ほとんどがひどいものですが、賢い選択をする余地はあります。
先週、DHHがオープンオフィスのプランを酷評しました。彼は正しいです。けれど、ちょっと待ってください。私たち Basecamp にもオープンオフィスのプランがあります。実は私たちは、いかにそれを機能させるかを考え、満足のいく仕事を成し遂げました。その内容を共有してみましょう。
まず最初に、オープンオフィスはいくつかの視点で魅力的です——
- 経済的に理にかなっているでしょう。全ての人に個人的な各々の空間を作ると経費がかかります。はい、オープンな空間でうまくやれない人はもっとお金がかかると主張することはできます。私はその点に抗議するつもりはありませんが、その経済的影響は抽象的なものです。建設費を支払うことは、そのまま直に経済的影響を及ぼします。
- 空間をオープンにしておくことで柔軟性が高くなります。企業は成長を想像することを好みます。現在の自社の従業員数が20名だとしても、今から1、2年後には 40名、60名、80名になるかもしれません。物理的に何が必要になるかを想像するのは、非常に困難です。全員に個人用オフィスを作らなければ、怒り出す人もいるでしょう。たくさん作りすぎると、まとまった広さの空間が必要になります。オープンだということは柔軟性が高いということであり、柔軟性が高いということは、快適だということです——特に、5年以上の賃貸契約を結んでいる場合は。
- 必要な空間は小さくて済みます。5,000平方フィートの解放された空間にたくさんの人を入れることができます。例えば、小さな空間に机を詰め込み、数フィートの空間に人々を詰め込むことができます。これらのことがよいことだと言いたいのではありませんが、実用的で実行可能です。けれども、全員が個人用オフィスを必要とすれば、より広い空間が必要になり、それはすなわち、賃貸料もかさむということです。お金がかかります。
このように、純粋に実際的、経済的視点で見ても、オープンオフィスには意味があります。清掃やも保全簡単です。けれども、DHH同様、共同作業ができる利点という点については同意できません。これは、費用の節約という本当の理由をぼかすための見せかけの理由です。オープンオフィスのプランにはコストがかからない、それ以上でも以下でもありません。オフィスの設計の決定権を持つ人は、大抵は、財務決定権も持っています。
さて、以上の事柄をすべて理解した上で、もしオープンオフィスにするとしたら、オープンオフィスをどのように活かしますか?
〈図書館ルール〉
世界中の図書館に足を踏み入れると、いくつかの点に気づくでしょう。一つ目の点は、図書館は一般的にはオープンフロアで、全体のあちこちにたくさんの机があることです——オープンオフィスに似ています。二つ目の点は、静かなことです。いくつかの点で、図書館の設計や図書館にふさわしい振る舞いと同様に、文化的な一貫性があります。Basecampの私たちは、これらのことを〈図書館ルール〉と呼んでいます。
図書館は、仕事をしている人、読書をする人、考えている人、勉強をしている人、書き物をしている人、物思いにふけっている人、デザインしている人などでいっぱいです。けれども、彼らは静かです。人々は下を向いてぞれぞれ自分の仕事をしています。私たちの見解では、これがモデルとなるビジネスであり、モデルとなるオフィスです。 私たちは、〈図書館ルール〉を中心にして、自分たちの仕事の仕方を決めています。
というわけで、これが一つ目の教訓になります——〈図書館ルール〉を採用しましょう。そう、オープンオフィスは毎日、世界中で機能しています。それらは図書館と呼ばれているのです! そして、オフィスを——仕事をするための混沌としたキッチンではなく ——仕事をするための図書館として扱えば扱うほど、オープンオフィスのプランがよく機能するようになります。オープンオフィスのプランを役に立つものにするかどうかは、カルチャーが決めます。
〈図書館ルール〉が意味するものは、1人でいること、常に声をひそめること、お互いに邪魔をしないことです。誰かと普通の声で話す必要があるならば、部屋を持ってください。オープンフロアを活かす鍵は、空間のあちこちに個人用の部屋を設定することでもあります。その場で議論しなければならない話題のある数人の人が駆け込み、誰かを邪魔することなく、話し合って、結論を出すことのできる場所です。
私たちの職場では、このような個人用の空間を〈チーム・ルーム〉と呼んでいます。それがどのようなものかをここに挙げます——
ところで、注意散漫にさせるものを取り除くということは単に物理的なものに関して言うのではありません。バーチャルなものも、注意散漫にさせるものになってきました。基本的に、リアルタイムのチャット・ルーム / チャンネルはオープンオフィスと同じものです。いえ、多くの意味においてさらに悪いものなのです。ですから、幸運に恵まれ、他の人と離れた場所で仕事をするか、全員に個人用の空間があるオフィスにいたとしても、一日中、複数のリアルタイムの会話を把握することを強いられているなら、それはオープンオフィスで能率的に仕事をしているのと同じことなのです。ご愁傷様!
防音
オープンフロアのプランよりも悪いものは何でしょうか。硬質表面だらけのオープンフロアのプランです!多くのオープンオフィスのプランが、古い倉庫またはロフト型の空間に設定されているという状況下では、実質的に不利益を被っています。木材、れんが、ガラスはすべて素敵に見えるかもしれませんが、音の響きはひどいものです。
私たちのオフィス空間は、10,000平方フィートのコンクリートとガラスの箱でスタートを切りました。この場所は、元は家具工場でしたが、今や反響工場とも言えるものになっています。
私たちのオフィスの設計の目玉は防音設計でした。例えば、私たちは、オフィスの真ん中に、重ねたフェルトで包まれた大きな空間を作りました。フェルトは吸音素材として役立ち、不規則に重なったフェルトが音を分散させるのに役立ちます。素材とその使用は以下のようになります——
私たちは、音の吸収と分散を促すため、一方の長い壁にもレコーディング・スタジオに使用される防音素材を貼りました。
オープンな作業エリアの床にカーペット・タイルが敷かれており、オープンな空間で人が話した時に、さらに音の反響や伝逹を軽減します——
そして、チーム・ルーム自体——共同作業と普通の音量での会話用に設計された部屋——さえ、防音を念頭に置いて設計しました。防音の天井タイルから溝のあるコルクの壁まで、音を伝達すべきではない場所へと音が響かないように慎重に決定されました。溝のあるコルクの壁は、音を分散して反響を抑制するために重ねられています。
それ以外に選択肢がない、という理由ではありますが、私たちは、同一のガラスの壁を共有するどの部屋にも、その間にクロロプレンゴムのグロメットを設置することにしました。写真で確認するのは難しいですが、部屋は内側の壁から壁へとガラスで仕切られており、部屋同士の間にわずかな隙間があります。クロロプレンゴムが膨張してその空間を埋め、部屋同士で音が伝わるのを防いでいます。
さらに私たちは、ポッドキャストの録音のために、部屋の中に別個の防音空間のレコーディング・スタジオを作りました。後ろの長い壁と同じ防音素材を貼り付けています。
外側のオープンオフィスの机同士の仕切りは、リサイクルプラスティック製のまた別の防音素材を使用しています——
そして、防音に関して最後に挙げるのは、私的か業務目的かを問わず、個人で電話をかける必要がある場合は、3つの電話用ルームのいずれかにさっと入ることができるという点です。電話用ルームは防音仕様で、机同士の仕切りと同じ素材が貼ってあります。さらに、〈使用中〉の表示があり、使用中はいつでもライトが点灯します——誰が見ても使用中であることがわかります。
密度と机
防音とは別に、オフィスを静かに保つために考えるべきことで、他に大きな役割を果たすものがあります——密度です。人と人が重なるくらいに詰め込むのは、ストレスを発生させる形式です。机と机は向かい合っていますが、仕切りがあり、座っている人同士は相手が見えません。さらに、それぞれの机の後ろには約10フィートの空間があります。後ろに椅子を引いた時に誰かにぶつかる心配は全くありません。
さらに、机の配置は、他の人の使っているパソコンの画面が見えないようになっています。たとえ意図的ではなかったとしても、背後から誰かが見ていることがわかると、とても不快な感じがします。私たちは机の配置の仕方でそのような状況を排除しています。
机の配置に関する最後の点として、全員がずっと自然光を浴びられるように、机は大きな窓に沿って並んでいることが挙げられます。自然光は特に落ち着きますし、個々に操作できるシェードは季節によって眩しさを調節できます。
オープンオフィスは一つの選択肢
そうです、オープンフロアのプランは取るべき選択肢ですが、敬意と静寂に寄与する文化的コミットメントが必要です。幸運なことに、誰もがどうすればよいかわかっています。なぜなら、誰もが図書館での振る舞い方を知っているからです。その他に、資本投資と慎重にオフィス設計を選択することも必要です。全員が静かであっても、音の響く部屋にたくさんの机を放り込んだとしたら、すべきことは成し遂げられません。静かな状態を保ちたければ、自分の思い描いているものについて考える必要があります。すべての決定が何らかの影響を与えます。
そして、すべてが選択次第!
私たちは、毎日、心穏やかに集中し、静かに仕事ができるようなオープンオフィス(とその文化)を設計するために、可能な限り、最善を尽くしました。けれども、それでも十分ではなく、それが、誰も私たちのオフィスに来る必要がない理由です。Basecampは、完全にリモートで仕事をしている54名からなる会社で、シカゴで働いている14名にいたっては、ほとんどの時間を自宅から仕事をしています。指定日にオフィスに足を踏み入れ、ラッキーであれば3〜5名に会うことができるでしょう。そうです、ほとんどの場合、それは空間の大きな浪費ですが、それが私たちの心地よい譲歩なのです。
ここから私たちのオフィスの写真をもっと見ることができます。私たちは、近日出版予定の私たちの書籍、It Doesn’t Have to be Crazy at Work (※邦訳『No Hard Work』) の中で、上記の戦略などについて話をしています。仕事場をできる限り落ち着くものにするために注意深くデザインされた製品を試したいなら、Basecamp 3 を調べてみてください。
著者紹介 (本記事投稿時の情報)
Jason Fried は Basecamp の創業者兼 CEO です。また Getting Real、Remote、REWORK の共著者です。
記事情報
この記事の原文は Basecamp の Signal v Noise に属します。またこの記事は原著者の許可を得て翻訳・公開しています。FoundX Review はこの記事元を代表して発信しているわけではありません。
原文: Library Rules: How to make an open office plan work (2018)