プロダクトに強く影響する自然法則 (Sequoia Capital)

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以前の投稿で、私たちは製品の成功を促進する最適なメトリクス日本語訳)を選択する方法を説明し、なぜ製品のビジョンがトップラインメトリクスを選択する上での最大の決断となるかについて説明しました。

人々の行動は自然法則に支配されています。私たちはすべて社会的生物であり、互いの行動を真似し、同様の行動パターンに従う傾向があります。その結果、何が起こりうるかという仮説の範囲内で予測される行動は、自然界での発生確率に従うわけではありません。この投稿では、自然法則がユーザーの行動に、そして最終的には製品の成功に強く影響することを示します。

私たちの発見は、App Annieが収集したデータの分析に基づいています。App Annieは異なる3つのアプリ群からデータを収集しました。大きなコンシューマーアプリ(100万MAU以上)、小さなコンシューマーアプリ(100,000 MAU未満)、カテゴリーを代表するトップパフォーミングアプリ(Spotify、Yelp、Wazeなど)です。

大きなコンシューマーアプリ

図1:大規模コンシューマーアプリ製品のスティッキネスの測定

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図1

製品を真の意味で大規模に成長させることは困難です。月間アクティブユーザーが100万人以上いる、 10万MAUに達する製品は15%未満です。(サイズに関係なく)全製品を考慮すると、この割合は明らかに小さくなります。製品が大きく成長するにつれて、アクティブユーザーのサイズが大きくなるような自然原則に支配された特定の経路があります。私たちは製品スティッキネスの理解を通してこれを調査しています。

図1では、DAU / WAU対WAU / MAUをプロットしています。DAU/ WAUは、ユーザーが製品を使用する日数の週あたりの割合であり、WAU / MAUは、ユーザーが製品を使用する週数の月あたりの割合です。 WAU / MAUとDAU / WAUの比率が高い製品は、チャートの右上にあり、最もスティッキネスが高いです。対して、WAU / MAUおよびDAU / WAU比が最も低い製品は左下にあり、スティッキネスが最も低くなっています。

分析からキーとなる2つの発見が得られました。

  1. 週ベースの製品は日ベースの製品でもあります。私達の分析した大規模コンシューマーアプリの中で、DAU / WAUとWAU / MAUの間には強い相関関係があります。つまり、DAU / WAUが増加すると、WAU / MAUも増加し、逆も同様です。言い換えれば、製品が週ごとに使う製品として強くなると、毎日の使用量も増えるということです。これは自然原則に非常によく合致するように思えます。毎日製品を使用する人々は、週ごとにも製品を使用します。一方、製品を週に一度のみ使用している場合、習慣に結びつかないような特殊な機能の可能性が高くなります。さらに言うと、毎日の使用量が少ない(DAU / WAUが低い)強力な週ベース製品(WAU / MAUが高い)はごくわずかです。
  2. 外れ値はほとんど存在しません。毎週の使用量が多く、毎日の使用量が少ない製品(WAU / MAU> 0.6およびDAU / WAU <0.3と定義)をさらに調査すると、すべてのアプリが外れ値であることがわかりました。これらは主に臨時または定期的使用を想定して設計されており、毎日使用する用途はありません。たとえば、T-Mobile Tuesdaysアプリは毎週火曜日に特別取引へのアクセスを許可するため、ユーザーに通知を送信します。当然のことながら、この製品は主に週に一度だけ使用されます。 LastPass Password ManagerおよびPeriod Trackerも、毎日使用するように設計されていない特定機能アプリです。したがって、強力な週ベースの製品であり、毎日の使用量が少ない製品も存在はしますが、これらは外れ値である傾向があります。

小さなコンシューマーアプリ

月間アクティブユーザーが50,000人未満のアプリを小規模コンシューマーアプリと定義しています。図2では、小規模コンシューマーアプリのDAU / WAUとWAU / MAUの比率をプロットしています。キーとなる2つの発見:

  1. ふるまいは多岐に渡ります。週ベースで使われるものの日ベースでは使用されない製品が増えました。自然原則は、小さなコンシューマーアプリは日ベースの製品ではなく週ベースの製品としての方が使われやすい、と規定したようです。その結果、WAU / MAUが高く、DAU / WAUが比較的低い製品が多くなりました。
  2. 毎日使われるが毎週は使われない、というような外れ値製品はありません。小規模でも大規模でも、週ベースで使われるものの日ベースではない製品なることは不可能であるようです。したがって、毎日製品を使用している場合は、ほぼ確実に来週も使用するでしょう。

図2:小規模コンシューマーアプリ製品のスティッキネスの測定

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図2

カテゴリを代表するアプリ

大規模および小規模なコンシューマーアプリに加えて、音楽から地図、写真まで、使用という面でカテゴリのトップにあるアプリを調査しました。これらの異なるカテゴリ全体でDAU / WAUとWAU / MAUを再度プロットしました。

この分析で使用したカテゴリ内で最大のDAU / MAU比を持ち、100万MAU以上である製品は次のとおりです。

  • ソーシャル: Facebook, Snapchat, Instagram
  • 旅行: Gas Buddy, Airbnb, Yelp
  • 音楽: Spotify, Pandora
  • 地図: Waze, Apple Maps, Google Maps
  • コミュニケーション: WhatsApp, Kakao Talk, iMessage
  • 写真: Samsung Gallery, Google Photos

図 3: カテゴリーを代表するアプリのスティッキネスの測定

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図3

私たちの分析により4つの重要な知見が得られました。

  1. カテゴリー毎に使用度は大幅に異なります。予想されたことですが、使用度はカテゴリーによって様々です。トップのコミュニケーション系製品は、DAU/WAUとWAU/MAUの比率が非常に高く、他方で、地図製品のトップは日ベースでも週ベースでも使用比率ははるかに低くなります。このことは、あらゆる製品が、どのような頻度で使われるかは使用実態に強く依存し、頻度には上限があることを示唆しています。
  2. 各カテゴリーで最高の製品は、密集しています。面白いことに、各カテゴリーで最高の製品は全てが集まっていて、ある程度は、特定の使用用途が製品のスティッキネスを決定すると示唆しています。自然法則は、各カテゴリーを集団化するようであり、製品がどれだけスティッキネスを持ちうるかの上限を設定します。
  3. 最高の製品は全てが並列です。カテゴリーに関係なく、最高の製品は全て一つのライン上にあります。このことは、最高の製品は、使用者が少ない製品から大規模な製品に成長するにつれ、この線に沿って進化していくものであることを示唆しているのかもしれません。(図4を参照)  
  4. 月ベースでの使用者が多い製品は、スティッキネスが高い必要はありません。何千万人ものユーザー規模に達していても、WAU/MAUの比率が特に高くない製品は数多くあります。このことは、製品の最大DAU/WAUは、使用実態と関連する対象市場全体の規模で限定されるものであることを示しています。

カテゴリーを代表するアプリの使用の進化

最後に、一つのカテゴリーを代表する製品の進化を分析しました。図4は、Instagramの2014年から2019年までの進化を示すものです。

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図4

(インドの)Instagramがどのように進化していったのかを分析して得られた主要な洞察は以下の通りです。

  1. ユーザー数が少ないと使用度も低くなります。2014年から2019年の5年間で、InstagramのMAUは9百万から1億1000万人に増加しました。当初は、DAU/WAUもWAU/MAUも両方とも低いものでした。ユーザー数が増加するとともに、製品のスティッキネスも上昇し、DAU/WAUもWAU/MAUも、ともに増加しました。
  2. 当初、Instagramは週ベースの製品でした。2014年では、人々はInstagramを週ベースで使用し、必ずしも日ベースでは使用していませんでした。このことは、WAU/MAUの比率がDAU/WAUの比率よりもはるかに早く増加している様子から分かります。
  3. Instagramが成熟するにつれ、日ベースの製品となりました。より多くの人がInstagramを使い始め、強い週ベースの製品となり、その後、DAU/WAUがWAU/MAUよりもはるかに速いペースで増加し、日ベースの製品に変化していきました。製品が(対象となる人口全体に対し)より一層浸透するにつれ、MAUがまず増え、その後WAU、そしてDAUが増えていきます。その結果、WAU/MAUは比較的安定し、DAU/WAUが増加していきます。
  4. 製品の成功への道筋。製品が成功するにはある道筋があるように思われます。スティッキネスは比較的高く始まり、週ベースの強い製品になり、日ベースでも週ベースでも両方に強い製品として強度を高め、週ベースでより高く浸透した後、製品は、日ベースでも週ベースでも粘着度が最大に達するまで、引き続きより強い日ベースの製品となっていきます。

Instagramの進展を見てきました。その他のソーシャル・メディアの製品の道筋も似たようなものです。他のカテゴリーの製品にまでこの理解を広げていくためには、そのためのフレームワークを構築する必要があります。しかし、間違いなく、各カテゴリーの製品には製品が成功する特定の道筋があります。

製品についての意味合い

  1. 製品のカテゴリーを知ることによって、成功への道筋を見つけ、その製品が成功への道筋に沿っているかどうかについて理解できるようになります。しかし、このことは、どうすれば成功するかは教えてくれません。
  2. 戦術的には、毎日使用するような製品カテゴリーに対して、製品チームは週ベースではなく日ベースの製品としての目標値を設定するようにすべきです。
  3. 製品チームは、特定の使用実態に対し理論的な最大値を見つけ、そこに達するための正しい戦略とロードマップを決定する必要があります。関連するカテゴリーのベストな製品を基準にして自分の製品と比較検討することが理想的です。

この記事は、セコイア・キャピタルのデータ・サイエンス・チームが作成したものです。データ・サイエンス・シリーズ全体は、こちらをご欄下さい。ご質問、コメント、その他フィードバックについては、data-science@sequoiacap.comまでeメールして下さい。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The laws of nature strongly influence product behavior (2019)

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