エンタープライズでの利益率の危機は存在するのか? (a16z)

0/ エンタープライズでの利益率に危機が訪れているのでしょうか?驚くほどマージンの低い(30~40%)ソフトウェアスタートアップを見るのは珍しいことではありません。私はここにはより幅広いトレンドがあると信じていています。このスレッドで検証していきましょう。

1/ これらのすべてが目新しいわけではありませんが、クラウドへの移行、AI/ML、ボトムアップGTM(Go-to-Market)など、利益率を低下させるマクロトレンドがいくつかあります。以下では、業界全体で見られる最も一般的な要因を概説します。

2/ AIは高価になりうる:多くのAI/ML企業は顧客ごとに独自のデータセットとモデルを持っています。これにより、1人の顧客に対するコンピューターおよびデータ管理コンポーネント費用が加算されます。

3/ 中心的な買い手の欠如:ソフトウェアは非伝統的な垂直市場に浸透し続けています(林業、鉱業、建設業、農業等)。ただし、一部の業界では、中心的なソフトウェア購入者がおらず、LTV/CAC(生涯価値/顧客獲得のコスト)が、従来のITとは比べ物になりません。

4/ データコストがひどく悪い:データの経済性は、時間の経過とともに改善されるとは限りません。データの収集、保存、保守、移動、処理、ラベル付け、保存にはコストがかかります。多くのドメインでは、データ単位の貢献コストは時間の経過とともに増大します。

5/ 自動化は魔法ではない:多くの企業は、まず人間がプロセスを行うことから始め、その後の自動化によってマージンを改善したいと考えています。これは技術的に非常に困難です。また成長のための推進力が、優先順位付けを困難にします。

6/ 最適化されていないクラウド:プライベート・マーケットは成長を後押ししているので、クラウドの実装は恐ろしく非効率的になり得ます(それも桁違いにです)。いったん成長が鈍化し、利益率がより重要になった時点でこれを修正しようとしても、簡単にはいきません。

7/ クラウドの再販:多くの*aaS企業には、販売する製品の1ドルあたりにつき、少なくないバックエンドのクラウドのコストが必要です。セールス報酬プランの構成が適切でない場合は、セールス担当者にクラウドを再販するようインセンティブを与えますが、彼らにクラウドに対する直接の割引権限はありません。

8/ ACVの廃止(年間契約額):ボトムアップ製品の低い価格帯は、トップダウン・セールスの類似したエンタープライズ・グレード製品と比較した場合、コスト面での重しとなります。また、すべての製品や購入者が、魅力的なLTV/CACに必要な純投資額を継続・維持できるわけではありません。

9/ 2回のGTMのモーション:ボトムアップからの採用への動きは、最初は製品/マーケティングを通じて推進される製品に有利に働きます。ただし、時間が経過するに連れ、より多くのドル・プールが、エンタープライズ・セールスを通じて達成されるようになります。正しく行わない限り、両方を実行することは高くつきます。

10/ サービス:ハイエンドの顧客のコストは、製品からサービスへと移行し続けています。スタートアップは、最初のトラクションを獲得し、強力なアカウントコントロールを維持するために、賢明にこれらを追求します。しかし、これらに頼ることは、帳簿上での利益率を下げることを意味します。

11/ これは、企業のスタートアップが利幅を守るために、正しいGTMの動きや製品のトレードオフを犠牲にすべきだということではありません。むしろ、第1世代のSaaSは、魅力的な利益率のプロファイルを得るために参照すべきポイントとしては適切ではなくなっているのかもしれません。そしてそれはそれで結構なことです。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Martin Casado

Martin Casado は Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーです。彼は以前、2012年に VMWare に買収された Nicira の共同創業者で CTO でした。VMWare で、Martin はNetworking and Secruity Business のVPならびにGMでした。

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この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Is There an Enterprise Margin Crisis? (2019)

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