会社設立と資金調達に関するヒント (Y Combinator)

Startup School Radioから、会社設立や資金調達の基本について、1時間程度のポッドキャストでお届けしていきます。

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番組の司会はAaron Harris、ゲストはY Combinatorのパートナーである3人です。YCの最高財務責任者であるKirsty Nathoo、そしてYCの顧問であるCarolynn LevyとJon Levyです。スタートアップを設立する際や、アーリーの段階で資金調達ラウンドを募る際に、創業者が知っておくべき財政・法上の基礎重要事項についてお話していきます。

以下、会話の一部を文字に起こし、編集を加えたものとなります。

見通しを立てる

Aaron
まずは、Kirstyからお話を伺いましょう。共同創業者である2人が何かを始めようとしている時に、基本となる必要条件のようなものはありますか? また、初めに文書化しておくべき事などはありますか?

Kirsty
重要なのは、お互いにコミュニケーションをよく取ることです。創業チームが2人だったり創業者が2人の場合、同じ目標を共有できているか、同じ結果を追求しているか、というのを確認することが必要です。もし一方が「パブリックカンパニーに持っていきたい」と言っていて、もう片方が「6か月やったら、100万ドルか何かで売りたい」と言っているようであれば、それはかなりの意見の相違でしょう。このように、創業者同士が会社の計画や戦略に同意していなければ、将来的に問題が起こる可能性が高くなります。

ですので、結局は単純にコミュニケーションを取ったり、明確にしたり、見通しを立てておくことが大事だと思います。各々が、どれだけの時間を費やしたいと思っているかの希望も設定すべきです。スタートアップした会社に四六時中従事することを厭わない人もいれば、家族を持っているからそうでない人や、他に注力しなければならいものがある人もいます。なので繰り返しになりますが、一人に四六時中仕事をする意思があっても、もう一人が「私にとっては9時5時のお仕事だ」と言うのであれば、事前に理解し合っておくことが必要です。そうでないと、将来的に問題が起きます。

共同創業者同士が上手くいかず、互いのコミュニケーションも儘ならない状態というのは、会社が成長するにつれて会社全体に広がっていきます。従業員も、どちらに付いていくべきか分からなくなります。このようなことは、会社にとって問題となってきます。

Aaron
Kirstyが言っているのは、本当に大事なことだと思います。必ずしも文書に落とす必要はない、という考え方ですよね? 書面に記すのはそれほど重要ではなく、コミュニケーションを取ることが一番大事だと。

特に初めは、です。これは正しいと思います。どんな関係性においても共通ですが、コミュニケーションを基盤として持っていなければ、問題はどんどん出てきます。そうですよね? 一歩進むたびに問題に当たることになります。

Kirsty
はい。そして、ご存知のように、スタートアップはプレッシャーのかかる環境にいます。どんな小さなことでも、問題の引き金となります。全員がプレッシャーに晒されているので、初めはほんの小さなことや小さな疑念であっても、それが成長に成長を重ねて大きくなってしまいます。なので、全員の共通認識がとても重要となります。例として、会社の戦略、会社に求めるもの、エクイティの分割、そしてこれら基本事項をどのように機能させていくか、などが該当します。

綺麗にスタートを切る

Aaron
今挙がった内容の中で、いつも問題になりがちなものがあるため、ピックアップしてみたいと思います。応募内容の中で、非常に深く見る内容の一つです。エクイティの分割をどう決めているか、私たちは知りたいと思っています。別に、特定の方法であるべきというものは、私たちでは設けていません。しかし、アーリーステージの会社である場合は特に、半々に限りなく近いシェアを行っている会社を通常では好ましく思います。

JonとCarolynnに少し話を聞いてみましょう。エクイティの分割をどのように設定するか考える時というのは、口約束で決めていいのでしょうか? 文書化しておくべきでしょうか? エクイティの分割方法が決まった段階で、書面化すべきなのか、それとも単に「そしたら、Carolynn。こうしよう。君が50を取って、私も50を取る。いや、メールにしておく必要なんてないよ。じゃあ、これで行こう」のような感じであるべきなのでしょうか。

Carolynn
それは、実際に会社を設立するための設計図をどう描いているかに依りますね。創業者同士で書面にする必要はないと思います。それよりも、両者のゴーが出て、2人が決行を決めたのであれば、まずは自分達で会社を設立して、互いに話し合って同意した配分で株式をすぐに買うことが先決だと考えます。

Aaron
一度ここで切らせて頂きます。今の話には、深堀すべき重要な内容がたくさん含まれています。それも、みんなが見落としがちな内容です。

まずは、ゴーを出すという段階について。そうですよね? 本当に、これに時間を費やすというのを決めるということです。ここでは、Kirstyが言ったような共同創業者同士のコミュニケーションが取れていて、望みや目標については話し合っていると仮定します。会社を設立するのに、時期尚早と言える段階というのはありますか?

Carolynn
Kirstyの話の時に、実はそれについて考えていました。これは、創業者が考えなければならない重要なことの1つだと思います。YCでは大きな問題になったことがないので、ほとんどの人が既に知っているとは思いますが、こういった創業者の人たちは他の会社で既に仕事を持っています。その場合は、二択があります。まずは、会社の設立に向けて働き始める前に今の仕事を辞めるという選択。あるいは、共同創業者同士が二人とも他の仕事を持っていて、既に一緒にアイデアに取り組み始めているのであれば、会社設立に当たって今の会社の雇用者の時間や材料を使わないよう意識する必要があります。

Aaron
テレビ番組「Silicon Valley」でもそんなことが起こりませんでしたか? そうですよね? それが主題になっていたように思います。

Carolynn
私たちがここで話すことは、おそらく番組でも何らかの形で触れられていると思います。会社設立が早すぎるかどうかは、「よし。今の仕事を辞めよう。これからは、この会社に全ての時間を費やそう」と創業者たちが決意できるかに依ると思います。そして、そのように決意できたのであれば、そのまま進んで退職すればよいと思います。フルタイムで設立を進めていけます。

会社を設立しない理由、というのはないと思います。そして、これについては先程仰ったように少し深堀できそうです。「設立にはお金が掛かりそうだし、行動を起こすのに早すぎるのであれば今お金を掛ける価値はないのでは?」と疑問に思う人々もいるでしょう。

Aaron
1つ伺いたいのは、現在の雇用者の時間やお金を使わずに事を進めるという考えについてです。実際に会社を始めたいと思っている人々の多くに関係があると思います。雇用契約を結ぶ時に、全員が発明譲渡契約を交わします。少なくとも、昨今のシリコンバレーやテクノロジー企業のほとんではそうです。私がGoogleの社員だったとして、「とても素晴らしいアイデアが浮かんだので、Googleを辞めよう。早速、アイデアを実現させたいな」と考えているとします。スタートアップで実現したものが何であれ、Googleがそのアイデアの所有者でないことを明確にするには、どうすればよいでしょう?

Carolynn
はい。なので、Googleの設備は絶対に使用しないことです。Googleから、ノートパソコンや電話、他にも仕事を進めるための様々な機器を支給されているかもしれません。それらは使わず、自身で購入した材料や機器、電子機器類を使用する必要があります。

Aaron
分かりました。つまり、会社ノートパソコンは自分のものではない。そのパソコンでコーディングをしたり、他のどんな作業も行ってはいけないということですね。

Carolynn
まさに、その通りです。

Jon
勤務中に自分の作業をするのもダメです。Googleで仕事をしている間は、新しいスタートアップの作業をしてはいけません。これは、州ごとに異なってきます。カリフォルニア州では、勤務時間外に思いついた発明でも、強い保護がなされます。例えば、Googleで働いているとしましょう。真夜中に、がんを治す夢を見るとします。これは、あくまで極端な例です。夢の中身がGoogleによって所有されないと願い、そして...

Aaron
ちなみに、雇用契約は読んでください。おそらく…

Jon
カリフォルニアでは、法律によって会社が実現できる研究開発について定めていて、それがGoogleにはまると非常に興味深いです。今はがんの治療という例を使っていますが、Googleは実際にどんなことにも取り組んでいます。全知識をインターネット上で所有、作成、維持しようとしていて、企業理念が何であれ、幅広く活動しています。ここで言いたいのは、全て今の会社と分けておくべき、ということです。

Aaron
そして、もし仕事中にがんの治療法について空想にふけていたのならば…[笑い]

Carolynn
それはGoogleの所有物です。

Aaron
それはGoogleの所有物です。

Carolynn
全て、Googleが所有しています。

Aaron
ここで核心となるのは、分離させておくことです。なので、もしまだ会社で働いているとするのなら...

Jon
全てを分けておくこと。

Aaron
…資金調達を行う必要はありますが、それは自身の時間に自身の家で行うようにしてください。職場でもなく、勤務時間の20%の時間を割いてでもなく、です。

Jon
その通りです。

法人化する(シンプルに保ちながら)

Aaron
さて、共同創業者の二人共がこれに取り組もうと決断を下したとします。前進することを決めています。この時点で、会社を設立するべきですか?

Carolynn
そうすべき、と思います。

Aaron
しかし、それは物凄く大変ではありませんか? YCで発信しているアドバイスは、コードを書くこと、そしてユーザーと話すことの2つだけです。なぜ会社を設立する必要があるのでしょう?

Jon
YCでは、会社の設立と法人化を同じように見せることをしています。大量生産的にそれを目指しています。すべての会社で、私たちの基本文書や標準文書を使ってもらうことを望んでいます。

Aaron
これらは全世界に向けて公開している文書ですよね?

Jon
全世界に公開しています。Clerky.comから見ることができます。とても簡単な手順を踏むだけで、会社の法人化を行うことができます。実際、会社を設立するのにお金はあまり掛かりません。デラウェア州のホームページに行けば、1日で会社を設立することだってできます。かかる時間は24時間、費用は200か300ドル辺りだと思います。なので、大金はかかりません。

Aaron
多くの人は、とても驚くのではと思います。会社を設立したことのない人達は、「どうしよう、弁護士を雇わなきゃ。それには数週間はかかるし、事務処理も、あれもこれも必要」と考えるのではないでしょうか。実際には、とある一日の午後だけで済みます。ホームページ上で数回クリックして。デラウェア州へのクレジットカード支払いを済ませて。

Carolynn
はい。そのような神話が続く理由として、今まではそれほど簡単ではなかったということが多分挙げられます。しかし、こういうプラットフォームが伸びてきている様子を見ると、シリコンバレーの生態系の外にも、手続きを大幅に単純化するようなプラットフォームを利用している企業はあります。そういうサービスの一例として、LegalZoomなどもここで挙げておきます。10年前とは全く違ってきています。会社の設立に進まない理由はありません。

Kirsty
LegalZoomは気を付けて使うべきだと思います。手続きが宙ぶらりんのままで放置される傾向があるので、必要な事務処理が全て終わらないことがあります。ですので、自分で会社を設立する場合は、必要な事務処理を自分で理解する必要があります。実際は、デラウェア州への書類提出だけでは不十分です。LegalZoomを使えば、この手順だけであればすぐ出来ます。

なので、このような企業と協働する時に直面する問題の1つとして、その企業で実行済みの作業、未済の作業を摘み取っていかなければならないことが挙げられます。弁護士を雇うことなく、また弁護士費用を支払うことなく手続きを進められるという点で、LegalZoomは素晴らしいサービスです。しかし、欠陥もあります。Clerkyでは手続きのプロセスをより深く理解しているため、そのような宙ぶらりんの状態にはなりません。

Jon
はい。たとえば、創業者が株主になるためには株式を購入しなければならないといった細かな事項もあります。

Aaron
それは、どういう事ですか? 「株の話ですよね。これは自分の会社で、自分で設立したものです。だから株も全て私のもの」そう考えると思います。なぜ自分で買う必要があるのでしょうか?

Carolynn
暫定的なステップについてお話しましょう。法人を設立した直後に「設立証明書です」と言ってデラウェア州に提出すると、その会社はデラウェア州では公式になります。次に、発起人による決議を行います。そして、発起人による決議にて取締役会の任命も行う必要があります。よって、証明書の署名者である発起人が取締役を任命します。取締役会ができたら、次は自分自身に株式を発行します。株主のいない企業は誰にも所有されていない状況となり、企業には所有権が必要だからです。

Aaron
しかし、なぜ自身で株式を買う必要があるのでしょう。勝手に与えられるものではないのですか?

Carolynn
デラウェアには額面株と呼ばれる概念があり、任意の値とすることができるからです。そして、多くの人が気づいているように、ほとんどの場合は途方もなく低い値です。1ペニーの1000分の1程度です。よって、株式については考慮が必要です。しかし、誰も考慮事項が何であるかを疑問視しません。これは大きな注釈事項になるかと思いますが、最初に支払うのは...ほんの数セントで、最初に発行された株式を所有することができます。これは単に求められていることであって、法定で決められたことです。

株式の数についてでは全くありません。それよりも、何を所有しているかが大事です。したがって、所有株数は100株かもしれないし、1,000万株かもしれません。シリコンバレーでは、より大きな株数で低い価格のものを支持する傾向があります。

エクイティの分配は公平に

Aaron
株式に関して言えば、スタートアップが直面する大きな問題の1つとして、早期のエクイティをどう分割するかというのが挙げられます。インターネットを探せば、何に対してどのくらいのエクイティを貰えるかを複雑な計算式で算出するようなものは五万と出回っていると思います。創業者間の配分の公平性について、どう考えますか? 会社からの視点と成功という視点から見て、最も良い配分は何でしょうか?

Kirsty
私たちが資金の調達先を探すとき、エクイティの配分構造を参考にしますが、傾向的には均等配分されている会社を探します。正確に均等である必要はありませんが、それにかなり近いものを見ます。創業者の1人がエクイティを90%所有し、もう1人が10%である状況があると、それはいくつかの理由で警戒に値する状況だと思います。その問題の1つとして挙げられるのは、自分達で完全に熟考していないということです。

90%を所有する方の創業者からよく耳にするのは、「僕は既に3か月間、これに取り組んでいます。最初のプロトタイプをコーディングしたのも僕です。この共同創業者を連れてきたのも僕です。なので、エクイティは全て僕が受け取るべきなのです。そもそも、僕のアイデアですし」という言い分です。

Aaron
それでは、「このアイデアを思い付いたのは僕。僕は天才なのだから、会社の80%を貰うべきだ。しかも、最初の15,000ドルの資金を調達したのも僕だし、5,000ドルは自費で払った。だから会社の90%を貰うのは当然」この言い分は間違いなのでしょうか?

Kirsty
間違いと言える理由はいくつかあります。まず最大の理由として、3か月というのは会社全体のスパンで捉えると、ほんのわずかな期間であることが挙げられます。会社が成功して、IPOとするのであれば、10年、15年、20年もの間、この会社で働くことになります。なので、3か月はほんの一部なのです。また、多くの企業の場合、最初に浮かんだアイデアでそのまま進むことはありません。実際の製品市場に適合したものに変化していきます。

なので、アイデアを思いついたのは確かかもしれませんが、必要な作業は膨大にありますし、それらをアイデアに組み込んでいかなければなりません。そこで、先程のコミュニケーションやチームの話に戻ってきます。自分が共同創業者として平等な立場にいて、発言権を平等に持つべきと感じるのであれば、それを反映させるべきです。そこで、もし創業者の1人が会社の種植えの段階で自身で出資していた場合、1-2%上乗せするか、追加で株をいくつか与えればよいのです。

ただ、バランスが大幅に偏っている場合というのは、私たちの経験では上手くいったことがありません。みんながストレスの下にいて、みんなが長時間労働をしている環境なので、恨みの感情を増長させる要因にもなります。そして、創業者の1人が株価上昇で大きな利益を得られる可能性があっても、もう片方はそうではないので、「これやってる価値あるのかな?」と疑問を持ち始めてしまいます。

Aaron
スタートアップのアーリーステージで発行される株式のほとんどは何の価値もなく、時間が経っても価値がないままです。そんな中で、株価上昇での利益を得るというのは、いつ考えても難しい内容に思えます。そして、会社が成功するという空想的なシナリオにおいて、誰がより多くのお金を得るのかを評価するのは、とても困難なことです。

会社の価値が1000億ドルなのであれば、10%でも十分なお金ではあります。しかし、創業者という同じ立場であるとは感じないでしょう。そうですよね? 2人とも10年間取り組んでいて、自分は単にジュニアパートナーであるけれど、全部自分がやったと感じているような場合なんかは、最悪な状況です。そして、仰っているように、コミュニケーションが足りていなければ、それも相まって会社が下す決断全てに影響してきます。

Kirsty
ええ、本当にそうです。全てに影響を及ぼすようになります。それがきっかけで起こる問題というのは、たくさんあります。本当に、コミュニケーションを取るべきという所に話は戻ってきます。創業チームが全員ハッピーである必要があります。全員が公正だと感じていなければなりません。そして、全員が血と汗と涙を会社のために喜んで流す気持ちを持っている必要があります。

Aaron
私が面接をしている中で面白いと感じる瞬間がありまして、そのような90-10の極端な分配をしている共同創業チームが来ます。そして、その人たちに「これだけ伝えておきますが、分配方法について話し合ったのであれば、こちらそれで問題ありません。しかし、私たちの経験ではこっちがより一般的です」と言います。すると、分配が少ない創業者の目の奥が「まさか、そんなこと知らなかった」とでも言うように光るのが分かります。

なので、そういう状況を通じて誰かに教えてあげたり、上手くいけばその会社のより良い状況を作り出したりできて、その後創業者同士で話し合うことにも繋がるかもしれません。これは、素晴らしいことです。こういうメッセージこそが、私たちが発信したいものです。こうならなければならない、という訳ではありませんが。そうですよね? 必ずしも、均等に分配する必要はありません。しかし、そうでない場合は、理由ががあって、両方の当事者によって同意がなされ、コミュニケーションが取られている状態でなければなりません。ある考えによって強制されるのではなく...

Carolynn
後は、10%を持つ創業者がそのことを正当化し始めて、90%を持つ方の創業者は無言という状況もたまにあります。これって、ストックホルム症候群を見ているような感じでしょう? その人たちは、「まあ、アイデアを思い付いたのは私ではないし、いわゆる学歴もないので」と言うのです。他にも言い訳は色々あります。そこで、こちら側としては「ああ、この人達はこの件について話し合っていないな」と思う訳です。

守るために権利確定を

Aaron
エンティティの配分をどうするか、各々が何%取るのかを決めたら、今度は株式のシェアをどう分配していくかの構成はどのようにして決めるのでしょう? 前もって受け取るのでしょうか? 「ということで、私の会社の配分は50%。だから会社設立1日目に早速50%をゲット」という感じなのでしょうか?

Carolynn
ほとんどの場合、「制限付株式購入契約」と呼ばれる方法で購入していきます。創業者間で配分を決定してから、購入を行います。そして、重要な法的事項を多く含む契約を経ての購入となりますが、そこで最も大事なのは権利確定です。権利確定は、株式を購入することで成り立ちます。それらの株式は自身が所有しています。議決権も有しています。しかし、それらは株式の没収と呼ばれるものの対象となります。つまり、株式の権利確定を行う前に前に会社を辞めたり、解雇された場合は、会社がその株式を取り返すことができます。

Aaron
これは精通している人間でない限り、かなり奇妙に感じるかもしれません。自分が実際には所有している物を、会社が取り返すことができます。お金を支払っていたとしても、完全には所有権を持てません。

Jon
Kirstyが先程言っていたように、創業者同士のコミュニケーションや連携が必要となります。権利確定は、ある意味、会社を正しい方法で興し、正しい方向に進めるための重要な要素となります。会社の50%を所有している人物が、数か月で辞めてしまったとしたら、会社の前進に支障がでます。会社の立場はとても悪くなります。ですから、権利確定というのは一見して不公平に見えますが、先程私たち...CarolynnやKirsty...が言っていたように、長期戦であることを踏まえると重要なことです。会社は一朝一夕では立ち上がりません。アイデアだけでも駄目です。遂行するのが重要なのであり、権利確定はそのための将来への鍵となります。

Aaron
会社を法人化する時に、人々が見逃していると感じる重要なことの一つは、これによって会社が守られるということです。これは、会社の利益と長期的な成功のために必要なことです。必ずしも、個々の創業者の個々の利益が重要という訳ではありません。

そして、創業者が会社の50%を持って辞めることが悪い理由...理論的にはその創業者にとっては良いことかもしれません...しかし、会社としては投資家や未来の社員に発行できる株が無くなります。この人達に所有感や長期的に見ての株価上昇を与えることができなくなり、会社の成長を妨げることになります。そして、無の50%は皆無であることを、創業者は認識する必要があります。

Carolynn
また、この考えについて警告したいと思います…「創業者が50%を持って辞めていったら、残る創業者である自分だけに、更に何百ドルという単位で分配しよう」と考えている人もいるでしょう。残念ながら、簡単に聞こえますが、そう上手くはいきません。それには複雑な法的理由がありますが、ここでは、単純にそう簡単ではないという事だけお伝えしておきます。なので、万一の頼みの綱にはなりません。権利確定をしない正当な理由にはなりません。

もしかすると、残された創業者にとって問題なのは希釈される分配額ではないかもしれません。会社に価値を与えていながらも、額面価格でその株を手に入れることはもうできないということの方が大きいかもしれません。それには公正な市場価値を支払う必要があります。そして、それはかなり高額になってきます。残りの創業者がそんなお金を持っていますでしょうか? 確かに、回避策などはあります。しかし、どれも複雑な方法なので、お勧めはしません。

Jon
はい。他にも問題はあります。Y Combinatorで働いている中で、大きな変化が見られた時期がありました。それは映画ソーシャル・ネットワークの公開をきっかけに、創業者から普通は見ないような設立文書の変更依頼が来るようになった時でした。映画を見て、創業者が自分の管理下に置き続けられるよう、10-1の権利確定や特殊な操作を求めていました。これはいいことです。私たちも、会社を創業者の管理下に置きたいと思っています。しかし、先程の話でも示唆したように、私たちが標準設立文書を作っているのはこの方法が一番だからです。

そのため、変更をかけて複雑化すると、将来の投資家が文書を深く読むことになるため詳細調査が長引くなど、意図しない結果を招きます。また、資金調達の際に質問されることになります。そうなると簡単にはいきません。他の理由もあります。たとえば、株式を追加購入すると価格が異なってきます。これらを標準的な文書、つまり標準形式文書にまとめたのは、時間につれてこれが会社を進めるのに最善であることに気づいたからです。

LLC 対 Sコーポレーション 対 Cコーポレーション

Aaron
次の話題に移る前に、設立をする際にどの形態の会社とし、どの場所で設立するのがよいのかについて話したいと思います。先程から、デラウェア州を一般的な例として挙げてきました。しかし、私自身が自分の会社を設立したとき、「LLCにしたいのか、Cコーポレーションにしたいのか、はたまたSコーポレーションにしたいのか」に迷いました。これらが何を意味するのかさえ知りませんでしたが、自分でどうしたいかを把握していない限り、企業弁護士と話すと「LLCですね。一番いいですよ、税金も、あれもこれも」となります。簡単そうに、そしてとても良いように思えます。私たちはニューヨークにいましたが、「ニューヨークで興そう」と言ったのは、そこだと税金や色々な面で良かったからです。

私たちが、どの企業に対してもデラウェア州のCコーポレーションを勧める理由は何なのでしょうか?

Carolynn
LLCとコーポレーションのどちらかで迷っている時、創業者が身の回りの家族や弁護士や友人から「LLCこそが税金対策的にみて一番良い方法だ」とアドバイスを貰うことがあるかもしれません。そのアドバイスは、本当かもしれません。特定の州でライフスタイルビジネスをするつもりで、大きくしていかないつもりなら、確かに最適なエンティティではあります。

しかし、成功させようと考えているとして...その成功というのが、ベンチャーキャピタルを抱える大企業になって、外部資金を全て獲得するということを意味するのであれば...LLCが正しい形式とは言えません。なので、LLCにすると確かに税金は最小限に抑えられますが、会社の成功に寄与する訳ではありません。このように外部投資を得られる企業になるためには、Cコーポレーションである必要があります。もちろん、LLCでも外部投資を受けることはできます。

しかし、成長するような、ベンチャーキャピタルから支援を受けられるような企業はCコーポレーションとなっています。私たちがデラウェアを選んだ理由は...どの州で設立しても問題はないのですが。どこの弁護士、企業弁護士であっても、ほとんどの場合でデラウェア州を既定としています。これは、公開企業にとってデラウェア州のがはるかに有利であり...強い判例法が存在するためで...デラウェアの衡平法裁判所は、判例法によって法定や受託者の義務を決めていて、このようなことは公開企業にとって重要となっています。

デラウェア州の法律は非常に多くの企業弁護士によく知られているので、民間企業にもすぐ広まります。理解するのが簡単ですし、デラウェア州に行けば間違いありません。また、そこで設立すると管理が非常にしやすいです。全てが迅速に動きますし、簡単で安価に進むようになっています。

Aaron
この話の最後に言いたいのは、この通りにすると本当に楽に感じるということです。Jonが話していた標準化について言うと、この標準の手順通りに進めていくだけで、それを変に巧妙に変えようとしなければ、上手くいきます。会社を始める時にかける努力や構想、そして発明の労力を正しい方向に使うことができるようになります。それは、会社が何をしたいのか、ということです。会社の作り方や自分でしなければいけないこと、ではありません。

最近、会社が設立をひどく失敗したケースを扱っていました。具体的なことは、もちろんここでは言及しませんが。資金調達のラウンドをもう一回行う羽目になり、本当に悪い状況になっていました。ここにいる皆、このように失敗した悪い状況を数多く見てきたかと思います。この状況は、創業者に打撃を与えかねません。ありがたいことに、この場合そのようなことはありませんでした。しかし、正しく実行していかないと、非常に頭を悩ませることになり、膨大な額を支払わなければならない状況にも追い込まれます。よって、標準の形式で進めていくのが一番です。

資本政策表の管理

Aaron
次に、主に弁護士との接触が出てくる大事な部分に移りたいと思います。ここでは、資金調達がとても重要になってきます。「資本政策表とは?」について考えてみましょう。

まずKirstyに伺います。「資本政策表」という用語は全員が知っているように思えますが、先週の「The Economist」によると、この文書について考えるようになったのは実は最近だと書かれていました。そして、誰が何を所有しているのかを把握するのは重要です。スタートアップが持っている資本政策表とはどんな物で、なぜ重要なのでしょうか?

Kirsty
最も単純な形態だと、資本政策表は会社の所有権を分割するだけのものです。アーリーの頃は、共同創業者である2-3人の間での話でしょう。しかし、社員が増え始めたり、株を購入してくれる投資家が出始めたりしたら、それらを管理して会社の方向や所有権を明確にしておけるような簡単な方法が必要となります。

単純に、人物一覧を作って、各々が所有する株式の数、そしてその会社の何%を保持しているかを把握していきます。予約権を社員に発行するようになると、さらに複雑になります。しかも、そこで社員が辞めたらその予約権はどうなるのでしょうか? 予約権を行使するのであれば、その情報を全て追跡しておく必要があります。そのため、あっという間にとても複雑になってきます。しかし、基本となるのは、誰が会社の株式を所有しているかを把握しておくことです。

Aaron
株式を所有している人が多すぎると起こることは何でしょうか? 資本政策表を制御不可能となり、理由を把握できない場合、どのような悪いことが待ち受けているのでしょうか?

Kirsty
会社の所有者が分からないのであれば、おそらくもっと大きな問題があると思います。しかし、このようなことはストレス負荷がとても多い時期に重要となってきます。ですので、エクイティラウンドを行う場合、株主が誰であるかを知っておくことが重要になります。ベンチャーキャピタルから資金を集めていて、会社の株を所有している全ての人の署名が必要となる場合などです。

簡単なリストも作っておらず、誰が株主か分からなければ署名に回ることは困難です。最終的には机をごった返して、その人たちとの契約を探したり、再度作成する羽目になります。考えるべきことは他にもたくさんあるため、この時点でそのような事はしていられません。衛生問題的なところと共通しますが、こういうものは最初から作成しておいて管理しておけば、問題になることはありません。しかし、作っていない場合は大きな問題となります。

Aaron
はい。それでは、次に資本政策表がとても複雑になりがちなタイミングについてお話していきます。それは通常…社員への株式の発行を開始する時ですが、スタートアップに多いのは資金調達を始めるタイミングです。そうですよね? 突然、外部関係者...ベンチャーキャピタルであれ、エンジェル投資家であれ...が資本政策表に現れる時です。会社が行う初めての資金調達は、通常どんなものでしょうか?

Kirsty
資金調達の種類ということでしょうか。

Aaron
資金は誰からのもので、実際にどうやってお金が渡されるのでしょうか?

Kirsty
実のところ、プライスドエクイティラウンドでは行われません。そのため、会社にお金を投入している人がすぐに株式を得ることはありません。そして、使われるのはSAFEやConvertible Noteなどです。つまりは、投資家が今の段階では資金を投入して、将来的に株式に変換する意味でそのようにしています。したがって、現段階で株主ではなくても、資本政策表の話に戻りますが、何が起こっているのかを把握しておく必要があります。そして、資金を投入している人々のリストを持っておかなければなりません。

お金を受け取る時、それらの人々がどれだけの投資金を株式に変換しようとしているのか、実際に株式を受け取る時期で考えておく必要があります。その時点で会社の50%を寄付するとなると、創業者である自分の会社の所有権が急に減るからです。大幅な減少になります。なので、このことを理解しておく必要があります。

なぜなら、アーリーステージであまりにも多くを配分してしまった状態で、一般的に「シリーズA」と呼ばれる次のラウンドに行くとします。このラウンドは、投資家が実際に株式を購入するプライスドラウンドであり、彼らは会社の所有割合を増やしたいと思うでしょう。そうすると、気が付いた時には創業者の会社所有率が1桁なんてこともあります。繰り返しになりますが、このような状況は創設者のインセンティブを削っていきます。つまり、状況を理解することが大事となります。そして、どのくらいのお金をどのような条件で取っているか、今後何が起こり得るのかも理解しておく必要があります。

Aaron
こういった色々な時点で起こることについて話す中で思ったのは、資金調達の最初のラウンドは必ずしも株式のプライスドラウンドではないということです。投資を考えている人のほとんどは、「株式市場から株式を買いに行こう。それは単にエクイティで、価格はもう分かってる」と思うでしょう。あるいは、会社に投資するのであれば、知っているべきではないでしょうか? 資金調達の際、何故エクイティは好まれないのでしょうか?

Carolynn
それには2つの理由があります。スタートアップは、株式を価格設定していないこのような転換可能なラウンドを好む傾向があると思います。なぜなら、その方が資金調達がスピーディーに進み、気が散らないからです。私はこれまでの経歴を通して、プライスドラウンドの引き上げがよりシンプルかつ合理化されてくるのを見てきましたが、それでも、会社に価格を設定している外部投資家は、会社を評価しています。そして、その評価に到達するためにも詳細調査を行います。

その詳細調査は法的内容にも及びます。実際には、契約内容や体制を見ています。これは全てプロセスの一部です。そして、企業の弁護士と投資家の弁護士の間で作成する財務書類があります。これはほとんどの場合、交渉を通じて作成されます。時間のかかるプロセスです。

会社が150万ドル以上調達できた時点で、プライスドラウンドを行うのが適切でしょう。しかし、自力で行っていく計画を立てていて、特定のマイルストーンを取りたいと考えている企業、投資家からの詳細調査や価格設定に時間をかけたくない企業にとって、このようなConvertible Noteは、私たちがシードマネーと呼ぶものを得るためのとても良い方法となっています。シードマネーを会社に入れて、プライスドラウンドが発生したときに、これらが後で変換されます。

Aaron
ここで面白いのは、3人が繰り返し強調している、標準化されたシステムによって物事を迅速かつ簡単にするという考えに回り回って戻るということです。ここで、おそらく投資家としては、「こちらで詳細調査を行えた方が良い。価格設定もできた方が良い。投資について時間をかけて考えたい」と感じるでしょう。一方で創業者は「いや、お金は今必要だ」と思っているでしょう。

創業者にとって、その段階で最も大切にしたいのは、実はお金ではなく、時間だからです。自分達が死ぬまでに残された時間を大事に考えています。そして利用者をハッピーにさせ、製品に満足してもらうためにかかる時間です。ですから、これらは創業者に大きなイニシアチブとなる助け舟になっています。 YCでは、ここにいる3人のお陰もあり、これらのConvertible NoteやSAFEを「会社の初期段階で投資を行うための創業者にとって簡単な方法」として押してこれたのだと思います。これを使えば速くて、簡単です。これによって、スタートアップは会社の構築という、本来すべきことに戻れます。

Jon
まさにその通りです。スタートアップの評価を行うことは非常に難しいと思います。非常にアーリーな段階で心を合わせるのはとても難しいことです。そこに標準化された文書があることで、かなり楽になります。そして、これらのConvertible NoteやSAFEは、創業者がビジネスに焦点を当てることができるようになります。大きな視点で見れば、それこそが大事なことです。ここまで、標準文書について、難しい権利確定について、そしてこのような手順に時間を浪費してしまい、会社自体の作業ができなくなることが大きな間違いであることについてお話してきました。

私たちは、シリーズAや資金調達の段階で、企業が突然足踏み状態に陥る様子を見てきました。そして、これは重大なエラーです。Y Combinatorではいつもユーザーと話すよう勧めています。自分の会社の内容に集中してください。コードを書いてください。健康のために運動をしてください。頑張り過ぎて気が狂わないよう、気を付けてください。これらこそが、重要なことです。「さて、ユーザーを獲得し始めたらすぐにシリーズAの文書の交渉をしましょう」となるべきではありません。それは、企業の分岐点のような重要な時期まで取っておくべきです。法的文書に足を掬われて前に進めないなんていう状況は、もはや犯罪とでも言いましょう。

Aaron
早くやって、終わらせて、さっさと会社の本質に注意を向けるようにしましょう。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Tips on Formation and Fundraising (2016)

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