブルラウンド

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次のスライドの、コンバーティブルラウンド、ノートラウンド、SAFEファイナンシング、SAFEについては後ほど説明します。アーリーステージラウンド、アーリーステージファイナンシング、これらは全て優先株や普通株の発行ではなく、転換可能な証券の発行による資金調達イベントを意味します。転換可能な証券とは将来株式を取得する権利です。それ自体は株式ではなく、後日株式に転換されるものです。

近年で何が変わったのか?

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私が思うに、年月と共に大きく変わったものが3つあります。

1つ目はストラクチャーです。どういう意味かと言いますと、アーリーステージの資金調達で実際に使用する書類が変わってきている、ということです。それについては後のスライドで説明したいと思います。

昔と比べて大きく変わったことの2つ目はアクセスです。現在では資金調達に関する文書をネット上で見つけることが可能で、注釈や電子署名を入れることもでき、文書を入手するのは実に容易です。昔はどうだったかと言いますと、資金調達する際の唯一の方法は弁護士を雇うことでした。なぜなら、優先株発行に必要な書類を作成する方法が他になかったからです。

そして、年月と共に大きく変わったと思うことの3つ目はフォーカス(焦点)です。私の記憶では、昔はこうしたファイナンシングにどれだけの時間を要するか、創業者が会社作りに注力する時間をどれだけ奪われているかに気付いている人はいませんでした。当時、「資金調達にもう1ヵ月半もかかっているよ、会社作りに集中したいのに」などと口にしていた投資家や創業者はいませんでした。

しかし、現在では資金調達に多くの時間を費やすのは誰にとっても最善の利益とならないということに皆が気付き、そのことを理解しているので、資金調達に要する時間ははるかに短くなっています。

何が変わっていないのか?

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では、昔と変わっていないことは何でしょうか?優先株ファイナンシングは会社の最初の資金調達としては廃れてしまいました。しかし、そのプロセスや書類自体は昔と変わっていません。これについてはこの後もう少し説明しますが、これらは全く昔のままで、いつ行うかが変わっただけです。

昔とあまり変わっていないことのもう2つは、資金調達時の投資家と創業者にとって非常に重要なもので、バリュエーションと希釈化です。

バリュエーションとは自分の企業の価値で、希釈化とは自社の株式のどれくらいを売却するかです。自社株式の一部を投資家に売却すれば、それまで100%だった自分の持分が減ります。それが希釈化です。

最後に、スタートアップを始める人たちが理解しておくべき非常に重要な点がありますので触れておきたいと思います。投資家とのコミュニケーションはいかなる時も重要です。なぜなら、資金調達は本質的には人と人との関係だからです。そうですよね?投資家は皆さんに資金を提供し、皆さんはその資金を使って10億ドル企業を作り上げることを期待されています。そうした努力が実を結んでいるか結んでいないかを投資家に伝えることは極めて重要です。

ですから、これは昔から変わっていないことだと思います。コミュニケーションは現在においても非常に重要です。

かつての資金調達

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先ほど説明しましたように、初期段階での資金調達といえば、かつてはシリーズA優先株ファイナンシングでした。Aはアルファベットの最初の文字ですから、スタートアップにとっての初めての資金調達はシリーズA優先株ファイナンシングと呼ばれています。

これはどういう仕組みで行われていたのでしょうか?まず、企業の全体的価値となるバリュエーションを決定します。それを発行済み株式数で割ります。シリーズAファイナンシングの場合、ほとんどは創業者が保有する株式数となり、そこから1株当たり価格が決まります。そして、その1株当たり価格を基に投資家に優先株を発行します。

エンジェル投資家については皆さんも耳にしたことがあると思います。彼らは、昔はコンソーシアムを組んで、共同で1枚の高額な小切手を切るという傾向にありました。シリーズAファイナンシングでは、複数のエンジェルグループを相手にシリーズA優先株ラウンドで150~200万ドル程度を調達することになります。現在ではエンジェルグループは個々に小切手を切るようになり、コンソーシアムを組むことはなくなりました。

話を戻しますが、昔の方法では次に、優先株の条件を交渉します。リード投資家と皆さん、つまり会社が互いに弁護士を立てます。弁護士は双方を行き来しながら、議決権、残余財産分配権、Pro-Rata権など優先株の条件を交渉します。

そして、最後にクロージングボリュームに含まれる一連の書類が作られます。書類はおよそ5種類あり、数ヵ月の期間と2万5千~10万ドルの弁護士費用がかかっていました。

昔は何が間違っていたのか

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ここでの問題は何でしょうか?非常に複雑な作業ですよね?まず長い時間を要します。そして、先ほど説明しましたように、2万5千~10万ドルの弁護士費用がかかります。会社にとっては一大事です。

しかし、最大の問題は柔軟性のなさであったと思います。これについてはJaredが講義で取り上げてくれるでしょう。会社立ち上げに伴うコストは年々大きく減少しており、ハードテック企業ではそれほどでもないですが、ソフトウェアやeコマース企業についてはスタートアップ立ち上げのコストはかなり安くなっています。

その結果、スタートアップは会社を軌道に乗せるための150~200万ドルを調達する必要がなくなりました。長い時間と費用を要する複雑なファイナンシングは割に合わず、こういった手続きは全く柔軟性に欠けていました。

ブリッジローン

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さて、会社が最初のラウンドとして大規模なシリーズAラウンドを実施してから、次のシリーズBファイナンシングまでの間に、資金が尽きてしまうことがあります。この時、大抵の会社はシリーズAファイナンシング時のリードファイナンス、つまりリード投資家にブリッジローンの相談をすることになります。

ブリッジローンとは2つのファイナンシングの間をつなぐ融資で、転換社債購入契約や新株予約権付転換社債、そして場合によっては普通株の新株引受権も伴う場合があります。しかし基本的にこれは、ファイナンシング間に見られる株式ギャップ対策でした。繰り返しになりますが、私が先ほどお話ししたファイナンシングはどれも時間と費用がかかるため、常にできるものではなかったことを覚えておいてください。そこで、それらの合間に行われるファイナンシングとしてブリッジローンが登場したわけです。

ブリッジローンの肝はこの新株予約権付転換社債で、新株予約権付転換社債は金利や満期日を伴うローンです。これは約束手形でしたが、次回ラウンド実施時に自動的に株式持分に転換させる仕組みもありました。

つまり、シリーズAとシリーズBの間にブリッジローンを実施した場合、新株予約権付転換社債はシリーズB実施時の株式となります。

コンバーティブルが早期のスタートアップにも使える

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しかし、そのうち、私も正直その経緯は覚えていませんが、必ずしも転換社債購入契約や普通株の新株引受権を伴わなくとも、新株予約権付転換社債自体をスタンドアローンの書類として使用できるということに世間が気付き始めました。これを使用した会社への出資も可能で、ブリッジローンではなく会社が最初に資金を必要とする時の資金調達として使用可能になりました。

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これは最初の資金調達イベントに使用する方法としてとても魅力的な方法となりました。なぜなら、シリーズAファイナンシングの説明で紹介した一連のドキュメントを準備する代わりに、新株予約権付転換社債を準備するだけで良かったからです。その方が明らかに速く済ませることができます。書類1つですから。

転換社債のために弁護士を雇うことは引き続きありましたが、1つの書類に関する交渉のためだけで、満期日と金利の交渉のみなので、はるかに安く済み、柔軟性もあります。なぜなら、複雑なファイナンシングプロセスを経て、数百万ドルを調達することでその労力を正当化する必要はなく、エンジェル投資家から5万ドル調達するだけで済むからです。エンジェル投資家から10万ドルまたはそれより少ない額を調達することも可能です。

しかし、これはやはり約束手形です。約束手形とは結局はローンであり、債務です。

SAFE の登場

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そこで私たちYCは、新株予約権付転換社債も、さらに現代的にしようと考えました。そして考案されたのがSAFEと呼ばれるものです。SAFEとはSimple Agreement for Future Equity(将来のエクイティに関する簡潔な同意書)の頭字語です。これは約束手形と同様に1つのシンプルな書類で、転換可能な証券です。

こうした様々な専門用語について説明してきましたが、これは転換可能な証券で、プライスドラウンド実施時に株式に転換されます。SAFEは弁護士を必要としません。オンラインで利用可能です。そして、最も重要なのがSAFEは債務ではないという点です。

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それがSAFEを開発した理由です。

新株予約権付転換社債の問題は何だったのでしょうか?新株予約権付転換社債はたった1つの書類で、費用もかからず、迅速な手続きが可能でした。しかし私たちは、エクイティの売却に債務を活用するのはおかしいと考えました。

エンジェル投資家は貸し手でなく、スタートアップは借り手になる必要はありません。そうですよね?投資家から5万ドル調達してそれを10億ドルにする際、投資家側としては株主になることが目的です。そして、スタートアップ側は、利息の発生や手形の満期日について考えてばかりという状態は望んでいないわけです。

そこで私たちは、新株予約権付転換社債から債務の部分を丸々取り除きつつ、あらゆる利便性は維持するのがより合理的と考えました。

SAFE の詳細リソース

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SAFEの使い方やその全てについてだけで1つの講義をすることもできますが、それはすでに行っています。

SAFEに関しては、もっと多くのことを学べるスタートアップスクールの講義動画が他にもあります。

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このスライドはYCのページのResourcesタブです。Safe Financing Documentsは最上段にあります。ユーザーガイドは少々長いですが、転換の流れを説明するための数式の例など多くの役立つ情報が掲載されていますので、是非ご覧ください。SAFEはたったの5ページで、名前の通りシンプルで非常に読み易い内容です。

いつプライスドラウンドを行うのか?

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ここで問題となるのが、プライスドラウンドを行う時期です。プライスドラウンドは今なおスタートアップの資金調達に使用される主要な方法です。大半のスタートアップが最初の資金調達に使用する方法ではなくなってしまいましたが、SAFEや新株予約権付転換社債のような他の転換可能な証券に組み込まれており、最終的にはプライスドラウンドが実施され、これらの転換可能な証券はそのプライスドラウンドで転換されると想定されています。

ですから大半の場合、スタートアップはSAFEの新株予約権付転換社債で最初の資金調達を行った後に、プライスドラウンドを実施し、これらのSAFEおよび新株予約権付転換社債は全て株式に転換されます。SAFEおよび新株予約権付転換社債は、後日プライスドラウンドが実施されない限り株式に転換することができません。つまり、プライスドラウンドは今も行われておりますが、初めての資金調達法としては現代的な手法ではないということです。

また、プライスドラウンドについて触れておきたい点があります。私は先ほど、プライスドラウンドに必要な書類の多さや、弁護士が本棚に並べるための革表紙のクロージングボリュームについて笑い話のようにお話ししましたが、これらも改善されています。

プライスドラウンドは以前よりもはるかに標準的になり、プライスドラウンドに関するこれらの5つの書類は、全てネット上で入手可能です。しかし、これについては依然として弁護士が雇われる傾向にあります。

現在のファイナンス方法も完ぺきではない

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では、このSAFEの導入によって、初めての資金調達に誰もが転換可能な証券を使うようになって、現代のアーリーステージファイナンシングは完全なものとなったのでしょうか?確かに大きな進歩を遂げたと言えますが、私は全て完璧であるとは思っていません。その理由は、数分前に触れた希釈化にあります。

転換可能な証券を保有する投資家は株主ではないので、転換可能な証券を発行する段階では自分の会社持分のうちどれだけを売却したことになるか把握するのは非常に困難です。資本政策表に載っているのは株主で、転換可能な証券を保有する投資家は含まれませんよね?転換可能な証券を発行しただけなら、まだ、皆さんが100%保有者です。

しかし、プライスドラウンドを実施した時に「最後の審判」の日は訪れ、それらの転換可能な証券は全て株式持分に転換されます。そうした転換の状況に目を光らせておく必要があります。状況監視のためのリソースやツールはたくさんありますが、常に経過を追う必要があります。エンジェル投資家全員に自社の株式30%を売却してしまったことに気付いて驚いたとしても、弁解の余地はありません。ですから、こうした事態に陥らないようにしてください。

転換可能な証券を使用したアーリーステージの資金調達に関して留意しておくべき点がもう1つあります。そうした資金調達は非常に柔軟で調達金額の設定も自在なため、10万ドルを調達して「しばらくはこの資金でやっていこう」と決めることができます。そして、数ヵ月後にはもう少し資金が必要になり、5万ドルを調達しているかもしれません。このように転換可能な証券を使用した資金調達は、かなり融通が利きますが、その結果として非常に多くの投資家を抱え込む可能性があります。私たちはこれをパーティーラウンドと呼んでいます。

かつての資金調達では、投資家は6~10人だったかもしれません。しかし現在は、25~35人の様々なエンジェル投資家から資金を提供してもらえます。それ自体は素晴らしいことです。資金を調達できるというのは悪いことではありませんが、会社経営という点で大きな課題になるおそれがあります。なぜなら、プライスドラウンド実施と共にそれらの投資家が株主に変わり、会社は経営に関して株主の承認が必要となるからです。株主全員の署名を集めるのは容易ではありません。先ほどと同様、これは悪いことではありませんが、こうした注意点は心に留めておく必要があります。

コンバーティブルの副作用

そして最後に、こうしたコンバーティブルラウンドの副作用の1つとして、投資家が切る小切手が少額になりがちである、というものがあります。そうなると、投資家の意識も薄くなります。投資家はまだ株主でないため、あまり注力してきません。これは両刃の剣です。投資家は皆さんを精神的に追い詰める存在でもあれば、非常に頼れる存在でもあります。そうですよね?彼らは皆さんのために人を紹介してくれたり、戦略的アドバイスを授けてくれたりします。つまり、小切手を切って転換可能な証券を手にするだけの投資家と、高額の小切手を切って株主となる投資家では、皆さんに寄せる関心の度合いが異なってくる、ということです。良くも悪くもなるわけですが、いずれにせよこのような副作用がある、というお話でした。

まとめ

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これは本日の内容をまとめたスライドです。現代のアーリーステージラウンドにおけるファイナンシングは、SAFEのような転換可能な証券を使用して行われるのが一般的です。プライスドラウンドでの優先株の発行は今も健在です。今なお行われていますし、行う必要がありますが、行うタイミングが遅くなっています。初回ではなく、2回目の資金調達で行われる傾向にあります。

先ほど説明しましたように、ここでのポイントはフォーカス(焦点)です。書類の交渉に多くの時間を割く必要がなければ、そして資金を早く調達することができれば、創業者は本来の仕事である会社作りに注力することができ、それは投資家が求めていることでもあります。

ここにいる皆さんに関して言えば、ここはサンフランシスコではなくボストンである、という事情があります。SAFEや転換可能な証券は西海岸では誰もが知っているものですが、ここにいる皆さんのエコシステム内においては、そうしたファイナンシングにあまり馴染みがないエンジェル投資家などと出会うことになると思います。これは若干、教育に関連する事柄でもあるかもしれません。

皆さんは「SAFEなんて聞いたことない。私は新株予約権付転換社債で投資したいんだ」という投資家に出会うかもしれません。あるいは、「何を言っているんだ?私が買うのは転換可能な証券ではなく優先株だ。資金が欲しいのならこちらの言う通りにすべきだ」と言ってくる投資家に出会うかもしれません。

シリコンバレー以外のエリアでは少し言い難いものはありますが、私としては大半のケースに関して転換可能な証券による資金調達を試みることをお勧めします。単純に迅速さと柔軟さに優れているからです。

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講義は以上になります。質問を受けましょうか?

Q&A

話者2
お願いします。

Carolynn Levy
いくつくらい受けましょうか?

話者2
2つか3つで。

Carolynn Levy
2つか3つですね。わかりました。はい?

話者3
[聞き取り不能]投資家の下での初期の[聞き取り不能]で、創業者が[聞き取り不能]に関してラウンドでの資金調達を将来行う時、[聞き取り不能]がそれに注目する可能性はありますか?

Carolynn Levy
私としては…質問を繰り返した方が良いですか?長い質問でしたので。「初期段階の資金調達でエンジェル投資家から少額の小切手を受け取っている場合、プライスドラウンド実施の際にVCからそれを否定的に見られることはあるか?」という質問ですね。

それはないと私は思います。そういう見方はされません。これは、創業者が少額の資金を集め、Xという段階まで達成したということになりますよね?つまり、創業者が全てのマイルストーンを達成していることを意味します。その事実を基にVCを訪ねて「プライスドラウンドに参加してください」と頼もうとしているわけです。エンジェル投資家から少額の小切手で資金を調達したという事実は、創業者がプロセスを迅速に完了させ、反復を経て、プライスドラウンドができる段階まで到達することに如何に注力していたかを示すものだと思います。はい、どうぞ。

話者4
少額の小切手に少し関連してお聞きしますが、エクイティ・クラウドファンディングのようなものを推奨することはありますか?例えばレギュレーション・クラウドファンディングを活用したものについては?

Carolynn Levy
[聞き取り不能]のように。

話者4
[聞き取り不能]はい。

Carolynn Levy
素晴らしい質問ですね。私も非常に興味深いと思っていた点です。私は弁護士として開業して21年ですが、これは大きな変化です。

話者2
質問を繰り返していただけますか?

Carolynn Levy
失礼しました。クラウドファンディングについての質問でした。SECはこれに関する規則を変更しました。今ではクラウドファンディングで一般の人々から資金調達ができるようになったため、これを利用すれば見知らぬ人が皆さんのエクイティを購入することも可能です。

クラウドファンディングには多くの規則・規制があります。私は、これはまだ試験段階にあると思います。私が知る限り、クラウドファンディングを行ったYCカンパニーは存在しません。ですから、私個人はクラウドファンディングに関する経験はありません。マイクが切れました。しかし、クラウドファンディングを行ったという会社が数社あることは私も知っていますし、そうしたクラウドファンディングの試みをサポートした法律事務所をネットで探してメリットとデメリットを確認したら面白いかもしれません。はい、どうぞ。

話者5
現状のSAFEで使用されている小切手に関して、会社が次の[聞き取り不能0]を調達しなかったらどうなりますか?資金調達をしなかった、つまり転換が行われなかった会社があると聞いたことがあります。

Carolynn Levy
なるほど、素晴らしい質問ですね。彼が疑問に思っているのは、「プライスドラウンドを実施しなかったらどうなるのか?」ということです。多くのSAFEを投資家に発行しているとします。SAFEはプライスドラウンドの実施、または会社の売却や上場が行われて初めて転換されます。ですから、会社があまり成長せず資金調達の必要性が出て来なかったらどうするのか?という考えは確かに存在します。

しかし、こうしたケースは稀だと私は思います。SAFEの開発において重要であったのは、シンプルなものにすることでした。ですから、私は全ての稀なケースについては敢えて盛り込もうとはしませんでした。スタートアップがSAFEホルダーからわずかな資金を調達して、それ以降は資金調達する必要がなかったというケースは極めて異例です。起こり得ないとは言いませんが、そういうケースはかなり稀です。創業者も流動化を望んでいますよね?売却や上場、あるいはさらなる資金調達をせずに、創業者はどのように流動化するというのでしょうか?当然、まさにあなたがご指摘された点について言及してくる投資家は、いるでしょう。約束手形は少なくとも債務であり、返済する必要がありました。投資家は提供した資金が戻ってくると想定していました。SAFEはそうではありません。

しかし、再度言っておきたいのは、これはギャンブルだということです。創業者は投資家に、「私の会社の一部を購入したいですか?そのための方法はこれ(SAFE)です。ただし、私が再び資金調達を行う、あるいは私がこの会社で何かを成し遂げると思えなければ、これはあなたにとって適切な投資とは言えないかもしれませんね」と言っているわけです。そうしたことに言及してくる人々に対処する方法は数多くあります。

しかし、私のこれまでの経験から言わせてもらえば、ラウンドを1回しか実施しなかったクライアントは1社だけです。個人的には、企業は成長のために必ず資金調達を必要とするものだと思います。後ろの方、どうぞ。

話者6
[聞き取り不能]とそれ以外の境界は何でしょうか?[聞き取り不能0:18]には金銭的基準があるのでしょうか?

Carolynn Levy
「どの転換可能な証券を使うべきか、あるいはプライスドラウンドを実施すべきか、つまり、何をすれば良いかをどのように判断するのか?」ということですね。私もこの点を説明するつもりでいて忘れてしまっていたため、ここで尋ねていただいて助かりました。

最初の資金調達で500万ドルを投資したいというVCがいたら、その申し出を受けてください。私は、最初の資金調達イベントとしてプライスドラウンドは避けなさい、などと言うつもりはありません。ですから、誰かからプライスドラウンドを実施するよう言われて、自分の会社にとって理に適っているのなら、要するに、バリュエーションや希釈化、資金調達の面で問題がないのであれば、実施してください。

その他の場合においてですが、転換可能な証券でどれだけ資金調達したかは重要ではありません。重要なのは創業者がそれで良いと感じられるかどうかです。そしてどれくらいの数を売却したかという希釈化の追跡です。

過去に5,000万ドルのSAFEを発行したYCカンパニーがありましたが、私はそのような使われ方は想定していなかったので、息が詰まるかと思いました。SAFEは非常にシンプルな書類ですから、想像しただけで不安を感じました。しかし、問題ありませんでした。うまく機能し、問題なかったわけです。

要するに、投資家が創業者とどのような関係を築きたいと思っているかによる、ということです。繰り返しになりますが、創業者は投資家からの資金が必要です。ですから、投資家が新株予約権付転換社債という方法を熱烈に希望していて、創業者としてもそれが次のマイルストーンを達成する手段である、必要な資金を得る方法である、と思えるのなら、そうしてください。会社を潰してしまうよりはましです。誰かが50万ドルの資金提供を望んでいるからといってSAFEは避けるべきでしょうか?そんなことはありません、どうぞ50万ドルのSAFEを締結してください。それで問題ありません。繰り返しになりますが、希釈化に関する状況把握は忘れないでください。はい、どうぞ。

話者7
SAFEに関して交渉すべき重要な条件は何でしょうか?

Carolynn Levy
よくぞその質問をしてくださいました。先ほどもお話ししましたように、これは別の講義内で説明されている点ですが、質問がありましたのでお答えします。「SAFEにおける重要な条件は何か?」という質問でした。

それはバリュエーションです。これがSAFEに関して交渉する必要がある唯一の条件です。そして、これは些細なことではありません。そうですよね?創業者と投資家は、ターゲットバリュエーションとしてどんなバリュエーションをSAFEに盛り込むか決める必要があります。それが転換に関する数式に、ひいては希釈化にも影響します。ですから、創業者はこれを理解しておく必要があります。

また、SAFEには別バージョンもあります。先ほどのResourcesタブに入れば全て見ることができます。タブ内には、バリュエーションを含まないバージョンのSAFEがあります。理論的には投資家とバリュエーションに関する交渉をすることなくSAFEを利用することもできますので、試していただいても構いません。これは選択肢の1つです。しかし、バリュエーションは創業者が交渉すべき唯一の条件です。そして先ほども説明しましたように、弁護士は必要ありません。なぜなら、弁護士が必要となるようなことは何もないからです。はい、どうぞ。

話者8
以前の話ですが、投資家がSAFEに特例を追加するよう提案してきたことがあります。私たちが将来[聞き取り不能]したらどうなりますか?

Carolynn Levy
なるほど。こちらの方の投資家は「プライスドラウンドが行われず、転換されなかった場合に生じる問題について、SAFEに特例を追加しよう」とおっしゃっています。もちろん構いません。あなたにとって、それがその人から資金調達をする唯一の方法で、あなたもその人の資金を必要としていてそうする必要がある場合は、そうしていただいて構いません。

新株予約権付転換社債の時代は、社債に付属書類としてタームシート(条件概要書)が添付されていました。そして満期日に会社が新たなリード投資家とプライスドラウンドを実施していない場合、その資金はタームシートに記載された条件で自動的に転換されることになっていました。このルートをSAFEに組み込むこともできましたが、正直に言いますと、交渉すべき事項がさらに増えることになるため、私はそれらをSAFEに組み込みたくありませんでした。

しかし、あなたの投資家が「この自動転換イベントを入れよう、これがその条件だ」と言っているのなら、それに従っても全く問題ありません。質問はあと2つです。他に質問がある方はいらっしゃいますか?はい。

話者9
SAFEを投資ではなく弁理士のようなサービスを受けるために利用することについて、どう思われますか?特許の請求は前払いではなく後払いですよね?

Carolynn Levy
なるほど。「サービス提供の対価として現金は支払いたくないので、エクイティを譲渡するのはどうか?」という質問ですね?

話者9
はい。

Carolynn Levy
SAFEはそういった目的で使用するには最適な手段とは言えません。なぜなら、SAFEは基本的に「先にお金を出してくれれば、後で株式を渡しましょう」というものだからです。資金提供が伴わない場合…、つまり、あなたの話ではサービスの対価として株式を渡すことになっていますが、私ならそうした方法はとらないでしょう。

話者9
まず、資金調達をするようにして、その資金をサービスに使う方が良いでしょうか?

Carolynn Levy
そうですね、おそらく。SAFEはあなたのケースにあてはまるものではないと思います。私には、あなたが「自分に手を貸してくれた相手に、安価な創業者の株式持分で支払いができる方法はないだろうか?」と考えているように聞こえます。私なら、そういう目的でSAFEは使いません。他に方法があると思います。金曜にAMAがあるのは言ってもよろしいですか?こうした質問に対応する場としてAMAが用意されています。私は他のYC法務チームのメンバーと共に出席しますから、こうした質問に答えたり他のアイデアをいくつかお教えしたりできるでしょう。

話者9
わかりました。

Carolynn Levy
しかし、あなたの質問に答えておきますと、先ほどの話にSAFEは向いていないと思います。

話者9
わかりました。ありがとうございました。

Carolynn Levy
他に質問は?皆さんよろしいですか?

話者2
Caroline、ありがとうございました。

Carolynn Levy
ありがとうございました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Modern Startup Funding (2019)

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