これは2019年11月に開催されたa16zサミットで Divvy Homes社CEOの Adena Hefets が行ったプレゼンテーションの書き起こしです。YouTubeで動画バージョンの視聴が可能です。
まず、家を所有することの重要性を説明することから始めたいと思います。私の父は1970年代後期にアメリカへ移住しました。父と母は根を下ろして家族を作ろうと決めると、家を買おうとしました。ところが、住宅ローンを組もうとすると、却下されました。幸いなことに、両親はセラーファイナンスを利用することができました。両親が買った家が、私たちが育つ家になりました。このように、私の家族にとって、家の所有はすべてでした。それが私たちにとっての唯一の貯蓄の形であり、唯一の投資の手段でした。私たちが富を増やす方法でした。
家の所有はアメリカンドリームの核をなすものです。それは安全と安心、家族を象徴します。しかし、家の所有は、多くのアメリカ人にとってますます得難くなってきています。幸いなことに、家の所有はいくつかの形で進化しています。
家の所有の定義はかつてはかなり明解なものでした。資産の名義を所有すること、一般的にその家にまとまったエクイティを投入すること、そしておそらくその資産の第一順位の抵当権を持っていることです。しかし、資産の所有、および究極的には資産の活用の定義は、今では様々な業界において変化しつつあるようです。
このような変化はまずUberやLyftに見られました。車を所有する、または車を入手することの意味が再定義されました。車の有用性とは、究極的にはA地点からB地点へと移動することです。もし誰かがこの用途をより安く簡単に提供できれば、もう車を所有する必要はないのかもしれません。Airbnbも同じです。美しい別荘をAirbnbで借りることができるのに、わざわざ所有する必要があるでしょうか? 高額な固定資産投資に対する消費者の考え方は今一層慎重なものになっています。使用や経験、そして究極的には入手は解決されてきています。入手できるなら、その資産を所有する理由はあるでしょうか?
当然、家の所有にもこの変化の端緒が見え始めています。住宅ローン一択だった家の買い方に、様々な選択肢が広がりました。
右側の企業を家の所有の「新しいガード」と呼んでいます。彼らは家を手に入れる方法を根本から再考しています。その違いは、提供するのが使用、経験、入手だけではないということです。彼らはさらに4つ目の次元を加えます。つまり、投資に対する利益です。このグラフから分かるように、私たちは消費者が家を購入し、最終的には所有する方法を根本から変える動きの始まりにいるようです。
歴史を理解すれば問題の所在がわかります。これはアメリカの持ち家比率です。
FHAができるまで、比率は大体40%半ばでした。FHAとは、恐慌後の1934年に設立された連邦住宅局のことです。政府がより長期間貸付できることを望んだため、FHAは30年固定住宅ローンを導入しました。融資条件も大きく引き下げました。このプログラムの成功を受け、彼らはFannie Maeを設立しました。Fannie Maeの役割は、そうしたローンを買い取って公開市場で売ることです。そしてそれは、上手くいきました!持ち家比率はこうして約20%上昇しています。
政府にとって、これは素晴らしいことでした。家を所有する人は、固定資産税を支払うからです。雇用の増加や地域の発展も促進されます。消費者にとっても、これは有益なことです。価値が上昇する資産という形での強制貯蓄の仕組みです。ついでにその資産は中で暮らすこともできます。S&P 500の株の中では誰も暮らせません。
これは最高に思えましたが、その後持ち家比率の停滞期が訪れました。1990年代は金利が非常に高く、誰も30年固定ローンで20%の金利を支払おうとはしなかったからです。
そこで政府は「昔1度やったじゃないか。あれをまたやってみよう」と思いつきました。引受条件を下げ、サブプライムローンを始めました。そして、政府の狙い通り、家の所有が増加しました。
しかしその結果、信用力の低い消費者に貸し付けることになり、住宅起因の世界的な不況に陥りました。以降、持ち家比率はおよそ横這いのままです。
持ち家の減少が全ての人々に等しく影響していれば話は別でした。しかし、影響は、2つのグループに偏っていました。25歳から35歳のミレニアル世代と、新規の住宅購入者です。これは年齢別の持ち家比率のグラフです。今のミレニアル世代の持ち家比率は、X世代とベビーブーム世代よりもずっと低い約37%です。
これまで新規の住宅購入者は、住宅契約の約半分を占めていました。現在ではたった3分の1です。さらに気が滅入ることに、契約をする新規購入者のうち76%は、推奨される20%よりも少ない率の頭金を支払っています。
これらは全て、30年固定ローンが史上最低金利であるにも関わらず、起こっています。政府は基本的に家の所有を促進しようとしていますが、何かが上手くいっていません。私も完璧な答えを出したいのですが、難しい問題がいつもそうであるように、これは複数の要因が重なって起こっていることのようです。
1. 手頃な価格の住宅の不足
下のグラフによると、2013年から2019年にかけて販売数が低下しています。全体的に、販売中の物件数は減少してきました。ですから、もし売家が足りないと感じたことがあれば、それは気のせいではありません。実際に不足しています。特に、15万ドルの層における減少を見ると、35%近く減少しているのがわかります。これは30万ドルや50万ドルの住宅における減少よりも大幅です。
住宅価格の中央値は、1997年よりも120%高くなりました。住宅価格の中央値が高くなれば、より多くのドルを支払う必要があります。しかし、賃金がほぼ横這いな時に、より多く支払うのは非常に大変です。アメリカの消費者はより多額の貯金を求められています。
2. 引受条件の厳格化
住宅ローンのための平均FICOスコアは690点から、現在は約740点に上昇しました。大きな上昇ではないように思うかもしれませんが、実際はアメリカの消費者のおよそ20%が排除されます。
3. ミレニアル世代は以前の世代よりも財政的に複雑
ミレニアル世代はかつてない程の学生ローンを背負って卒業しています。学生ローンがより多額だと、返済負担率も高いので、より安い家しか買うことができません。しかし、既に話したように、手頃な価格の住宅は多くはありません。つまり、家を買う立場にあったとしても、買える家がないという板挟み状態です。
この問題をよく理解するために、1940年代からの引受条件を見てみました。過去の引受条件は現在と基本的に同じです。
私は先週ローンに申し込みました。3つの銀行に申し込み、全てから拒否されました。創業者としての私の現在の収入は、ローンを組むには低すぎると言われました。(どういたしまして、Andreessen Horowitz。私は会社のバーンレートをしっかり低く保っています)これは、確定申告が必要な収入のUberの運転手や、数十万ドルのローンを抱えて医大を出たばかりの医師で見ているのと同じ問題です。私たちは同じ状況にあります。
私たちは住宅所有権の入手を提供する方法を根本的に再考する必要があると思います。あれは過去です。未来、そして問題解決はかなり違ったものになります。
この大きな問題に取り組むなら、通常は小さなパーツに分解するでしょう。業界も全く同じことをしました。右側は、市場にさらに流動性を生み、ローンを組める人々のための解決策を提供しようとした企業です。左側は、ローンを組めない消費者をターゲットにした企業です。Divvyはこのカテゴリーに入ります。
Divvyの目標は、家を借りることと所有することの間にもう1段作ることです。現在この業界は非常に二元的です。家を借りるか、思い切って住宅ローンを組むか、です。中間はありません。Divvyは真にユニークなものを提供します。ローンの金融リスクを負う必要のない、今日欲しい家の入手です。そして、その資産の利益も渡します。
現在私たちは6カ所に展開しています。タンパ、ダラス、セントルイス、メンフィス、クリーブランド、アトランタです。私たちは真っ向から中部アメリカをターゲットにしており、それをとても誇りに思っています。
Divvyの仕組みはこうです。あなたが家を選ぶとDivvyが代わりにそれを購入します。あなたは最後に2%を支払います。合成エクイティ口座で、あなたが2%を、Divvyが98%を所有していることがわかります。その家に入居して最初の月は、他と同じように家賃を自動的に引き出します。しかし、私たちはその支払いをエクイティ分と賃料分に分けます。賃料は私たちの収益となります。エクイティ分はあなたのその家の所有権を少しずつ築き上げるために使われます。
つまり、あなたの所有権は2%から始まり、最初の月は2.2%、次の月には2.4%、その次の月には2.6%、と増えていきます。3年の間で10%まで増やすことを目指しています。3年間の最後、もしくはその途中で、あなたが希望すれば、私たちからその家を買い取ることができます。さらに、もし退去したければ、あなたの持ち分の所有権を買い取ります。
Divvyの重要な点は、基本的に借り手を持ち家所有者の気分にさせることだと思います。そしてその結果はより良い事業収入です。
左側は私たちの賃料利回りと公開戸建REITの比較です。今は家の購入額で割った賃料だけです。REITと比べ、私たちは購入額に基づき家ごとにより高い賃料を設定しています。加えて、借り手が持ち家所有者のように考えて行動すると、家あたりの空き家率と回転率、維持費が低くなります。
これがDivvyが今までやってきたことです。将来は、賃貸と所有の間の1段だけでなく、持ち家所有への完全な軌道を作ることを目指しています。その場合、あなたが欲しい家を選び、Divvyが代わりにそれを買うだけでなく、あなたが入居する前に私たちがメールを送ります。「ケーブルテレビとネットの設定はいりますか。庭造りはどうでしょう。賃貸保険は?どれか役に立つでしょうか」
そして入居すると避けられないことが起きます。例えば、パイプの破裂や天井からの水漏れなどです。Divvyはそうした維持費を負担し解決まで手助けします。
最終的に、家を買う準備ができれば、Divvyはあなたのローンを引き受けることができます。「これがあなたのDivvyローンです。希望ならこの家を所有できます。それよりも賃貸の柔軟性を維持したければ、借り続けることもできます」と書かれたDocuSignを送ります。原則的に、この業界はこうあるべきです。
私は頻繁に、Divvyの利用者は借り手であるが、本当に所有者のように行動し感じている、というアイデアに立ち返ります。その理由は、Divvyが根本的にユニークな体験を提供するからだと思います。今日欲しい家へのアクセスを提供し、ローンのリスクは負わせません。しかし、資産投資の利益は渡します。
Divvyや他の企業が得てきたトラクションは不動産の改革が始まったことの証です。今や消費者は欲しい家を欲しい時に手に入れることができ、所有に向けたより良い軌道に乗ります。
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記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: A Novel Path to Homeownership (2020)