スタートアップのグロース戦略 (Startup School 2014 #06)

 

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素晴らしいですね。このコースの講義を拝見していましたが、どれも実に内容が濃いです。ここからは私が担当しますので、お付き合いのほどよろしくお願いします。

Paulの講義の質疑応答で、「今自分が大学生だったら何を学びますか?」という質問がありました。彼は「物理学」と答えていました。そんな彼とは違って私はCambridge大学の学生時代、実際に物理学を夢中で学んでいました。

物理学は他の分野においても実に役に立ち、応用が利くスキルを学べる素晴らしい科目だと私は思いますが、今日ここにいる皆さんはそんな話を聞きに来ているわけではないですよね。今日は物理の授業ではないので。

自己紹介

私は大学の費用をオンラインマーケティングやディレクションマーケティングで捻出しました。1990年代に始めたSEO(検索エンジン最適化)からスタートし、紙飛行機のサイトを作り、紙飛行機というニッチ市場を独占しました。スタートアップを立ち上げたいのであれば、その市場がどれほど大きくなるかを考えるべきです(結局、紙飛行機の市場は大きくなりませんでした)。

しかし、私がその時学んだのがSEOの手法でした。当時の検索エンジンはAlta Vistaで、SEOといえば白い背景に白いテキストが主流でした。ビロウ・ザ・フォールド(スクロールしないと見えない画面領域)の5ページに白い背景・白いテキストで20~30回「飛行機」と書けば、Alta Vistaの検索結果でトップになったのです。こうした手法が1990年代のSEOの定石だったのです。非常に簡単に学べる技術でした。

大学時代、私は物理学者として紙飛行機を飛ばしている姿がかっこいいと思っていました。私は実際のところ物理学のクラスで一番のオタク学生だったのです。そこでカクテルのサイトを作りました。そしてプログラミングを学び、私のサイトは英国で最大のカクテルサイトに成長しました。この時の経験が、Google誕生後にSEOに身を置くきっかけとなったのです。

Googleでは、ページランクや自分のサイトにリンクを戻すことに神経を使わなければなりませんが、当時はビロウ・ザ・フォールドに白いテキストと白い背景さえ入れておけば、Yahooのディレクトリからリンク1つでGoogleの検索トップになる時代でした。

Googleがアドワーズを始めた時が私のマーケティング人生の始まりでした。Googleからクリック課金型広告を購入し、eBayのアフィリエイトプログラムを使ってそれを20%程度の小さなマージンで彼らに転売したのです。それを契機に、私は今日グロース、グロースハッキング、グロースマーケティングと言われる世界に飛び込んでいったのです。

私にとっては、あらゆるチャネルを駆使して自分が求めるアウトプットを得るという何の変哲もないインターネットマーケティングでしたが、それで学費を払い、物理学者からマーケッターに転身することになったのです。フォースの暗黒面に堕ちたとでも言いましょうか。

継続率(リテンション)が最も重要

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成長にとって最も重要なことは何だと思いますか?沢山の講義を受けてきた皆さんは何度も聞いている話だと思いますが、成長にとって最も重要なことは何だと思いますか?

受講者
優れたプロダクトです。

Schultz
優れたプロダクトは何をもたらしますか?

受講者
顧客です。

Schultz
それらの顧客に何をしてほしいですか?

受講者
口コミで自分のプロダクトを広めてもらうことです。

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Schultz
そのとおり、それがリテンション(継続)です。リテンションは成長にとって最も重要なことです。現在Facebookには素晴らしいグロースチームがあり、その一員として働いていることを私は大変誇りに思っています。そして、何がすごいかと言うと私たちにはとても素晴らしいプロダクトがあるのです。Facebookの成長に携われることは大変名誉なことです。

私たちは、世界中の人々が自分も使ってみたいと思っているプロダクトを取り扱っているのですから。これは本当に素晴らしいことです。ユーザーを魅了し増やしていけば、彼らはFacebookを使い続けてくれるのです。

私はこれまで多くのスタートアップにアドバイスをしてきました。私のお気に入りはAirbnbとの仕事ですが、その他にCourseraや、彼らほど上手くいかなかった企業との仕事もありました。

リテンション曲線が平行になるとPMF

そして私が様々な企業との付き合いから思い至った確かなことが1つあります。

この曲線は、「月間アクティブ比率」と「アクイジション(ユーザー獲得)からの日数」の関係を表したものです。このリテンション曲線がX軸と並行する線に漸近的であれば、それは活力のあるビジネスであり、市場のサブセットに関してプロダクト・マーケット・フィットがあると言えます。

しかし、グロースハッキングやバイラリティなどと言って急成長を見せる会社の大半は、リテンション曲線がX軸に向かって傾斜し続け、最終的にはX軸と交わるのです。

自分の仕事について人に話すと、「1日100万人もユーザーが増えているとは実に結構な話ですね。」「Facebookでグロースチームを始めた時は5,000万人の既存ユーザーがいて、さらに登録者もどんどん増えているなんて、データを沢山持っていたのですね。」と言われます。

私たちはB2Bの成長に関してもサービス広告に登録してもらうのという同じ方法を採用し、この方法でその市場における成長度合いも把握してきました。

リテンション曲線の見方

私がFacebookに入社したのはプロダクト誕生から3日目でした。この手法を使えばプロダクトの誕生から90日以内に広告主としての1年後の価値を分析することができます。それで私たちの価値は1年で97%と予想しました。つまり、リテンション曲線に注目することが非常に重要なのです。

この赤線は自社プロダクトを一定の日数使っている「ユーザー数」を表しています。多くの人が少なくとも1日は使っているものの、発売から1年後にはユーザーはゼロになっています。つまり、発売後366日使い続けていた人はゼロということです。よろしいでしょうか?

次に、1日しかプロダクトを使っていないすべてのユーザーについて考えてみましょう。その中で月間アクティブは何割いるでしょうか?月間アクティブですので、1日目に使うのを止めた人がいても最初の30日は当然100%です。しかし、31日目はどうでしょう。登録後31日目のシングルユーザーのうち月間アクティブは何割いるでしょうか?32日目は?33日目は?34日目は?

これを行うことで、わずか10,000人の顧客で自分のプロダクトはどんな曲線をたどるか、自分の曲線は漸近的かどうかが分かるのです。右に行くほどノイズは増えますし、これは実際のデータではありませんが、この曲線が横這いになるかどうかが分かるでしょう。曲線が横這いになっていなければ、成長戦術やバイラリティ、グロースハッカーの採用もみんな忘れて、プロダクト・マーケット・フィットに注力する必要があります。

なぜなら、Samがこのコースの最初に説明したように、結局はアイデア、プロダクト、チーム、実行がカギとなるからです。優れたプロダクトがなければどれだけ成長させようと努力しても無駄です。成長は望めないのですから。私がFacebookの新プロダクトやスタートアップでこれまで目にしてきた一番の問題は、プロダクト・マーケット・フィットがあると思っていて実際には存在しなかったということです。

良いリテンション目標の設定方法

次によく聞く質問は、「良いリテンションとはどれくらいですか?」ということです。勿論、単に5%のリテンションですと答えることはできます。Facebookはそれより高かったと思いますが。しかしそれでは成功するビジネスとは言えないでしょう。

この質問をされると私は本当に腹立たしくなります。皆さんなら考えればすぐ分かることだと思いますので。

私が大好きな話でこういうものがあります。これからお話しする内容の記事(PowerPointのリンク)は無料のようですが、他の記事は有料かもしれません。

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これは1950年に発売された『LIFE』誌に載っていた写真で、トリニティ核実験を撮影したものです。

Geoffrey Taylorという英国の物理学者で後にノーベル賞を受賞した人物がいます。彼はこの写真(PowerPoint上の画像)から米国製原爆の威力を解明したのです。そしてロシア(旧ソ連)が同様の写真を公表すると、次元推論を駆使してその威力も割り出してしまいました。次元推論は私が英国で物理学を学んでいた時に習得した最も役に立つ技術の1つです。

次元推論とは、問題に含まれる次元に着目してエネルギー、ニュートン、メートル、ニュートン(キログラム)、メートル毎秒毎秒(m s-2)を解明しようとするものです。

キログラム、平方メートル、毎秒毎秒(s-2)を考える際に、自分が持っているデータと照らし合わせて数値を割り出すのです。質量とはこの球体の容量ですので立法メートルです。ですから、m5/s-2となります。そこから彼はこの原爆の威力についてロシア製と米国製のどちらが性能的に優れているかを解明することに成功しました。当時の世界最高機密の1つを独力で突き止めてしまったのです。

この難題に比べれば、Facebookのリテンション率を導き出すのは簡単です。インターネット利用者は世界にどれくらいいると思いますか?24億人、23億人ぐらいでしょうか。ちなみにFacebookは中国では使用禁止になっていますので、そうするとどうでしょう?

受講者
20億人。

Schultz
はい、それではインターネット利用者は世界に20億人いるとしましょう。Facebookによると、アクティブユーザーは約13億人だそうです。これを割り算すれば数字は出せますが、正確な数値ではないでしょう。当然です。ですがFacebookのリテンション率のだいたいの数字は出せるでしょう。インターネット利用者全員が会員登録すれば、数値はそれより高くなるわけです。

同様にWhatsAppについて考えてみましょう。アクティブユーザーは6億人だそうです。スマートフォン所有者は何人いるでしょうか?これは調べればすぐに分かります。それでどれくらいのユーザーがいるか想像がつきます。

Amazonは米国のほぼ全員が登録しているという広告を出していました。米国のオンライン人口も分かりますし、Amazonの顧客数も公表されている数値から割り出すことができます。ビジネスとして成功するために必要な一定期間のリテンション率は、バーティカル毎に異なります。eコマースを手掛けていてユーザーの月間アクティブベースが20~30%であれば、かなり順調と言えるでしょう。

ソーシャルメディアにおいて自社プロダクトの初期登録ユーザーのリテンション率が80%程度なければ、巨大なソーシャルメディアサイトにはなれないでしょう。

つまり、自分がどのようなバーティカルにいるかで必要となるリテンション率も変わってくるのです。「どんな競合相手がいるか」「自分はこのバーティカル内で真の成功を収めるレベルに近づいているのか」と考える能力を持つ必要があります。

リテンションは成長のために最も重要なことで、優れたアイデアと、そのアイデアが形となった優れたプロダクト、そして優れたプロダクト・マーケット・フィットが必要となります。

プロダクトのリテンション率は、コホートベースで標準化した時にインストール済みユーザーが実際に長く使ってくれているかで判断します。これは、自分のプロダクトに最初の100人、1,000人、10,000人が集まった時、彼らが長期的に使い続けてくれるかどうかを判断する上で実に優れた方法だと思います。

成長のためのオペレーション

 

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では、成長するためにはどのような戦略を採用すべきでしょうか?

優れたプロダクト・マーケット・フィットがあるとしましょう。eコマースサイトを立ち上げ、毎月60%のユーザーが戻ってきて買物をしてくれます。実に素晴らしい状況ですね。では、ここから「スケールアップするタイミング」をどう判断すべきでしょうか。((司会者に向かって)「実行のタイミング」はフォーラムの最後のトピックでしたよね?)ここがグロースチームの出番なのです。

へそまがりな私の意見を言わせてもらいますと、スタートアップの場合、グロースチームは要りません。スタートアップはグロースチームを持たず、会社全体がグロースチームとなるべきです。そしてCEOが成長の牽引役となる必要があります。

北極星(North Star)を定めてフォーカスする

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会社には北極星、つまり今後の方向性を示してくれる人間が必要であり、それは会社を率いる人間でなければなりません。これにあてはまる素晴らしい人物を私は知っています。Mark Zuckerbergです。

Facebookが誕生した時、多くの人が登録ユーザー数を口にしていました。MySpaceや、(聞き取れず)でも、人々はとかく登録ユーザー数に注目するものです。

しかし、Markが注目したのは月間アクティブユーザーでした。Markは、「すべての人にFacebookを使ってほしい。それはすべての人を登録ユーザーにするという意味ではなく、すべての人をアクティブユーザーにするということだ」と言って、社内に周知させました。

こうして月間アクティブユーザー数がFacebookの社内外で公表される数字、そして世界中に注目される指標となったのです。Jan KoumがWhatsAppで行ったこともその良い例だと思います。彼は常に送信件数を公表していました。

サービスによって北極星は異なる

メッセージアプリの場合、送信件数は最も重要な数字でしょう。1日1回使ってもらえるのは素晴らしいことかもしれませんが、それではユーザーにとって一番のメッセージアプリだとは言えません。そこでJanは送信件数を公表し始めたのです。

Airbnbは予約宿泊数を重視し、TechCrunchのあらゆるインフォグラフィックでもそれを公表しています。彼らは常に予約宿泊数をベンチマークとして世界最大のホテルチェーンと比較しています。会社はそれぞれ異なる北極星を持っているのです。

すべてのバーティカルでアクティブユーザー数を北極星にする必要はありません。eBayの北極星は流通総額 (GMV)、つまりどれだけの商品がeBay経由で購入されているかです。外部の人間は皆、eBayを収益で判断しがちです。

Benedict EvansがAmazonのビジネス内訳を見事に分析しており、マーケットプレイスビジネスとダイレクトビジネスの比較は実に興味深いものがあります。すべてがマーケットプレイスビジネスであるeBayは収益で判断されがちですが、実際には収益の10倍もの流通総額があるのです。これは私がeBayで働いていた時に注目されていた数字でした。

北極星を定めるのがリーダーの仕事

会社が成長を考える時には各々の北極星が必要となりますが、成長に向かって仕事をしている時はリーダーとして北極星を定義することが非常に重要となります。

それがなぜ重要かと言うと、何かに2人以上の人間が関わりだすと、他の人がしていることが管理できなくなります。私が現在マネジメントしている人間は100人になりましたが、全く管理できていません。

ここで重要になるのが影響力です。私が1人に指示をしている間に、残る99人は自分勝手なことをやろうとするのです。問題なのは、会社にとって何が最も重要なことか全社員に明確でないことです。

eBayを例にしますと、社員が「私たちは収益に注力すべきだ」「購入する消費者数が重要だ」「出品者の数が重要だ」と好き放題に言っているところを、各部門のリーダーであるPierre OmidyarやMeg Whitman、John Donahoeが「いいえ、会社にとって本当に重要なのはサイトの流通総額です。私たちのサイトで発生するeコマースの割合が最も重要なのです」と言うのが常でした。

これは、私たちのいないところで誰かが話をしている時、彼らがパソコンの前に座って特定の商品や機能について考えている時、「重要なのは収益ではなく流通総額だ」「ただ登録者を増やすのではなく、彼らを長期的なアクティブユーザーにすることが重要なのだ」と頭の中で明確に理解している状態を言います。

eBay での例

これについて別の良い例をお話ししましょう。私がeBayにいた2004年、私たちは新規ユーザーを獲得したアフィリエイトに対する支払方法を変更しました。アフィリエイトプログラムは最近ではあまり流行っていませんが、アフィリエイトプログラムとは自分のサイトへ取引を紹介してくれたインターネット上の誰かに紹介料を支払うものです。しかし、その大半はそれを商売としている大手マーケッターへアクセスすることが狙いです。

私たちは登録済ユーザー(CRU)に対し支払いをしていましたので、私たちのアフィリエイトは皆、ユーザーをeBayサイトに登録させることに躍起になっていました。そこで私たちは登録済アクティブユーザー(ACRU)を対象とする支払モデルに変更したのです。

つまり、アフィリエイトとして収入を得るには、アカウントを確認し、商品の入札、または購入もしくは出品をしなければならなくなったのです。この変更を行った途端、アフィリエイトに登録させられた登録済ユーザーの20%程度を失いました。

しかし、ACRU(15:45)は約5%下がっただけでした。CRU対ACRUの比率は上昇し、ACRUの増加率は大幅に加速しました。この原因は、CRUを増やしたい場合、例えばトランポリンを探している人がいたら、トランポリンを購入するために登録・承認作業が必要となる登録ページに誘導します。一方でACRUを増やしたい場合は、eBayのトランポリンに関する検索結果ページに誘導します。そうすればユーザーは自分の買いたいモノをすぐに目にすることができ、胸を弾ませ、商品を購入する時に登録してくれます。

CRUのみを増やそうとしても、eBayサイトを見たユーザーはマジックモーメント(最も価値ある体験)を得られません。

マジックモーメントをどうやって早く体験してもらうか

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そこで次に考えるべき重要なことは、「ユーザーにどのようにマジックモーメントを体験させ、自分のサービスの常連客になってもらうか」です。

私はこのコースの講義ノートに、このトピックに精通していると思われる人物のリンクを沢山リストアップしました。例えば、先ほど紹介したリテンション曲線についてはDanny Ferranteへのリンクを載せています。彼はリテンション曲線の専門家です。

マジックモーメントに関しては、2つの動画へのリンクを載せています。1つはFacebookのグロースチームを立ち上げたChamath Palihapitiyaが成長について語っている動画で、もう1つは4年前のF8(Facebookの開発者カンファレンス)で私の友人であるNaomiと私が成長についての考えを述べている動画です。

そして、両方の動画でマジックモーメントが話題にされています。Facebookの登録者にとってのマジックモーメントは何だと思いますか?

受講者
友人を見つけた時です。

Schultz
友人を見つけた時。そのとおりです。私は多くの会社で話をしてきましたが、彼らは自分たちがやっていることを物凄く複雑にしようとしています。しかし、「これがFacebookか、すごい!」と思わせるには、Facebookで友人の写真が1枚見つかればいいのです。実にシンプルですよね。

ZuckerbergはかつてY Combinatorで「14日間で10人の友人とつながるようにする」と話していましたが、これこそ私たちがこの指標を重要視している理由なのです。ソーシャルメディアサイトで最も重要なことは、友人とつながることです。友人とのつながりがなければニュースフィードに何も表示されず、きっとFacebookに戻ってくることもないでしょう。そして今後何の通知も届かず、自分が見逃している物事について話してくる友人も現れないでしょう。

つまり、Facebookにとってマジックモーメントとは友人を見つけた時で、これが私たちの成長を左右しているのです。Linkedinの登録フローや、Twitterの登録フロー、WhatsAppの登録フローでも、これらのサービスが最も気を配っているのは、私たちがフォローしたがっている、つながりたがっている、メッセージを送りたがっている相手をできるだけ早く表示させることなのです。このバーティカルではそれが重要なのです。

他のサービスでのマジックモーメント

AirbnbやeBayについて考えてみましょう。eBayで重要なのは、例えばPEZディスペンサーや壊れたレーザーポインターなど、自分が今興味がある、ユニークな商品を見つけてもらうことです。自分のコレクションに足りなかった品が見つかった瞬間がeBayにおける真のマジックモーメントなのです。

Airbnbの検索で宿泊可能な素敵な家を見つけて、その家のドアを開けた瞬間がマジックモーメントです。同様に、Airbnbで自分の家を登録し、初めて支払いを受ける時がマジックモーメントです。eBayに出品して、初めて支払いを受ける時がマジックモーメントとなります。ぜひBrianの考えを聞いてみて下さい。

すでに共有されていると思いますが、Airbnbにおけるユーザーの生活とその面白さを描いた彼のストーリーボードは見事な出来ですので。彼にはマジックモーメント、そして愛着や楽しみなどをユーザーに感じてもらうための方法など、素晴らしい内容の講義を3コマほど担当していただきます。

自分のプロダクトにとってマジックモーメントとは何かを考え、できるだけ早くユーザーに届ける必要があります。そうして初めてこの青線が漸近的になって上向きになります。彼らが自分のサイトの常連客になれば、リテンション率を50%、60%、70%と簡単に高めることができます。

成長に最適化する

次に考えるべきこと、そしてシリコンバレーの全員が間違えていることなのですが、それは自身の成長について考える時に最適化することです。私が気に入っている例が通知です。これも多くの会社で話しアドバイスしてきたことですが、通知についてお話しすると、どの会社も「通知が沢山届くので、通知の最適化が必要なのだと思います」と言います。

皆さんは沢山の通知が届くからという理由でパワーユーザーがサイトから離れていくと思いますか?いいえ、そうではありません。では、なぜ通知を最適化する必要があるのでしょうか?ユーザーはおそらく大人ですから、自分でフィルターを使うこともできるでしょう。

マージナルなユーザーに注目する

ここで注目すべきなのはマージナル(非主流)ユーザーです。マージナルユーザーとは、一定期間(日、月または年レベルで)通知を受け取らないユーザーのことです。素晴らしいプロダクトを生み出すにはパワーユーザーのことを考えることが重要ですよね?素晴らしいプロダクトを生み出すためには自社プロダクトを最も頻繁に使ってくれるユーザーのために最適化することが重要であるのは確かです。

しかし、成長を促進するために考慮すべきなのは自社プロダクトの既存ユーザーではありません。Danny Ferranteの動画で、私たちが成長について考える際に使用している成長会計フレームワークについて説明しています。注目すべきなのは新規ユーザー、復帰ユーザー(30日間Facebookを使っていなかった後に戻ってきたユーザー)、解約ユーザーです。

私が見てきたプロダクトの大多数は、数年である程度の成長段階に達すると、復帰ユーザーと解約ユーザーの数が新規ユーザー数を上回ります。復帰ユーザーや解約ユーザーはいずれも友人の数が少なく、友人を見つけることもできなかったため、Facebookの面白さを体験できていませんでした。

私たちがまず注目すべきだったのは、彼らを10人の友人と、あるいは彼らが望むだけの友人とつないであげることだったのです。考慮すべきはマージナルユーザーのことであって、成長について考える際、自分中心に考えてはならないということです。

北極星とミッションを合致させる

会社を成長させるためには、自分の会社にとって北極星とは何かを考えなければなりません。最も重要な指標は何であるかについて社員全員が考え、それに向かってプロダクトを磨き上げ、基準をよりレベルアップさせるために自らの行動を高めてゆくことができれば最終的に会社は成功します。

ちなみに、これらはすべて互いに相関関係にあると思われます。ですから、自社のミッションや価値観と合致する、自分たちにとってベストと思われる指標を1つ選んで追求するのが良いかもしれません。

しかし実際には、日々のアクティブユーザーと月間アクティブユーザーにはかなりの相関関係が見られますので、どちらかを指標にするのもよいでしょう。

共有されるコンテンツの量もユーザー数と相関関係にあります。なぜなら、ユーザーが増えれば増えるほど彼らが共有してくれるコンテンツの量が増えるからです。つまり、多くのことが相関関係にあるのです。

ですから自分に合っていてなおかつ追求し続けられる指標を選びましょう。北極星を持ち、ユーザーが体験するマジックモーメントを理解するだけで、ユーザーがその北極星まで皆さんを導いてくれるでしょう。

そして、マージナルユーザーも忘れてはなりません。自己中心的ではいけません。これらが会社を成長させる上で最も重要なことだと思います。何事もトップの主導が必要なのです。

成長の戦術

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そして最後の分野が戦術です。

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例えばネズミ捕り市場において独占可能なニッチ市場を見つけたとしましょう。これはベッドの下に設置する音のしないネズミ捕りで、ネズミが夜中にベッドの下にやって来ると寝ている人を起こすことなく捕まえてくれるのです。これが皆さんが見つけたニッチ市場です。このネズミ捕りは、市場のどのネズミ捕りよりも優れています。

シリコンバレーでよくあるのは、マーケッターは無用だと誰もが思っていることです。物理学を学んでいた学生時代の私もそう思っていました。ですから、エンジニアリング専攻の皆さんもきっと私たちマーケッターは何も役に立たない人間だと思っているはずです。

シリコンバレーでは「作れば人はやって来る」という言葉を耳にしますが、私はこれを信じていません。私は、自分で実際に働かなければならないと思っています。

Ben Silvermanのインタビューが掲載されている講義ページの中に良い記事があります。Pinterestの成長はマーケティングによって牽引されたという内容のものです。素晴らしい記事なので是非読んでみて下さい。勿論私が彼をひいきにしていることは分かっていますが。

国際化 (18n)

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まず最初にお話ししたい戦術は国際化です。Facebookの国際化はかなり遅れていました。Sheryl Sandbergはかつて公の場でそれを認めており、これについて私も全く同じ意見です。

長期的な成長を妨げる最大の壁で、私たちが取り組むべき難題の1つは、類似品がある国々でした。「自分たちのHTMLにはFakebook.cssが入っている」とStudeveldtが言ったというのは有名な話です。そのようなサイトは数多く存在し、Studeveldtが言ったような完全なクローンから、mixi、Cyworld、Orkutまで、Facebookが米国に注力している間に他の国々では様々なソーシャルネットワークが成長していました。国際化は私たちが打破すべき重要な障壁でした。

成長について考える際にこの障壁の打破が重要なカギとなることが多いのです。Facebookは大学生限定でスタートし、Facebookを採用した各大学が壁を打ち破ってくれました。そして大学から高校へと広まっていった時、私はまだ会社にいませんでしたが、Facebookそのものやその文化が生き残れるかと人々が疑問を持ち始め、それは会社が大きく揺れ動いた時期でした。

その後、私が入社する直前でしたが、Facebookが高校からすべての人へ広まっていったのは衝撃的でした。それによってユーザー数は5,000万人に成長しましたが、そこでまた壁にぶつかったのです。

それはFacebook社内で、「1億人以上のユーザーを獲得できるソーシャルネットワークは果たして存在するのか?」というサイトの存在意義にかかわる疑問が多く上がっていた時期でした。今となっては笑い話に聞こえますが、その当時はそれを達成している会社はまだありませんでした。どの会社もユーザー数が5,000万~1億人に達した所で壁にぶつかり、1億人を超えることは不可能なのではないかと思っていました。

グロースチームの結成

そこで結成されたのがグロースチームです。そしてChamathは多くの社員をチームに呼び集めました。ちなみに彼はあちこちで私を解雇したいと言っていましたが。ですがChamathのいない会社になんて残る者はいないだろう、と私は思いました。私たちは変人の集まりでしたが、それでも上手くやっていました。

私たちが行った2つのことが初期の成長を加速させたのだと思います。

1つ目は14日間で10人の友人とつながることに注力したこと、2つ目はユーザーにマジックモーメントを提供したことです。「因果関係はあるか?」「相関関係はあるか?」と分析のことで頭が一杯になっていた私たちに対し、Zuckは「友人とつながることができなかったのにFacebookをやり続ける人間がいると本気で思っているのかい?みんなどうかしているんじゃないの?」と言ったのです。

国際化

次は国際化です。これでまた1つ壁を打ち破ることになります。国際化を始めた時、非常によくやったと思えることが2つあります。

1つは、Facebookの国際化は遅れていましたので、そのことに対してストレスを感じていたのは事実ですが、時間をかけてスケーラブルな方法で構築していったことです。スタートは出遅れましたが、迅速に動いたのです。詳しい話は講義ページ内の動画でNaomiが紹介しています。

私たちはサイトのすべての文字列を翻訳抽出スクリプトであるFBTに集め、コミュニティ翻訳プラットフォームを立ち上げました。こうして専門家に翻訳してもらうだけでなく、すべてのユーザーがサイトを翻訳できるようにしたのです。

フランス語の翻訳は12時間で完了しました。現在までにFacebookによるFacebookのための翻訳は104か国語に増え、そのうちの70言語はコミュニティで翻訳されています。このように時間をかけてスケーラブルなものを作り上げたのです。

もう1つのポイントは、言語に適切な優先順位を付けたことです。その当時の四大言語は、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語でした(中国語もありましたが、Facebookは現在中国では規制されています)。このリストは現在の言語分布です。イタリア語はもうリストに入っていません。フランス語とドイツ語はリストから脱落寸前です。昨年はFacebookでヒンディー語を使う人の数が4倍になりました。

世界の現状に合わせてモノ作りをしてしまうのはありがちな失敗で、他の多くのソーシャルネットワークが同じ間違いをしています。私たちは実際にすべての言語に対応可能なスケーラブルな翻訳インフラを作ったことで、今後どんな世界になろうと対応できる体制が整っています。インドで開かれたInternet.org summitの一部の映像でFacebookが目指す言語翻訳について理解することができると思います。

その他の戦術

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本日の講義でお話ししたい戦術は、バイラリティ、SEO、ESPN、SEM、アフィリエイト/紹介プログラムです。

バイラリティ(口コミ)

バイラリティは2つの観点から考えることができると思います。

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Adam L. Penenberg著『Viral Loop』は、バイラルマーケティングを通じて成長した多くの企業をケーススタディとして紹介している名著です。バイラルマーケティングや広告に興味がある方はぜひ読んでみて下さい。David Ogilvy著『Ogilvy on Advertising』も素晴らしい本だと思います。同書の第7章では、「もし何も思いつかなかったら、車を広告板に強力瞬間接着剤で貼り付ければその接着剤が売れる」と書いています。Ogilvyは実にユニークなヒントを与えてくれます。

それではバイラリティについてお話ししましょう。Sean Parkerは私がFacebookに入社した頃、プロダクトのバイラリティについて考える実に素晴らしいモデルを教えてくれました。それは3つの観点を基にしたものです。

ペイロード、コンバージョン率、頻度

1つ目はペイロード、つまり1回の拡散で何人のユーザーにヒットするかということ、2つ目はコンバージョン率、3つ目は頻度です。これがプロダクトのバイラリティを考える際の基本となります。

Hotmailは優れたバイラルマーケティングの典型ともいうべき例です。Hotmailがスタートした当時、資金を集め、旧来の広告に多額の資金を投じていたメール会社が沢山ありました。当時は無料のメールクライアントは存在せず、ユーザーはISP(インターネットサービスプロバイダ)しか選択肢がありませんでした。Hotmailとその他数社が設立され、それらのクライアントはどこからでもメールにアクセスすることができるようになりました。学校のインターネットや図書館のインターネット経由でログインし、自分のメールにアクセスできるようになったのです。

これは外部からのアクセスを望んでいた人々にとって、実に大きな価値がある提案でした。大半の企業がテレビや広告板、新聞を通じた大々的なキャンペーンを行っていたのに対し、Hotmailチームは資金的余裕がなかったため、やり方を工夫せざるを得ませんでした。そこで彼らは、すべてのメールの末尾に「Hotmailから送信。無料のメールはこちらから」という小さなリンクを追加しました。

興味深いのは、ペイロードは小さかったということです。誰かが誰かにメールを送っても、必ずしも大きなペイロードはありません。スパムメールを送ることはできるかもしれませんが、そのリンクがクリックされるとは思えません。しかし、同じ相手に何度もメールを送れば頻度は高くなります。日に1回、2回、3回と相手に接触することで、相手に強い印象を与えるのです。

人々はISPのメールに縛られることに嫌気がさしていたため、コンバージョン率も非常に高かったのです。こうして高い頻度と高いコンバージョン率を持っていたHotmailは非常にバイラルな存在となりました。

もう1つの例がPayPalです。買主と売主という2つの面を持つPayPalは興味深い例と言えます。そしてもう1つ興味深いのはそのバイラル成長のメカニズムがeBayにあることです。つまり、必ずしも明らかにバイラルとは見えないものでも多くのことをバイラリティに活用できるのです。売主に送金する旨伝えた場合、これ以上高いコンバージョン率は考えられないでしょう。頻度もペイロードも低いのですが、PayPalは友人を会員登録させたユーザーにキャッシュバックをし、これが消費者サイドのバイラルを起こしたのです。

PayPalは売主側に同じ事をする必要はありませんでした。なぜなら、先ほどお話ししたように、買主が「これで送金します」と言ったら、売主はそれを拒否することはないのですから。そして、消費者サイドでもバイラルが起きました。「これに登録すれば10ドルもらえるよ」と聞けば、みんな登録したくなるでしょう?PayPalがバイラルを起こしたのはペイロードや頻度が高かったからではなく、買主と売主サイド両方でコンバージョン率が高かったからなのです。よろしいでしょうか?

これは「このプロダクトにバイラリティがあるか?」と考える際に実に役立つ方法です。Facebookはメール共有やその他の方法ではなく、純粋な口コミによってバイラルになりました。PayPalとHotmailに関して興味深いのは、それらを利用するためには、サービスを利用していない人にまずメールを送らなければならないという点です。

Facebookは、サービスを利用していない人にコンタクトする独自の方法はありません。Facebookはバイラルマーケティングの成功例と思われていますが、実際にはそれで成長したわけではなく、口コミというバイラリティにより成長したのです。Facebookが友人に紹介したくなるような素晴らしいプロダクトだったからです。

Q.
第1段階でペイロードが低いということは分かります。後にキャンペーンが拡大し、より多くのメールが送られるようになった段階ではペイロードは高くなるのでしょうか?

A.
まず言いたいのは、人がメールを送る相手はさほど多くないと思います。アドレス帳を全部インポートして全員にメールを送る、あるいはFacebookでつながっている友人全員にメッセージを送るといった現代の大規模なバイラルエンジンと比較しますと、たとえ全員に高い頻度でメールを送るとしても実際のペイロードはやはり非常に小さいと言えます。さらに、メールが送信されて果たして何人の人が目にするだろうかという問題もあります。ですが、より多くの人がHotmailを使うようになればより多くのメールが送られ、より多くの人がメールを使うようになればプロダクトもより成長するというのは正しい見方だと思います。

Q.
コンバージョンポイントも重要でしょうか?

A.
Hotmailではクリックすれば会員登録できますが、広告板ではURLを覚えておき、ウェブサイトを見つけ、サイト内で情報を入力し、登録ボタンを探し、登録ボタンをクリックして会員登録してもらう必要があります。フローにおいて取り除ける摩擦はすべて取り除くことです。広告板からオンライン広告に切り替えることで、これまで煩雑だった登録フローが非常にスムーズになるのです。

Q.
頻度とコンバージョン率は関係していますか?

A.
勿論です。誰かに何度も同じメールやバナー広告を送ると、同じルールがあらゆるチャネルに適用されます。誰かに同じFacebook広告を送れば送るほど、その人はクリックしてくれなくなるでしょう。ですから、創造性を失ってしまわないように、Facebook内の創造性をローテーションさせる必要があるのです。

バナー広告やニュースフィードも同様です。ニュースフィードでIQに関する記事を50回も見れば、もはやクリックしたくなくなるでしょう。メールに関しても同様です。同じ招待メールを何度も送れば、コンバージョン率は低くなるでしょう。「同じメッセージを送れば送るほどコンバート率は下がる」というのがあらゆるオンラインマーケティングチャネルの基本です。

Kファクター

バイラリティについて考える2つ目の方法はEd Bakerから学んだもので、これも素晴らしい方法だと思います。Edは現在Uberのグロースチームを率いており、以前はFacebookのグロースチームにいました。Stanford大学でMBAを取得した彼は、このクラスと同じようなバイラリティやバイラルプロダクトについての授業を担当していました。

興味深いことは、Uberはドライバーを非常に重視していることです。双方向市場のため、ドライバーが不可欠なのです。世界最高レベルのバイラルの達人を起用していることからも、グロースチームがドライバーを非常に重要視していることが分かります。

バイラリティについて、自社サイトのユーザーにそのアドレス帳をインポートしてもらうとします。すると、「それらのうち何人がアドレス帳のインポートを送ってくれるか?」「何人に送ってくれるか?」「何人がクリックしてくれるか?」「何人が会員登録してくれるか?」、そして「それらのうち何人がインポートしてくれるか?」という問題が出てきます。

つまり、自分のサイトに会員登録してもらい、アドレス帳をインポートしてもらい、そのアドレス帳内の一部ではなく、できれば全員に招待メールを送ってもらい、それらの送信相手の何割かの人にクリックしてもらい会員登録してもらいます。

各ステップのあらゆるポイントで比率/数を増やせば、「Kファクターは何か?」という核心に至ることができます。

例えば、アドレス帳をインポートした人が100人に招待を送ったとします。そして、その10%がクリックし、50%が会員登録し、そのうち10~20%だけがインポートしたとします。この時、Kファクターは0.5から1.0となります。これはバイラルとは言えない数値です。例えばViddy等はストーリーを膨らませることに非常に長けていて、Kファクターは1を超えていました。これは不可能な数字ではありません。

しかし、最終段階でリテンションが高くなければ、その数字はあまり意味を成しません。招待フローを見直して、「インポートに相当するものは?」「インポートされたアドレス帳のうち何人に招待が送られたのか?」「それらのうち何人がクリックしたか?」「それらのうち何人が自社サイトにコンバートしたか?」「それらのうち何人がまたインポートしたか?」と考えてKファクターを導き出すのです。

しかし本当に重要なことは、バイラリティについてあれこれ考えるのではなく、リテンションについて考えることです。バイラリティについて考えるのは、会員登録した各人が多くの人に自社プロダクトを勧めてくれるようになってからでいいのです。

SEO

次にSEOとメール、SMS、プッシュ通知について簡単にお話しします。

SEOについては、考えるべきことが3つあります。1つ目は、キーワード研究です。皆いつもこれで失敗します。先ほどお話ししましたように、私はカクテルサイトを立ち上げ、その最適化に1年掛け、「カクテル作り」という言葉でランクインするようにしました。しかし、英国ではその言葉で検索する人はいませんでした。やがて、月に500回程度検索されるようになりました。

私はその検索を独占したわけです。すごいですよね?月の訪問者が400人になった時は驚きましたね。英国の人が検索していたのは「カクテルレシピ」で、米国では「ドリンクレシピ」でした。つまり、私は間違った言葉を最適化していたのです。自分が目指すものについて最初にリサーチをしておく必要があるのです。

リサーチでは、「自分のサイトに関係するどんな言葉で人々が検索をしているか?」「何人がその言葉を検索しているか?」「その言葉でランクインしている人は他に何人いるか?」「自分にとってどれだけの価値があるか?」を考える必要があります。供給、需要、そして価値です。キーワード研究を行い、どのキーワードでランクインさせるかを考えて下さい。世の中にはそれを手助けしてくれる優れたツールが沢山あります。率直に言いますと、一番良いのはやはりGoogleアドワーズのキーワードプランナーです。

これを終えたら、次に最も重要なことはリンクです。本質的にはページランクはSEOのすべてであり、Googleは信頼性に基づいています。最近ではGoogleのアルゴリズムには「自分のウェブサイトは検索されているか?」などいろいろあり、悪用やスパム行為があった場合に「これはスパムです」とポップアップされるようにするための自分のサイトに送られてくるアンカーテキストの分布を調べるものなど沢山揃っています。白い背景に白いテキストでビロウ・ザ・フォールドの5ページに書き込む手法はもはや通用しません。

しかし、Googleにランクインするために最も重要なことは、信頼性の高いウェブサイトからの価値あるリンクを確保することです。そして、内部で効果的にリンクさせることで、自社サイト内に浸透させる必要があります。

FacebookのSEOは2007年9月に始まりました。私がFacebookに入社したのは2007年11月でした。私たちがこれを始めた時、私たちが始めたパブリックユーザープロフィールのページからのトラフィックはありませんでした。

私が調べたところ、パブリックユーザープロフィールに入る唯一の方法は、ページのフッターの情報リンクをクリックし、ブログ記事をクリックし、筆者のいずれかをクリックし、その友人を端から端まで見て初めてそれらの友人すべてにたどり着くことができることが判明しました。

「これらのページは隠されている。これらは大きな価値があるものではない。検索結果にランクインしないようにしよう」とGoogleが認識していたことが分かりました。そこで、私たちはある変更を行いました。Googleがサイト内の各ページをすばやく見つけられるようディレクトリを追加したのです。これによりSEOトラフィックは100倍になりました。リンクに関する重要性をサイト内に浸透させることにより、非常にシンプルな変更で大きな改善が実現したのです。

最後に必要な要素は、XMLサイトマップや適切なヘッダーなどのテーブルステークです。これらはネット上で良くまとめられています。

メール

25歳未満の人にとってメールは過去のものになっていると私は思います。若者はメールの代わりに、WhatsAppやSMS、Snapchat、Facebookを使っています。彼らはメールを使いません。それより上の年齢層をターゲットにするのであれば、今でもメールはかなりの効果があります。

情報拡散ツールとして今でもメールは有効ですが、現実的には10代の若者にとってメールは良いツールではありません。大学生にしてもそうです。皆さんもインスタントメッセージングアプリを使う機会が多く、メールを使う頻度は少ないですよね。皆さんはシリコンバレーにいるので、メールに関しては最先端を行っているだろうと思います。

とはいえ、メールに関して考えておくべきことがあります。メールやSMS、プッシュ通知はすべて同じように作用するのです。これらはすべて、デリバラビリティ(送信したメールが相手に到達する可能性)という問題を抱えています。「優勝するには、まず完走しなければならない」のです。

メールは誰かの受信ボックスに届かなければなりません。つまり、大量のスパムメールを送っていかがわしいインターネットプロトコル(IP)とみなされてしまったり、他人がスパムメール送信に使用している共用サーバーからメールを送信したりしていると、皆さんが送るメールは目的を全く果たせないまま迷惑メールフォルダに入り続ける羽目になるでしょう。あるいは、メールがブロックされたり、戻ってきてしまうかもしれません。

メールについては、500番台エラーや400番台エラーなどのメール送信に使用しているサーバーからのフィードバックがあった際に確認すべきことが沢山あり、メールがどのように扱われているかに留意する必要があります。ハードバウンスが生じた場合は、1~2回再送信するだけにとどめて下さい。なぜなら、他人の受信ボックスを悪用していると見なされてしまったら、メール会社は皆さんをスパムメール送信者と判断し、そこから抜けだすのは非常に困難になるからです。

Spamhausのリンクなどに登録されてしまっても、そこから抜けだすのは非常に困難です。メールに関しては、長期的なデリバラビリティを実現させるためにも、品格ある市民として行動することが非常に重要となります。

これはプッシュ通知やSMSにとっても同様です。SMSに関しては、コンピュータにつながれた電話をずらりと並べてSMSを送信している人間がいる怪しいルートからSMSトラフィックを買うことができます。これは一定期間は上手くいきますが、必ず失敗に終わります。非常に多くの会社がこの手の戦術で成長できると思い込んで、こうした失敗を犯すのを私は見てきました。

メールやSMS、プッシュ通知を相手に届けられなければ、これらのツールで成功することはありません。パワーユーザーにメールを大量に送り、彼らに興味もない通知を送っていると、彼らは毎回受信拒否することが非常に難しくなります。そして、彼らがこちらからのメールをブロックし始め、プッシュ通知を拒否してきたら、もう彼らをプッシュすることはできません。一度オフにしたものを再びオンにしてもらうことは非常に困難なのです。

メールやSMS、プッシュ通知についてまず考えるべきことは、それらが相手に届くようにすることです。その先には開封率やクリック率、つまり「メールを開封してもらえるような目を引く件名は何か?」「メールを受信した相手にどうすればクリックしてもらえるか?」という問題があります。

誰もがマーケティングメールにフォーカスしていますが、私の意見ではこれは単なるスパムです。ニュースレターは無意味です。ニュースレターなんてものは送らないで下さい。なぜなら、ニュースレターはサイト内の全員に同じ内容のものを送るだけですから。自分のサイトに昨日登録した人と3年前からプロダクトを使ってくれている人に同じメッセージを送るべきでしょうか?答えはノーです。

通知としてのメール

皆さんができる最も効果的なメールは、通知です。

では何を送信しますか?相手に何を通知すべきでしょうか?ここが間違った思考に陥りがちなポイントです。Facebookユーザーであれば、「いいね!」してもらう度にFacebookからメールを受け取りたくありません。なぜなら、Facebookに多くの友人がいるので山ほどメールが届く羽目になるからです。

しかし、Facebookの新規ユーザーにとって、初めて「いいね!」してもらった瞬間はマジックモーメントとなります。すべてのチャネルで通知をオンにするとメールやSMS、プッシュ通知はどんどん増えていってしまいますが、サイトから離れていてエンゲージメントが低いユーザーにだけ通知をオンにすれば、迷惑がられることはありません。

このことについて考えることは非常に重要です。メールやSMS、プッシュ通知を送信する際にまず、どんな通知を送るべきか考えます。次に、トリガーベースマーケティングを駆使した優れたキャンペーンをどう生み出すかについて考える必要があります。

クリック率という観点では、eBayの初めての国境を越えた取引は、私が携わったもののうち最も優れたメールキャンペーンの1つでした。このキャンペーンは実にタイムリーでかつ内容が適切で、まさにユーザーにぴったりなものでした。

確実なデリバラビリティと、通知やトリガーベースのメール、SMS、プッシュ通知に注目することが大事です。

最後に

講義の最後に皆さんに紹介しておきたい言葉が1つあります。それはGeneral Pattonの私のお気に入りの言葉で、実にありきたりで馬鹿げていますが、素晴らしい言葉です。

「今日強引に実行する良い計画は、明日実行する完璧な計画に勝る」

Chamathが私たちに浸透させ、Markが今でもFacebook全体に浸透させているもう1つのことが、「迅速な行動が物事を動かす」ということです。人より多く実験し、必死で成長を求め、新規ユーザー獲得のために戦い、少しでもユーザーを増やすために遅くまで仕事をし、実験を繰り返し、データを集め、それを何度も何度も繰り返していれば、人より早く成長できるでしょう。

Markはかつて、Facebookが成功したのは、私たちがそれを強く求めてきたからだと言いました。私もそう思います。私たちは実に懸命に働きました。ものすごく優秀だったわけでもなく、不可能を可能にしてきたわけでもありません。ただひたすら一生懸命働き、すばやく実行したのです。皆さんもそうすることを強くお勧めします。成長はあなたの意思次第なのです。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Lecture 6: Growth (2014)

 

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