スタートアップのための法律と会計の基礎 (Startup School 2014 #18)

 

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Sam Altman

KirstyとCarolynnにはスタートアップにおけるファイナンスと法務の仕組みについて話をしてもらいます。ものすごくワクワクするテーマではないことは確かですが、今日の講義でこれをしっかりと学んでおけば、致命的な問題を回避することができるかもしれません。

本日はお越しいただきありがとうございます。

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Carolynn
今Samが言ったように、この講義はスタートアップにおける手続きや仕組みについてです。スタートアップの初期段階で直面する可能性がある、法律と会計に関する基本的な課題についてKirstyと私がお話しします。

Paul Grahamの動画を見ていたら、彼は「創業者はスタートアップ立ち上げの仕組みを理解している必要はない」と言っていました。それを聞いて私は、「えっ!私たちはSamから『スタートアップ立ち上げの仕組み』というタイトルで講義をしてほしいと言われたのに」と思いました。

Paulが言いたかったのは、「創業者は仕組みを詳細に理解している必要はない」ということです。確かに、創業者が細かいことにとらわれ過ぎるのは非常に危険です。いずれにせよ、Kirstyと私も、45分という時間では細かいことまではお伝えできないでしょう。

本日の講義の目標は、皆さんがスタートアップを立ち上げる時にフロリダ州のLLCといった道を選ばないようにすることにあります。

Kirsty
先ほどSamも言っていましたが、皆さんはこれまでに多くの素晴らしい創業者たちから非常に面白い話を聞いてきていますから、会計士や弁護士の話を聞くなんて、とても退屈に感じるのではないかと私たちも心配しました。

しかしSamが言ったように、基本的なことを理解していれば、会社を正しく立ち上げ、トラブルを回避し、心配ごとがない状態で、自分が実際にしたいこと、つまり「会社の成功」に注力することができます。

今回の講義では全編にわたって「スタートアップ」という言葉が出てきます。皆さんの頭の片隅には、「スタートアップ」とは独立した法人でなければならない、という理解があると思います。まずは実際の会社設立について、また、それがどんな意味を持つかを少しお話しします。

皆さんは、スタートアップでは資産やIP、発明などを保有し、会社としてそれらを保護する必要があるということもご存知だと思います。そうした点や資金調達、社員の採用、契約締結についても話をしていきたいと思います。

その他にも、創業者間で生じる問題をクリアにするために、会社設立時に議論しておくべきことがいくつかあります。例えば、誰が責任者になるのか、皆のエクイティ保有比率をどれくらいにするかといったことです。

会社設立について

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Carolynn

まずは会社設立についてお話しします。

スタートアップを立ち上げる時は独立した法人とします。すでに理解されているとは思いますが、独立した法人として設立する主な目的は、創業者を個人的責任から保護することにあります。自分の会社に対して訴訟を起こされた場合、訴訟相手に渡る可能性があるのは銀行口座にあるあなたのお金ではありません。会社のお金です。

デラウェアに設立する

問題はどこに設立するかです。理論的には50の選択肢があるわけですが、もっとも簡単なのはデラウェア州です。これは皆さんもご存知だと思います。

デラウェア州は会社設立をビジネスにしている州です。法律も非常にわかりやすく、確立されています。会社設立におけるスタンダードであると言えるでしょう。

もう1つ、投資家たちがデラウェア州と聞くと安心するという点も挙げられます。彼らはすでに何度もデラウェア州設立の企業に投資しているでしょうから。投資先の大半はデラウェア州設立の企業と言えるかもしれません。

つまり、皆さんの会社もデラウェア州での設立であれば、あらゆることが非常にシンプルになるというわけです。投資家のデューディリジェンスも少なくて済みます。ワシントン州設立の法人をデラウェア州で再法人化すべきかどうか、といった議論をする必要もありません。

2年ほど前にYCにいた、ある会社についてお話ししましょう。その会社がLLCとして設立されたのは…そうですね、とりあえずコネチカット州だったことにしておきます。会社の創業者にはコネチカット州在住の弁護士の友人がいて、そこで設立するべきだと言われたそうです。

彼らがYCに来た時、私たちは会社をデラウェア州で再法人化する必要があると言いました。コネチカット州の弁護士は再法人化のための事務手続きを進めましたが、残念ながら彼らの手続きには不備がありました。それは非常に単純な、しかし致命的な間違いでした。

最近になってその会社が多額の資金調達を行った際に、その間違いが発覚しました。その会社は数年前にデラウェア州法人になったと思われていたのですが、実際にはコネチカット州のLLCのままだったのです。

デラウェア州の2つの法律事務所、さらにコネチカット州とシリコンバレーの各1か所の法律事務所、計4つの法律事務所を巻き込んでようやくその間違いが突き止められたというわけです。

この再法人化手続きの間違いで発生した費用は現時点で50万ドルに達しています。

この事例から得られる教訓は何でしょうか?とても簡単なことです。全てを非常にシンプルにして、自分でしっかり理解できる状態にすることです。

私たちYCが全ての会社を同じ方法で設立しているのは、それが簡単だからです。ここで工夫を凝らす必要はありません。時間とお金を無駄にしないことです。

設立の手続き

Kirsty
では、デラウェア州で会社を設立すると決めたら、実際にどのような手続きをすれば良いのでしょうか?いくつかのステップがあります。

1つ目は実に簡単です。会社設立の意志を伝える2種類の書面をデラウェア州にFAXで送付するだけです。しかし、これではまだ会社の外枠を作っただけです。中身がありません。

この後、会社の定款に対する承認を得るための書面一式を記入する必要があります。

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これによって取締役会や会社役員が設定できます。デラウェア州では、CEO、プレジデント、セクレタリーの三役を置くよう求められています。

この時点で、個人としての自分が創出する発明やコードを会社の資産にするためには、それらの譲渡に関する書面も作成する必要があります。これは「今、自分が行っているのは個人としての行動か?それとも個人からは独立した存在である会社の代表としての行動か?」と考える、良い機会です。この区別は常に頭の中で意識している必要があります。

サービスを使う

また、会社設立を支援してくれるサービスを利用することもできます。法律事務所を利用しても良いですが、オンラインサービスという方法もあります。

私たちがYCカンパニーにおいてよく利用しているのがClerkyというサービスです。スタンダードかつ基本的な書面が使われていて、非常に標準的な方法で会社を設立できる仕組みになっているため、創業者は迅速に行動でき、自分がやるべきことに注力できます。

書類の保管はきちんとしておく

事務手続きの注意点を1つ挙げましょう。会社設立では各種書面を作成しますが、これは会社の業務内容やあり方を規定する非常に重要な書面です。そのため、こうした署名付きの書面は安全な場所に保管しておくことが非常に重要です。

これはごく当たり前の話に聞こえると思いますが、実際、「ああ、これ?何かの書面だよ」と平気で言う創業者が世の中にはたくさんいます。彼らはその書面が何なのか、どこにあるのかを理解していないのです。

書面類は、くれぐれも安全な場所に保管するよう注意してください。確かに、文書管理作業にはスタートアップ経営の華やかさはありません。でも、例えば会社が大規模なシリーズAの資金調達をしようという時や、会社が買収される時など、スタートアップの生存に関わるストレスの多い時期こそ、きちんとした文書管理ができていることが非常に重要なカギとなります。

会社はデューディリジェンスを行う必要があり、弁護士はあらゆることを聞いてくるでしょう。もし創業者が書面を手元に持っていなかったり、どこにあるかも知らなかったりすれば、よりストレスの多い、精神的に辛い状況に置かれることになってしまいます。

ここで重要なことは、これらの書面を安全な場所に保管しておく、ということです。整理整頓しておくのです。そうすることで、創業者としての人生がより楽になるでしょう。

エクイティ

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Carolynn

では、エクイティの話に移りましょう。このセクションでは、いくつかのトピックについて説明します。

エクイティの配分

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1つ目はエクイティの割当です。自社の株式がパイだとしたら、創業者はそのパイをどのように分配すれば良いのでしょうか?これは共同創業者と相談する必要があります。では、なぜそれが重要なのでしょうか?創業者が1人の場合は問題になりませんが、2人以上のチームの場合、これは極めて重要なポイントです。

実行はアイデアよりも価値がある

まず知っておくべきことは、「実行はアイデアよりも価値がある」ということです。

これはどういう意味でしょうか?会社のためにアイデアを出した人を過剰に評価し、会社のエクイティを多めに与える創業者チームはたくさんいます。

アイデアが非常に重要なことは間違いないですが、アイデア自体に価値はありません。アイデアを思い付いただけで10億ドルを手にしたという話を聞いたことがありますか?

創業者チーム全員が協働してアイデアを実行して初めて価値が生まれるのです。創業者は、会社のためにアイデアを出した共同創業者に不均衡な量の株式を与えたくなる気持ちを抑えなくてはなりません。

創業者間で平等に割り当てる

次に考えるべきことは、株式を創業者間で平等に割当てるべきか否かです。

私たちが考える、もっともシンプルな答えはイエスでしょう。株式割当は完全に均等に行う必要はありませんが、極端に不均衡な割当は、私たちから見たら重大な危険信号です。オーナーシップが平等でない場合、創業者チームの間できちんと会話がされているのかどうか疑問を感じるからです。

例えば、内心、「このスタートアップは一時的なものでしかない」と考えている創業者がいるのではないか?会社への貢献を誇張している創業者がいるのではないか?あるいは、学歴や過去の業績を誇張している創業者がいるのではないか?創業者たちは本当にお互いを信頼合っているのか?スタートアップとその未来に期待するものに関してお互いに誠実であったのか?といった具合に。

オーナーシップが不均衡な場合、私たちは創業者間に不和があるのではないかと心配になるのです。

フルタイムの人に割り当てる

3番目に、スタートアップでは将来を見据えることが非常に重要です。創業者は皆、100%ビジネスに注力していなくてはなりません。

創業者全員が長期的に注力する覚悟はあるでしょうか?スタートアップにおいて、各創業者が長期にわたって100%の注力をすることが期待されるなら、会社設立前に起きたことは重要視されるべきではありません。

誰がアイデアを出したか、誰がコーディングをしたか、誰がプロトタイプを作ったか、誰がMBAホルダーか、といったことは重要ではないのです。

「実行」にはチーム全員が必要なのですから、割り当てが均等なほうが、チーム全体がすっきりとした気持ちでいられます。

まとめになりますが、最上級レベルの評価を得ている、いわゆるトップのYCカンパニーを見ると、創業者間で非常に不均衡なエクイティ割当がされている会社は1社もありません。

株式を購入する

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Kirsty

エクイティ割当に関して創業者間できちんと話し合いができたとします。

さて、次に何をすれば良いのでしょうか?創業者の中には、株式保有のためには手続きが必要だと知って驚く人がたくさんいます。彼らは、話し合いさえできていれば十分だと思っているのです。

これもまた、「個人としての自分」と「会社の代表としての自分」について考えるべき状況です。大企業に置き換えて考えてみましょう。

例えばあなたがGoogleで働いていて、報酬パッケージの一環として株式を受け取ることになっていると聞かされたとします。あなたは、提示された株式を得るためには当然何らかの署名をするだろうと思いませんか?そうでなければ「本当に大丈夫だろうか?」と不安になるでしょう。これは小さな会社でも同じです。

この場合、皆さんが署名する書面は株式購入契約書です。「個人としての自分」が会社から株式を購入するのです。どんな場合においても、何かを購入する時は双方向の取引が発生します。

この場合、現金を払うか、IPや発明、コードといった会社に貢献するものの対価として株式を受け取ります。そうすることで、会社はあなたの過去の業績を保有することができます。

また、こうした株式は時間を掛けて付与されるため、制限付き株式とも呼ばれます。これについては次のパートで詳しく説明します。

株式が制限的に付与されるにあたって非常に重要な書面があります。この書面について私たちが口を酸っぱくして言うのには理由があります。後から訂正することができないからです。

過去に、それが原因で取引が成立しなかった例があります。私たちは、83(b)Electionと呼ばれる書面を提出しなかったがために取引が不成立となった会社を複数見てきました。83(b)Electionに関する詳しい説明はここではしませんが、これは個人が払う税金にも会社が支払う税金にも影響します。大きな影響を及ぼし得る書面なのです。

ここでの重要なポイントは、各種書面に署名し、株式購入契約に署名し、83(b)Electionに署名し、それらの書面を送付したことを示す証拠を必ず保管しておく、ということです。

証拠がなければ、IRSのブラックホールに吸い込まれることになります。創業者が書面で証明できなければ、投資家や買収者は取引から手を引いてしまうでしょう。

べスティング

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Carolynn

次のトピックはベスティングです。

ベスティングについては多くの皆さんがご存知だと思いますが、念のため説明します。ベスティングとは、自分に付与された株式を一定期間かけて受け取るものです。

ここではKirstyがつい先ほど触れた株式についてお話します。創業者は自分の会社の株式を購入し、保有し、議決権を得るわけですが、ベスティング期間満了前に創業者が会社を辞める場合、会社は被付与者の権利未確定株式を買い戻すことができます。

制限付き株式とはベスティングによって付与される株式を意味し、IRSも「没収されることがある株式」としています。

べスティング期間

では、一般的なベスティング期間とはどれくらいなのでしょうか?

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シリコンバレーで標準的とされるベスティング期間は4年間プラス1年間のクリフです。

この場合、創業者は1年後に株式の25%を付与され、残りの株式は今後3年間にわたって毎月付与さます。例を挙げて説明しましょう。例えば創業者がクリスマスの日に株式を付与され、翌年の感謝祭の日、つまり購入日から1年未満で会社を去るとします。

この場合、クリフ期間が満了していないため、退職する創業者は株式を手にすることができません。創業者が、翌年のクリスマスの次の日、つまり1年と1日後に会社を去る場合は1年間のクリフは過ぎていますので、株式の25%を手にすることができます。

創業者が会社を退職する時、株式はどうなるのでしょうか?会社はそれらの株式を買い戻すことができます。

先ほど私がお話しした、創業者が株式購入から1年と1日後に会社を去るケースでは、株式の75%は引き続き当該創業者へのベスティング対象となっていて、会社はその全数を買い戻すわけです。

どうすればそれができるのでしょうか?会社が創業者宛に小切手を切れば良いだけです。創業者が株式を購入する時も、そうしたのですから。創業者が1株あたりに支払ったのと同じ金額で購入資金を創業者に払い戻すわけです。

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なぜべスティングを行うか

では、なぜベスティングが行われるのでしょうか?創業者はなぜ、自分自身にベスティングを設定するのでしょうか?

彼らは自分たちの持株に対してベスティングをしているわけですが、それが重要になる最大の理由は、会社を去る創業者と関係があります。ベスティング制度がない状態で創業者が会社を去る場合、当該創業者は大量のエクイティオーナーシップを保有したまま辞めることになります。

これは、残る創業者にとって明らかに不公平であると言えます。この点については、後ほど「創業者雇用」のスライドを使ってもう少し詳しくお話ししたいと思います。

ベスティングが行われる他の理由として、「スキン・イン・ザ・ゲーム(身銭を切ること。企業の幹部が自ら自社株を購入し、投資をする)」という考え方が挙げられます。

創業者にはスタートアップで働き続けるインセンティブを与える必要があります。創業者が、自分の保有するオーナーシップを手にしたまま、いつでも会社を去ることができるとしたら、苦しいスタートアップのなかで、わざわざ会社に残って懸命に働こうと思えるでしょうか?

一人でもべスティングは必要

では、単独創業者はベスティングが必要でしょうか?

答えはイエスです。その理由はスキン・イン・ザ・ゲームという考えは単独創業者にも当てはまるからです。

投資家たちは、単独創業者を含む全ての創業者が長期に渡って会社に関与するインセンティブを持っている状態を望みます。また、単独創業者が自分の株式にベスティングを適用するべきもう1つの理由は、社員に対する前例を作るためです。

創業者が、「社員は自社株式を取得するのに4年間のベスティング期間が必要だが、自分だけはその必要がない」、などと言うのはおかしなことだというのは、皆さんも理解できますよね。

これは企業文化の問題です。創業者が自分の保有株式にもベスティングを適用して、「皆で長期間、頑張っていこう。全員がベスティングで株式を取得する。皆で協力していくのだ」と明言することで会社の基本姿勢を示すのです。

ベスティングにより、創業者全員が会社で頑張り続け、「会社を成長させないと株式を手にすることができない」という同じインセンティブを持つことになります。創業者が自社のエクイティオーナーシップを大量に保有したまま好きな時に会社を辞められるような会社は、投資家から敬遠されます。

資金調達

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Kirsty

話を先に進めましょう。デラウェア州で見事に会社を設立できたとします。全員が株式を保有しています。全てが、シンプルかつスタンダードな事務手続きで行われました。

さて、次にするべきことは何でしょうか?会社にとっての次のステージは、資金調達です。資金調達について、皆さんはすでにこの一連の講義の中で多くの投資家や創業者から様々な話を聞いていると思います。

彼らは資金調達の戦術について語っていましたが、では、どんな事務手続きが必要なのでしょうか?誰かから投資の約束を取り付けた時、どんなことが起きるのでしょうか?

値付けがあるラウンドと値付けがないラウンド

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手続きについて、ごく簡単に言えば資金調達には2つの方法があります。調達する資金の価格が決定されているパターンと、価格が決定されていないパターンです。

価格とは会社の評価(バリュエーション)を意味します。ラウンドはどんな呼び方をしても構いません。自分の好きな名前を付けて構いませんが、一般にシードラウンドという言葉は価格が決定されていないことを意味します。一方、シリーズAやシリーズBという呼び方は価格が設定されていることを意味します。

価格を設定しないのは、もっとも単純かつ迅速な資金調達方法です。この時に用いられるのが、Convertible NoteまたはSAFEです。これもまた双方向の取引になります。

例えば、「投資家は今10万ドルを支払い、その見返りとして将来、プライスドラウンドで投資家たちが価格を決定する時点で株式を受領する権利が与えられる」と記載した書面を作成します。

注意すべき点は、この手続きが行われる段階では、資金を提供する投資家はまだ株主ではなく、したがって、その会社の議決権は有していない、ということです。彼らにはCarolynnが後ほどお話しする別の権利が与えられます。

当然ですが、投資家は会社のアーリーステージ、要するに、もっともリスクが高いステージで投資することに何らかのリターンを求めます。

バリュエーションキャップ

ここで出てくるのがバリュエーションキャップという考えで、皆さんの多くが聞いたことがあるかと思います。アンプライスドラウンドの書面では株式への転換時のキャップが設定されます。

キャップは現時点での会社の評価ではなく、将来、投資家が取得する株式数を計算するために使用される評価の上限を指します。

例えば、キャップが500万ドルと設定されたSAFEで10万ドルを投資する投資家について考えてみます。1年後に会社が2000万ドルの評価が付いたプライスドラウンドで資金調達をする場合、その初期投資家にとっての1株当たり価格は大幅に低くなります。およそ4分の1です。

つまり、シリーズAプライスドラウンドから登場して10万ドルを出す投資家の約4倍の量の株式を購入できるわけです。これが創業当初に資金を提供する投資家にとってのリワードとなります。

繰り返しになりますが、こうした手続きにおいては署名した書面がきちんと保管されている必要があります。こういった点をサポートしてくれるのがClerkyなどのサービスです。非常にスタンダードな書面を使っているので、YCカンパニーの大半が資金調達の際、利用しています。

注意点

資金調達の際、考えるべきことは他にもあります。皆さんの会社が時流に乗り、ビジネスがうまくいっていれば資金調達も簡単になるでしょう。

しかし、会社に投資してくれている人々がマイナス要因をもたらすこともある点を認識しておく必要があります。

まず理解しなくてはならないのが将来の希釈化です。例えば、バリュエーションキャップ600万ドルのSAFEで200万ドルを調達するとします。このSAFEがエクイティに転換される場合、初期投資家は会社の約25%の株式を保有します。さらに、そのプライスドラウンドで会社株式の20%保有を望む新たな投資家が現れるとします。その時点で、会社株式の45%が投資家の手に渡っているわけです。

これは本当に創業者が望んでいる状況でしょうか?答えがイエスの場合もあるかもしれません。調達資金ゼロに比べたら低いバリュエーションキャップのほうがはるかに良い場合もあるわけです。利用できる条件で資金を調達することです。

しかし、会社の将来を予測できるよう、プロセス全体をきちんと認識しながら進む必要があります。

投資家はプロフェッショナルを選ぶ

その他の注意点として、「投資家は見識のある人物でなくてはならない」というものがあります。投資家とは、投資に使える十分な資金を持ち、スタートアップへの投資はリスクの高いビジネスであることを理解している必要があります。

私たちは、「資金は私の叔父や近所の人が出してくれました」という会社を多く目にしています。そういった人々が出す金額は各々5千から1万ドル程度で、往々にして彼らは先で多くの問題を引き起こす投資家となります。なぜなら、彼らは投資というのは長期的に利益を得るものだということを理解していないからです。

彼らはやがて、「あのお金を返してもらえばキッチンを新しくできるな」とか「スタートアップ投資というのは、実際、TV番組や映画で見るほど面白いものではなかったな」と考え始めます。そういった事態は会社にとって問題です。彼らは自分の資金を返してほしいと言ってくるわけですから。

資金は、投資とは何たるかを理解している見識のある人間、自分のやっていることをしっかりと理解できている人間から調達するべきです。皆さんも聞いたことがあると思いますが、いわゆる「適格投資家」から調達するべきなのです。

ここでの重要なポイントは、ものごとをシンプルにしておくことです。スタンダードな書面を使用して資金を調達し、将来の希釈化に関してきちんと理解している人を使い、自分でもきちんと理解する、ということです。

投資家からのリクエスト

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Carolynn

さて、資金調達が開始されましたね。自分が売るものについても理解していて、価格も設定したとします。Kirstyが説明したロジスティクスも理解できています。

でも、そこで創業者であるあなたは、投資家たちが使う言葉や専門用語について、自分がきちんと理解していないことに気付くかもしれません。理解していないこと自体は問題ではありませんが、創業者には、それを理解する責任があります。価格という評価に合意しているのだから、他のことは大して重要ではない、などと考えないでください。他のことも、とても重要なのです。

創業者は、そういった用語が長期的に自分の会社にどのような影響を及ぼすか理解する必要があります。Kirstyと私はYCでしょっちゅう、「それが何なのか知らなかった」、「自分が何に署名しているのか理解していなかった」、「自分がそれに同意していたなんて知らなかった!」と口にする創業者を見かけます。わからないことを理解する責任は、創業者にあるのです。

次に、投資家の一般的な要求4つについてお話しします。

取締役

1つ目は取締役の座です。投資家のなかには、会社の取締役会に自分を含めるよう求めてくる人もいるでしょう。一般的に、投資家が取締役になりたがる理由は、自分が投じた資金を監視していたいためか、自分なら創業者のビジネスを手助けできると心から信じているため、のいずれかです。

投資家を取締役会に加えるにあたっては注意が必要です。大抵の場合は、断るべきでしょう。そうしないのであれば、その投資家が本当に会社に価値をもたらす人物であるかを確認してください。

資金があるというのは確かに価値があることですが、会社の戦略と方向性を支援してくれる人はそれに勝る貴重な存在です。人選は賢明に行いましょう。

アドバイザー

2つ目はアドバイザーです。スタートアップにアドバイスをしたいという人は大勢いますが、本当に良いアドバイスをくれる人はほとんどいません。

会社に資金を提供した時点で、その投資家は事実上のアドバイザーと考えるべきですが、正式な肩書は必要ありません。そしてもっと重要なのは、会社がそういったアドバイスに対して、特別なリターンを与えることはない、ということです。

YCで気づいたことがあります。スタートアップが投資家として著名人を獲得した場合、そういった著名人はほぼ必ず自分がアドバイザーになることを要求してきます。

オンデマンド型ボディガードサービスを提供する会社の例をお話ししましょう。あるNBAバスケットボール選手がその会社に資金を提供し、アドバイザーの座を求めてきました。

彼は次に、アドバイザリーサービスの見返りとしての一定数の普通株を求めてきました。そのNBA選手が考えていたサービスとは、オンデマンド型ボディガードを利用したいと思うかもしれない他のプロのバスケットボール選手にこの会社を紹介することでした。

著名人であるそのNBA選手は多額の投資をしたのですから、会社が成功するようにサポートしたいと考えるべきではないでしょうか?なぜプラスアルファを求めるのでしょうか?会社をサポートできる投資家は、皆サポートするべきです。追加で株式を要求するなんて、無料の景品を求める投資家にすぎません。

プロラタ

3つ目はPro-Rata権です。

ごく簡単に言いますと、Pro-Rata権とは将来、投資先企業の株式を買い増すことで自分の持分比率を維持する権利です。Pro-Rata権は希釈化を回避するための手法です。ここで言う希釈化とは、会社が他の投資家に株式を売却する度に自分の持分比率が低下することを意味します。

非常に基本的な事例ですが、初期投資家が優先株を購入して資金調達完了時に会社株式の3%を保有しているとしましょう。そして、その会社が新たな資金調達ラウンドを実施するとします。会社はPro-Rata権を獲得したこの投資家に、「この度さらなる資金調達を実施しますので、あなたも約3%の持分比率を維持するために、新規ラウンドで株式を買い増すことができますよ」と伝えるわけです。

Pro-Rata権は、投資家からの要求としては非常に一般的なものです。必ずしも悪いことではありませんが、創業者であれば必ずPro-Rata権の仕組みを理解しておく必要があります。希釈化回避のためのPro-Rata権を投資家に与えることは、必然的に創業者が大幅な希釈化に苦しむことになるため、Pro-Rata権の理解は特に重要です。

情報請求権

最後に、情報請求権です。

投資家はほぼ必ず、会社に関する特定の情報を得るための情報請求権を契約に含めるよう求めてきます。定期的な情報や状況のアップデートの提供は悪いことではありません。

YCでは、投資家に対する月1回のアップデートを各社に奨励しています。なぜなら、これは紹介や採用などに関してサポートを求める良い機会となるからです。ただし、情報を開示し過ぎないように注意する必要があります。月次予算や毎週のアップデートを求めてくる投資家はあまり良い投資家とは言えません。

まとめになりますが、資金調達の種類と評価を交渉していれば、他のことはどうでも良いというわけではありません。資金調達に関してはあらゆることを理解しておく必要があります。

経費

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Kirsty

資金調達以降の話に進みましょう。資金調達後、会社の銀行口座には創業者が今まで見たことがないような桁の金額が入っていることでしょう。

さて、次にどうしたら良いのでしょう?ここから、実際に事業活動費が発生し始めます。事業活動費とは、社員への給与の支払い、オフィス賃料の支払い、接待費、顧客獲得費など事業活動に伴って発生するコストのことです。

事業活動費が重要となるのは、会社の納税申告書上の控除項目として収益と相殺し、会社が支払う税金を減らすことができるからです。一方、納税申告書上で控除できない事業活動以外の費用が発生する場合は、納税額の基準となる会社の利益を押し上げることになります。

個人と会社の区別

ここでもまた、重要なのが個人と会社の区別です。会社は独自の銀行口座を持ち、会社の費用はそこから支払わなければなりません。大企業のケースを考えてみてください。Googleで働いているとして、歯ブラシや歯磨き粉を買うのにGoogleのコーポレートカードは使いませんよね。

その資金は投資家から提供されているものだということを忘れないでください。投資家は創業者を信頼し、多額の投資をしてくれたのです。彼らはその資金が会社の成功のために使われることを期待しています。創業者が自分の好きに使える「自分のお金」ではないのです。

実際に、そうした勘違いをした創業者の、ホラーとも言えるエピソードがいくつかあります。ある創業者は、投資家の資金を持ってラスベガスに行ってしまいました。Facebookにアップされた写真を見る限り、彼は楽しいひと時を過ごしたようですが、当然、彼はもうその会社にはいません。そんなことをしたら、投資家からお金を盗んでいるのと同じです。

事業活動費の概念は、スタートアップのアーリーステージ、特に自分のアパートで1日24時間働いているような段階においては、少々曖昧になることがあります。その場合は、「投資家から資金の支出明細を見せてほしいと言われ、明細全てを提出しなければならないとしたら…」と考えてみることです。投資家に見せるのが気まずいと思われるような項目があれば、それはおそらく事業活動費ではありません。

創業者というのはフルスピードでの会社経営に忙殺されていて当然ですから、この段階で必ずしも簿記や会計について考える必要はない、ということを覚えておいてください。

しかし、領収書を残しておくことは非常に重要です。これは、先で経理事務員や会計士を雇って納税申告書を作成してもらう際、事業活動費とそうではないものの判別がつくようにするためです。

これを判別するのには、創業者のサポートが必要となります。自分の負担を減らすためにも、領収書を安全な場所に保管して、いつでも参照できるようにしておくことです。

ほかのことは全部忘れたとしても、投資家の資金を持ってラスベガスにだけは行かないでください。資金は賢く使いましょう。

雇用

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Carolynn

このセクションでは、いくつかのトピックについて説明します。

創業者自身の雇用について

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1つ目は「創業者雇用」です。なぜそんな話をするかというと、先ほどお話ししたように、会社は独立した法人で創業者としての個人とはまったく別個の存在です。

創業者と言えば聞こえは良いですが、創業者というのは実際、会社の一社員であり、給与をもらう必要があります。無償で働くことは法律に反することですから、創業者は会社にその責任を負わせるべきではありません。

皆さんが他のどの場所においても無償で働くことがないのと同じで、スタートアップも例外ではありません。会社は給与税を払う必要があります。

YCカンパニーの中に、給与税を丸3年間払わずにいた企業がありました。これは多額の費用が絡む大問題で、極端な場合は刑務所行きとなることもあり得る話です。幸いにしてこのケースはそうなりませんでしたが、あってはならない話です。

そういった事態に陥らないようにするためには、給与計算サービスを使うことです。これはお金を費やす価値があるサービスです。報酬設定は法外なものにしてはいけません。最低賃金で十分です。会社はまだスタートアップであり、スリムな経営をする必要があるのですから。

共同創業者の分裂

次のトピックは創業者の分裂です。まず、創業者の分裂とは何でしょうか?ここでは、チーム内のある創業者が会社を去るよう言われるケースについてお話しします。社員でもある創業者が、共同創業者に解雇されるというわけです。

ここで創業者の分裂と報酬について触れるのはなぜでしょう?YCでは創業者同士が袂を分かつケースが非常に多く見られますが、創業者が自身に報酬を払っていない場合、分裂は醜い泥仕合になることがわかっています。なぜなら、未払賃金は解雇された創業者にとって、会社から自分が望むものを引き出すための武器となるからです。

一般的なのがベスティング期間の短縮要求です。解雇された創業者は、「私の弁護士が言うには、会社は私への報酬未払いという法律違反を犯しているそうだ。私への報酬を払って、実際にはまだ権利を得ていない株式をいくらか私にくれるのであれば、契約解除の書面にサインして醜い争いは終わりにしてあげよう」と言ってきます。

皆さんが解雇する側の共同創業者である場合、「それは良い取引かもしれない」と思うことでしょう。しかしこの場合、会社に不満を抱いている人間が会社株式の一部を保有していることになります。さらに悪いことに、会社に残っている社員は、その元創業者のために働くことになります。

解雇された元創業者は株式を保有し、自分は何もしないで居座り、会社のあらゆる価値を生み出している社員に対して、「ほらほら、価値あるものを作りなさいよ」と命じるわけです。

まとめになりますが、自分自身に給与を払うことで問題を回避しましょう。自分の給与税を払い、共同創業者の給与は婚前契約のようなものだと考えることです。

従業員の雇用

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Kirsty

創業者は社員を採用する必要があります。社員の探し方や、会社にうまくフィットさせる方法、生産性を引き出す方法はこれまでの講義でたくさん語られていますね。

では、実際に適任者を見つけた際、どのようにして採用すれば良いのでしょう?どのような手続きが必要なのでしょうか?雇用は多くの法律によって規制されています。そのため、正しく理解することが重要です。

これもまた本質的なポイントですが、基本を理解していればトラブルの大半とは無縁でいられるでしょう。ただし、ものごとが複雑になったら、すぐに専門家を交えて対応する必要があります。

社員か請負か

まず、相手が社員か業務請負業者かを理解することです。この分類には微妙な違いがあります。それを正しく理解することが重要です。なぜなら、IRSはこの点に重きを置いているからです。両者の区別が間違っているとIRSにみなされると、そこを追及されますし、罰金を科されることになります。

社員、業務請負業者のいずれも、彼らが会社のために創出するIPの譲渡に関する書面が必要です。これは当然ながら非常に重要なことです。書面の書式や支払い方法は相手がどちらに属するかでまったく異なります。

一般に、業務請負業者は労働の時間と場所を自分で決めることができ、目指すべき成果が決まっているプロジェクトを与えられますが、実際の達成方法は決められていません。

業務請負業者は自分が保有する設備を使い、会社の日常業務や今後の戦略に対する発言権はありません。業務請負業者はコンサルティング契約を締結します。会社は彼らに報酬を支払いますが、個人に代わって税金を支払うことはありません。納税の責任は個人にあります。会社は年末にForm 1099という書面を個人とIRSに送付し、業務請負業者はそれを基に個人の納税申告書を作成します。

この対極にいるのが社員です。社員も何らかのIP譲渡契約に署名しますが、会社は彼らに給与を支払う際、社員の給与から税金を天引きします。会社には、徴収した税金を該当する州または連邦当局に収める責任があります。そして、社員は年末にForm W-2を受け取り、それを基に個人の納税申告書を作成します。

先ほど創業者は給料を受け取る必要があると言いましたが、社員も同様です。「株式で支払っている。それが彼らの報酬となるはずだ」と言うだけでは不十分です。社員には少なくとも最低賃金を支払う必要があります。

サンフランシスコの最低賃金はカリフォルニア州全体より若干高い金額ですが、月額約2千ドルです。これは大した金額ではありませんが、積もり積もれば大きな金額となります。

保険の加入

社員を抱えている際、しなくてはならないことが他にもあります。1つは労災保険への加入で、会社がニューヨークにある場合は特に必要です。そうでないと、労災保険を管轄するニューヨーク当局は、「あなたの会社において最低賃金の支払いを受けている社員1名について、月20ドルの労災保険料が支払われていないため、5万ドルの罰金に処します」という恐ろしい書面を送ってくるでしょう。

労災保険への加入は非常に重要です。また、社員が米国での労働を許可されていることを示す証拠書面を必ず確認しておく、というのも重要なポイントです。

創業者は給与計算の専門家ではありませんし、誰もそんなことは期待していません。今、お話ししているのは、あくまで基本的なことです。

創業者は自分の代わりにこの業務を担当してくれる給与計算サービスプロバイダーをぜひとも雇うべきです。ZenPayrollなどのサービスプロバイダーはスタートアップに特化しています。可能な限り簡単な方法で給与計算業務ができるようサポートしてくれるので、創業者は自分が一番すべきことに集中できます。

Carolynがつい先ほどお話しした事例に出てきた会社も、給与計算サービスプロバイダーを利用していれば、必要な業務を代行してもらい、苦労しないで済んだはずです。彼らはそういったサービスを利用しないことで節約をしているつもりだったのでしょうが、その結果どうなってしまったでしょうか?

これがキーポイントです。給与計算サービスプロバイダーを使うこと、そして雇用の基本を理解することです。

社員の解雇

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Carolynn

YCで、「誰かを解雇せざるを得なくなって初めて本当の創業者になれる」という話を聞いたことがあります。なぜでしょうか?それは、人を解雇するというのは非常に難しいことだからです。

理由はたくさんあります。まず、創業者は自分の友人を雇うことが多いという点が挙げられます。元同僚を雇っていることも多いですし、スタートアップの仕事は非常に大変であるからこそ、創業者が社員と親密な関係になることも多いです。

しかし、成果を出せない社員というのはどの会社にも存在します。そういった社員を解雇することで創業者は真のプロフェッショナルになれるのです。なぜなら、自分にとって楽な道を選ぶのではなく、会社のために正しいことをしなければならないからです。

解雇は迅速に行う

解雇におけるベストプラクティスをお伝えします。1つ目は、解雇は迅速に行うことです。会社にとって利益にならない社員を長居させてはいけません。気の重い会話を先延ばしにするのは非常に簡単ですが、ずるずる引き延ばしていてもデメリットしかありません。

不良社員を長居させていると、優秀な社員が会社を辞めていくおそれがあります。また、その不良社員が実際に業務で問題を起こしていれば、ビジネスやユーザーを失うおそれがあります。

効果的なコミュニケーションを行う

2つ目は、効果的なコミュニケーションを行うことです。解雇する理由を正当化してはいけません。言い訳をしてはいけません。言葉を濁してはいけません。クリアかつストレートに話し、謝罪をしてはいけません。「あなたには辞めてもらうことになりました」と言うことです。

「今四半期のあなたの営業成績が芳しくありませんでしたので、非常に残念なのですが…」などと言ってはいけません。また、解雇については面と向かって直接伝え、第三者を同席させるのが理想的です。

休暇を与える

3つ目は、全ての給与と未消化の有給休暇を直ちに与えることです。これは法的要件であり、ここに議論や交渉の余地はありません。

アクセスを遮断する

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4つ目は、デジタルシステムへのアクセスの遮断です。解雇した社員が部屋を出た瞬間に、物理的およびデジタル両方のアクセスを遮断してください。クラウドで情報を管理し、パスワードを変更してください。

YCで起きた事例ですが、会社のGitHubアカウントへのアクセス権を保有していた創業者を共同創業者が解雇しようとした時、そのアカウント用のパスワードを盾にされたことがありました。

株式を買い戻す

5つ目は、解雇した社員が会社株式を保有していた場合、会社は直ちに相手の保有株式を買い戻す必要があります。まとめになります。意外なポイントかもしれませんが、優秀な創業者であることを示す要素の1つに、いかに上手く社員を解雇するかが挙げられるということです。

まとめ

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Kirsty

全てに共通する基本的な原則は、シンプルに行うことです。あらゆることをスタンダードかつ計画的に行うことです。自分がしていることを、きちんと把握しておくことです。

エクイティオーナーシップは非常に重要なポイントですから、会社の3か月先ではなく、常に未来を考えることです。また、株式購入は手続きに基づいて行われるので、書面に不備がないようにしておくことです。

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自分が署名している資金調達関連の書面について、きちんと理解しておいてください。「あなたから10万ドル投資してもらいます」と口で言うだけでは不十分です。給与は創業者と社員両方に支払われる必要があります。

全員がIPを会社に譲渡している必要があります。会社がそうしたIPを保有していなければ、価値があるとは言えません。

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社員を解雇しなければならない場合は、迅速かつプロフェッショナルに行うことです。

本日の講義で触れなかったトピックに、自社に関する主要指標の理解があります。創業者は常に自社のキャッシュポジションやバーンレート、現金が底を尽く時期を把握し、投資家と話ができるようにしておく必要があります。

スタートアップ経営の多くは、ルールの遵守と重視にあります。これは映画やTV番組で見られるような華やかな部分とは違う側面ですが、これらを軽視してはいけません。

Q&A

受講者1
経理業務の担当者探しに関するアドバイスはありますか?また、経理業務担当者が必要となるのはどの段階でしょうか?

Kirsty
経理業務担当者には、経理事務員と公認会計士(CPA)の2種類が存在します。一般には、経理事務員が会社のあらゆる支出を分類し、CPAが納税申告書を作成します。アーリーステージにおいては、創業者が銀行口座通知書と発生する支出を把握できているくらいで良いかもしれません。

納税申告書は年に一度作成する必要がありますから、創業年のある時点で申告書作成サービスを利用する必要が出てくるでしょう。これは創業者が時間を割いて行うべきことではありません。inDineroのような、創業者の視点で可能な限り業務を軽減してくれるサービスが利用できます。しかし、納税申告書作成のためにどこかの時点でCPAを採用する必要はあります。

受講者1
人材はどのようにして見つけたら良いのですか?

Kirsty
それが難しいところですね。一番良い方法は誰かに紹介してもらうことです。CPAでも会計士でも弁護士でも、専門家を雇う時は、スタートアップを扱う仕事に慣れている人を使うのが一番です。ミネソタ州に住んでいて、スタートアップの業務をまったく知らないあなたの叔母を採用したりしてはいけません。

受講者2
会社設立費用や弁護士費用、契約締結費用やシードラウンドの準備費用、最初の社員の採用費用など色々ありますが、総合的に考えてどのくらいの額を見積もっておけば良いですか?こうした費用のためにどれくらいの金額を確保しておくべきでしょうか?

Carolynn
会社設立に関しては、1銭も使ってはいけません。必要なことはオンラインでできます。いや、「1銭も」というのは言い過ぎでしたね、実際には多少のお金が掛かります。

Carolynn
Clerkyのようなオンラインサービスを利用して会社を設立すれば、数千ドルどころか、数百ドルで済ませることができます。会社設立には弁護士は必要ありません。

実際に弁護士を雇うべき時期は、立ち上げるスタートアップが行うビジネスの種類や複雑さによって変わってきます。詳細なプライバシーポリシーがあるか?HIPPAとの関連があるか?といった具合に。

シードラウンドでの資金調達という話をされていましたが、弁護士が必要かどうかは、自分が調達したい資金の額や、投資家となる相手、タームシート内の条件などによって決まってくる場合もあります。

Kirsty
ごくスタンダードな書面を使って資金調達時をしている場合は、Clerkyのようなサービスが役立ちます。資金調達用に関する、非常に基本的な書面が100ドル未満で利用でき、弁護士費用を節約できます。

受講者3
暗号通貨や暗号エクイティの活用に伴う複雑さに関してアドバイスやコメントはありますか?

Kirsty
最後に難しい質問が来ましたね。そういったものに問題が見られることは確かです。銀行が暗号通貨を使用している会社との取引に苦戦しているケースは多く見られます。銀行では、そういったものに対する方針がまだきちんと定まっていないからです。それぞれ製品固有の特徴があるものなので、残念ながら一般的なアドバイスをするのは難しいです。

Sam
本日はありがとうございました!

Carolynn
こちらこそ、ありがとうございました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Lecture 18: Legal and Accounting Basics for Startups (2014)

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