ディストリビューション VS イノベーション (Alex Rampell)

スタートアップと既存企業の闘いは、つまるところ、既存企業がイノベーションを行う前にスタートアップがディストリビューションを行えるかにかかっています。

TiVo問題

1999年にReplayTVとTiVoは、デジタルビデオレコーダー(DVR)を発明しました。それは驚くべき発明でした。テレビの放送の画面を「一時停止」できるのです。

しかし一時停止する「コンテンツ」がなければ、TiVoに価値はありませんでした。コンテンツは多かれ少なかれ、ケーブルテレビや衛星放送ネットワークが配信していました。

さらにTiVoは、ケーブル機器から独立していたため、使うのが容易とは言えませんでした。どんな番組があるかをTiVoに「認識」させて(それから録画する)ためには、TiVoサーバーに接続(モデムや電話回線経由で。当時は電話ジャックの近くにテレビを設置していませんでした。)してダウンロードしなければならなかったのです。

TiVoには販売チャネルに対しての絶大なチャンスがありました。Comcast、Adelphia、Coxや他の大手ケーブルテレビ会社が顧客にTiVoを配ることにしたらどうなるでしょう? TiVoとケーブルテレビ会社にとってはホームランではないでしょうか。新しく収益が流れ込み、顧客が喜ぶ新サービスです。ケーブル機器と統合することで、TiVo製品も改善を図ることができたでしょう。

とはいえ、ここからがTiVo問題と言う理由ですが、それはとても使いにくいものでした。現在のケーブル機器を見ると(一般的なDVR機能が内蔵されていることでしょう)、このストーリーの結末は想像に難くありません。

もしあなたがComcastと契約を締結したいTiVoなら、以下のうち1つが普通起きます。

  1. あなたはComcastと提携します。しかしComcastが契約の重要部分を握り、競合他社にあなたが協力しないように制限することさえあるでしょう。(提携は稀なことです
  2. あなたは自分の会社の全てをComcastに売却します。しかし売却するのは、会社ではなく素晴らしい製品です。そして、他の誰かも素晴らしい製品(品質は劣るものの、Comcastの技術チームがより良いと選定した製品)を持っているかもしれません。さらに、もしあなたが既にComcast、Adelphia、Cox等と商取引を行っているなら、Comcastはあなたの会社のComcast以前の収益( Comcastによる売却によって消失します!)を評価することなく、あなたの会社の第三者評価額よりも大幅に引き下げてくるでしょう。(売却は稀なことです
  3. あなたはComcastにだまされます。あなたの製品のぱっとしない模倣品を作り、ディストリビューションを利用してあなたに勝つのです。(これがよくあることです

TiVoは失敗しませんでしたが、ある種の特許トロールになりました。特許の調停でComcast等から$16億を超える資金を獲得したものの、現在ではマーケットキャップが$10億未満です。

勝利の方策:つまらないことをしよう

「TiVo問題」の一般的な結果がComcastに打ちのめされることなら、どう対応すればいいのでしょう?

答えは、「つまらないことをする」ことに辛抱強くあることでしょう。私は、支払いフローに関連してオファーを行うTrialPayで大きな間違いをしました。私たちは支払いに基づく素晴らしい製品・サービス・事業を構築しましたが、それは核心ではありませんでした。マーチャントの皆さんは私たちの製品を探し始めたり必要とし始めたりはしなかったのです。彼らは、私に言わせればつまらなくて安っぽく、共通化された支払い処理を探し始めました。アナロジーに戻りましょう。消費者は、TiVoを求めたり必要としたりするよりも、Comcastを求めたり必要としたりするものです。少なくとも、Comcastを使い始めています。

2006年に私は、「既にコモディティとなっている支払い処理業者のいずれもが提供していない、高利益の機能を私たちは開発できるのに、どうしてStripeやSquare(は当時まだ存在していませんでした)のような『つまらない』ペイメント事業を構築する必要があるだろうか 」と考えました。ユニット当たりの利益は彼らよりも遥かに高いものだったのです。

しかし、これらのペイメント事業者には顧客関係があり、顧客が求めた製品を初めに提供していました。やがて私たちは、TrialPayをVisaに売却しました。その取引からVisaは大きな価値を作り上げると私は考えています。私たちがそのチャンネルの所有を続けていたとしても、TrialPayの株主にそれほど多くは還元できなかったでしょう。

SquareやStripeについて、ブランドではないと言うのが間違っているのはこのためです。彼らにはディストリビューションがあります。技術的能力もあります。自前のTiVoを作ることもできます。ただ、そうするというわけではありません。彼らの成功を決めるのは、自社製品と優れた技術力であって、寡占や実用性を約束するあり得ない取引ではないのです。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Alex Rampell

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Distribution vs. Innovation (2015)

FoundX Review はスタートアップに関するノウハウを届けるエンジニア向けのメディアです

運営元