このシリーズのこれまでの投稿で、エンゲージメントの基礎を紹介し、コンテンツ作成と共有について検討しました(図1における生産)。この投稿では、ユーザーをつなげることの重要性を議論し、コンテンツ在庫のさまざまな水準が持つ意味を分析します。
つながり
あなたの製品が十分な数のコンテンツ作成者を持つことができれば、次のステップは彼らが仲間のユーザーたちとつながるようにすることです。ユーザー間のつながりを多く作るほど、より多くの在庫を提供できます。さらに、それらのつながりは個人ユーザーに限定されません。コンテンツを作成・共有する他の存在、例えばセレブやニュースページ、グループなどとのつながりも、利用可能な在庫を増加させます。
従って製品チームは、少ない数のつながりしか持たない「貧しい」ユーザーに対処する必要があります。そして彼らが他のユーザーと友だちになり、セレブやニュースページをフォローし、グループに参加するように促すことを重視すべきです。また、ユーザーが製品をより良く理解し、継続利用しやすくなる「転換点 (ティッピングポイント)」を見つけ出すことも重要です。例えばFacebookは、新たなユーザーを10日以内に最低7人の友だちとつなげることを目標にしています。もちろんこの目標が機能するのは、7人の友だちが消費者の興味を引く有意義なコンテンツを実際に生み出している場合のみです。
つながり:追跡すべき重要指標
- 最初の10日以内につながる友だちの数:早い段階で最低数のつながりを作れない場合、ユーザーが離脱する可能性はより高くなります。
- 友だち、グループ、ページとの各つながりの割合:さまざまな種類のつながりは、さまざまな時期にさまざまな人にとって役に立ちます。このことをユーザーの利用時間やセッション数の文脈で理解することが有益です。
- エンゲージしているつながりの数:つながりが全て同じ価値を持つわけではありません。親密な友だちとのつながりは、もうめったに使わないグループとのつながりよりも、ずっと大きな価値を持つはずです。
- アクティブにつながっているユーザー同士の数(割合):アクティブなつながりの数がいくつあり、時間と共にどのように増えているか理解することが重要です。
在庫
コンテンツを生み出している友だち、セレブ、ニュースソースなどとのつながりが増えれば、それに伴って各ユーザーの在庫、すなわち利用可能なコンテンツの量も増加します。在庫は1人のユーザーが消費するコンテンツの量、従ってあなたの製品の利用時間と直接相関関係があるため、極めて重要です。アクティビティフィード環境における全ユーザーに対する在庫の総量は、生み出されたコンテンツおよび作られたつながりの産物であり、全体的な消費(図1参照)と広告収入に大きな影響を与えます。
見ることのできる記事をわずかしか持たないユーザーは、たいていそのほとんどを消費します。そのため一般的に言って、在庫が少ない時には消費されるコンテンツの割合が高いものの、消費される数の絶対値は低いままです。それとは対照的に、見ることのできる記事が多過ぎる人は、その全てを消費する時間がないだけです。次のセクションでは、在庫の4つのレベル(非常に少ない、少ない、多い、非常に多い)について検討します。
非常に少ない在庫
ユーザーの在庫が非常に少ない(毎日の新たなコンテンツが10件未満)場合は、ログインする度に利用可能なコンテンツを全て消費する可能性が高いでしょう。これは、製品に初めて参加し、まだ多くのつながりを持っていない時に最もよくあるケースです。前述した通り、製品チームはそれらのユーザーを「貧しいユーザー」と見なし、彼らが喜ぶような関連のあるつながりやコンテンツをアドバイスすることに注力すべきです。この状況において、コンテンツのランキングは役に立ちません。そして利用期間に比べ在庫が少ない状態が続いた場合、そのユーザーを維持するのは非常に難しくなります。
少ない在庫
ユーザーの在庫が少ない(毎日の新たなコンテンツが50件未満)場合は、いくつかの問題が考えられます。製品を利用している友だちの数が十分ではないかもしれません。あるいは、製品が推奨するつながりが適切ではない可能性もあります。ユーザーの関心を引くコンテンツが少な過ぎる場合も、エンゲージメントが高まらない可能性があります。そのようなユーザーが利用可能なコンテンツの大部分を消費している場合は、それを大きなチャンスと考え、より多くの提案に取り組みましょう。反対に、在庫の少ないユーザーが利用可能なコンテンツを全く消費していない場合は、製品自体とのエンゲージメントをより強く反映しているのかもしれません。
多い在庫
一般的に、多い在庫(毎日新たに50件以上)を持つユーザーは、より多くの友だち、ページ、グループとつながっています。また彼らは、利用可能な在庫の消費割合が大きく、セッション数も製品利用時間も多い傾向にあります。それらのユーザーは一般的にDAU/MAUが高くなり、定期的に製品を訪れます。このグループにおいてエンゲージメントを高めるのに、ランキングアルゴリズムは非常に有効な手段となります。そのようなユーザーは、利用可能な全ての在庫を消費することができないからです。また、ユーザーが好むコンテンツの種類を掘り下げて理解し、ソーシャル、娯楽、情報を適切に織り交ぜて提供することも大事です。
非常に多い在庫
このグループのユーザーは他のグループよりも多くの在庫(毎日新たに200件以上)を持ち、通常はより多くのコンテンツを消費する一方で、消費される利用可能な在庫の割合は比較的低くなります。これらのユーザーは、消費可能な数より遥かに多くのコンテンツを抱えています。多い在庫のユーザーと同様に、このグループのエンゲージメントを維持・向上するには、ランキングが極めて重要です。
在庫:追跡すべき重要指標
- 利用可能な在庫量
- つながりの数
- 利用可能な在庫の消費量
- 消費される投稿の数
- 不自然な在庫を持つユーザーの割合
在庫指標を追跡する際に、国、性別、つながりの種類(友だち、セレブ、企業、グループ)、コンテンツの種類(テキスト、動画、写真など)、およびプラットフォーム(iOS、Android、デスクトップ)によってデータをセグメント化することで、在庫のパフォーマンスについてより明確なイメージを持つことができます。
まとめ
- 適切なつながりを増やすことが、エンゲージメントの促進に役立ちます。
- 貧しいユーザーを見分け、素晴らしい体験をさせることが、製品の長期的な成功にとって最も重要です。
- さまざまなセグメントの在庫の消費と利用可能性を理解し、具体的なチャンスを見つけ出すことが、ユーザーにより良いサービスを提供し、それによって製品全体を改善する役に立ちます。
この記事は、Sequoia CapitalのData Scienceチームによるものです。Jamie Cuffe、Avanika Narayan、Chandra Narayanan、Hem Wadhar、Jenny Wangが執筆協力しています。質問、コメント、その他のフィードバックにつきましては、data-science@sequoiacap.comまでメールでお送りください。
著者紹介
アイデアから IPO、そしてそれを超えて、Sequoia は大胆な創業者たちが、伝説的な起業を作ることを助けます。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Engagement Part III: Connections and Inventory (2018)
本シリーズの記事一覧