- プロセスを過度に最適化しすぎる
- 条件を過度に最適化する
- 競争的な環境の創出に失敗する
- 敵意がある、傲慢、失礼に見える、など
- 否定に耳を貸さない
- リード投資家がいない
- ピッチが下手
- 主要な投資家のリファレンスを取らない
- 明確なビジョンの欠如
- キーとなるメトリクスを知らない
資金を調達するためにすべきことについて書いたものは数多くあります。しかし、創業者が犯してしまう共通の間違いについて書いたものはそれほど多くありません。私がよく目にする間違いの一覧をここに挙げます。
プロセスを過度に最適化しすぎる
多くの創業者がとろうとする方針は、資金調達に役立つだろうと思うちょっとした技(トリック)にあまりにも取り憑かれています。でも実はとても単純なことです——よい会社を持てば、資金を増やすことができるのです。資金調達を充実させることに取り組むより、自分の会社をよくすることに取り組んだ方がうまくいきます。
プロセスは単純です——
- 話をしたい投資家に自己紹介をする機会を作って、接触しましょう。続けてではなく、同時に行うことが重要です。(3)を参照してください。
- 自分の会社が投資家に多くのリターンをもたらす見込みがある理由を説明しましょう。この説明は大抵の場合、会社のミッション、製品、現在のトラクション、将来の展望、市場、競争、成功する理由、長期の競争の優位性は何であるか、収益を得る方法、チームについての話題を含みます。
- 競争的な環境を設定しましょう。 驚くことではありませんが、複数の投資家が互いに競い合ってあなたの会社のラウンドに投資するとなれば、あなたは最高の条件を手にすることになります。これは非常に重要な「ゲーム」の1つのルールです。これについての詳しいお話は後ほどすることにします。
時機を注意深く見計らったニュース記事を出すようなことをしようとする創業者もいます。彼らは1人の投資家に、自分たちが他の投資家と夕食をともにすることを気軽に告げ、日程が詰まっていて、特定の1時間しか空いていないことを主張し、他のトリックを考えるのです——しかし、よい会社を作りたいだけなら、そのようなことは概して必要ありません。
多くの些細なことは、単にそれほど問題にはなりません——例えば、初期投資家が後のラウンドに参加しないことを選択する時に発せられる「兆候」があります。会社がうまくいっていれば、これらのことは簡単に見過ごされます。会社がうまくいってなければ、いずれにせよ、懸命に資金を調達することになるのです。
ゲーム・プレイは完璧にやらない限りは、ほとんどの優良投資家とともにあなたの会社に損害をもたらすことになります。どのようなものであっても、あなたは信頼のおける正直者でなくてはなりません。信用できなければ、投資家はあなたを支援しないでしょう。
条件を過度に最適化する
新規事業は一般的には伸るか反るかのコースです——成功するかしないかなのです。失敗したなら、買収によって雇用されるかもしれませんが、これはそれほど頻繁に起きることではなく、大抵は、その代わりに、買収した側の会社に就職してもほとんど変わりません。
重要なのは、優良な投資家を得て、フェアな条件を手にし、資金調達に時間をかけ過ぎないことです。最大の問題は、高い評価額を追いかけることで生じます。多くの人々の考えとは反対に、YCでは、合理的な評価額を求めることを企業に勧めます。評価額というのは創業者にとって、自らを測る量的なものであって、多くの投資家は高額の支払いをしたがっています。したがって、彼らはいつも耳を傾けているわけではありません。しかし、もう一度言いましょう——非常に高い評価額を得ようとするのは間違いです。
明らかに攻める時機にあるなら、高い評価額を求めるのもいいのですが、投資家をだましてはいけません。ただ自分の望みを伝え、あまりに行ったり来たりせず、複雑な事態に陥らないようにしましょう。また、非常に高い評価額によって、優良投資家を締め出すこともよくあるということを覚えておきましょう。
さらに、資金調達策の最優先の方針を忘れてはいけません——ダウン・ラウンドをしなくていいように設定します。ダウン・ラウンドの短所は誇張し過ぎることはありません。現に、その脅威は、極端に高い評価額を提示された時にそれを受けない最善の根拠になっています。そのような価格で資金調達したなら、次のラウンドを上向きにするためには、すべてが完璧に進行する必要があります。
競争的な環境の創出に失敗する
ここに、私が非常に重要であると信じているゲームの一部があります。一般的に資金調達でよい結果を手にするためには、競争的な環境を設定する必要があります(または、これに関しては、大きな取引なら何でも言えることです)。
難しいのは最初のオファーを獲得する部分です。これをいったん手にすれば、レバレッジを手にすることになります——他の投資家たちの動きが鈍くても、受けることのできるオファーが1つあることになり、他の投資家たちは潜在的に大きな機会を失う危険を冒していることになります(そして彼らの提携先の目には愚かに見えるかもしれない、など)。それまでは、彼らは先延ばしをして、自分の望む分だけ待つことができます。最初のオファーが来るまでの潜在的な待機期間の長さ、また、次の10人が現れるまでの早さには驚くべきものがあります。
ですから、時として、この最初のオファーを獲得するために少しプロセスを変えることもあります。最善の方法は、あなたのしていることを気に入り、行動を起こそうと思っている人を見つけることです。最初のオファーを利用して他のオファーを獲得するのは問題ありませんが、誰であっても最初に行動を起こした人には、他にリード投資家がいたとしても、投資ラウンドに参加してもらう方法を探すなど、そのオファーを優先して厚遇すべきです。
これについては、いずれ別の投稿で書かなければいけないほど、たくさんの戦術があります。
けれども、オファーがない状態で「私たちのラウンドはとても早く終了する」といったようなことを言うのは逆効果であることに気をつけなければいけません。投資家は話をし、あなたの発言をはったりと呼びます。
競争を生むような適切な環境がある場合、レバレッジはあなたに有利に動きます——あなたは物事の変わりように驚くでしょう。以前は3週間もあなたと会合を持つことのできなかった会社が、突然、日曜日にフルパートナー会議を設定できるようになります。複数の入札者が本当に投資をしたいと考えている場合は、20%の所有権や取締役会の議席など、多くの「譲渡不可」の条件は無くなります。
敵意がある、傲慢、失礼に見える、など
どういうわけか誤った通念が生まれ、投資家や変わり者の創業者が気取った態度をとることがあります。そうはならないでください。(ラウンドを本当に終了するのでない限り、初回の会合の後に投資家に決断を迫らないなど)敬意を持ってください。
投資家もまた人間であることを覚えておいてください。好かれていると感じたいのです。私は、最初に資金を調達した時、レバレッジを諦めようと考えていた中、心から好きな投資家たちに自分が彼らを心から好きであることを告げるのを躊躇していました。けれども、本当に好きな投資家に対して、特に彼らと一緒に取り組みたいと告げることで、彼らは一層積極的にあなたに心を傾けることがわかります。その反対はありません。
否定に耳を貸さない
投資家はオプションバリューを台無しにしたくありません。創業者は楽観的な人々です。その結果として、投資家はとても感じの良い「No」を言うのですが、創業者は「もう少し対話をすれば、Yes という言葉を貰えるだろう」という風にその言葉を理解します。タームシート以外のものはすべて「いいえ」であり、すべての理屈は関係ありません。先へ進み、他の投資家と話をしましょう。
リード投資家がいない
多くの創業者は、何十人もの投資家を集めたパーティー・ラウンドを構成します。その中で投資家たちは、誰一人として他の投資家に大きく差をつけていないことを祝福します。しかし、実際には、うまくいっている会社に対して投資家が保持している力は結局のところほとんどなく、実際、創業者には、成功するのに極めて多額の投資を受けた投資家が1人もいないということです。
毎月会って、進展を報告する投資家が1人いるということは非常に価値のあることだとわかります。この強制的な機能はとても良い方向に会社の運営のリズムを作ります。そしていかに多くのパーティー・ラウンドの会社が突然ダメになってしまうのかには驚かされます。
ピッチが下手
多くの創業者は、完璧なテンプレートに従おうとして溺れてしまい、競合相手や市場の進化などに負け続けます。彼らは退屈であり、それは一目瞭然です。
うまく売り込む方法は、事業において自分が本当に胸を躍らせている部分に焦点を当てることです。その輝きは強く、それにより、投資家は胸を躍らせます。事業への情熱を伝えることは、主張することとほぼ同様に重要であり、それは捏造できるものではありません。
たとえ内向的な性格であっても、それは洗練された投資家に届きます。ですから、自分が夢中になれる部分から話を始めましょう。
投資家はよい話を聞きたがっています。例えば、このアイデアに取り組むことを決めた理由は何であるか、なぜそれが重要なのか、共同創業者とはどのように出会ったか、などです。したがって、これらの部分を売り込み内容から外さないでください。
それに加えて、賢い投資家は、本当の大成功を求めていることを覚えておいてください。シード・ラウンドの売り込みでの潜在的な取得者について話すなど、明らかに愚かなことはしないでください——それが示唆するものは、あなたが本当に大きな会社を作ろうとはしていないということです。
主要な投資家のリファレンスを取らない
立派な投資家は莫大な価値を付加することができます。悪い投資家は、あなたの人生を惨めにする可能性があります。その先の10年間の大部分を一緒に仕事をするための契約を誰かと交わす時には、事前に1時間をかけて、相手と一緒に仕事をしてきた創業者に電話をかけ、あなたのために何があるのかを感覚的に把握しましょう。
明確なビジョンの欠如
あなたが強い思いや確信を持っていないように見え、投資家があなたの事業に関して提案してくるすべてのことにあなたが同意すると、あなたは明確な展望を持っていないように見られる危険があります。賢い人の発言には常に耳を傾ける必要がありますが、自分が本当に信じることには断固とした態度で臨む必要があります。
明確な展望を持つ創業者は、一般的には自分のしていることやそれが重要である理由を、ほんの少しの言葉で説明することができます。また、明確な展望には、大抵は、少なくとも1つの大きな新しいアイデアが伴います。それが聞き慣れたものであったとしても、投資家がそれまで聞いたことのない何か重要なものが含まれている必要があります。
当然、何らかの大きな未知のものがあっても大丈夫です。全ての答えが用意できている必要はありませんが、まず最初に、明確なテーマがなければなりません。
キーとなるメトリクスを知らない
私が初期段階の投資で注目する2つの疑問があります——
- チームはすべきことがわかっているか。
- チームはそれを実行することができるか。
一つ目の疑問は、上記の箇条書きで述べられています。二つ目の疑問は、チームが運営の質について注意を払っている様子が見えることでわかります。私が発見した事実は、うまく業務をこなすチームは、常に自分たちの出している数値(または、R&Dモードでは現状について)を完璧に知っているということと、それが実行の質を予測する最善の予測因子の1つであるということです。この情報を知らないまま投資家に売り込みをする会社の多さには驚かされます。
著者紹介 (本記事投稿時の情報)
Sam Altman は YC グループの社長です。彼は Loopt の共同創業者兼 CEO でした。Loopt は 2005 年に Y Combinator に投資され、2012 年に Green Dot に買収されました。Green Dot で彼は CTO を務め、現在は取締役です。Sam は Hydrazine Capital も創業しました。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Fundraising Mistakes Founders Make (2014)