私たちが数ヶ月前にシリーズAプログラムを始めた時、私たちがその行程で学んでいることは、ただYC内に留めておくべきではないと結論を出しました。ツールを発表し、すべての企業に役立つに違いないプログラムから学んだことが、より良い結果を生み出しています。
これがその最初のツールです。単純ですが効果的です。
この下に、シリーズAディリジェンス・チェックリストがあります。これは、タームシートへの署名後に、準備を終えているべき情報のすべてを揃えています。タームシートに署名する前に、これらすべてのものを一箇所（データ・ルーム）に置いておくことで、クロージングの過程が一週間も短縮します。一般的に創業者は、シリーズAのクロージングに一ヶ月以上かかることを認識していません。そのほとんどを弁護士のための書類を見つけることで費やしてしまうこともよくあります。
YC Continuityのゼネラル・カウンセル、Jason Kwonは、何百もの融資に関わった後に、このチェックリストをシリコンバレーのほぼすべての法律事務所およびVCファンドと一緒にまとめました。
登記と約款書類
- 取締役と株主の会議のすべての議事録と、取締役と株主のすべての書面による同意。
- 事業認可書、指定書、権利証など、および内規。
- もしあれば、会社と関連会社に関する同様の情報。
- もし親会社、子会社があれば、企業体の組織図。
事業計画および財務情報
- 現在の事業計画および財務計画すべて。
- 直近の財務諸表。
知的財産
- 適切な政府機関への提出および登録の書類などを含む、会社の登録商標、特許、著作権、ドメイン名（並びにそれらの応用）のリスト。
- 前述のいずれかが会社に譲渡されていたら、その旨を説明し、その譲渡書類および適切な政府機関の登録書を提出してください。
有価証券の保険および有価証券に関わる合意
- 発行日と元の発行価格を含む会社の株主名簿。
- 授与日と執行価格を含む会社の株式購入選択権所有者名簿。
- 未処理の株式購入選択権、株式買取権、権利（転換権および先買権など）に関する合意書の写し、会社の有価証券の購入または買収の合意書の写し、会社の過去の株式発行に関する合意書の写し。
- 会社の有価証券の登録権を明示する書類、もしくは会社の株主の間の合意書または会社と株主の間の合意書を明示する書類。
- 権利確定を条件とする株式またはストックオプションの権利確定スケジュールの概要。権利確定の繰り上げを含む。
- 証券の議決権や株式譲渡制限に関する合意書。
- 会社の有価証券の発行または譲渡に関する連邦（規則701を含む）およびブルースカイ適用法の下での資格または免除の証拠。
重大な合意書
- 会社の標準サービス規約 / 顧客向け利用規約。
- 合意、理解、手段、契約、提案された取引で、会社が当事者であるもの、または、それにより会社が拘束されているもの。その拘束には25,000ドル超の会社の債務または支払いが含まれている。
- 個人的財産の賃貸借契約書。
- 不動産の購入、賃貸借契約、 転貸借に関する合意書。
- 借金または会社が被った負債に関する負債を明示する書類。
- 住宅ローン、先取特権、ローン、会社の所有物または資産に関する負担を明示する書類。
- 会社による貸出金を明示する書類。
- 会社または他者の特許、著作権、企業秘密またはその他の所有権、専有情報、テクノロジーに関する種類の許認可書または合意書。従業員の機密情報および専有情報合意書を含む。
- 会社保有の保険証書または会社が受益者である保険証書、および、可能であれば当該証書の概要。
- 会社を拘束している、または、会社が当事者である判決、命令、令状、法令。
- 会社が使用する標準契約書様式。
- ジョイントベンチャーおよび提携の合意書。
- 経営、サービス、マーケティングの合意書。
- 守秘義務および秘密保持の合意書。
- 融資に関する同意や承認の必要な合意書。
- 顧問契約書。
- 会社の事業または通常の業務にとって重大なその他の合意書。
- 役員および取締役の名簿。現在、業務時間の100%を会社のために使っていない役員がいれば、この名簿に書き留めてください。
紛争と潜在的訴訟に関する情報
- 係属中の訴訟または潜在的な訴訟、訴訟または訴訟手続き、調査に関する通信や書類。以下のものに限らないがこれを含む。 (i) 以前または現在の雇用に関するもの、または、テクノロジーの利用に関するもので、会社の従業員が関与しているもの、かつ、 (ii) 政府機関または規制当局によって、または、その審理下で行われたもの。
- 会社による他者の所有権の侵害の申し立てに関する通信または書類。
- 労働合意または訴訟、組合代表、ストライキ、他の労働争議に関する通信または書類。
従業員および従業員福利に関する情報
- 会社の従業員および顧問の名簿。以下の情報を含む。肩書き、基本給、ターゲットボーナス（該当する場合）、委託制度（該当する場合）、分類（従業員の場合は適用対象外・非適用対象外の別など）、居住州。
- 会社の採用通知の標準様式。
- 会社とその役員、取締役、系列組織、孫会社の間のあらゆる合意書、理解、提案中の取引で、以下のものに限らないがこれを含む。雇用契約、退職手当または権利確定加速条項付きの採用通知書。
- 管理の変更を条件として利益を提供する制度、合意、協定。
- 退職手当または繰延報酬制度（書面または口頭での従業員または顧問との給料繰延合意など）。
- 従業員福利制度。以下のものに限らないがこれを含む。ストックオプション制度、401(k)プラン、年金制度、保険制度。
- ストックオプション制度に関して用いられる合意書の様式（選択権合意書の様式、執行通知、制限付き株式購入合意書など）。
- 会社が401(k)プランに出資している場合は、あらゆる確認書または意見書、および過去3年間の様式5500のファイリング。
- 会社がその従業員、取締役、顧問に対して行なった融資に関するすべての書類またはその他の情報。
- 会社の従業員手引書。
- 会社に外国人従業員がいる場合は、外国人従業員に提供されるすべての福利の別個の一覧（国別）。
エクイティ付与
シリーズAプロセス開始前にまだ未処理にしている保留中または約束されたエクイティ付与がある場合は、なるべく早く処理してください。大抵の人は、タームシートをひとたび手にすれば、ストックオプションの付与に、もはや現行の409Aの評価は用いないと考えます。重要な出来事が起きたからです。それは、会社の通常株に関して、より新しい（そして願わくはより高い） 評価を暗示する出来事です。早期に雇用され、エクイティの付与をまだされていないチームメンバーは、より高値を出した価格で自分のエクイティを受け取る必要があるでしょう。これにより彼らの利益が減少します。一部の社員はこれに気づくでしょう。そこで士気の低下を防ぐには、その差を穴埋めするために、（エクイティ、現金、その両方で）報酬を増やさなくてはいけないかもしれません。タームシートを受け取る正確な時機を管理することはできないため、なすべきこととして賢明なのは、資金調達過程の途中でエクイティ付与の未処理分が大量に無いようにすることです。
著者紹介
Jason Kwon は YC Continuity の General Counsel です。Y Combinator に入る前は、Jason は Koshla Vetures での Assistant General Counsel でした。またその前は、Goodwin Procter の弁護士でした。過去には、彼はいくつかのスタートアップでコーダーであったり、プロダクトマネージャーを務めていました。
Aaron は YC のパートナーです。彼は Y Combinator から投資を受けた Tutorspree の共同創業者でもあります。Tutorscpree より前に、彼は Bridgewater Associates で働いており、分析グループのプロダクトとオペレーションを管理していました。また Harvard で歴史と文学に関する AB を取得しています。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。なお、この情報は 2018 年のシリコンバレーでの状況であり、日本で必ずしも一般的なものではありません。
原文: YC’s Series A Diligence Checklist (2018)
