「お金で動くバカども」としての営業職? (Lars Dalgaard)

「コインで動くバカ」と、誰も営業職について大声でそう言わなくなったとしても、人々はまだそう思っているかもしれません。

それは自社の営業陣に関して一部のスタートアップのCEOが持つ認識です(創業者本人が営業職か出身でない限り)。コインランドリーのように、ただいっぱいに詰め込んで、彼らが無心になってベストを尽くすのを見る、というものです。さらに悪いことに、このフレーズがまるでそれが何か面白いものであるかのように、彼らはニヤニヤと笑うのです。

私には面白いことだとは思えません。

営業職に対する「コインで動くバカ」という考え方は、多くの理由で間違っています。 一つには、それは一種の偏見です。なぜならそれは基本的に毎日多くの価値を生み出す全労働人口の働きをないがしろにするものだからです。 傑出し、熱心な営業部隊は時に企業を作ったり壊したりすることができます。 それは、製品が劣っていても優れた営業力を持つ企業が勝つことがある理由です。

しかし、「コインで動くバカ」の考え方の本当の問題は、営業担当者が実際には会社のリーダーシップの一部と見なされるべきなのに、ただ単に電話をかけたり足で稼ぐだけの存在とみなされてしまうことです。 営業職は都合よく組織に配属できる使い捨ての部品ではないのです。

営業部隊は最も重要な資産の一部となりえます。だからこそ、対企業でも対消費者かに関わらず、営業はリーダーシップと戦略の最前線で中心になるべきです。(これには多くのビジネスマンも同意するはずです。Twitter、Google、Facebookのすべてに1,000人以上の営業担当者がいます。広告だけで営業が成り立つはずがないのです)。

製品を購入してくれる顧客という形で成果を出してくれるのが営業担当者です。彼らがいるからこそ事業は上手くいくのです。それに加えて、営業担当者は販売する顧客のまさに目の前に常時いる集団なのです。市場を可視化し、市場参入戦略を構築するのを助け、全体的な企業戦略に役立つ親密な顧客と競争上の見識を与えてくれるのは彼らのほかにいません。

何年も前に私が働いていたニュージャージー州の大手フォーチュン100(「働きがいのある会社」ランキング)に入るトップ製薬会社では、営業担当者が現場で何が起きているかを記録した音声メモを収集する習慣がありました。営業現場から社内に入った私には、そこに蓄積された市場情報と製品情報がまるで金鉱のように思え、活用せずにはいられませんでした。

しかし、何年もの間、誰もそれを聞いたことがなかったと知って私は非常にいらだちました。営業が集めた情報はブラックホールに吸い込まれていたようなものでした。 わたしが全部を聞こうと中を見てみると、約1万ものメッセージがありました! どれもが金のように価値のある情報でした。 私たちは実際に多くの営業からのフィードバックを採用し、製品化し、それ以来何百万ドルも利益を得ました。

ここで重要なのは、営業職と組織の他の部門との間に大きな壁があったということです。 あなたの会社がこのように営業職を全体から切り離すような考え方をしていたら当注意です。それは会社にとって大きな損害になりえます。

Steve Jobsのバランス

しかし待てよ、これは私たちが営業担当者の言うことすべてを実現する必要があることを意味するだろうか?と疑問に思う方もいるでしょう。 あるいは、人々から得たフィードバックでは製品をデザインすることはできないというSteve Jobsの名言を引用する方もいるでしょう。「多くの場合、人はそれを目で見るまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」

もちろん、あなたはSteve Jobsではありませんし、 Steve Jobs 自身も成功するには40年かかりました(Apple市場シェアは何十年もの間たったの3%でした)。 それなのに、自分の買い手に関する明快かつ信じられないほど具体的な情報を見逃す手があるでしょうか。

もちろん、営業職のフィードバックを全て聞く必要はありません。 一部の見識は本当の金塊になるでしょうが、その他は会社の長期的なビジョンにはそぐわない短期的なものにすぎないでしょう。

例えば、営業担当者は何が突破口となるアイデアなのかを理解できないことがあります。それなのに彼らはそれが突破口なのだというプロダクトマネジメントの意見を信じなければなりません。 長期的な計画に沿わず、大衆が実際に買うものとはかけ離れた、不健全で企業のために過度にカスタマイズされた取引を営業担当者が行おうとしていれば、その担当者の見解は企業にとって有害なものとなり得るでしょう。大事なのはバランスなのです。ですが、顧客とのコンタクトがなければ、このバランスをどう決めるべきかすらわかりません。

それでは、CEOは何をするべきでしょうか?

営業部隊を企業により積極的に参加させてください。 彼らをプロダクトマネジメントの会議、役員会議、製品計画が議論される会議に参加させます。 これが抽象的なビジョンと具体的な事実とのバランスをとる唯一の方法です。 私は、ほとんどの場合、営業担当者のほうが予想以上にクリエイティブであることに気がつきました。 営業担当者はまた、迅速で気の利いた行動をとることができます。これは組織に楽しいエネルギーをもたらします。

それでも、それは簡単なことではないでしょう。 プロダクトマネージャーは最初は営業職が参加してくることを嫌がるでしょう。彼らにとって営業職とは自分たちのものとは異なる真実をミーティングで語るからです。あなたも覚えがあるかもしれませんが、プロダクトマネージャーは営業職の「真実」が自分の仕事にとって非常に邪魔なものだと考えがちです。

無駄(ブルシット)探知機

多くのプロダクトマネジメントは、大きな暗いクローゼットの中にいるようなものです。全員がオフィスでお互いに同意し、内輪で満足しています。そしてその6か月後に彼らは突如として製品を発表します。それも、機能アップデートなどではなく、完全に新しい製品を発表するのです。アップデートにしても新製品にしても、本来は営業担当からのアドバイスを反映するべきなのにもかかわらず。このせいでそもそも開発すべきではない機能に貴重な時間が費やされることになるのです。もしも営業担当者がその場にいたならすぐさまこうした企画を中止させることもできたはずなのですが。

会議室に営業職がいることは、無駄(ブルシット)を見つける探知機を置いておくようなものです。 営業担当者は、次のように述べるでしょう。「あれやこれやと盛り込んだ製品を作れてとても嬉しそうですね。だから何なのですか? 顧客もあなた方と同じようにこの製品にわくわくすると本当に思っているんですか。他社の製品とはどのように差別化するつもりですか?」こんな風に、 彼らは厳しい質問を投げかけてくれるでしょう。

アイデアに知的にこだわるのではなくて、営業担当者は「ええ、でも私が実際に販売するものは何なのでしょうか?」と尋ねるものなのです。

会議室に営業職がいない場合は、顧客からのフィードバックをすぐに受け取ることができません。営業職は 、まだ営業していない見込み客と顧客の取締役会を招集して、「本日この製品を購入しようとあなたの考えを変える可能性がある理由は何ですか」という質問に答えてもらうのにも役立ちます。

営業担当者を顧客の代理人と考えてください。 それは単に彼らが被る多くの役割の1つではありません。営業担当者は、終日、毎日、顧客のことを考え、生き、そして顧客の考えをそのままの形で伝えてくれる存在なのです。

営業担当者がもたらす価値は、マーケティングリサーチとは異なります。なぜなら、営業担当者の価値はどうすれば優れたパフォーマンスをするかの具体的な分析であるからです。(営業担当者、アカウント・マネージャ、およびカスタマーサービス担当者は無視し難い「包括的な見識」をもたらします。私の友人であり、FacebookおよびGoogleで働いていた、経験豊富なグローバルセールスとオペレーションの責任者であるGrady Burnettもそう言っています)。なぜなら、彼らは製品や市場のニーズを他の誰よりもよく知っているからです。「彼らはそれを使用し、説明し、バグを発見し、そして他の競合技術について学びながら、製品販売の最前線にいるのです」

本当の見込み客と実際の顧客に早い段階で面と向き合うことが、嵐を乗り越え、あらゆる類の攻撃に耐え、他社よりも早く成長し、依然として顧客を喜ばせることのできる企業を創る鍵なのです。お金と新鮮なアイデアがあったとしても、これができなければ成功はありえません。

「真実を知る」ことは、私が特にテクノロジー企業がシリコンバレーから遠く離れて、ハイテク業界を超えて成長する際に、早期に営業担当者を雇うことが重要であると考える理由です。 (ところで、インサイドセールスを行っている場合でも、雇用担当者はこれを考慮する必要があると思います)。仲間への営業は、企業にとって最悪の行動の1つです。成長すればするほど、無駄な要素が少なくなり、無駄を検出できるようになるでしょう。勝利に必要な答えが得られるようになるのです。

包括的であること = さらなる推進力

スケールする企業における最大の問題の1つは、自信を持って新製品について説明し、販売することのできる人材を確保することです。 営業担当者は、成功的な既存製品に大きな信頼を寄せています。10日前に聞いたばかりの素性の知れない新製品を売ろうとして顧客との関係を損なうリスクをとろうとはしないでしょう。 しかし、営業を早めに巻き込むことで、創業者は発売しても売り上げにならないという製品の問題を克服することができます。営業担当者が現在総力を挙げてそれを宣伝してくれれば、こうした問題は克服できるのです。

営業に関してより包括的な考え方を持つことは、企業に計画への取り組みを強いることにもなります。 多くの場合、明確な計画に対する説明責任を担うことになると、プロダクトマネジメントはこんな風に苦境を逃れようとします。「はい、計画予定中です。正確な日付はわかりません…」または「そうですね、6ヶ月先のことは考えることはできません。私達は今この製品を開発するのに忙しいです」といったように。

計画が変更したとしても、少なくとも営業担当者は、販売を許可されている物(もしくは許可されていないもの)に関して、いくつかのガイドラインを持っています。 これが強力な営業チームに大きなモチベーションとなります。

優れた営業チームは非常にプロフェッショナルで組織的です。 常に優れたパフォーマンスをして、自分たちの役割以上のパフォーマンスをして、より向上するために、彼らはそうあるべきと心得ています。 あなたが与える注文がよりはっきりしたものであるほど、より良く、そしてはるかに短時間で実行することができます。 それだけでなく、これらはより簡単に更新し、より早く購入する傾向がある取引です。

営業担当者は依然として製品を販売する際に少しの柔軟性が必要です。 しかし、営業管理とプロダクトマネジメントとの間に整合性をとること、あるいは営業をより内部へと参入させていくことが大事です。 製品計画がどこにあるのか明確にされず、営業担当者が計画をちゃんと理解していない場合は(ソフトウェアではよく起こります)、企業がこれを実装することは事実上不可能になります。

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SuccessFactors を経営していたとき、私はプロダクトマネジメント会議に営業担当者を入れることを必須にしました。 そうすることで長話、無駄、ナンセンス、そして口論を綺麗に一掃しました それは議論を完全に、そして良い方向に変えました。

必ずしも営業担当部長 (VP of Sales) をおく必要はありません(特に30人以上の会社では)。 能力のある古参の営業担当者がいれば十分です。 はっきりさせておきたいのは、プロダクトマネージャーが依然としてその製品を所有し、その製品に関する短期的および長期的な考えの両方を所有する必要があるということです。 しかし、あなたが会社を成長させるのならば、何かを販売しなければなりません。 営業担当者が会議室にいると、その製品を販売しなければならないという事実が喫緊の課題となります。 プロダクトマネジメントと営業の結束は、これまでにないほど多くの成果を生み出しています。

是非この方法を試してみてください。 しかし、必ず全力で試してみてください。 全力でなければうまくいきません。

「コインで動くバカ」の考え方について話すとき、私はコインについては何も言及していませんでした。つまり、営業担当やそのチームに報償を与えるときはどうすればいいかということです。 これについては次の記事で説明します。 営業担当者が成果を上げていない場合はもちろん収益があがりません。だからこそ、目標や期待値を設定するときは、組織の誰よりも営業の人たちと一緒にするのが一番シンプルでわかりやすいのです。

そうすることで、営業職の人たちをあなたのために働く最も正直な人たちにすることができるでしょう。彼らは非常に率直でストレートな物言いをする人たちですから。その意味で、彼らは「コインで動くバカ」からは最も遠い存在なのです。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Lars Dalgaard

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: ‘Coin-operated Idiots’ (2015)

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