実践デザイン #01「ユーザー観察」

デザインは必ずしも複雑でも、怖いものでも、お金がかかるものでもありません。アーリーステージのスタートアップにおいて、デザインは1つの目的を果たします。創業者が自社のユーザーを理解する助けになるのです。そのため、デザインは単にロゴやレイアウトの域に留まりません。ユーザーの観察やメッセージング、MVPのスペック、簡潔なピッチなども意味します。

私は、デザインの謎を解き、創業者のユーザー理解向上を助ける無料ツール一式の作成に着手しました。これらのツールは今後数週間のうちにリリース予定で、以下のものが含まれます。ユーザー観察、デザインブリーフ作成、メッセージング、MVPスペック、デッキデザイン、です。

これらのツールはすべて、行動を促すように設計されています。これらのツールで実際にやりながら学習することで、気の利いたデザインへのハードルが下がることを期待しています。最初のツールはユーザー観察に関するものです。各ツールのインタラクティブ版は私のサイトから入手可能となります

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ユーザー観察ツール

以下は抜粋です。完全なインタラクティブ版はこちらから入手できます

ユーザー観察は、自社のユーザーを知るためのプロセスです。プロダクトの市場投入を成功させるためには、慣れ親しんだ毎日のルーチンから抜け出し、人に会いに出かけなければなりません。自社の顧客は人であり、すべての人が悩みの種を抱えています。したがって、すべての人にニーズがあるのです。製品のメーカー、つまり御社は、素晴らしい製品でそれらのニーズのいくつかを満たすことができます。

以下はユーザー観察ツールに対応するステップです。

1. 以下の事例を読んで、中身をよく理解する。

うまくいくプロダクトソリューションとは、悩みの種から生じたニーズに対応するものです。ここでは例としてiPodとZapposを用い、悩みの種とニーズ、ソリューションの違いを示します。

iPod
悩みの種:ジョセフは、出かける先々に自分の音楽をすべて持っていくことができなかった。
ニーズ:ジョセフは、移動中に自分のすべての音楽をすぐに聴ける方法が必要だった。
ソリューション:ジョセフの音楽コレクションすべてを持ち運べる、ポケットサイズのポータブルプレイヤー。

Zappos
悩みの種:ジゼルは、地元のモールで買えるもの以外の靴を履くことができなかった。
ニーズ:ジゼルには、市場に出回っている他の靴を選び、買うことができる方法が必要だった。
ソリューション:発送・返品が無料でスピーディーなオンライン靴店。

2. 検証すべきことを決定し、集中する。

ユーザー観察を成功させるには、明確な目標が必要です。ユーザーの問題に対する理解度、ユーザーニーズに関する仮説、ソリューションとしての御社製品。これらを検証する際も同じプロセスが適用されます。量的調査を行えばクリックした人数が分かりますが、その理由はユーザー観察でしか分かりません。ユーザー観察を行うと、人間の行動を促す根源的な問題へと導かれます。

3. 適切な観察対象者を選ぶ。

ユーザーと顧客は、時としてそれぞれまったく異なる人や存在であることを理解しておきましょう。観察の対象は見知らぬ他者であるべきです。観察は対面で実施し、問題が生じていたり、ニーズが表出していたり、ソリューションの必要性があると思われる環境で行いましょう。そのために出張が必要ならば、出向きましょう。通常は1か所で複数回のセッションを予定することが可能です。

4. トリガークエスチョンと小道具を準備する。

ユーザー観察はセールスピッチの対極にあるものです! あなたの役割は聞くことです。話す量が少ないほど、学べる量は多くなります。観察中に自分が発言する目的は話の勢いを保つことと、トピックから脱線しないようにすることです。最も役立つトリガークエスチョンは「なぜ?」です。

小道具に関しては、相手をそれで刺激してあげると話が伝わりやすくなることがあります。例えば、Zapposのニーズを検証する場合。パソコン画面の大きさの厚紙を1枚持っていけば、マーカーを使って、カタログのレイアウトを描くことができます。それを面会中に取り出して、こんな風に尋ねることができるでしょう。「これがアメリカ市場にあるすべての靴が見つかるサイトだとしたら、ここで何をしますか?」 相手が答えたら、「それはなぜですか?」と聞けばいいでしょう。また、ユーザーのまわりにある小道具を使うことも想定できます。ユーザーにクローゼットに連れて行ってもらい、どのように服をコーディネートしているか、どうやって靴を合わせているかを聞くことができます。

5. 観察パートナーを選ぶ。

ユーザーは、相手がきちんと聞いていると確信が持てるときに最も貴重な知見を提供してくれます。誰が観察をリードし、誰が記録するのかを決めておきましょう。リーダーの主な役割は積極的に耳を傾け、ユーザーに専念することです。リーダーの役割には質問したり、コメントしたりすることも含まれます。しかしそれは対話が脱線しないような内容に限られます。記録者の役割はメモを取り、周囲を観察し、タイミングに気を払い、記録用の機材を管理する(使用する場合)ことです。

6. それでは始めましょう。

このツールのインタラクティブ版は私のサイトにあります。

 

著者紹介

Dominika Blackappl

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Practical Design: User Observation (2016)

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